SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年10月21日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「CM今昔」

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 15秒から30秒という短い時間で商品やサービスをアピールして、しかも見ている人を楽しませなければならないのがCMというモノ。元麻布という場所柄のせいか、当店にはCMの制作に携わっていらっしゃるお客さまがよくいらっしゃいますが、みなさんそのためにいろんな知恵を絞っていらっしゃるようです。
 そこで本日は当店のお客さまがグラスを片手に盛り上がっていた「CM」の制作にまつわる様々なお話を、ここで少しだけご紹介させていただきましょう。15秒の短いCMの裏側には、驚くほどいろんなドラマがあるようです。


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箭内道彦さん(広告制作会社『風とロック』代表)

『最近のCM』の話

 今年の初めにNHKの『トップランナー』という番組で「クリエイティブ合気道」という言葉を言った。合気道というのは「相手の力を軽くいなす」というイメージがある。クリエイティブもそうありたい、という意味の言葉。
 その番組を、どうもドラマ『サプリ』のプロデューサーが見ていたらしい。僕が言った「クリエイティブ合気道」という言葉を気に入って、「ドラマの中で使わせて欲しい」という電話が僕のところにかかってきた。
 ただそれだけのことなのに、わざわざクレジットで「コピー協力」という肩書きで名前を載せてくれた。ところが、それを見た人が「あ、番組の中に出てくるプランは箭内さんが考えた渾身のプランなんだ」と勘違いしている。いまさら訂正するのも面倒だし、ミーハー的に嬉しい気持ちもあるので、そのままにしてある。
 広告に限らず、良いモノが出来る時は、オーダーが明確。たとえば資生堂『uno』の広告の時は、資生堂の方に「若い人がたちが化粧品の広告に注目していないみたいなので、若い人が興味を持って広告を見てくれるようなことを考えてほしい」という明快なオーダーがあった。
 とはいえ、いろいろ試行錯誤があって、「いよいよ明日はプレゼン」という夜になって「数々の芸人がギネスに挑戦するCM」を思い付いた。そこまでには「日本中の双子を集めて、化粧品の使用前使用後を見せる」とか、いろんなことを考えた。
 今年流れていたCMの中で最大の発明は、はなわが「高いから買うなよ」と言っている『雪国もやし』だと思う。これこそが時代の変化だと衝撃を受けた。「買うな、高い」といって、何もフォローせずに終わってしまう。それでいて、今までの「安い、うまい」というCMよりも商品のことが気になる。実際は高いと言っても40円と50円くらいの違いしかないんだけど、その10円の違いは気持ち良く払える。誰が作ったのか知らないけど、あのCMは見事。

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切明浩志さん(『CM NOW』編集長)の

『テレビCM崩壊?』の話

 今、アメリカのジョセフ・ジャフェという人が書いた『テレビCM崩壊』という本が業界で話題になっている。広告代理店の下の本屋では売り上げ1位。銀座あたりでは平積みになっている。
 テレビはCM業界で絶大な力を持っていて、それが長い期間続いてきた。でも今、いろんなメディアが台頭してきて、マイナス期が始まろうとしている。プラスがあればマイナスがあるのが当然。『テレビCM崩壊』はそういう趣旨の本。
 今、CM女王と言えるのは、上戸彩ちゃんだと思う。CMの本数で決めるのかとか、露出で決めるのかとか、いろいろ考え方はあるけど、ウチの雑誌の人気で言えば彼女が断トツでNo.1。そして上戸彩ちゃんが20歳になって、その下の世代で誰がNo.1になるかの競争が激しい。長澤まさみちゃんもすごく元気に頑張っているけど、注目しているのはその下の世代。
 僕が『CM NOW』に関わってきた中で一番凄かったのは広末涼子さんだった。CMで出てきて、CMで輝いて、いろんなメディアに飛び出して、メジャーになっていく最も典型的なパターン。そして彼女が持つ天性の才能で、彼女が生活で得たいろんなモノが自然に画面に出ていた。タレントにとって、人間性は重要だと思う。それは言葉や理屈や数字じゃない。でもタレントさんと接していると、そのことを強く感じる。
 最近のCM業界では「バイラルCM」という言葉がよく聞かれる。これは『YouTube』に代表される、オンラインで見られる映像全体を指していて、ネット上の口コミで良い映像を広めていく、その中にCMも入っている、という趣旨。
 口コミで広がっていくから、広がる過程でどんな風に変化していくかは誰にも分からない。このバイラルCMがCMを変えるのではないかと言われている。『テレビCM崩壊』という本も1つのきっかけに、「なにか新しい動きを業界でもやっていかなければいけないんじゃないか」という風潮になっている。

