SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年7月29日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「海で働く」

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 夏が来ると、どこまでも広がる大きな空と海を見に行きたくなります。ウェイティング・バーで働くこと自体は楽しいのですが、海で働くのも悪くないかも……なんてふと思うこともございます。
 でも、古くから漁師さんに伝わる言葉によると「板子一枚下は地獄」とも言うそうですね。そのせいか、海で働くお客さまには、ある種の大らかさと厳しさを感じます。
 本日はそんな海で働くお客さまからうかがったお話を、ここで少しだけご紹介させていただきましょう。


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馬渕巌さん(海上保安庁)の

『潜水士』の話

 海上保安庁は端的に言えば「海の警察」。ただし消防の仕事も兼ねているので、船の火事を消したり、船の中に取り残された人を救助したり、火災の原因を捜査したりもする。
 私が以前していた潜水士という仕事は、1万2千人あまりの職員がいる中で200人弱しかいない。この潜水士になるには、本人の希望があっても、身体的、生理学的な規制、基礎体力、泳力などを総合的に判断した上で、2ヶ月の潜水研修を受ける必要がある。この研修を経て、国家試験で「潜水士」の資格を取って、はじめて潜水士になれる。
 私が潜水士の希望を出したのは平成4年だった。当時は潜水士をやりたいなんて人はそんなにいなくて、もしかすると倍率1倍を切っていたかもしれない。さらに地域差もあって、私が赴任していた新潟ではあまり潜水士になりたいという人はいなかった。
 2ヶ月の研修を終えて新潟に帰ったら、すぐに出番があった。海水の採取だとか、海底の証拠物の写真を撮ったりだとか、水中で寸法を測って図面を起こしたり。地味な仕事だけど、陸で事故が起こった時にすることを水の中でもやらなければいけないので。しかも水の中というのは、3次元の世界なので陸上とはまた違った難しさがある。
 きつくて怖いことも少なくない。限られた空気を背負って、その空気の範疇でしか作業はできないし、キレイな海に潜ることもほとんどない。「犯罪に使った出刃包丁を海に捨てた」と言われれれば、ヘドロに埋まっている包丁を探しに行かなきゃいけない。
 明るい日中とも限らない。「港から車両が落ちた」と言われれば夜中でもすぐにレスキューに向かう。真っ暗な夜の海の中、ヘドロに埋もれた車両を救助するには、どういう状況かをイメージしながら、焦らず弛まず、そして素早く作業しなければいけない。
 そんな仕事なので、暗いところや狭いところが苦手な人には向いていないと思う。さらにヘリコプターに乗ることもあるので、高いところが苦手な人にも向いていない。
 ヘリコプターからワイヤー1本でぶら下がり、船に向かって下りていく時は、怖いようなワクワクするような、なんとも言えない感覚を覚える。いま思うと、我ながらあんなことを本当よくやっていたなぁと思う。

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倉本真一さん(海洋地質学者)と恩田裕治さん(地球深部探査船「ちきゅう」船長)

