SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年12月2日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「帽子」

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 最近はよっぽどお洒落に気を遣う方でも「帽子」を着こなす方はなかなかいらっしゃいません。やはり仕事用のスーツに帽子をかぶる習慣がなくなってしまったためでしょうか。
 だからこそ逆に、帽子の似合っているお客さまはとてもお洒落に見えます。お店に入ってきて帽子とコートを脱ぐ仕草は、なかなか絵になるものです。
 今日はそんな帽子をこよなく愛しているお客さまが教えて下さった帽子にまつわる様々なお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。皆さんもこれを機会に、帽子に挑戦してみてはいかがでしょうか?


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出石尚三さん(服飾評論家)の

『帽子のススメ』の話

 最初にかぶった帽子が似合う人は1人もいない。帽子というものは、かぶり続けることによって自分のものになる。そして自分の帽子になって、はじめて帽子は似合うようになる。そういった意味では、今の「インスタント時代」において、帽子はもっともインスタントではないモノとも言える。
 僕は「帽子は万年筆に似ている」とも言っている。やはり万年筆も買ったばかりの頃は書きにくい。それを書いて書いて書き込むと、やっと自分の手に馴染んでくる。それは紙をサンドペーパー代わりにして、自分の筆圧と角度で摩耗させていく作業。それでやっと書きやすくなる。帽子もまったく同じ。
 だから帽子屋に鏡を置く必要はない。帽子を買う時に鏡を見て「あ、似合わないからやめた」なんて言っているけど、そもそも似合うはずがない。「お前が好きだから、お前も俺を好きになってくれよ」という気持ちだけで買えばいい。その出会いは恋愛に似ている。抱きしめて、愛撫して、馴染んでくれば、帽子の方もかぶり手に惚れてくる。そこで相思相愛の関係が初めて生まれる。だから恋愛上手な人は帽子をかぶるのが上手い。
 帽子を買う時は、帽子の専門店が良い。帽子の専門店はプロだから、服を見てその人が選びそうな帽子がちゃんとわかる。だからお店に行く時は、ちゃんとそれなりの格好をしていくべき。スーツで帽子をかぶりたいと思っているのならスーツで、スポーツシャツに帽子をかぶりたいのならスポーツシャツを着て、ジーンズならジーンズで行く。
 帽子は髪を隠すもの。そして人類の歴史を振り返れば、帽子をかぶっている時代の方が、かぶっていない時代よりもはるかに長かった。これは髪に魅力があるから。女も男も、髪はセクシーなもの。それをあえて隠し、いざという時に脱いで見せるために帽子はある。
 帽子をかぶって格好良い人、たとえばハンフリー・ボガートなどは「あの帽子を脱いだらすごいだろうな」と思わせるから格好良い。男の髪はそんな魅力の塊。それは丸裸にしておくよりは、隠して想像力をかき立てた方が良い。
 女性も男性も、異性にモテようと思ったら絶対に帽子をかぶるべき。

