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Bar月間 〜その1〜 2007年4月7日放送分 |
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バーの厚くて重い扉を開けて中に入ると、暗めの照明に葉巻の香り、静かに流れるジャズに時折アクセントをつけるシェイカーの音、そして棚に並んだたくさんのお酒に素敵なバーテンダー……まさに「大人だけの世界」がそこにはあります。
本日は、当店へいらっしゃったお客さまがグラスを傾けながら話して下さった、そんなバーの魅力にまつわるお話をご紹介させていただきます。 |
| ■ | 花崎一夫さん(『バーテンダーズマニュアル』著者)の
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ジンライムが日本で流行ったのは1975〜1976年頃。ジンにコーデュアル(甘口のライムジュース)を入れてオンザロックで飲む、というキャンペーンを洋酒メーカーがやって、日本中にジンライムが広まった。
でも本来、ジンライムは「ジンとライムを入れる」ものだから、もともとはイギリス生まれのギムレット。2つは同じモノと言っていい。 イギリスではギムレットにフレッシュ・ライムを使う。それに対してアメリカ人はチャンドラーが「ローズのライムジュースに限る」と書いたように、甘口のライムジュースを好む。 だから日本には、イギリス流のフレッシュ・ライムを使ったギムレットを出すお店と、アメリカ流のギムレットを出すお店がある。さらに言えば、コクを出すためにフレッシュ・ライムにシロップやライムジュースを足す「ミックス派」のお店もあるので、日本には3種類のギムレットがある。 たぶん、一番美味しいのはミックスする作り方。ヨーロッパ流の辛口ギムレットを何杯も飲んだら疲れてしまう。 ローズのライムジュースは果汁が入っているので、そのままではどんどん色が変わってしまう。そこでバーテンダーが冷蔵保存してたり、わざわざハワイや香港へ買いに行く人も少なくない。バーテンダーにとっては「憧れのジュース」らしい。 そういえばチャンドラーが「ローズのライムジュースに限る」と書いた小説『ロング・グッドバイ』が最近、村上春樹の新訳で出版されてベストセラーになっている。「お酒が登場する本」が売れているのは嬉しい。 バーは明るい内に入って、明るい内に帰るのが一番いい。僕は四谷に仕事場があるので、5時半に仕事が終わって、銀座に着くのが6時前。50分くらいで3杯飲んで、7時前には店を出る。すると今の時期、まだ外は明るい。これが最高の楽しみ。
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| ■ | 尾崎浩司さん(青山『Radio』店主)の
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「バー・ラジオ」の象徴になっている銀製のカクテル・グラスは私のオリジナル。実は昔、ジュエラーになろうと彫金の勉強をしていたことがあって、純銀の地金をたくさん持っていた。ジュエラーの道を諦めた時に、その地金の使い道を考えて、グラスをデザインした。
銀の器の長所は、見た目の美しさとシャープでモダンな雰囲気、そして唇に触れた時の冷たさ。この冷たさが鋭さに変わり、ドライでシャープなマティーニによく合う。またグラスの形を膨らませて優しい線を出せば、甘いお酒にも合う。 銀座のバー『クール』の古川緑郎さんは、私がバーテンダーの中では一番仲良くしてもらった人。性格や表現の仕方も似ている部分があって、お互いに言葉がなくても分かりあえる気がした。 その古川さんは88歳の誕生日にお店を閉じて引退した。最後まで現役でシェーカーを振っていた人で、最後の日はお店の前に長い行列ができた。私はお店を閉める1週間くらい前に挨拶にうかがって、お別れの記念に「クール」のロゴ入りのグラスをいただいた。そのグラスは私の一番大事な宝物。 ちなみに私のお店の銀の器の場合、評判が良かったのでたくさん作って、販売もした。だから何軒か他のお店でも使ってもらっているし、記念品にはなりにくい。
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| ■ | 石原隆さん(テレビ番組制作会社)と高井一郎さん(フジテレビ)の
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【高井さん】
1人でお店に行って、カウンターに座って食べたり飲んでいる時に、マスターなりバーテンダーさんなりが話し相手になってくれる時は問題ない。でも、その人が他のお客さんのところに行ってしまって、1人ぼっちになってしまったら、もう僕にはどうしていいかわからない。 たとえばレストランに1人のお客さんがいたとする。普通、その隣の席ではカップルか誰か、他のお客さんが話をしているはず。すると1人で来ているお客さんに話が全部聞こえてしまうカップルも良い気分はしないし、そう思われているだろうと気を遣ってしまう1人の客も気まずい思いをするんじゃないかと。 【石原さん】 バーが「バー」と呼ばれているのは、カウンターが「bar」だから。フランスでは「Zinc(ザンク)」と呼ばれていて、これは「亜鉛」というカウンターの材質に由来している。そんな風に、カウンターはお店の総称になるくらい重要なもの。 そのカウンターのあるお店は、1人で行っても大丈夫なお店。男2人の時に、テーブルで向かい合うのはけっこう辛いけど、これもカウンターなら大丈夫。ところがそのカウンターのあるお店が意外に少なくて、以前は仕事絡みでそうしなきゃいけない時は、お寿司、天ぷら、焼き鳥などの和食系しか選択肢がなかった。 欧米のレストランは基本的に「男と女」のためにあるので、カウンターのある店は非常に少ない。そこで最近流行りのスペイン・バルなどはありがたい存在。「今日は男2人だけど洋食を食べてワインを飲みたい」なんて時に重宝している。
