『野生の証明』の撮影期間中は、中学校を53日間休んだ。撮影が終わって学校に戻り、その最初の日に「天気図を描く」という授業があったんだけど、鉛筆を持ったまま何もできなかったのを今でもハッキリと覚えている。そんなことがあって「もう学校は休まない」と決めた。
その後、高校へ進み、仕事も続けたけど、学校は絶対に休まなかった。撮影は基本的に夏休みや春休みの間だけにしてもらい、もしそこからこぼれてしまった時は、夕方4時くらいから朝7時の間に撮影。そして現場から学校へ直行していた。
そんな状態で学校へ行っても、もちろん「居るだけ」。それでも高校の先生は「とにかく休むな、仕事がキツければ学校へ来て寝ろ」と言ってくれた。そして「休んだ時にクラスメイトが“どうしたんだろう?病気かな?”と心配してくれるくらいじゃないと、本当に学生生活を送っているとは言えない」と教えてくれた。NHKの数学講座もやったほどの先生だったけど、すごく大事なことを教えてくれた先生だった。
そうやって毎日学校へ行ったら、一度もいじめられたことがないくらい、クラスメイトのみんなが守ってくれた。下町の学校で、男の子は制服の裏側に虎の刺繍があったりしたけど、みんな「勉強よりも下町のお祭りの方が大好き!」みたいな気の良い人ばかりだった。先生たちも一見ちょっと不良っぽい、一歩間違えばそっちに進んで行きそうな子ほど可愛がり、すごく褒めて育てていた。
私は学校に居たら、どこにでもいる普通の子だった。でも仕事の上ではブロマイドの売上1位になるくらいの有名人。だから学校の周りに人がいっぱい来るような状況には、みんなギャップを感じていたと思う。これが学校でも光り輝くスターだったら、また話は違っていたのだろうけれど。
学校へ来た人たちの中には、塀に落書きをしていく人もいて、ある日、通用門に私を中傷するような落書きがあった。そこを授業の始まりの時に通って、戻る時に「あの落書きをまた見るのか」と嫌な気分になっていたら、誰がやってくれたのかわからないけど、その落書きだけが消えていや。そんな風にして私を守ってくれた高校のみんなに対しては「感謝」の気持ちしかない。