SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年7月15日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「小松左京」

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 今日から公開の始まった映画『日本沈没』の原作をはじめとして、『首都消失』『さよならジュピター』など、日本を代表するSF小説家、小松左京さん。今日は公開されたばかりの映画を観てきた帰りでしょうか、小松左京さんご本人をはじめとして、小松さんに縁のあるお客さまが当店へ立ち寄って下さいました。
 せっかくの機会なので、きょうはそのお客さま方が教えて下さったお話を、ここで少しだけご紹介させていただきましょう。当代きってのSF小説家にまつわるお話は、どれも興味深い話ばかりです。


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大原まり子さん(SF作家)の

『小松さんの短編作品』の話

 小松左京さんの作品には“消失モノ”がけっこう多い。
 たとえば『紙か髪か』という短編作品がある。これは「ある日、突然“紙”が無くなってしまう」というお話。主人公は新聞記者の青年で、会社に行くために電車に乗ろうとすると、定期券がない。硬貨で切符を買おうとしても切符が出てこない。札入れを見るとお札がない。そんな風に、短い話でもディテールがすごく細かい。
 お酒を飲もうとしても、ラベルがないから何のお酒かわからない。もちろん新聞も出せないんだけど、とりあえず記事を書くためにメモを取ろうとして、仕方がなくYシャツに書いたり。その短編を読むと「パピルスの発明以来4000年、人類は紙無しでは生きて来れなかった」ということが実感できる。
 お札も株券も消えてしまうから、市場は完全に崩壊。図書館は壊滅。書くモノといったらせいぜい黒板に白墨で書くとか、新聞もベニヤ板に書いて張り出すといった具合。今なら「インターネットや電子メールがなくなったらどうなるか」みたいな話になるんだろうけど、そんな思考実験が小松左京さんはすごく上手い。
 『アメリカの壁』という作品もある。いきなりアメリカの周りに壁ができて、入ることも出ることもできなくなってしまう、という思考実験の作品。実はアメリカは農業も盛んだし、わざわざ他の国と付き合う必要もない。そう考えて「アメリカが引きこもりになってしまった」という設定が可笑しかった。
 私が一番好きなのは1975年に発表された『岬にて』という短編。ある孤島に数名の人々が集まってきて、主人公は記憶喪失の「私」。奥さんや神父、中国人のお爺さんなども居て、そこに中田という青年がやってくる。
 みんなで絵や音楽、ドラッグなど、いろんな話をするんだけど、「私」は記憶喪失だから過去の記憶がない。でも中田の話を聞いている内に、どうやら「私」は過去に奥さんを殺したらしい、ということがわかってくる。
 そして最後に、実は中田という青年が島の岬から落ちて死んでいた、ということが明かされる。つまり中田は既に無くなっていたにも関わらず、亡霊というか、彼の意識だけがみんなの中に入って話をしていた、ということ。これにはゾッとさせられた。
 だけどその怖さはいわゆるホラーじゃなくて、生と死の境目がわからない世界とか、夢と現実は何が違うのかとか、亡霊とは我々とまったく別の世界から来ているわけじゃなくて身近なところで深い関わりをもって存在しているんじゃないか、なんて考えが一気に押し寄せてくる怖さ。
 その『岬にて』が収められている短編集『ゴルディアスの結び目』はオススメ。ファン投票などをすると必ず1位になる一冊。