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松下奈緒さん(女優/ピアニスト)の

『CMの収録』の話

 私はCMを「ショートムービー」として捉えている。だからドラマもCMも、仕事に臨む心構えは変わらない。
 CMの場合でも、ちゃんと気持ちの流れを作っておかないと、「ハイ!」と言われて3〜4秒の台詞を言うのはすごく難しい。シーンの順番通りに撮るわけでもないし、その辺の気持ちの作り方が大変。さすがに3〜4行の長台詞などはないから、台本を覚える手間は少ないけど。
 最近、初めて映画の仕事をしたけど、カメラの音に驚かされた。ものすごく大きな音を立てて回っているカメラに向かって笑顔を作るのが、慣れるまでは大変で。しかもカメラの向こう側にはもの凄い人数の人がいるし。
 この間は、ココアのCM収録でタイへ行ってきた。スタッフが全員タイの人で、もちろん監督もタイの人。通訳の人はいたけど、英語も通じないからディスカッションも大変だった。
 とにかくココアのCMだから、ココアが美味しそうに見えなければいけない。そこでココアを泡立たせてキレイに渦を巻かせるため、もの凄い機械が出てきたのにも驚かされた。
 さらに今回は、初めて自分の曲をタイアップ曲として使ってもらえることになり、その収録も体験した。今回は映像を見ながら「アテレコ」で収録したんだけど、「ここで切れるのか、もうちょっと先で切れた方が良いのか」という判断はすごく難しかった。初めて両方を体験したことで「あ、CMってこうやって出来ていくんだ」ということがわかった。

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大林宣彦さん(映画作家)の

『テレビCM黎明期』の話

 若い人が数えてくれたところによると、僕はCMを2000本撮ったらしい。話半分に聞いても1000本。それくらいは撮ってるかもしれない。ただ、僕は職業としてやったという記憶はまったくない。
 僕がCMを手掛けるようになったのは1950年代の終わり頃から。今はCMと言うと驚かれるけど、昔は「表現者はテーマを表現するもの」と考えられていたので、「商品を売るためにCMを作るなんて、創作でも芸術でもなんでもない」と言われていた。だから当時は、CMに監督なんてものは皆無だった。
 そこで当時のCMは、代理店の若いプロデューサーと、少し斜陽になりつつあった映画界で仕事にあぶれたカメラマンが、2人がかりで撮るものだった。当然、表玄関から入れる立場じゃなかった。日本でトップの代理店ですら建物を持ってなくて、高速道路の下に事務所を借りていた。
 そこで出会ったのが僕と同年配の人たちだった。そういう世界に疑心暗鬼で入ってきて、社会的な地位はまったくない。「監督をしてほしい」と思って頼みに行っても「俺は物売りじゃねぇ!」と断られてしまう。そこで「60秒のフィルムを作っている若者たちがいるらしい」と噂を聞いて、僕たちのところへやってきた。
 ちょっと会ってほしいということだったので面会したら、「実は私はコマーシャルというものをやっている人間で……」と怖ず怖ずと言う。僕が「はぁ……」と相づちを打つと、その人はパッと身を引く。あとで話を聞いたら「蹴飛ばされる!」と思ったらしい。そして「コマーシャルをやっていただけませんか?」とお願いされた。
 当然、僕の仲間たちはみんな若い芸術家たちだったので、引き受けるはずもなかった。ところが僕は物事に反対したことがない人間だったし、人のやらないことはやってみたくなる性格だったので、「そこにきっと未知の可能性があるんじゃないか」と考えた。
 なにしろ広告と言えば、新聞の間にペーパーが挟まっているという程度の時代。それを映像で、新しいメディアのテレビで、コマーシャルという広告が流れる。しかも自分が大好きなフィルムを回せるチャンス。「やりましょう」と言って引き受けることにした。
 当時のコマーシャルは基本的に60秒。長ければ3分、短くても30秒。というのも、今みたいなスポットCMではなく、番組提供が基本だったから。そして1分のCMの最後の5秒に商品が出ていれば、あとはご自由にどうぞ、という時代だった。
 だから、僕はその1950年代から1990年代までCMを手掛けたけれど、絵コンテを描いた回数は5度はないと思う。残っているのは2本だけ。それくらい「監督におまかせ」な時代だった。「大林さん、どんなの出来ますか?」と聞かれても「いやー、撮ってないので私もまだわかりません」なんて、大らかな時代だった。
 その代わりに「字コンテ」はしっかり作った。これは「CMの後書き」みたいなもので、こういう意味のCMですよと説明するもの。それをカメラマンや俳優さんに見せて、CMを撮っていた。