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栗原亮さん(帽子専門店『override』)の

『いろいろな帽子』の話

 帽子のフリーサイズは女性で57.5cm、男性は58〜58.5cm。統計を取って「8割くらいの人が枠の範囲に入る」というサイズで決められている。この数字は身長もあまり関係がない。
 ただ、タレントさんなどにはサイズの小さい方も多い。たとえばウチでオーダーメイドして下さっている安室奈美恵さんは52〜53cmくらい。このサイズはまずどこにも売っていないので、ウチの工房でお作りしている。
 ウチは親子3代で帽子屋なので、僕も小さい時から帽子はかぶっていた。創業は85年前だから、実に大正時代。当時は中折れ帽がほとんどで、紳士はスーツに中折れ帽というのが世界的なスタンダードだった。
 昔の写真を見ると、ウチのおじいさんは動物園へ行く時もネクタイを締めて帽子をかぶっていた。これは別におじいさんが特別だったわけじゃなくて、周りの人も割とそんな感じ。家から出掛ける時はスーツに帽子をかぶるのが紳士の身だしなみだったらしい。
 今日かぶっている帽子は「ハンチング」という帽子。これはもともとイギリスの紳士が猟の時にかぶる、趣味のための帽子だった。猟の時にハットをかぶると邪魔になってしまう。そこで前のツバだけを残して、日差しの遮蔽はできるようにして、それ以外の邪魔な部分を省いている。
 キャスケットは「キャップ」と同じで「前ツバの帽子」という意味。ベースになっている考え方はハンチングと同じで、昔で言うとカジュアルな帽子に分類される。製法的に「8枚はぎ」「6枚はぎ」などと呼ばれる、扇状の素材の組み合わせで作られている。
 このキャスケットからベースボール・キャップが生まれた。だから昔はキャスケットをかぶってアメリカ人が野球をやっていた。でもそれでは邪魔だということでだんだん改良されてシンプルになっていき、今の形になった。
 野球の帽子のてっぺんに天ボタンがあるのはキャスケット時代の名残り。あれは飾りの意味と、縫製が集中する部分を隠す役割がある。さらに野球ではフライを捕ろうとすると太陽が眩しい。だからキャスケットよりもツバが長くなっている。
 最近売れている帽子は、時期的なものもあってニット帽。それから意外と中折れ帽も売れている。どうやらカジュアルに中折れ帽をかぶるのが流行っているらしい。それからベレー帽も今年の秋は品切れになるほど売れている。

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鈴木淑子さん(競馬パーソナリティ)の

『女性の帽子』の話

 最近は帽子をかぶっていないと「誰だかわからなかった」と言われてしまう。馬主の奥様に「そのお帽子はどちらで……?」と聞かれることも多い。そんな風に、馬主の奥様たちも帽子に興味を持っていただいて、GIの時もパドックもずいぶん華やかになった。
 私が帽子を買っているのは『銀座ボーグ』という老舗の夫人帽子専門店。そこで帽子をいろいろ見て買っている内にお店の方と親しくなって、ディスプレイ用に取り寄せた「日本人にはちょっと華やかすぎる帽子」なども「どう?」と勧められて、時にはお借りしたりもしている。
 ちゃんと数えたことはないけど、普段用のカジュアルな帽子も含めると、全部で200個くらいの帽子を持っている。それほどマメに管理しているわけではないので、ボーグさんの箱に何個も帽子を入れて、その箱を何段も重ねてしまっている。そのボーグさんの箱は黄色と黒のストライプなので、積み重なっていると某有名な会社の勝負服みたい。
 フランスやイギリスの競馬場では、女性にとって帽子は欠かせないアイテム。特にイギリスでは以前、帽子をかぶっていないとスタンドに入れてもらえなかったほど。そもそもエリザベス女王などロイヤル・ファミリーの女性にとって、帽子は欠かせないものだから、イギリスの貴族社会の影響が色濃いイギリスの競馬場では、200年前のダービーの写真を見ても皆さん帽子をかぶっている。
 私が帽子をかぶるようになったきっかけも、そういったイギリスやフランスの写真や映像を見て「素敵だなぁ」と思ったことだった。特に皆さん「ロイヤル・アスコット」という特別な開催の時には、1年前から「今度はどんな帽子をかぶりましょうか?」というくらい帽子に気を遣っている。
 ロイヤル・アスコットは男性なら20歳の男の子でも燕尾服にシルクハット。そして女性はみんな帽子をかぶっている。私が行ったロイヤル・アスコットはアグネスワールドが挑戦した時で、観客は7万人だった。だいたい皆さんカップルで来るので、3万5千人は女性。その3万5千個の帽子は壮観で、まるでお花畑みたいだった、
 そしてロイヤル・アスコットの日が雨だろうが風だろうが、暑かろうが寒かろうが、「私はロイヤル・アスコットにこれをかぶっていく」と決めた格好で行くのがいかにもイギリスらしい。「あなたそれじゃ寒いでしょう」と思うような格好でも堂々としていた。ブラウスと帽子のリボンが一緒だったりすごく工夫されていて、見ていて楽しかった。

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錦織篤さん(デサント/元100M背泳ぎ日本記録保持者)

