ケータイ向けの小説を書き始めたのは3年ほど前。『小説新潮』に書いた短編が『新潮ケータイ文庫』に再録されたら、なぜか他の有名な先生方を抜いて1位になってしまった。編集さんも「どうも君の文章はケータイに向いているようだ」と言ってくれて、それからケータイ向けの連載をするようになった。
ケータイに向いていたのは、簡単に言えば「平易な文章」ということだったのでは。ケータイは100文字程度で画面が一杯になってしまうので、必ず50文字くらいで改行を入れないと読みづらくなってしまう。私はもともと1文がとても短い作家だったので、メールに似ている部分もあって、読者さんも違和感なく受け入れられたのでは。
普通、小説には風景の描写がある。でもケータイではなるだけそれを端折らないと、画面一杯が風景描写の文章になってしまい、読者は飽きてしまう。だから私は「お台場はイルミネーションでいっぱいだった」で風景描写を終わらせてしまう。そのあたりのテンポが普通の小説とは多少違う。
私のホームページでは、そんな私の「ケータイ向け小説」を無料でたくさん公開している。特に小説の冒頭の10話は、必ず無料で公開するようにしている。私は女性の一人称で書くので、女性が読むと「親友から来たメール」みたいに感じるらしい。
1話の長さは、私の場合は原稿用紙3枚、1200字程度で終わらせるようにしている。その長さはメールで送れる長さの限度とほぼ同じくらい。他の作家さんも、どんなに長くても10枚くらいだと思う。それ以上長いと、さすがにケータイでは辛そう。原稿用紙3枚といえば、読むのに掛かる時間も5分程度。みなさん、1駅の間で読んでしまう。
ケータイだと難しい漢字は潰れて読めないので、なるべく「開く(平仮名やカタカナに変換する)」ようにしている。たとえば「薔薇」は「バラ」、「鬱」なら「ウツ」とか。普通の小説ならちゃんと漢字を使った方が格調高い感じになるけど、ケータイでそれをやってしまうと、読めない読者さんも多いので。
そういった意味では、読者層の違いも影響している。ケータイ小説の読者層は10〜20代の女性が約8割を占める。ただ、最近は男性読者からのメールも多いので、だいぶ男性も読むようになったのかもしれない。30代のOLが通勤途中で読んでいるケースも多いし、お昼休みなどで始業までちょっとした間がある時に読む人も多いみたい。だからアクセスグラフを見ると、お昼の12時台の終わり頃に急にアクセスが増えている。
アンケートを取ってみると、「月に1回も本屋に行かない」という人がケータイ小説をダウンロードして読んでいるケースが多い。つまり、普通の小説とは客層はまったく違う。本を読む習慣があまり無かった方々が、新しい楽しみの1つとしてケータイ小説を読んでいる。むしろ「メールで人の悩み相談を聞いている」ような感覚なのかもしれない。
新しい読者を開拓できたという意味では、ケータイ小説をやって良かったと思う。