SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年9月2日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「売り切れ」

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 先日、話題の「オシム語録」の本を買おうと思って本屋に寄ったんですが、売り切れでした。そこで仕方なくあちこちの本屋を見て回ったのですが、どこも売り切れ。よっぽど売れているみたいですね。
 その本に限らず、年にいくつかは人気の余り「売り切れ」になる商品が登場します。売り切れになるくらいならもっと作ればいいのに……と思うのは素人考えなのでしょうか?
 今日はそんな「売り切れ」になる商品について、当店のお客さまが教えて下さった興味深いお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。


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林光さん(博報堂生活総合研究所)

『売り切れの仕組み』の話

 「売り切れ」というのは「欲しい人の量」と「生産する量」のアンバランスから生まれる。
 昔、「人が何を欲しがっているか」は「何が不足しているのか」から考えられた。人並みの暮らしを「ゼロ」とすると、普通の人の暮らしは「マイナス」だと考えられていた。たとえば「隣の家にはテレビがあるけど、ウチにはない」とか。だから「○○が無い人が何%いるから、100%まで行くとしたら、どれだけ売れる」という計算が立った。
 ところが80年代の前半くらいには、みんな「ゼロ」まで到達してしまった。特に質はともかく、量的な部分では「ゼロ」になった。さらにバブルの時代になり、質的にも向上した。車も国産車じゃなくて輸入車、テレビも20インチじゃなくて30インチ、といった具合。
 そうやって質も量も一定の水準まで満たされてしまった90年代後半から2000年以降、「人がどんなものを欲しがるか」が非常にわかりにくくなった。それは「その時の気分」とも言える。
 しかも情報化が進み、新しい商品の情報や売れている商品の情報、さらに「なぜ売れているのか」という情報も含めて、多くの情報が流れている。流通のチャネルも多様化し、店頭、インターネット、通販と、いろいろなチャネルがある。
 だから売る側も、在庫の管理に気を遣う。在庫が残ってしまったら「売れ残り」なので困る。でもインターネット販売や通販でも、注文が来たらすぐに送れるようにしておかなければいけないので、ある程度の在庫は持たなくちゃいけない。それで在庫の管理は、ギリギリの選択になる。このバランスがちょっとでもズレた時に発生するのが「売り切れ」。
 モノには2種類あって、1つは「必需品」。これは自分を楽にしてくれるモノなので、100%まで普及する。掃除機や洗濯機などが代表的な例。もう1つは我々が「必欲品」と呼ぶモノ。楽器、スポーツ用品など、欲しい人しか必要じゃないモノ。こちらに関しては「普及率」とは言わずに「所有率」で計る。
 このところ出てきている、売り切れになりがちな商品は、全員が全員必要としない、どれくらいの人たちがそれを欲しいのかわからない、でも意外に多くの人たちが欲しがった、というモノ。

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加藤克明さん(『週刊ファミ通』編集長)

『ニンテンドーDS』の話

 ニンテンドーDSが大ヒットした1つの要因は、休眠ユーザーや今までゲームをまったくやっていなかった人たちにゲーム機を売って、ソフトを売ったということ。これは画期的なことだと思う。
 もともとゲームをやっている大人は全員がマニアかというとそうでもなくて、お盆休みや年末年始、GWぐらいにしかゲームをできないという人はけっこう多い。そしてちょっと仕事が忙しかったりすると、「あれ?1〜2年ゲームやってない」なんてことになる。そういう人たちがみんなDSを買っている。
 ゲームショップで「親にプレゼントしたい」と、DSと『脳を鍛える大人のDSトレーニング』を買う姿もよく見かける。そしてプレゼントしてもらった親から「おもしろい」と同年代の人に口コミで広がっているらしい。
 もうすぐDSは日本で1千万台という販売台数になる。これはかなりペースが速い。今までもPS2やゲームボーイはずいぶん売れたけど、「大ブーム感」はDSの方がはるかに上。ファミコンの時に匹敵するかもしれない。  ファミコンの時は「テレビの中のモノが動いちゃってスゴイ」みたいな新鮮さがあって、とにかくみんなハマった。あの頃はゲーム業界でも「出せば100万本」と言われていた。それから時が経って、今はPS2でも100万本売れるタイトルは、年にせいぜい2〜3本に落ち着いている。
 ところがDSは10本くらいミリオン(100万本以上)のタイトルが出ていて、『動物の森』などは300万本も売れている。『脳トレ』の続編の『もっと脳トレ』も200万本。そもそもDS自体が発売から2年くらい経つのに、いまだに「ハードが手に入らない」なんて声も聞こえる。その販売台数は週ベースで15〜16万台。こんなことは今までになかった。
 ファミコンは1983年に発売されて、1985年に『スーパーマリオ』が発売、1986年に『ドラゴンクエスト』が発売。ゆるやかにいろんなモノが育っていって、徐々に大ブームになった。もちろん当時はゲーム市場なんて世の中になくて、ファミコンによって家庭用ゲーム機市場が作られていったという事情があるので、ブームがゆるやかだったのも当然だった。
 でも、新しいユーザーが「なんか面白そうだから買ってみようか」と思う感覚は、DSもファミコンも非常によく似ている。想定外でこんなに売れたモノは、最近あまりなかったと思う。