『地球深部探査船“ちきゅう”』の話

 地球深部探査船「ちきゅう」の中央には、船底から計ると高さ130mの掘削やぐら「デリック」が備え付けてある。これは長いドリルパイプを懸垂しながら、掘削作業を行うため。陸でも石油などの掘削をする時に組むやぐらを、そのまま船の上に作ったと考えればわかりやすい。
 船の総排水量は約5万7千トン。ほぼ空母に匹敵するこの大きさの船を、純国産で造った。まだ完成してから日が浅く、試験しなければいけないことがいくつか残っていて、8月頭くらいから最終的な始まる。とは言っても進水からもう1年になろうとしているんだけど。
 この船は「マントルまで掘ろう」という目的のために作られた。マントルは我々が住んでいる地表から計ると、30〜40kmくらい下から始まっている。ところが海、特に太平洋の真ん中あたりへ行くと地核が薄くなっていて、だいたい5〜6km、海の深さを足しても10km以内でマントルへ到達できる。
 実はマントルは、まだ人類が到達したことがない、誰も見たことがないモノ。地球の体積の7〜8割を占めているマントルなのに、よくわかっていない。だからそこまで到達したら大ニュースになる。どんなモノが出てくるか、どんな状態なのか、正確なところは誰もわからないから。
 このマントルへの掘削、今はまだ練習の段階で、さらにもう少し技術開発が進まないと達成できない。予定では10年以内の達成を目指している。
 私(恩田さん)が船長になった理由は、会社の上司に聞いてみないとわからない。でも地球深部探査船「ちきゅう」は、走るための船じゃなくて、止まるための船という点て非常に特殊。
 とにかく太平洋のどこにいようと、波が来ようが風が来ようが、これだけ大きな船が半径15mの円の範囲でしか動かない。そのためにこの船には6つの大きなプロペラが付いていて、コンピュータが自動的に計算してその場所に留め続ける。
 もしマントルまで掘ろうと思ったら、1年以上の時間が掛かる。その間、ずっと太平洋のど真ん中で留まり続ける。でもその制御はコンピュータがやってくれるので、船長はみんなの意見を聞いて、平等に配慮するのが主な仕事。具体的には部屋の温度が暑いとか寒いとか、そんな苦情を聞いて解決している。
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上村卓久さん(NTT-WEマリン株式会社)の

『海底ケーブル』の話

 海底ケーブルは銅とポリエチレンといった素材が同心円状に束ねられている。さらに海が浅いところでは船の碇や漁師さんの漁具で傷つけられることもあるので、ケーブルの外側に鉄線を巻いて強化してある。
 海底ケーブルの敷設は、基本的にケーブルを置いていくだけ。浅いところでは波や潮によってケーブルが動き、岩盤との摩擦で傷んでしまうことがあるので、動かないように固定しておく。でも深いところはケーブルが傷むようなリスクが少ないので、もともとケーブルも細めだし、特に固定したりはしない。
 もしケーブルが切れてしまった場合、切れた端を船の上まで持ち上げて、新しいケーブルを足して繋げる。船の上でしか繋げないので、こんな手間暇がどうしても必要になる。
 ケーブル自体の太さは、浅い海で使う一番太い部分でも直径10cmぐらい。深い海では2cmぐらいしかない。ただ、そのケーブルは基本的に1本に繋がった状態で船に積み込む。たとえそれが1000kmのケーブルでも、工場でその長さに作って船に積み込む。ウチの敷設船「すばる」なら、太平洋を横断する工事を、たった2回ケーブルを積み込むだけで完了できるくらいの容量がある。
 この「すばる」は総トン数で約1万トン。国内の長距離フェリーとほぼ同じ大きさがある。この船がケーブル・メーカーさんのある港へ行き、工場で作られたケーブルを直接船へ収容する。このハンドリングは人間がやるので、なかなか時間が掛かる。場合によっては船が出航して実際に敷設するよりも、ケーブルを積み込む方が時間が掛かってしまうことも。
 その昔、私も敷設船に乗ってケーブルの敷設を担当していた。その時に一度だけ、終点の陸が近づいてきた時に「このままでは足りないかもしれない?!」と慌てたことがあった。この時は残りのルートを少しショートカットすることで事なきを得たけれど、もし本当に足りなかったら大変なことになっていたと冷や汗をかいた。

