帽子のフリーサイズは女性で57.5cm、男性は58〜58.5cm。統計を取って「8割くらいの人が枠の範囲に入る」というサイズで決められている。この数字は身長もあまり関係がない。
ただ、タレントさんなどにはサイズの小さい方も多い。たとえばウチでオーダーメイドして下さっている安室奈美恵さんは52〜53cmくらい。このサイズはまずどこにも売っていないので、ウチの工房でお作りしている。
ウチは親子3代で帽子屋なので、僕も小さい時から帽子はかぶっていた。創業は85年前だから、実に大正時代。当時は中折れ帽がほとんどで、紳士はスーツに中折れ帽というのが世界的なスタンダードだった。
昔の写真を見ると、ウチのおじいさんは動物園へ行く時もネクタイを締めて帽子をかぶっていた。これは別におじいさんが特別だったわけじゃなくて、周りの人も割とそんな感じ。家から出掛ける時はスーツに帽子をかぶるのが紳士の身だしなみだったらしい。
今日かぶっている帽子は「ハンチング」という帽子。これはもともとイギリスの紳士が猟の時にかぶる、趣味のための帽子だった。猟の時にハットをかぶると邪魔になってしまう。そこで前のツバだけを残して、日差しの遮蔽はできるようにして、それ以外の邪魔な部分を省いている。
キャスケットは「キャップ」と同じで「前ツバの帽子」という意味。ベースになっている考え方はハンチングと同じで、昔で言うとカジュアルな帽子に分類される。製法的に「8枚はぎ」「6枚はぎ」などと呼ばれる、扇状の素材の組み合わせで作られている。
このキャスケットからベースボール・キャップが生まれた。だから昔はキャスケットをかぶってアメリカ人が野球をやっていた。でもそれでは邪魔だということでだんだん改良されてシンプルになっていき、今の形になった。
野球の帽子のてっぺんに天ボタンがあるのはキャスケット時代の名残り。あれは飾りの意味と、縫製が集中する部分を隠す役割がある。さらに野球ではフライを捕ろうとすると太陽が眩しい。だからキャスケットよりもツバが長くなっている。
最近売れている帽子は、時期的なものもあってニット帽。それから意外と中折れ帽も売れている。どうやらカジュアルに中折れ帽をかぶるのが流行っているらしい。それからベレー帽も今年の秋は品切れになるほど売れている。