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甘糟りり子さん(作家)の

『ゴヤールの白いトートバッグ』の話

 なかなか手に入らないと言われているGOYARD(ゴヤール)の白いトートバッグ。私はパリの本店で買った。
 去年、私が「これ欲しいな」と思って青山のセレクトショップ『ラブレス』に電話をしたら「入荷待ち」と言われた。そこで入荷待ちのリストに名前を加えてもらって、「私で何人目ですか?」と聞いたら、70人以上だった。
 ちなみにこのトートバッグ、『ラブレス』で買うと約8万円。そんな値段には見えないけど、半年以上使ってみて、カジュアルに使っても汚れていないのが嬉しい。
 ゴヤールはヴィトンより古いブランドで、すごくファッションに強い女性誌では日本で売られる前から「ヨーロッパのセレブリティがよく持っている」と紹介されていた。その辺がファッション・マニアの差別化意識を刺激して「ルイ・ヴィトンじゃなくてゴヤール」みたいな感じでウケた。
 人気があるのは「白」で、どこでも売り切れだった。パパラッチの撮るスターの写真も、みんな持っているのは白。一説によると、ニューヨークを舞台にしたドラマ『SEX and the CITY』に登場して火が付いた、とも言われている。
 とにかく、ゴヤールの「サンルイ」というトートバッグの白のPMサイズはすごい人気。私が持っているのも、みんなが一番ミーハー的に欲しがるそのバッグで、去年の12月にパリで買って、意気揚々と持っていろんなところに買い物に行ったら、ブランド・ブティックのスタッフから「あぁ〜、白は初めて見ました!見せて下さい!」と言われて、ちょっと嬉しかった。
 ちなみに私が次に狙っているのは、ゴヤールの出しているパソコン用のバッグ。それとは別に、最近の全体的な傾向としてドクロのマークが流行っているのが、ちょっと不思議。
 ちょっと前には「ルシアンペラフィネ」も一瞬バーッと流行った。ルシアンペラフィネは「カシミアの帝王」と呼ばれるブランドで、青山の1本入った通りにお店がある。カシミアのセーターやTシャツを売っていて、ものすごく高いのになぜか流行った。
 ルシアンペラフィネは、ドクロマークやピースマークが付いているテイストで、30万円。そんな風に、カジュアルでちょっとエッジーで高いモノがけっこう多い。ゼロの数には気をつけた方がイイ。

