今、欧米のオーディオ・ファンは、表へ出る時はiPodで、家では「ヴァイナル」なんだとか。ヴァイナルというのは「Vinyl(ビニール)」、つまりアナログのLPレコードのこと。
CDが生まれたのが1982年だったので、来年でちょうど25年。もう若い人には、かえってアナログのレコードの方が新しく見える。それでアナログが復活してきた。ジャズが好きな人なら、昔のディスクを今でも持っているし。
アナログのカートリッジは、今は高いものなら30万円なんてものもある。そのカートリッジを使っていたら、聴きながらうかうか寝ていられない。オーディオ・ファンが使うプレイヤーにはオートリフトアップ機能なんて付いてないから、最後に「プチッ、プチッ」となって、30万円のカートリッジを無駄遣いしてしまう。
アナログのレコードは良くできていて、溝の部分を1本にして伸ばすと約400m。両面で800mが僕らの青春だった。そしてダイヤモンドの針は、針を身長180cmの人にたとえると、レコードに下ろした時に、くるぶしまでしか溝に入らない。その小さな溝に、よく音楽が入っているものだと思う。
アナログとデジタルは、変わらないと言ってしまえば変わらない。その違いは、わからない人にはわからないから。ただ、美味しいモノを食べると、美味しくないモノがわかってくるような違いはある。
たとえばヴァイオリンには「フラジオレット」という弾き方がある。これは弦をギュッと押さえずに、倍音を出すところの弦だけ軽く押さえる弾き方。ギターでは「ハーモニクス」とも言う。この弾き方の音と、オーボエあるいはクラリネットの高い音が重なると、iPodなどでは音が混ざってしまう。これがオーディオのちゃんとした機械だと、「2つの音が重なっている」ということがわかる。
ただ、それでもモーツァルトであることには変わりはないわけで、それでも良いと言えば良い。お腹がいっぱいになるための食事か、美食か、という違い。
アナログの良さはふくよかさであったり、厚みであったり、スムーズさであったりする。デジタルは情報量が多いので、場合によっては神経質に聞こえることもあるかもしれない。
オーディオは科学技術に支えられているけど、その一方で趣味のもの。だから電気製品として特殊な部分がある。たとえば今の我々の生活に、真空管なんて使われていない。でもオーディオの世界で使われ続けているのは、音が独特だから。トランジスタに較べて歪み成分は多いけど、その歪みは音に艶や暖かみが乗るような成分だったりする。そして視覚的な効果もある。
これから団塊マーケットを狙っているところは、真空管とヴァイナルがオススメ。手間のかかるモノだからこそ可愛く感じる。まさに「あばたもえくぼ」。