放送曲目リスト2007年の放送一覧

お楽しみはこれからだ
2007年10月6日放送分

 お客さまに教えていただいたのですが、映画に「音」が付くようになったのは1920年代からで、映画『ジャズ・シンガー』の「お楽しみはこれからだ」が“最初の映画のセリフ”だったそうですね。
 そしてある映画監督のお客さまによれば、いまや映画の魅力の半分は「音」にあるのだとか。たしかに当店にいらっしゃった映画関係のお客さまも「映画の音」に関して様々なお話で盛り上がっていらっしゃいました。そこで本日はそのお話をここでご紹介させていただきます



鈴木雅之さん(演出家/映画監督)の
『映画と音』の話
image
 テレビと比較して映画の方が音にこだわる。他の監督が「音がさぁ……」なんて話をしているの聞くと、自分はもうちょっと音のことを考えないと、と思う。
 画面の中で電車が右から左へ走っていくのに合わせて、音も右から左へ流れていく「ドルビー」のデモは確かに聞いてて楽しい。でも僕はそこまで気を使えない。
 テレビの現場では、音は画(え)の次になってしまうので、みんな痛い思いしながら後でシコシコ直している。これが映画になると、もう少し音が前に出てきて「こういう環境でやればこんな音が付けられる」なんて考えるモノらしい。
 なにせ僕は目の前にあることを1つ1つ消化するので精一杯。脚本を作っている時は画をどうしようなんて何も考えてないし、撮影している時は画のことしか考えていない。だから撮り終わってから「あー!」と音で困ったりする。
 でも逆に最後の仕上げで音に助けてもらうことも多い。だから音楽や音を付ける「ダビング」の作業はすごく楽しい。音のことを考えていなかった分、音が付くことで新鮮な驚きがある。しかも音楽は専門の人がいるので、自分でやらなくていい。他人がやってくれる事というのは楽しいモノ(笑)。
【Hot Link !!】



清水節さん(編集者/映画ライター)の
『ジャズ・シンガー』の話
image
 1920年代にレコード録音方式の「バイタフォン」で映画に音が付くようになった。その最初の映画がアル・ジョルスン主演の『ドン・ファン』。でも同期のレベルや質的な問題があって、この作品が「最初のトーキー」と呼ばれることはない。
 その後、そのアル・ジョルスンをモデルにした小説が売れ、ブロードウェイで舞台化したら大ヒット。それをワーナー兄弟の三男が見て映画化権を買い、後に20世紀フォックスを立ち上げることになるダリル・F・ザナックの発案でトーキー映画化されることになった。
 そこで主人公のモデルとなっていたアル・ジョルスンを主役に据えて映画化したのが『ジャズ・シンガー』。そして、この映画も音は歌だけ……だったはずが、最初の曲「Dirty Hands! Dirty Face!」の撮影で、アル・ジョルスンはノリすぎて間奏の時に「お楽しみはこれからだぜ!」とアドリブのセリフを言ってしまう。これが「映画史上初のセリフ」とされている。
 この映画が公開されると、観客はアル・ジョルスンのセリフにやんやの喝采を浴びせたとか。こうして『ジャズ・シンガー』は映画史にその名を残す作品になった。
【Hot Link !!】



中村淳さん(録音技師)の
『ダビング』の話
image
 今や映画のダビング(録音)は「Pro Tools(プロツールス)」というソフトを使って行うのが業界標準。ハリウッドのワーナーのスタジオを見てきたら『硫黄島』のダビングもPro Toolsでやっていた。
 だから現場でもハードディスクかメモリに録音する。もはやテープは使わない。下手をするとノートパソコンを持っていって、そこに直接録音したり。そうするとその場で軽い処理もできる。撮った音は帰ったら違うハードディスクにコピーしておき、CDやDVDに焼いて編集部に渡す。最後までデジタルで行うので、映画の音はもう完全にデジタルに移行している。
 映画作りの現場がそんな感じなので、映画がデジタルへ完全に以降する日もそう遠くないと思う。アメリカでは予告編をデジタルな映写機で投影している映画館もずいぶん多いらしい。それでもデータ自体はネットワーク配信じゃなくて、モノを物理的に送っているらしいけど(笑)。
 デジタルのメリットはいろんな調整が可能なこと。特にノイズを消すのはお手の物。持続音を抜いたり、単発のノイズを抜いたり、自由自在にできる。波形を見ながら調整するので、お絵かきみたいな作をしている。
【Hot Link !!】



服部隆之さん(作曲家)の
『映画音楽』の話
image
 ドラマと映画では音楽の作り方が違う。映画は映像が出来上がっているところに、どういう音楽を当てはめるか綿密な打ち合わせの上で曲を作る。ドラマはあらかじめ20〜30曲くらい作っておいて、それを音響効果の人が自由に切り張りしていく。
 尺(しゃく)に合わせて曲を作る時は簡単な数学が基本。テンポ60なら1小節は4秒。だからテンポが120になれば2秒だし、テンポ80なら3秒。長年やっているのでその数字はすぐに思い浮かぶし、適当にやってもだいたいピッタリで収まる。
 監督が曲の要望を伝える時、8割方は抽象的で意味の分からないことを言う。極端な話「ゆっくりとした心温まる曲」と言いながら「テンポの速い激しい曲」を求める人もいる。そこは監督との付き合いの中でその人の語法を探るしかない。
 たとえば「甘い曲」と言われて甘い曲を作って怒られたり。これはその人の中で「甘い=ゆっくり」という図式になっているから。また音楽に詳しい監督が「○○みたいな感じ」と具体的な曲名を挙げるのもクセ者で、さすがにそのまんまはマズイだろうと思って工夫すると「そのまんまが良かった」と言われたり。そして、その読み間違いは地獄を見る。
【Hot Link !!】



戸田菜穂さん(女優)の
『アフレコ』の話
image
 NHKのドラマ『ジャッジ』で裁判官の妻の役を演じることになった。奄美大島が舞台のドラマで、西島秀俊さん演じる裁判官が、島に1人だけの裁判官として民事から刑事から離婚調停まで全部裁くことになるお話。
 さらに西島さんと私の夫婦は離婚の危機にあるのが、奄美大島に移り住むことで関係を修復していく。そして奄美大島は、そういう事にはもってこいの島だと思った。とにかく奄美大島はキレイで、食べ物が美味しい。移り住む人がたくさんいるというのもうなずける。
 ドラマや映画の撮影が終わってから、改めて音声だけ撮り直すのが「アフレコ」。最近はずいぶん少なくなったけど、この間も大阪弁の「そやね」が「さあね」に聞こえてしまうということで声だけ撮り直した。また船のシーンはエンジン音などあるので、今でもアフレコが多い。
 相手役のいないアフレコはなかなか難しい。「ハァ……」という溜息が1つ入っているかどうかで雰囲気は全然違うもので、やっぱり声は大事だなと痛感させられる。
 『ジャッジ』ではナレーションも担当したけど、その時は孤独さが身に染みた。やっぱりみんなが居て、セリフもキャッチボールしながらの方が楽しい。
【Hot Link !!】



■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'11" I'm Shooting High Ann Richards Capitol TOCJ-5416
18'28" This Can't Be Love The Pat Moran Quartet Bethlehem TOCJ-9620
30'49" Boum Blossom Dearie Verve POCJ-2653
42'52" The Sweetest Sounds Peggy Lee Capitol 7243 4 96729 2 5
48'06" You Oughta Be In Pictures Doris Day Hindsight HCD 200