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斎藤健次さん(まぐろ料理屋『炊屋』店主)の

『まぐろ漁船』の話

 命懸けで危険なところへ行くまぐろ船に乗る人たちは、人それぞれの事情を持っている。一度航海に出たら1年半〜2年はかかる。それだけ長い間、家族と離れて生活することになる。
 僕がコックとして初めて乗り込んだ船は、最初に高知を出発して、40日くらいかけてケープタウンへ向かった。その後、まぐろは回遊しているので、それを追い掛けてオーストラリアやインド洋へ。
 「吠える40度線」と言われる南緯40度のあたりは大時化。南極に近くなっていくと「墓場の50度線」と言われ、本当に危険な暴風圏に入る。そういうところで仕事をするのがまぐろ船。おそらく一番過酷な漁船だろう。
 時化になると5階建てのビルのような波が来る。船なんてその上に浮かぶ木の葉のようなモノ。その5階の高さからドン!と落ちることもある。横からだって波が来る。
 それで船にしがみついていたら仕事にならない。まぐろ船は「延縄(はえなわ)」と言って、縄を上げていく作業をするので、両手がふさがっている。だから腰だけでバランスを取りながら、30〜40度のローリングやピッチング、三角波が来てその上にドン!と乗る、なんて状況の中で仕事を続ける。
 作業をしている船員たちには波が見えない。だから舵を取っている船長や甲板長が「危ないな」と思ったら、非常ベルを鳴らす。そのベルが聞こえたら、みんな急いで逃げて鉄柱などにしがみつく。その直後にドーン!と船が波に飲まれ、また静かになったら作業に戻る。そんなことの繰り返し。
 一度縄を入れてしまうと、すべて引き上げるまで作業は止められない。その縄の長さは約150km。だいたい東京−沼津間くらいの長さがある。そこに3000本の枝縄がぶら下がっていて、イメージ的には居酒屋さんの「縄のれん」みたいな感じ。東京−沼津間という巨大なモノだけれど。
 その縄を海に投入するのに5時間くらいかかる。そして一旦、船から切り離して、まぐろが掛かるのを待つ。そして「上げ縄」と言って、その縄を引き上げる。これには12〜15時間くらいかかる。まぐろが掛かっていると「いらっしゃい!」「銭や!」「客や!」なんて景気づけの歓声が上がる。
 当時、南まぐろはキロ5000円くらいだった。1匹100kgとして50万円。感覚としては「札束だ!」という感じ。だから上がったまぐろの下に毛布を敷いて、傷つけないように気を配る。そしてすぐに解剖して、そのままの鮮度を保てるようマイナス60度で急速冷凍する。
 そうやって、漁倉がまぐろで満杯になったら日本に帰れる。これがまぐろ漁船。

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根本哲也さん(国際石油開発株式会社)の

『海底油田』の話

 最近の石油の採掘は、海にトレンドが移りつつある。さらにその水深はどんどん深くなっている。メキシコ湾や西アフリカなどでは、400mという水深で掘るところもあるほど。
 400mの水深で掘るためには、ROV(Remotely Operated Vehicle)という海底無人探査機が不可欠。ROVをあらかじめ海底に待たせておき、ピット(掘削機の先端)が下りてくる様子をリグ(海上基地)で観察する。
 リグは水深が40〜50mくらいまでなら、ジャッキアップリグと言って海底に足を打ちこんで固定する方式を採る。でもそれ以上になると足が長くなりすぎるので、半潜水型と言って浮かせて、それをアンカーで固定する。
 掘削ポイントは「ここ」と決めたところから25〜30mくらいなら許容範囲。どこを掘るかは地震探鉱という方法で決める。海面から衝撃波を送り、それが地下にも伝わる。その速度の違いから地下の構造を解析して、油やガスが溜まりやすい「背斜構造」の場所を見つける。ただし実際に中に溜まっているかどうかは掘ってみるまでわからない。
 だから一度掘って「ドライ(空)」だったとなると、60日くらいの日数と、30億円以上のお金が無駄になる。ちなみに石油やガスの採掘は、100本掘って3本当たれば御の字。宝くじより当てるのは難しい。
 いま私が担当しているのはオーストラリアの西側のブラウズ・ベイズン。今まで6本の井戸を掘って、これから開発するところ。ここまで6本掘って全部当たっているのはかなり画期的。自分でもビックリしている。

【掘削リグ】
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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'06" By The Beautiful Sea Jackie & Roy DRG 8474
20'30" Little Boat(O Barquinho) Lorez Alexandria MCA/IMPULSE MCAD-3316
32'11" Chup, Chup, I Got Away Astrud Gilverto Verve POCJ-2560
41'48" Conversa De Botequim Doris Monteiro EMI 829 712 2
48'39" Corrida De Jangada Toots Thielemans & Elis Regina Philips 830 391-2


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