お茶は医学上、大変注目されていた。動物実験や細胞レベルではいろんな良い効果が知られていた。僕の専門は人を対象とした研究で、いろんな食べ物や生活習慣がどう病気に関連するかを調べる「疫学」をやっていたので、お茶の研究をすることになった。
研究はまず「今、どれくらいお茶を飲んでいるか」を聞くところから始めた。大勢の人に緑茶、紅茶、ウーロン茶、それぞれをどれくらい飲んでいるかを聞いた上で、その後にどんな病気を発症したかを追跡調査をした。
それでわかったのが、紅茶やウーロン茶ではそれほど大きな違いは見られないけれど、緑茶を飲む回数によって結果がまったく変わってくるということ。これは4万人を対象に、最長11年を追跡した結果わかった。
もちろんその中には「まったく飲まない人」もいる。区分としては「1日1杯未満」「1〜2杯」「3〜4杯」「5杯以上」の4グループ。このグループ分けをして11年も追跡すると、ずいぶん違いが出た。
たとえばあらゆる死因を含めた「死亡の危険度」を較べると、1杯未満のグループを1とした場合、5杯以上のグループは男性0.88、女性0.77という割合になる。その原因が何なのかをさらに解析すると、心臓病や脳卒中などの循環器系の疾患は男性で0.87という割合だった。ところがガンは1.11。つまり緑茶は、循環器系には効果があるけど、ガンには効かないことがわかる。
女性の場合はさらに明快だった。5杯以上飲んでいる人なら循環器系の疾患で亡くなる割合が0.69、でもガンは1.0。傾向は同じでも男性よりもさらに顕著になる。
緑茶はダイエットに効くというデータもある。それから認知症にも効く。厳密に言えば、認知症の前に「認知障害」という状態がある。この認知障害の割合を緑茶は半減させる。
この緑茶の効果には世界が注目している。日本人は身近すぎて気付かないけど、世界中からものすごい注目を集めている。やはり植物には底知れない薬効があるのだろう。その中でも茶葉の中に含まれるポリフェノールが、とんでもない作用を持っていてもおかしくないと思う。
フランス人に心臓疾患が少ないのは、ワインのおかげだと言われている。それに較べて日本人は、喫煙率が高く、食塩摂取が多いために血圧も高く、健康診断の受診率も低い。それなのに世界一の長寿国。この矛盾はフランスどころの騒ぎじゃない。欧米の人たちはずっと「何か秘密があるはずだ」と、ずっと日本に注目していた。
ところがどんなに欧米で緑茶の動物実験をしても「飲んでいる人間のデータ」は緑茶が普及していないために集められない。それで「早く日本で集めてくれ」と言われ続け、ようやく私たちの研究データが出た。
世界一の長寿国の秘密の1つは「緑茶」にある可能性が高い。そう欧米諸国は睨んでいる。