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須永康弘さん(ウィルコム)の

『W-ZERO3』の話

 最初のW-ZERO3は発売直後に、モノがまともに供給できないという状況に陥ってしまった。ウチからすると「売れた」と言えなくもないけど、お客さまに対しては「欲しいのに手に入らない」という申し訳ない状況だった。
 あまりに品薄のため、抽選販売も行われた。売れたのは良かったけれど、会社としてはお恥ずかしい限り。
 そのW-ZERO3の新型が7月に登場した。今回も予約受付の初日に行列ができるほどの人気をいただいたので、前回の反省を踏まえて約3倍の台数を作って発売日を迎えた。それでも足りないところも出て、一部ではご迷惑をお掛けしてしまった。
 W-ZERO3は携帯でもパソコンでもない、第3のコミュニケーション・ツール。パソコンのようなキーボードがついていて、会社のメールもそのまま展開して、文章を作りたければWordやExcelなども使えるようになっている。
 そんなパソコン的な要素以外にも、デジカメの機能やムービー、それから音楽プレーヤーにもなる。携帯とパソコンでやれることはW-ZERO3だけでほとんど出来ると言っていい。これだけの機能が両手の中に収まるという部分が、お客さまに一番受け入れられた要素だと思う。
 横にスライドして出てくるキーボードは斬新なアイデアで、ヒットの要因にもなっている。「とりあえず凄そうに見える」というのは重要で、電話機売り場でパッと見て「凄そう」という部分がどうしても欲しかった。
 折り畳み携帯を持って、話をしながらパタパタ開けたり閉めたりしている人が時々いる。このW-ZERO3も開けたり閉めたりしたくなるようなデザインを、ということで考えられた。
 W-ZERO3の値段が、だいたい2万9800円。このデキでこの値段は絶対にお買い得だと自信を持って勧められる。

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伊藤ジョニー信吾さん(『男前豆腐店』代表取締役)

『男前豆腐』の話

 おかげさまで「男前豆腐」も好評で、こんなに凄い勢いで皆さんに認知してもらえるとは思っていなかった。
 最初に「男前豆腐」を売り出したのは3年くらい前。でも急に売れ出したのはこの1年。そして一番売れているのが、サーフボードの形をした豆腐「ジョニー」。今、1日に5万丁のジョニーが売れている。
 この味を出すために、2年くらい悶々としていた。友達が減るくらい悶々としていた。デザインやパッケージは一流の方がいらっしゃるので、一流の方にお願いすればちゃんとしたモノができる。でも僕らは豆腐屋なので、それまでのやり方を全否定して、おいしい豆腐を作ろうとした。
 たとえば「なんで前の晩から大豆を水に漬けなくちゃいけないのか」とか「なんで早起きしなきゃいけないのか」とか、あらゆる可能性を探った。豆腐屋は朝が早いというイメージは世間でも浸透しているようで、初めて会う女性と飲んでも「お豆腐屋さんって朝早いんですよね」と必ず言われる。だからこそそうじゃない豆腐屋になりたかった。とはいえ、今も朝ゆっくり寝られるというワケではないけれど。
 豆腐の機械を作るメーカーがあって、「この機械を買えば作れるよ」というモノがある。でもそれをそのまま使っていたら、みんなが想像するような味の豆腐しか作れない。そこで「どうやったらおいしい豆腐が出来るのか」を考えて、釜の形から細部に渡るまで改造した。
 一番こだわったのは濃度。それからエグみ。大豆は自然のもので、大豆をすり潰して、煮て、豆乳を作って固めたのが豆腐。だから植物のエグみをどうやって取るかが最大のテーマだった。
 僕は毎朝、会社に行くと、インターネットで自分のところの商品名を検索している。誰がどういう風に書いてくれているのか、こんなにブログが流行る前から調べていた。そして男前豆腐が世に出るきっかけになったのが、奥山貴宏さんというライターの方が自分の日記で取り上げて下さったことだった。
 そこからブログで繋がって「見たけど気持ち悪いから買わなかった」「え?!あれ美味しいの?」なんて連鎖的に繋がっていった。だから男前豆腐は、ブログで口コミが広がる時代だからこそ世に出た商品だと思う。「夜10時過ぎの井戸端会議」なんて言うけど、そこで「これ買ってみたら美味しかった」という情報が、今の時代は横に広がる。
 ホームページもコミカルでファンキーに仕上げた。「この豆腐屋は本当に存在するのだろうか?」から始まってもいい。それをきっかけに「豆腐を食べたら美味しかった」と思ってもらえれば。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'43" I'm In The Market For You Ann Richards Capitol TOCJ-5416
19'50" I'm Nobody's Baby Vic Damone Capitol CDP 7243 8 31775 2 3
27'45" I've Heard That Song Before Steve Laurence & Eydie Gorme Jasmine JASCD 600
35'41" It's Too Good To Talk About Now Blossom Dearie Verve POCJ 2653
46'54" Oh Johnny, Oh Johnny, Oh! Peggy Lee Capitol 7243 4 96729 2 5


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