SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2007年1月20日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「○○巡り」

image

 旅にもいろいろな形がありますが、凝り性の人が行き着く先が「○○巡り」と呼ばれるタイプの旅です。その達成には情熱と信念が必要ですが、困難であればあるほど燃えるのがマニア心というモノのようです。
 そこで本日は、当店のお客様の中から、そんな「○○巡り」の旅に夢中になっていらっしゃる皆さんのお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。皆さん、心から旅を楽しんでいらっしゃる雰囲気がうかがえるお話ですよ。


image
横山良一さん(写真家)の

『お遍路巡り』の話

 お遍路とは弘法大師が若い頃にした四国一周の修行の足跡を辿ること。この四国遍路は円環になっているので、始まりも終わりもない。一応、お寺には1番から88番までの番号が付いているけど、88番で終わりではない。中には100回以上回っている人もいて、20〜30回なんてザラにいる。まさに人生そのもの。
 四国お遍路は1周1200km。1日30km歩くと40日で終わる計算。最初の内は1日10kmがせいぜいだけど、不思議なモノで続けている内に少しずつ増えていく。
 最近は途中まで歩いて、一度帰って、また次の機会に続きを……というやり方が主流になってきている。以前はそのやり方じゃダメと言われていたので、定年退職した人や社会からドロップアウトした人じゃないとできなかった。それが「区切っても良いんじゃないか」という風潮になってきて、3〜4日の休みなどを利用して歩く人が増えてきて、もの凄く人気が出てきた。
 四国遍路が人気なのは、それが日本人の旅の原点なのだと思う。すべての日本人が心の裏側に持っている小さな世界を、人生で一度見てみたいと思ってしまうのでは。
 お遍路さんは白装束を着るのが基本で、昔はそうじゃなきゃいけなかったけど、一時期はジャージなどスポーツの格好で歩く人が増えた。ただここ数年は、逆に正統な衣装の方が増えている。上から下までバッチリ正統な格好をして足袋まで履いている女の子に話を聞いてみたら、そうすることでが変身願望を遂げられるというか、非日常的世界を楽しめるのだとか。これが日常の格好だと「普通の旅行」になってしまう。
 もう1つ、正統なお遍路さんの格好をしていると、地元の人たちが「お遍路さんだ」ということを認識してくれる。そうすれば警戒心もなくなるし、すごく愛情を注いでくれる。途中、人の家の庭のような場所を通ったりするので、お遍路さんの格好をしていれば縁側でお茶やお菓子を振る舞ってくれたりもする。駅で寝ていても通報されなかったり、もちろん宗教的な意味もあるけど、実用的な意味も大きい。
 お遍路さんはけっこうお金が掛かる。宿に泊まったり、途中で水分を補給したり、ざっと1日1万円と考えて良い。ということは、50日かけて歩くと50万円。それでも若い人がけっこう歩いているので「お金持ちなのかな?」と思ったら、若い人たちは野宿していた。お堂とかお寺の軒下とか、けっこう泊まれるところがあるらしい。
 遍路宿が1軒しかないような場所だと、満室になってしまうこともけっこう多い。だからその日の朝くらいまでには予約を入れる。そして大きな街に着くと、気分を変えたくてついシティホテルに泊まってしまう。そして私服に着替えて、ちょっと飲みに行ったり。実は空海の真言宗はお酒OKなので、宿でもみんな飲んでいたりする。「このビールが楽しみで」と歩いている人も多い。

