『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』は、ぶっちゃけ代々木公園や新宿御苑でやりたかった。でもそれは無理なので、葛西臨海公園は、昭和記念公園は……と、どんどん輪を広げていって、最終的に決まったのが国営ひたち海浜公園だった。
そこに辿り着くまで千葉も埼玉も数件あたっていて、中には海沿いのすごく良い場所もあった。ところがそこは人が2万人以上集まると、液状化現象で足下がズブズブ沈んでいくという話でダメになった。
国営ひたち海浜公園の場合は、先にアチラからちょっとしたお誘いがあった。それでも正直、あそこでフェスをやることになるとは思っていなかった。というのも、今「レイクステージ」と呼んで使っているステージがもともとあって、そこを使ってフェスをやらないかという話だったから。そのステージは階段も付いていて、噴水ショーもできるようになっていて、日比谷屋音よりも“作られた世界”。そこでフェスをやるといっても、ロックな感じが出ないし、自然な感じも出ないし、「ちょっとイマイチかなぁ……」と。
それでも一応見学に行ったら、とにかく広い。しかも冬だったから、その広い芝生に10人くらいしか人がいない。「ここ、何をする場所なんですか?」と聞いたら「フリスビーのゴルフをやる会場なんです」と教えられた。「誰もやってませんね」「ええ、誰もやらないんですよ」って。その広さ、実に東京ドーム4個分だった。
そこで「ここでフェスできませんか?」と聞いた。向こうは「こんな何もないところで?」と驚いていたけど、何もないところにゼロから作っていくことこそフェスの醍醐味。それで「ぜひここで!」という話になった。
フェスで一番大切なのはアーチストのブッキングじゃない。もちろんそれも大事なんだけど、フェスというもの自体が1つの生き物であり、思想になっている。だから、ちゃんと毎年続けられるか、ちゃんと毎年準備をできるかが一番大切。ブッキングに頼ると、良いアーチストが出てくれなければ悪いフェスになってしまう。その発想ではフェスの経営はできない。
移動式のトイレを何個用意するのか、人々が5分以上並ばずに飲食を済ませられるようにするには何軒の飲食店とスペースが必要なのか、その場所で毎年夕方から吹く風に合わせてサウンドシステムをどう調整するか……などなどのノウハウこそがフェスの要。
スタッフ全員を町中に立たせて、音が聞こえてくるかどうかを1日かけて調べたりもする。ここからここの時間は音がこの辺に流れていく。このぐらいの音圧だとちょっと厳しい。打ち込みの低音は遠くまで響くので、この時間帯は打ち込みの人に出てもらうのはやめよう。そんな迷惑対策や自然対策も出来る限りやった。
そういう部分も含めて、ロックというハードルを掲げずに、とにかくみんなが来やすい場所でやろうとか、そんなことばかりを考えていたら、女性も大勢来てくれて、今や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』はもっともチケットが取りにくいフェスと言われるようになった。
2000年頃は、ロックフェスは1人で行くモノだった。それが今では、恋人も連れて行ける、家族も連れて行けるモノになった。今や成功している大きなフェスは、地元の人にとって大きな花火大会と同じかそれ以上のイベントとして認知されているのでは。
もはやフェスはお気に入りのアーチストを見に来るものじゃない。1年に1回そこに行って、今年もそこに来れた自分たちを楽しむモノだと思う。