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小松左京さん(SF作家)の

『日本沈没』の話

 映画『日本沈没』は、最初に映画化された33年前と較べて映像技術が本当に進歩した。正直、CGがあんなにスゴイとは思っていなかった。
 僕は手塚治虫さんが作った『アトム』などのアニメーションも大好きだし、いい年してディズニーの『白雪姫』や『バンビ』を喜んでいた人間。だけど実写の映画があんなにすごいCGが出てくるようになっていたとは。
 今度の『日本沈没』も東宝配給なんだけど、早くDVDで出して欲しい。そして家でじっくり33年前の映画と見比べてみたい。特に気になるのが背景になっている東京の街並み。33年前は今ほどビルが立ち並んでいなかったはずだから、どれだけ変わっているか見比べたい。
 33年前の映画には登場しなかったレスキュー隊みたいな人が登場するのも時代の移り変わりなのだろう。実際、インドネシアで大地震が起こったら、海自などがレスキューに行っている。そういうことをみんなが知った時代を反映させたのでは。
 そういった意味では、僕などはもう75歳という年。知らない新しいことがいっぱいある。
 そもそも、僕は東京大学で地球物理を教えていた竹内均先生が書いたNHKブックスの『地球の科学』という本で「大陸移動説」を知った。「そうか、地球はこんなにもダイナミックに、こんなにもロマンチックに動いているのか!」と感動して『日本沈没』を書いた。
 ただ、よその国を沈没させてしまうのは具合が悪い。でも自分の国なら良いだろう、そう思って「日本沈没」にした。それを書き始めたのが64年頃。折しも時代は深海の観測やコンピュータが発達しはじめていた頃。どんどん現実の科学が発達していて、なかなか結末を決めきれなかった。
 地球物理学の研究所を、出来たばかりの時に見学させてもらったこともあった。若い研究員に「日本列島の目方は何トンあるんですか?」と聞いたら「??」という顔をされ、そういう“おかしいこと”を言ってくる客を相手にする人を呼ばれてしまったけど。
 日本列島を地核の上に浮いている物体だと考えると、日本列島の平均密度、面積や体積を計算することで、日本列島の重さが計算できて、日本列島を沈めるために必要なエネルギーが計算できる。その計算を僕はソロバンと計算尺と筆算でやった。
 ちなみに電卓が登場したのが70年万博の頃。当時の電卓は「1桁1万円」と言われ、13桁の電卓なら約13万円という値段だった。それでもこの電卓はあっという間に普及して、『日本沈没』を書く上でも大いに役立った。
 そんな感じで『日本沈没』が完成したのが73年頃。実に9年の時間が掛かった。もし電卓の普及がなかったら、もっと時間が掛かっていたかもしれない。そんな風に、時には科学の発明・発見の方が、文学よりも面白いこともある。

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小松左京さん(SF作家)の

『日本沈没 第二部』の話

 “日本沈没”の後は「国土を失って世界中に散らばった日本人が、他の人類からどう扱われて、それを乗り越えて行くにはどうしたらいいか」と考えた。それを谷甲州クンとの共著で『日本沈没 第二部』として出版した。
 もともと最初の『日本沈没』には「第一部完」と書いておいたし、第二部の構想はずっとあった。ところがその後、僕が忙しくなってしまい、なかなか手をつける時間がなかった。そこに谷クンというスッキリした新人が出てきて、「僕は全面的に君を応援するから」ということで書いてもらった。
 谷クンは本当に良くやってくれたと思うし、もしこれが出版として成功したら、今度は本当に2人の合作で第三部を書こうと約束している。もし第三部を書くとしたら、今度はデカい宇宙基地を作って、日本人が「宇宙人」になっちゃう、なんてアイデアもある。
 宇宙というのは不思議なところ。この広い宇宙で知性体が発生したのは、少なくとも太陽系の近くでは地球だけだった。偶然にも生命体が発生し、その生命体が知性体に進化し、知性体が感情を持って感動したり絶望したりする。そんなドラマがこの宇宙にまったくなかったとしたら、これは寂しい。
 だから科学が「これはスゴイ!」と人に思わせるのは非常に文学的でもある。科学をもっと発達させたいとか、認識をもっと押し広げたいという人間の衝動も、非常に文学的だという気がする。
 僕も、もう先はそんなに長くないので「宇宙にとって生命とは何か」「宇宙にとって知性とは何か」そしてその先に「文学とは何か」ということを書いておきたい。おそらくそれは小説ではなくエッセイになると思う。
 まあ、たとえ僕自身が書けなかったとしても、こうやって言っておけば誰かが志しを継いで書いてくれるだろう。最近は死んだ星新一なんかが夢に出てきて「そろそろこっちへ来ないか」と言っていることだし。
 1つだけどうしても言っておきたいのは「日本人を愛する」だとか「どこそこの国は嫌いだ」なんて狭いことはやめて欲しいということ。自然も、植物も含めた生物も、全部を愛しいモノだと思って欲しい。

