SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年12月16日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「世界に誇れる日本の技術」

image

 普段の生活であまり意識することはありませんが、日本は世界でも有数の工業大国なんですよね。目に見えるところでも見えないところでも、様々な日本人による「技術」が活かされています。
 本日はそんな「日本の技術」について語って下さった当店のお客さまのお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。世界の注目を集める技術のお話は、とても興味深いものですよ。


image
山海嘉之さん(筑波大学大学院教授)の

『ロボットスーツ』の話

 私が今、精力的に研究しているのは「ロボットスーツ」。これは「人間とロボットが一体化して動いていく」というシステム。自分が体を動かそうとすると、装着しているロボットが自分の筋肉の代わりに動いてくれる。
 人間が体を動かそうとすると、脳から筋肉に向かって、運動神経を伝わって「体を動かしなさい」という指令が届き、その結果として筋肉が動く。実はその際、非常に微弱な生体電子信号が皮膚の表面に漏れだしてくる。それを取りだして、解析して、処理をして、人間が動くよりも先にロボットを動かす。
 この「人間よりもロボットが先」というのが重要で、もしロボットの方が遅かったら、どうしても人間がロボットに足を引っ張られる形になってしまう。「良いアシスタントは先回りする」というのは、人間と一緒。
 ロボットそのものにセンサーを付けて、人間の動きを検知してから動くという方法では、どこまで行っても「人間→ロボット」という順番は変わらない。それを「ロボット→人間」という順番にできたら、アシスタントとしてのロボットに大きな価値が生まれる。
 これが実現すれば、重作業も軽々とできるようになる。また少子高齢化が進む中、労働現場で若い人が減っても、もう若くない人たちが「若い者にはまだまだ負けんぞ」と頑張れるようにもなる。さらに介護が必要な高齢者の場合、立ったり歩いたりなどの日常生活を支援することで、リハビリの効果も見込める。
 ロボットスーツの場合、「人間の動きをアシストする」という機能と同時に「ロボットがプログラムに従って自動的に動く」という機能も併せ持つ。これを「ハイブリッド・アシスティブ・リム」と呼んでいる。
 単なるアシストスーツでもないし、単なるロボットでもない。両方の機能を併せ持つ新しいジャンルの機械がロボットスーツ。

【Hot Link !!】





image
中島一浩さん(キヤノン)の

『インクジェット・プリンター』の話

 コンピューター、特にCPUやメモリなど、デジタルな素子は「作れば作るほど安くなる」もの。だから人件費も安くて資金もそこそこある韓国や台湾が強い。それに対して、日本はどうしても人件費が高い。そこで日本がどうやって生き残るかを考えると、デジタルの裏にあるドロドロとしたアナログの世界が向いている。
 たとえばデジカメ。今、世界中のデジカメのほとんどが日本製になっている。本来、デジカメの心臓部とも言えるCCDやCMOSセンサー、そして記録するメディアなどは「コンピューター」の類なので、海外の方が強いはず。ところがデジカメは「レンズ」が非常に難しい。あの小さいボディで何倍ものズームを実現する小ささ、何百万という画素で撮影してもクッキリ写るような精度、この2つがレンズに求められる。こういう技術は海外のメーカーではそう簡単にマネを出来るものではない。
 私の専門の「インクジェット・プリンター」も同じ。インクジェットは紙に小さなインクの粒を吹き付けていくことで印刷していく。プリンターの中で紙が縦に動きながら、プリントヘッドが左右に動きながら1個1個の粒を打っていく。これが非常に高度なアナログ技術。
 たとえばキヤノンのプリンターなら、「L版」と呼ばれる普通のサイズの写真を18秒でプリントする。そしてその写真には、億のオーダーでインクの粒が吹き付けられている。そのインクの粒を吹き付けるためのノズルは、キヤノンの一番良いプリンター(6〜7万円程度)で6,144個。このノズル1つ1つから1秒間で約2万4千個のインクの粒を飛ばせる。しかも霧吹きのようにランダムに飛ばすわけにはいかないので、1つ1つのインクの粒を飛ばしたり飛ばさなかったり、全部コンピューターで制御する。
 やっている自分たちが「このプリンターが2万円って安すぎないか?!」と思ってしまうくらい、インクジェット・プリンターはスゴイ技術で作られている。

