〈酒井さん〉
企画を考えるときに根底にあるのは「こんなことやっていたら僕が見てみたい」という気持ち。
秋元(康)さんがよく言っているのは「“見たい番組”と“見ておもしろい番組”は違う」ということ。どんなにおもしろいオチがあっても、入り口で「見たい」と思えないと視聴者は見てくれない。
〈樋口さん〉
この間、NHKでジブリのプロデューサーの鈴木さんが、その「見たいと思う入り口」は「時代性」だと言ってた。古い話だけど『学校へ行こう』という番組が始まった時は校内暴力が真っ盛りで、みんなバタフライナイフを持って「キレる子供」と言われていた。その時代性の中で『学校へ行こう』というタイトルを付けるだけで、勝手に目立っていた。
〈酒井さん〉
僕は「一番好きな映画は?」と聞かれて、先輩たちに「それじゃダメだよ」と言われながらも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と答えている。
〈樋口さん〉
僕はコメディ全般が好きで、特に「誰も傷つかない笑い」が好き。逆に暴露系のネタとかはあんまり好きじゃない。
アニメで言えば『トムとジェリー』なんか大好き。「意地悪して、その仕返しをして……」と同じことの繰り返しで、しかも全部家の中のお話。ああいうのが好き。
〈酒井さん〉
僕も『トムとジェリー』は大好き。『トムとジェリー』では本来の型を破って、すごいルール違反をする時がある。すごく強いジェリーの叔父さんがやってきて、いきなりトムをやっつけてしまったり、すごく面白い。
「ジェリーの叔父さんが実はネコより強い」なんて設定、誰が考えたんだろうと思う。決まっているスタイルがある中で、ちょっとイレギュラーなことをしようとするのがすごい。
『トムとジェリー』のエピソードで言えば、お昼寝の話も好き。おばさんがトムに「今から昼寝をするけど、私はピンの落ちる音でも起きてしまうから、騒いだら承知しないよ」と言いつける。これを聞いていたジェリーがいろんな嫌がらせをして音を立てさせようとするんだけど、結局おばさんは起きない。でも最後にピンの落ちた音でおばさんは起きてしまい、トムが怒られるというお話。
〈樋口さん〉
あの話ではジェリーがトムの尻を蹴っ飛ばしたり、熱湯をかけたりして大声を出させようとする。その時に「遠くへ行って叫べばセーフ」というルールがあって、部屋から飛び出て山の上で「いってー!!!」と叫ぶのはセーフ。あのくだらなさが良い。
そういう意味では『トムとジェリー』は、まず最初にルールを作って、そこから脱線するから破天荒にみえるのだと思う。テレビの企画でも「好きなことをやってください」と言われるのが一番困る。
酒井クンのやっている『トリビアの泉』なら「くだらなくて、役に立たないネタ」という縛りがあることが重要なのだろう。