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鹿野司さん(サイエンス・ライター)の

『小松さんの考え方』の話

 SFというジャンルに限らず、小松左京さんは情報をたくさん集めて、それを元に物事を表現していくというスタンスの人。いちはやくコピー機を導入して、百科事典の適切なページをコピーして、1つのファイルにして小説を書いたりしていた。さらに、もともと博覧強記だったというところも相まって、いろんな分野のことに詳しくなっていった。
 その、昔から小松さんがやっていたことは、今なら普通の人がインターネットを使ってやれるようなこと。だけど多くを知る時には、知る人は強くなければいけない。それはたとえばガンの告知のようなもので、知らなければ怖くも何ともないけど、知ってしまうとそれに対してどう向き合うかという大変な問題が出てくる。
 現代はすべての人がたくさんの情報に晒されて「自分はどうしたら良いんだろう?」と思ってしまう時代になった。そして小松さんは昔からそんな膨大な情報の中で生きてきて、そういう状況の中で自分がどうしたら良いかをちゃんとわかって貫いてきた人だった。
 その小松さんの対処方法とは「根拠のない明るさ」。小松さんは反技術的、反科学的な物言いに対して否定的に考える。たとえば原発に関して、世間一般ではあまり良いものとは考えられていない。でも小松さんは一度も原発を批判的に語ったことがない。それは小松さんが「人間の可能性」に対して根拠のない明るい希望を持っているから。
 「紆余曲折があっても、いつかは必ず上手く行く」と思いながら、情報世界を見る。そうすると雑多なモノの中から力強いモノを取りだして来ることができる。
 世代的なモノもあるかもしれない。たとえばハインラインというSF作家にも似たような雰囲気を感じる。『夏への扉』という作品は核戦争後の世界を描いていて、主人公は放射線を浴びて具合が悪くなる。そこで「ちょっと具合が悪くなる」という表現は、なかなか根拠なく明るい。
 今よりも文明化されていない時代は、極限的な不幸を背負った人は普通にいた。今はそういう人がいなくなってしまって、想像するしかない。だけど昔はそういう人と話す機会もあっただろうし、何を信じて良いかということの根本が出来ていたような気がする。今は「いい人」は多くても、それはどうしてもファンタジーの世界。本当の意味で苦しみを知っている人に立ち向かったことがあるか、と問われると、そういうケースは少ない。
 そういう目に遭わなくて済むような世の中に進歩したのだから、それは仕方のないことではある。でも世界に対する信頼感は少し薄れてきている。

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草なぎ剛さん(タレント)の

『映画『日本沈没』』の話

 映画『日本沈没』で、下町の屋根の上で柴咲コウさんと僕が話すシーンがあるんだけど、実はあれも合成。夕陽が綺麗なシーンで鳥が飛んだりしていても、撮影はスタジオで行われ、他はすべて合成。あれには驚いた。
 深海艇のシーンは真っ暗なスタジオに20時間くらい籠もって撮影した。20時間もやっていると不思議なもので、いつの間にか本当に狭い深海艇に閉じこめられているような気分になるもの。
 セットの深海艇はお神輿のような棒が付いていて、スタッフが水の中にいるかのように揺らしていた。カメラじゃなくてセットを揺らすというのは、樋口監督の新しいアイデアだったらしい。だからセリフで「潮流が!」なんて言うと、スタッフの人がガーンと潜水艇を揺らす。これはタイミングを合わせるのが本当に難しくて、僕よりもスタッフの人の方がよっぽど大変だったのでは。
 僕が演じた深海艇のパイロットというのは2人いて、もう1人は及川光博さんが演じた。映画の中では及川さんの方が操縦が上手いという設定なんだけど、実はコレ、最初は僕の役の方が上手いということになっていた。
 ところが撮影もけっこう進んだ段階になって、あるとき急に監督が「設定を逆にした方が、後で剛クンの役が引き立つんじゃないか」と言い出して、いきなり入れ替わることになった。たしかに最後のシーンはその方が面白いんだけど、まさか撮影の途中で変えるとは。「ちょっとしたことで役って変わるんだよ」という監督の言葉は驚きだった。
 柴咲コウさんと一緒に仕事をしたのは『黄泉がえり』以来。コウさんの役はすごく強い人だったけど、コウさん自身もすごく強い人で、現場でも監督とディスカッションしたりしていた。僕の役は受け身のタイプだったので、そんなコウさんに引っ張ってもらった部分は大きい。
 その違いは映画のポスターにも現れている。僕の後ろは水で、コウさんの後ろは火。もともと僕の役は人を助けるような仕事じゃなくて、深海の調査をする人だっていうこともあるけど。それがコウさんに引っ張られて、徐々に人を助ける使命に目覚めていく、という感じ。
 撮影期間はコンサート・ツアーと重なっていて、それが一番辛かった。もちろんレギュラー番組の収録もあったし、気持ちの切り替えが難しくて。撮影の最中に「あー、昨日のライブは最高だったなぁ……いや、いかんいかん!今オレは深海艇を操縦しているんだ!」なんてこともけっこうあった。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'01" If They Asked Me I Could Write A Book Janet Seidel MUZAK MZCG-1010
19'57" Show Me The Way To Get Out Of This World Matt Dennis BMG BVCJ-7473
26'21" My Shinning Hour Diahann Carroll RCA 74321 478692
36'51" Just A Little Lovin' Carol Welsman Columbia COCB-53505
46'44" The Thrill Is Gone Mitzi Gaynor Verve POCJ-2660


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