【Hot Link !!】





image
石川真禧照さん(自動車評論家)の

『ハイブリッドカー』の話

 欧米の自動車メーカーから注目を集めているのが日本の「ハイブリッドカー」技術。GM、ベンツ、BMWなど、外国メーカー連合vs日本みたいな構図になりつつある。でも技術はそんなに簡単にマネできるものではない。日本ではトヨタが最初で、アメリカではホンダの方が早かったけど、そこから今までの技術の蓄積があるので、この2社の持っているノウハウは相当なモノのはず。
 同じハイブリッドカーでも、トヨタとホンダでは考え方が違う。トヨタは「なるべくモーターを主にして走っていこう」と考えているので、時速50kmくらいまでモーターで走れるように作っている。そしてモーターで走るのにバッテリーから電気を取るので、そのアシストにエンジンを使おうとする。片やホンダは、あくまでエンジンがメイン。できるだけ効率の良いエンジンを作り、それをモーターがアシストするという考え方。
 ハイブリッドカーは動力源がモーターからエンジンに切り替わったり、エンジンからモーターに切り替わったりする。そうやって動力源が切り替わっても、最終的には車軸からタイヤへと動力を伝えなければいけない。その切り替わりの時のショックを無くしてスムースに移行させるのが特に難しいらしい。
 巷では「ポルシェがハイブリッドカーの研究をしている」なんて噂もあるけど、実際にポルシェからハイブリッドカーが発売されるかどうかともかく、研究はしているはず。というのも「特許」の問題があるから。モーターショーなどで発表されているハイブリッドの実験車は、トヨタやホンダの技術者に話を聞くと「だいたい特許に引っ掛かるだろう」とのことだった。昔からやってる2社は、それだけいろんな部分の特許を押さえているのだろう。そして他のメーカーがハイブリッドカーを売り始めた時に、意地悪で「これはウチの特許だから」と言うことも可能だけど、あえてハイブリッドカーの普及のために目をつぶる部分もあるだろう……とのことだった。
 今までハイブリッドカーを黙殺してきた欧米のメーカーも、いよいよハイブリッドカーを作らざるをえないような状況になってきた。もしかしたらその内、欧米の一流自動車メーカーの車にも「トヨタ」や「ホンダ」のマークがどこかに付いているような時代が来るかもしれない。

【Hot Link !!】





image
岡野雅行さん(岡野工業)の

『痛くない注射針』の話

 痛くない注射針『ナノパス33』は、テルモ株式会社の大谷内という研究員が設計した。元が太くて、先が細くなっていて、本来なら構造的に液が出にくくなってしまうところを、流体力学に基づいて設計してのだとか。
 大谷内は設計図を持って、日本全国の金型屋、プレス屋、パイプ屋を100軒くらい回ったらしい。ところがどこでも「これは無理」「作れない」と断られ、「計画倒れか……」と諦めかけた。そしてある時、トヨタ自動車に勤めている同級生にその話をしたら、その同級生が「こういうのは岡野工業へ持っていけばできるから」と言ったらしい。
 それで2人が連れだって、ウチへやってきた。図面を見せられて「こういう注射針を作りたいんですが……」と言われて、すぐに「あ、あのノウハウを使えば出来るな」とピンと来た。だから「出来るよ」と即答したら、「本当ですか?!」と本人たちが目を白黒させていた。
 そのノウハウというのは、針を丸めて作る技術。そんな風に針を作る人なんて世界中どこにもいないし、元が太くて先が細いなんて針も世界中どこにもない。だからこの針は世界特許も文句なしで取れた。
 この針を作る技術のベースは、45年前に作った「鈴」にある。どこでも売っている鈴のように見えるけど、実はコレ、1枚の板から作っている。どこも付けたり貼ったりしていない。ヒモを通す穴さえそう。この鈴を作った経験があったから「痛くない注射針」が作れた。他の優秀な会社も、こういう雑貨をやった経験がなかったから作れなかったのだろう。
 ちなみにその鈴、45年前に発売元の会社の社長さんが特許を取って、それから20年で特許が切れた。ところが20年経ってもどこも真似が出来ず、結局作れなかった。これこそが本当の特許だと思う。東南アジアにはコピーを作るような会社がいっぱいあるけど、コピーさえもさせなかった。
 極端なことを言えば、痛くない注射針よりも鈴の方が難しかった。針はプレス機でどんどん加工していくモノだけど、鈴は1個1個加工しなければいけないから。だから自分がその鈴の金型を作って他に売れば儲かるのかもしれない。だけどその社長に義理があるから作らないと決めている。
 そのオヤジが死んだら考えてもいいけど、生きてる間は絶対に作らない。男にはそういう約束があるもの。