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| ■ | 城アラキさん(コミック『バーテンダー』原作者)の
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「One For The Road」という言葉が好き。「帰る時に飲む1杯」という意味で、それはすなわち「帰るための1軒」ということ。何人かで食事をして、2軒目のバーもみんなで楽しみ、最後に帰る前に「1軒だけ」と1人で寄りたくなるお店。それが自分にとって一番大事なバー。
誰かと飲みに行くと、多かれ少なかれ相手に気を遣わなければならない。20代の頃なら本音で語り合うのが美しい時代だけど、30〜40代になるとそうもいかない。そしてつい格好つけたことの1つも言ってみたり、言わなくても良い説教をしたりしてしまう。 そんな嫌な自分を1人になってもう一度見つめ直して、その澱(おり)みたいなものを店に置いて帰りたい。それが「帰る前に1軒だけ」というお店。そう思わせてくれるお店は、12時過ぎに1人で行けばバーテンダーがこちらの雰囲気を察してあまり話しかけてこない。そういう場があることがすごく幸せ。 それならお酒の味だとかお店の造りはどうでもいいのか……と言われると、ついこだわってしまうのが酒飲みという人種。照明、音楽、カウンターの大きさ、バーテンダーとの距離など、ついつい「もうちょっとこうだったら良いのに」なんて考えてしまう。 そういうバーを見つける時に一番いいのは、同世代のバーテンダーが育つ過程で一緒に常連になっていくこと。良い時も苦しい時も、全部知っている。もしかすると奥さんよりもよく分かっている。職業も会社も年齢も知らないけど、顔だけはよく知っていて、お互いに顔を見るだけで少し安心できる。もしそんな関係ができたら、すごく貴重だと思う。 一流のバーテンダーに話を聞くと「1週間の内に2回来てくれたお客さんは、5年経っても名前を覚えている」と言う。そんな話を聞くと、バーのサービスは必ずしもお酒だけじゃないと感じさせらる。
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| ■ | 太田和彦さん(グラフィックデザイナー)の
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日本のバーは神戸と横浜が発祥。どちらも港町で、船員相手のバーが今でもたくさんある。
関東だったらバーが一番充実しているのは宇都宮。店も多いし、日本でもっともバーの水準が高い街でもある。僕が行く『シャモニー』というバーでその理由を聞いてみたけど「よくわからない」とのことだった。良いバーに行きたければ宇都宮に行くといい。 東京だったら、やっぱり銀座が断トツ。おそらく銀座のバーは、技術力が世界でもNo.1だろう。 銀座にいいバーは山のようにあるけど、新しいお店を挙げれば『FOUR SEASONS』。夫婦でやっているお店で、ご主人は同じ銀座の『オーパ』にいた人で、奥さまは帯広でバーをやっていた人。 『FOUR SEASONS』には「オペラ」というオリジナルカクテルがオススメ。大ぶりでワインレッドが鮮やかなカクテルで、それこそオペラのアリアが聞こえてきそうなカクテル。たしかベースはブランデーだったと思う。甘口で「そろそろ終わりかな」という時に向いている。 銀座といえば『テンダー』の上田さんを挙げないわけにはいかない。上田さんは世界一の名バーテンダーで、ニューヨークのバーで向こうの人の度肝を抜いたハード・シェイクで知られている。 上田さんは氷1つにもすごくこだわっていて、特注の氷を自分の家で1週間くらい締めてから使う。そうすると触っても手が濡れない氷になる。上田さんはその氷を包丁で切って使っている。
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■ 放送曲目リスト |
| Time | Title | Artist | Label | Number |
|---|---|---|---|---|
| 9'09" | Heart | Peggy Lee | Rhino | R2 72239 |
| 22'07" | Marie | Vic Damone | Capitol | CDP 7 98477 2 |
| 32'10" | Take A Chance On Me | Patti Page | Mercury | UCCM-9037 |
| 39'39" | One For My Baby | Frank Sinatra | Capitol | CDP 0777 7 80326 2 5 |
| 47'34" | As Long As I Live | Mark Murphy | Capitol | CDP 7243 8 33147 2 0 |