『スイムキャップ』の話

 プールに入る時にスイムキャップをかぶるのは、衛生面の問題が一番大きい。また、メッシュ・タイプのスイムキャップだと頭が蒸れることはないけど、その代わりに水を通してしまうので、塩素の多いプールの水で髪が傷みやすい。そのため女性の場合はシリコン・キャップを選ぶことが多い。
 昔はメッシュが主流だったけど、僕が子供の頃にはもうシリコンが主流になっていた。そして10〜15年くらい前、僕が高校生だった頃にラテックスのゴムが出てきた。これは軽いのが特徴なんだけど、とにかく薄くて手入れが難しい。熱に弱くてすぐにくっついてしまうので、ベビーパウダーを塗りながら保管していた。
 そして今、最新のスイムキャップは、抵抗を少なくするために立体成型で作ったシリコンの製品。このスイムキャップが出始めたのが2000年くらいなので、本当にここ5〜6年の話で、試合でも主流になっている。
 立体成型なので、しまうときもペタッと1枚にはならず、上の部分を少し折って入れないと袋に入らない。頭の形に沿って立体的に作られているので、ヘルメットをイメージしてもらうとわかりやすいかも。
 大きな大会だと、出場チーム(国)ごとのオリジナル・キャップがあったりする。そのキャップには大会名や年号が入っていたりして「その年の代表チームの選手しか持っていない」みたいな記念になることも多い。
 そこでサッカーのユニフォーム交換みたいに、選手同士がスイム・キャップを交換する光景もよく見かける。さすがに水着の方を交換するわけにはいかないので。

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谷澤和彦さん(谷沢製作所)の

『ヘルメット』の話

 ヘルメットの素材はいろいろある。たとえば一部では金属のヘルメットも使われている。ただ、多くのヘルメットはFRPと呼ばれるガラス繊維で強化したプラスチックで作られている。あるいはポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンといった材料も使われる。
 ただ、いずれにせよ、ヘルメットという製品の用途上、世の中で使われている材料よりはかなり強度や耐候性は高い。やはり安いものを使うとすぐに割れてしまう。そして「ヘルメットが割れた」という状況は、もしヘルメットをかぶらずに普通の帽子をかぶっていたら、人間の頭が割れていたということ。そういう状況は世の中案外多い。
 さすがに「高いところからの転落」はヘルメットでなんとかなる領域ではないけど、たとえば「単なる転倒」でもけっこうな高さから頭が地面にぶつかることになる。それから「頭上からの飛来物」も怖い。ボールペン1個でも高いところから落とした場合、かなりの速度で落ちてくることになる。そういったことから頭を守るのがヘルメットの役割。
 ヘルメットの形は、戦後の成形技術の進歩によって大きく変わった。戦後すぐに流行したのは、進駐軍のヘルメットを模した「MP型」だった。その後、欧米で前にひさしの付いたヘルメットが流行したことで日本も追随し、大手ゼネコンなどは自社のカラーを出したヘルメットを作るようになっていった。
 その流行が一番顕著だったのはバブルの直前ぐらいだった。各社、ヘルメットの形、色、ちょっとした装飾など、さまざまな工夫を凝らしていた。会社のマークが変わったのでヘルメットも変える、なんてところがいくつもあったほど。
 今現在、最新のヘルメットは、とことん軽く作られている。「頭にヘルメットをかぶっている」という違和感があると、どうしても仕事の効率が落ちてしまう。そこで出来る限り軽く、そして頭にフィットするように設計されている。
 ヘルメットは、できればかぶりたくないもの。でも安全のためにはどうしても必要。だから我々メーカーは「かぶっていても何も感じなかった」という領域を目指して、まだまだ開発を続けていかなければならない。
 人の頭を安全に守りつつ、それでいて幸せにできるヘルメット。それが永遠の課題。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'16" Top Hat, White Tie, and Tails Ella Fitzgerald Verve 314 519 840-2
20'53" I'm Beginning To See The Light Mary Stallings Fantasy OJ CCD-1106-2
32'26" Fun Life Diahann Carroll Collectables COL-CD-6192
41'22" This Time The Dream's On Me Nancy Wilson Capitol Jazz 7243 5 97073 27
47'34" I've Heard That Song Before Eydie Gorme & Steve Lawrence MCA MCAD-22016


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