【Hot Link !!】





image
渡部潤一さん(国立天文台)の

『世界日食巡り』の話

 2009年7月には日本近海で皆既日食が見られる。皆既帯というのは非常に幅が狭くて数十kmしかない。この時は太平洋上を小笠原沖から中国大陸に伸びる形になるので、おそらく船がたくさん出て、皆既日食帯の中で晴れそうな場所へ行って、船の上から皆既日食を眺めるという人が多いのでは。
 皆既日食は世界中から10万人規模の人が集まるイベント。特に日本近海というのは集まりやすい場所なので、大勢の人が来ると思う。日食は「次はアフリカで起こる」「その次はヨーロッパ」など、あらかじめ予測できるので、毎回、各国から人々が集まっている。
 去年はトルコ・エジプト・リビアを通った日食があったけど、エジプトでは「日食村」ができたほどだった。砂漠のど真ん中に大勢の人たちが集まってきて、みんなテントを張って日食を待つ。そんな「村」が点々と見受けられた。
 そんな人たちがたくさんいるくらい、日食という現象は感動的。一度見ると、どうしてもその感動をまた味わいたくなる。それで「次の日食」「また次の日食」とリピートする人が多くて、我々はそれを「日食病」と呼んでいるくらい。
 日本の近くで皆既日食が起きるのは非常に珍しく、2009年の日食は前世紀から予約が入っているらしい。10年前に調査隊が「10年後の部屋を押さえたい」と言ったら笑われた、という話も聞いている。でも、もう予約は入っているはず。
 日食はそれくらい魅力的な現象なので、宿もあっという間に埋まってしまう。たとえばヨーロッパで日食が起こるとなると、何年か前にデポジットを払ってまで押さえる人もいる。ところがその日が近づくにつれ、宿の方も「こんなにお客さんが来るのか」ということがわかり、最初の約束を文書化していないと、どんどん値上げされてしまう……と旅行会社の人に聞かされた。
 私は今まで5回の日食を見てきたけど、少ない方だと思う。10回20回という人は大勢いる。私が見てきたのはメキシコ・ハワイ、小笠原沖、モンゴル、ブルガリア、昨年のエジプト。そして5回行って3勝2敗。でも20回行って全勝という人もいる。あらかじめ晴天率などを調べておくのが重要らしい。
 皆既日食以外の部分日食や金環日食は、太陽の表面が一部でも出ているので、直接見たり望遠鏡で見たりしては絶対にダメ。再生しない網膜がやられてしまうので、非常に危険。ガリレオはまだそれを知らなかったので、それで目をやられてしまった。そこで部分日食を観測するときは「日食グラス」のような減光するようなグラスを使って見る。日食グラスはサングラスよりも濃くて、有害な赤外線もカットするような特殊な作りになっている。つまり普通のサングラスでは危険だし、下敷きもダメ。かなり特殊なモノを使う必要がある。
 皆既日食は長くて6〜7分。短ければ数十秒。その瞬間は大歓声が上がる。そして写真を撮ったりスケッチをしたり眺めたりして、最後の「ダイヤモンドリング」でまた大きな歓声と溜息が聞こえる。
 初めて見た人は必ず泣く。特に女性はあまりの美しさに感動の涙を流す。私も見る前は「何回も見たって同じじゃないか」と思っていたけど、1回見たら見事に日食病に掛かってしまった。世の中にはいろんな自然現象があるけど、あれほど自然への畏敬を感じる現象はないと思う。

【Hot Link !!】





image
松井信幸さん(脚本家)の

『駅スタンプ巡り』の話

 鉄道に関する趣味の収集品は色々あって、切符(入場券)、駅弁の包み紙、それから一番多いのが写真。とにかくいろいろあるけど、どれもお金が掛かるのが難点で、その点「駅スタンプ」は誰でも無料なのがありがたい。
 僕が駅スタンプを集め始めたのは中学2年の時だから、もう30年くらい続けていることになる。その間に集めたスタンプは約4000個。「ステーション・スタンプ」というマニアのサイトの常連さんに話を聞いてみたら、当時集めていた3000個のスタンプは「押し鉄としては中間管理職レベル」なのだとか。
 ちなみにその「ステーション・スタンプ」の管理人さんは、日本に置かれたスタンプならほとんど持っている、というレベル。その人ぐらいになると、完璧な印影を求めて1駅で何十回もスタンプを押すらしい。
 完璧な印影を求めると、押す前の「儀式」が重要になる。スタンプはホコリがたくさん舞っているような場所に置かれていたりするので、かなり汚れていることが多い。それを古い歯ブラシで掃除して、ウェットティッシュでキレイにインクを拭う。そして「マイ・スタンプ台」を使ってスタンプを押す。
 スタンプ台には「基本3色」があって、それは「赤」「黒」「紫」の3色。それにプラスして「緑」や「藍色」や「朱色」などを用意して持っていく。しかもスタンプ台は買ったばかりだとベタベタして滲んでしまうので、ドライヤーで乾かして常にベストの状態をキープして、心ゆくまでスタンプを押す。
 もちろん迷惑にならないように、他に押したい人がいれば「先にどうぞ」と譲るのは基本。鉄道の中で「スタンプ」はサービスの部分なので、実際に旅をしている人や駅の人たちの迷惑になってしまわないよう、ちゃんとわきまえないと。そしてちゃんとそういうコミュニケーションを駅員さんと取っていれば、時には引き出しの奥の方から「こんな古いのもあるんだけど……」なんて得難い経験をさせてもらえることもある。
 僕がこの趣味を楽しむ半分は、計画を立てるところにある。計画を立てた時点で自分としては満足している部分があって、むしろ実際に出かける日の朝は始発に乗るために早起きするのが苦痛だったりする。しかもスケジュールはかなりタイトで「誰だ?!こんな計画を立てたのは?」と言いたくなる。