【Hot Link !!】





image
辻谷政久さん(辻谷工業)の

『砲丸』の話

 アトランタ五輪で1カ国の「砲丸」がメダルを独占したのは、オリンピック史上初めてのことだったとか。
 砲丸は選手が選ぶものだけど「契約会社のモノを使う」みたいな習慣はない。オリンピックの場合は競技場に5カ国の砲丸が並べられ、その中から選手が気に入った砲丸をその場で選ぶ。つまり選手が「砲丸投げのオリンピック」をやっている一方で、メーカーは「商品のオリンピック」をやっているようなもの。
 正直、アトランタでメダルを独占した時は「偶然かな」と思っていた。ところが次のシドニー五輪でも同じことが起こった。それで他のメーカーから「おかしいんじゃないか」と横槍が入った。
 というのも、ウチの砲丸は重心をシビアに調整しているだけじゃなくて、砲丸の表面に細かい筋を入れているから。それで選手が使いやすくなっている。この筋を入れる技術は他のメーカーにないし、そもそも汎用旋盤が他の国にはない。
 筋の間隔は手のひらの指紋を参考にした。指先の指紋は渦を巻いていて、その下の指紋は横に入っている。手のひらは縦横斜め。この指紋の入った手で砲丸を持った時に、どこかがフィットするように考えた。
 そこで仲間50人くらいに協力してもらって、手のひらの指紋を調べてみたところ、細かい指紋を持つ女性で1cmあたり14本、粗い指紋を持つ男性で8本だった。だから砲丸に入れる筋の数はその中間の10〜12本に決めた。深さ1/20mmの筋が、砲丸の表面全体にその間隔で彫り込まれている。
 2000年にシドニー五輪が行われた翌年、2001年の春にはアメリカのメーカーから「週給1万ドルで技術指導に来てくれないか」という話も来た。話を断ったら1ヶ月後に「週給を倍にするから来てくれないか」とも言われたけど、それも断った。
 そして迎えたアテネ五輪では、オリンピック委員会から「筋の入った砲丸は違反だから、筋を取るように」と通達が来た。それで表面を研磨して、とにかく重心を砲丸に真ん真ん中に来るように調整した砲丸を出した。
 実際に競技が始まったら、NHKのカメラマンが選手から「今年は日本製の砲丸は来てないのか?」と聞かれたんだとか。「今年からルールが変わったので、このツルツルの砲丸が日本製です」と答えたら、結局みんなそれを使っていた。

【Hot Link !!】






■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'50" I'm Falling In Love With Love Anita O'day Verve POCJ-1914
19'09" Harmony Steve Lawrence & Eydie Gorme Jasmine JASCD 600
32'19" It's A Wonderful World Peggy Lee Capitol 7243 9 54543 2 5
44'11" Day By Day Four Freshmen Capitol CDP 7 91397 2


 Back