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大林宣彦さん(映画作家)の

『チャールズ・ブロンソン』の話

 チャールズ・ブロンソンのマネージャーに「男性コスメティックのCMに出演して欲しい」と言ったら、「悪い冗談だろう」と笑われた。「ウチには良い俳優がいっぱいいるから、わざわざブロンソンにしなくても」と言われたけど、「いや、彼が良いんだ」と言って引き受けてもらった。
 そのCMの撮影が、2時間長引いてしまった。あと3カットで終わるんだけど、時間は1時間しか残っていない。1カットにだいたい1時間かかるので、2時間オーバーする見込み。でも相手はハリウッド・スターなので、契約上、時間の延長は不可能だった。
 「時間がないから、あの辺で適当にアップを」ということも考えたけど、実はそのアップは、特殊なことをやろうと楽しみにしていた重要なカット。「それを撮らないのなら、今すぐ日本に帰してくれ」と芸術家肌なカメラマンも主張した。
 そうなると、もう監督がチャールズ・ブロンソンに直接お願いするしかない。「チャーリー、契約時間はあと1時間で終わるけれど、カメラマンがどうしてもあと1時間(さすがに2時間とは言えなかった)欲しいと言っているんだ」とお願いした。すると彼は腕時計を指でいじりながら「うーん、ちょっと待ってくれ」と言った。そして、どうやら夕食の約束をしていたらしい奥さんのジル・アイランドへ電話を掛け「すまん、良い仕事になりそうだから、彼らに1時間をプレゼントしようと思うんだ」と言って電話を切った。
 でもそれで問題が解決したわけじゃない。足りない時間は2時間で、もらった時間は1時間。そこでスタジオへ戻って、スタッフにこう言った。「ブロンソンにお願いしたら、彼は時計の針を1時間巻き戻して“君の時計は何時だい?僕の時計はまだ○時だよ”と言ってくれた」と。
 これはもちろん僕の創作なんだけど、みんな涙を流さんばかりに感動した。なにせ当時、ハリウッドのスターがただで時間をくれるなんて考えられなかったから。それでみんな映画人として意気に感じて、本来なら2時間かかるところをぴったり1時間で撮り上げた。
 後にブロンソンが偉くなって、彼の自伝が出る時に、ライターがホリプロの堀プロデューサーからこの話を聞いたらしい。ところが堀さんは僕の話に騙された人の1人だったので、僕の作り話がそのまま自伝に載ってしまった。まあ、我が師、ジョン・フォードの映画の中の名台詞に「人々が伝説を信じ始めたら、我々は伝説を選ぶべきだ」という言葉もあるので、それはそれで悪くないけど。
 僕の親友のプロデューサーは、チャーリーに「君自身の出た映画で一番好きな映画はなに?」と聞いたら、「ちょっと待ってくれ」と言われ、こう説明された。「僕はチャールズ・ブロンソンとしてハリウッドで9時から5時まで働いて、ギャラをもらっている。しかし映画を見るのは僕のプライベートの時間だ。僕のプライベートな時間は妻や子供たちと過ごし、絵を描いたりするために費やすので、少なくとも“Mr. Charles Bronson”が出ているようなタイプの映画を見る時間は、僕の人生の時間の中には無い」と。
 そして彼は、その論拠として「僕は最後のハリウッド・スターだからね」とも言っていた。たとえば彼と撮影している時に、僕がこんな説明をしたとする。「君の心の中には西部の男で、心の中には西部の夕焼けがある、けれど今は東部のビルの中にいて、西部を想っている……」すると彼は「オービー(OB=大林)、ちょっと待ってくれ、心の中は映画には映らないよね」と言う人だった。
 彼に言わせれば「僕の心の中に西部の夕陽があると信じさせるのは、君の演出だろう?僕にできるのは、君に言われたスピードで走ったり、君が望むように飛び上がったりすることだけだ。だからアクションだけ教えてくれ。それを僕は誰よりもチャーミングに的確にやってみせる。それが“スター”の仕事だ。もし僕が“アクター”なら、カメラに映らない“心の中の夕陽”を思い浮かべて演技をするけど、僕は“ムービースター”だから、画面に映る影として動いたり立ち止まったりするのが仕事なんだ」ということだった。
 だから僕は彼に「3歩あるいて、そう、そのスピード、そこでクルッと回って、そこはもっと速く、そこで椅子に座って、帽子を取ってキュッと投げる……」なんて演出をした。ハリウッドのスターというのは、そういうもの。
 だから有名な『カサブランカ』のハンフリー・ボガードだって、そうやって演出されている。「ボギー、今日はそこに座って、ちょっと笑ってくれ。君の得意な唇を曲げたニヒルな笑いで……もうちょっとニヒルに……はい、カット!OK!」演じている本人は何をやっているかわからないけど、それが編集されて映画になると、フランス国歌が盛り上がっている大感動のシーンになっている。映画というのはそういうもの。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'07" My Shining Hour Nancy Wilson Capitol 7243 5 33091 2 1
17'31" Pick Yourself Up Debbie Reynolds Universal Victor MVCJ-19233
28'11" It's Delovely Anita O'day Verve 849 266-2
38'23" O.K. For TV Nat King Cole Capitol 72435-30303-2-2
48'48" Nice Work If You Can Get It Monica Leuis Verve UCCV-9207


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