【Hot Link !!】





image
郡司勇さん(温泉旅行家)の

『温泉巡り』の話

 本格的に「温泉を巡ろうかな」と思ったのは、300カ所くらい温泉を巡ってからだった。それまでは全国を広く浅く回っていたので、今までに行った温泉を書き並べていったらそれくらいだった。そして597カ所目の時に『TVチャンピオン』で優勝。今は4380カ所になった。
 『TVチャンピオン』に出る前は、1日に1〜2カ所の温泉を回って泊まってくる程度だった。でもそれではなかなか数が増えないので、『TVチャンピオン』に出てからは目を三角にして回るようになった。1日の最高記録では28カ所ということもある。でもそんなに入ると記憶が薄くなってしまうので、最近は1日10カ所くらいにしている。
 温泉に入るとは言っても、泉質や色、味、匂いなど、温泉の個性がわかれば良いので、ほとんど浸からずに出てしまう。そこのお湯がわかれば、気持ちはもう次の温泉に行ってしまう。
 今日の朝も箱根の温泉へ行って来たばかりで、今はその帰り道。今回は両親も一緒だったので、珍しく1カ所だけで、好きな宿を堪能してきた。自噴で硫黄泉の出ている「芦の湯」という場所で、ここは東京近郊ではオススメ。
 温泉巡りの醍醐味は、自分の好きな泉質や出会ったり、変わった個性を感じる時にある。たとえば体に泡がバーッと付いたり、匂いが非常に変わっていたり、紅茶のような色でキレイだったり、そういう個性を感じると嬉しくなる。ちなみに私が好きな泉質は「重炭酸土類泉」。析出物と言って、湯の花がこびりついているような浴槽になっている泉質が好き。
 「オススメの温泉は?」と聞かれたら「別府と万座」と答えている。たとえば別府は、全国27000カ所の源泉の内、実に2800カ所が集中している。だからいろんな泉質があって、たとえばカクテル「ブルーハワイ」のような色の温泉もあったりする。これは別府の「いちのいで会館」と「神和苑(かんなわえん)」で体験できる。
 万座は通年行ける温泉としては日本でもっとも標高が高い。だからクマザサと雲の上の露天風呂で、高原の雰囲気を満喫できる。それから硫黄分が日本一濃い温泉でもあるので、匂いが強烈で、色も真っ白。皮膚病にはすごく良い。

【Hot Link !!】





image
夏木陽介さん(俳優)の

『パリ・ダカール・ラリー』の話

 初めてパリ・ダカール・ラリーに参加したのは1985年だった。当時、あのレースは「ふるいにかけるレース」で、ダメな人はどんどん落とされていき、最後に早い者だけが生き残っていた。「1分遅れると何点減点」みたいなペナルティがすごく多くて、たしか40ポイントなくなるとリタイア、みたいなルールだったと思う。
 そしてアウトになるとゼッケンに×印を付けられて、その後は競走用の車が走るコースを走ってはいけない、という規則になっていた。だから我々が参加する場合は「もしここでリタイアしたらこの国を抜けてヨーロッパに帰る」みたいな近隣諸国のビザも全部用意する必要があった。ちなみにレースで通過する8カ国はすべて元フランス領。だからフランス人はまったくビザがいらないけど、それ以外の国の人間は全部ビザを用意しなければいけなかった。その数、実に25カ国のビザが必要だった。
 さらに大変なのが予防注射。行く前に11本の予防注射を打たなければいけなかった。予防注射をして、25カ国のビザを取って、それでもまだスタート3日くらい前の予選が待っている。これはプジョーのテストコースに水をまいてグチャグチャにして、そこで競技会を開き、スタート順を決めるというもの。この予備選でリタイアしてしまう人も少なくなかった。
 そんなハードルを乗り越えて、パリからスタートして、まずはニースを目指す。レースには「スペシャル・ステージ」と「リエゾン」の2つ区間があって、パリからニースまではリエゾン区間。たとえばパリからマルセイユまでの1200kmを15時間で走れば良い、みたいなことを決められている。ただし高速道路は使えない。しかもコース上にはオービスがあって、スピード違反で2回捕まると失格。その代わりに信号は全部お巡りさんが止めてくれるので全部青信号になっている。とりあえず、ここまででリタイアする人はほとんどいない。
 そしてアフリカへ渡り、初挑戦の年はアルジェリアの首都アルジェからレースが再スタートした。1日に走る距離は350〜1200km。「今日は350kmだから大したことないな」と思ったら、手の平の大きさの石ころばかりの場所だったり、砂漠に土漠、とにかく大変だった。むしろ1200kmの方が楽なことさえあった。コースには必ずチェックポイントがあって、その場所を探しながら進むんだけど、このチェックポイントを探すのも大変だった。
 アフリカを走るのは本当に大変で、10日走っても20日走っても砂漠しかない。しかも当時はGPSもなかったので、主催者から渡される簡単な地図とメーターだけが頼り。その主催者の指示も「スタート地点から東南に300km走るとドラム缶が落ちているので、そこから南西に200km走れば今日のゴールです」なんて程度だったりする。コースやチェックポイントを探してグルグル走り回るなんて日常茶飯事だった。
 ちなみにグルグル走り続けているのは、車を止められないから。止めると砂に埋まってしまう。だから常に走り続けながら方向を探さなければいけない。それでさらに方向を見失ってしまうこともある。そんな困難を全部含めて「パリダカ」というレースになっている。

【Hot Link !!】






■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
10'31" Around The World Kay Starr Jasmine JAS CD 307
20'10" New Sun In The Sky John Pizzarelli Telarc UCCT 1111
31'31" Love Is Just Around The Corner Four Freshmen Capitol TOCJ-5321
40'56" Relax Matt Dennis RCA BVCJ-7473
48'17" Great Scot June Christy Capitol 7243 5 35209 2 2


 Back