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謹んで辞退します 2008年8月30日放送分 |
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今月の初め、作家の伊坂幸太郎さんが直木賞のノミネートを辞退して話題になりました。当店でもその後、様々な「辞退」のお話が盛り上がりましたが、それぞれ裏側には複雑なドラマが隠れているようです。
そこで本日は当店のお客さまが教えて下さった「辞退」にまつわる様々なお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。 |
| ■ | 大森望さん(文芸評論家)の
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今年の上半期の直木賞では、伊坂幸太郎さんが「大本命」と言われながら選考候補から辞退した。
文学賞は候補に挙げられるだけでも精神的に疲れてるものらしい。特に直木賞は「密着取材でドキュメント番組を」なんて話が出て、候補になっただけで日常生活が破壊されるのだとか。そして落ちても精神的なダメージがあるし、受賞しても何十件もの取材を受けることになる。これでは本業の「小説を書く」ことは難しい。今まで何度も直木賞候補に挙げられた伊坂さんは、おそらく辟易として「執筆に専念させてほしい」と思ったのだろう。 横山秀夫さんは『半落ち』で直木賞候補になった時に「法律的にこの結末はあり得ない」「ミステリーはこの程度のモノが評判になるのか」と選考委員から批判され、「自分はともかく読者を批判するのは許せない」と怒って辞退した。 ずいぶん昔だけど、昭和18年にはあの山本周五郎さんが大作家すぎて「もっと若い人に……」と直木賞を辞退している。また芥川賞は昭和15年に高木卓さんが辞退した。こちらは「先輩の作品が候補ならそちらに賞を」というつもりだったらしいんだけど、その先輩は候補になんてなっていなかったという珍事件。
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| ■ | 清水節さん(編集者/映画ライター)の
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1972年度のアカデミー賞では『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドが主演男優賞を辞退した。
実はマーロン・ブランドは1954年の『波止場』で同賞をニコニコと受賞している。でもその後、彼は人権運動に打ち込み、俳優業よりもそっちが本分になっていた。それで再び受賞した時、彼は代理の女性を通して「先住民族の誤ったイメージを植え付けたハリウッドの賞は受け取れない」と言った。 1970年度のアカデミー賞でも『パットン大戦車軍団』のジョージ・C・スコットが主演男優賞を辞退した。こちらは熾烈な賞争いを嫌ったスコットがノミネートを辞退しようとしたんだけど、締め切りに間に合わずそのままノミネートされてしまった。 みんなその事は知っていたので、受賞者を発表しようとしたゴールディ・ホーンがステージ上で「Oh my god!!」と叫んでしまったシーンは印象的だった。ただし辞退するとわかっていて選んだオスカーもどうかとは思う。 日本アカデミー賞では『武士の一分』の木村拓哉がノミネートを辞退したのが記憶に新しい。事務所側の「競いたくない」という主張はさておき、裏番組の都合もあったのではとも言われている。
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| ■ | 呉智英さん(漫画評論家)の
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僕は朝日新聞の「手塚治虫文化賞」の選考委員をしているけど、今までに辞退した例を2つ知っている。
1人目は花輪和一さん。この人は細緻な絵と幻想的な物語でごく一部のマニアに非常に高い評価を得ている。とにかく細部にこだわる人で、15年くらい前には絵の資料として持っていた拳銃の不法所持で捕まったりもした。 そして3年間の服役体験をもとに『刑務所の中』という作品を描いた。これがまた、普通は知ることのできない刑務所の様子を細緻に描いた素晴らしい作品で、手塚賞の選考委員の間でも「今年はコレだろう」という評価だった。 ところが本人が「あまり人前に出たくない」という理由で辞退。これを聞いた選考委員たちは皆「ああ、やっぱり」「あの人ならそうじゃなきゃ」と言った。 もう1人は『ブラックジャックによろしく』の佐藤秀峰さん。医療現場の問題を描いた大ヒット作だし、手塚作品へのオマージュ的なタイトルだし、ということで有力候補だったのに辞退した。 こちらは理由がまったく不明で、よっぽど偏屈な人なのかと思ったら、保育園の保護者会などにも積極的に参加するすごく良い人らしい。今でも辞退したのが不思議で仕方ない。
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| ■ | 福島良一さん(メジャーリーグ評論家)の
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イチローは今までに国民栄誉賞の打診を3回受けて、3回とも辞退している。
1回目は1994年にオリックスで年間最多安打記録を樹立した時。2回目はメジャーに渡り、新人王とMVPを受賞した時。そして3回目は「不滅の大記録」と呼ばれたジョージ・シスラーのメジャー年間最多安打記録を破った時。 これまでに野球界で国民栄誉賞を受賞したのは王貞治さんと衣笠祥雄さんの2人。王さんはハンク・アーロンの通算756本塁打を抜いた時に受賞したし、衣笠さんはルー・ゲーリックの2130試合連続出場を抜いた時に受賞した。 つまり王さんも衣笠さんも「人生における大きな目標の達成」で受賞している。ところがイチローの場合はまだまだ現役生活が長く続く。だからイチローは「現役を引退した時にいただける選手を目指す」という意味合いで辞退した。 イチローにとっては、ピート・ローズの通算4256安打を抜く日が来れば1つの節目になるかもしれない。といっても先日、早くも日米通算3000本安打を達成してしまったので、十分に実現可能な範囲。 ちなみに野球選手にとっては「殿堂入り」が最大の栄誉。でも日本の殿堂は基準があいまいなのが残念。
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| ■ | 伊藤強さん(音楽評論家)の
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僕は梓みちよが『こんにちは赤ちゃん』でレコード大賞を受賞した時からレコード大賞の審査に関わっている。当時はまだレコード大賞もそんなに権威もない頃だったので、キングレコードの人がすごく喜んでいたのが印象的だった。
その後、レコード大賞も世間で認知されるようになり、「レコード大賞を獲りたい」という人も多くなったけど、逆に「欲しくない」という人も出てくるようになった。「欲しくない」という人はなんとなくその噂がこちらに伝わってくるので、選ばないようにしている。 その傾向がハッキリしてきたのはフォーク全盛の時代。井上陽水や吉田拓郎がもの凄く売れていた時代に、僕は「2〜3年我慢して受賞だけ発表しておけば、その内こだわりなく来てくれるようになる」って主張したんだけど受け入れてもらえず、会場に来ない人は選考対象から外すことになってしまった。たしかに「番組」として考えると、それも仕方ない部分はある。 「本当にあそこで決めてるの?」と怪しむ気持ちはよくわかるけど、受賞者はちゃんと当日に審査員室で決めている。僕が審査委員長をしていた時は、最優秀歌唱賞の票が森山良子と誰かが同数になって揉めたこともあった。
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■ 放送曲目リスト |
| Time | Title | Artist | Label | Number |
|---|---|---|---|---|
| 8'43" | Someone Like You | Four Freshmen | EMI-Capitol | 72438-19175-2-7 |
| 19'07" | Too Close For Comfort | Eydie Gorme | Taragon | TARCD-1011 |
| 30'38" | Just Friends | Lewis Sisters | Capitol | TOCJ-66320 |
| 36'38" | Life Can Be Beautiful | Beverly Kenney | Decca | UCCU-3044 |
| 45'26" | Stranger In Paradise | Keely Smith | Jasmine | JASCD 323 |