SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年6月3日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「ライトノベル」

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 活字離れの危機が叫ばれるようになって久しい昨今ですが、実は中学生から高校生ぐらいの若者の間では「ライトノベル」と呼ばれる小説が人気を博しているのだそうですね。若者向けということでSFやファンタジーなどが多いようですが、名前通りに「軽い小説」とは言えない、読み応えのある作品も少なくないのだとか。
 若者を魅了してやまない「ライトノベル」。いったいどんな小説なのか、当店のお客さまがその魅力や背景を教えて下さいました。今日はそのお話を少しだけここでご紹介させていただきます。


新城カズマさん(作家)の

『ライトノベルの基礎知識』の話

 「ライトノベル」は、SFやミステリーのような、いわゆる「ジャンル」とは違う。他のジャンルでやっている面白そうなことや流行っていることなどを貪欲に取り込んでいるので、そういうモノを入れる「箱」のようなもの。
 基本的に若い人向け、という大原則はある。若い人向けだからこそ素早い反応が必要になるし、イラストもつけて分かりやすくする。ライトノベルと呼ばれる小説には8〜9割方、アニメや漫画的なイラストが付いている。ただ、イラストが付いているからといってライトノベルと決まっているわけではない。
 私は『ライトノベル「超」入門』という本の中で「字マンガ」という言葉を取り上げたけど、漫画的な面白さ分かりやすさ素早さみたいなものを、ライトノベルは非常に意識している。新井素子さんという作家が「アニメ“ルパン三世”を小説で表現したかった」とコメントしていたというエピソードを聞いたことがあるけど、その流れで誕生した手法だと思う。歴史的にそのあたりを捉えると、「若者に出来るだけ近づいて、買ってもらおうとしている努力の連続」で生まれたのがライトノベルだと思う。
 80年代に伝奇小説やファンタジーのブームがあって、菊地秀行さんの『吸血鬼(バンパイア)ハンターD』や夢枕獏さんの『キマイラ』、荒俣宏さんの『帝都物語』などがヒットした。この3人が陰陽師や奇門遁甲、式神といった「日本的な魔法」を広めて、ライトノベルの根っこの1つを作った。SFにしろファンタジーにしろミステリーにしろ、「いろんな面白いことを単に“面白いから”だけでやっちゃって良いんだ」ということが本格的に出てきたのが80年代だったように思う。
 本屋でライトノベルを選ぼうと思ったら、まずイラストを見るところから。カワイイ女の子やカッコイイ男の子に「おっ!」と思えるかどうか、その相性は人によりけり。それから表紙の折り返しに書いてある「あらすじ」を読んで、さらに後書きもチェックすると良い。後書きには書いている人のキャラクターが出てくるので、好き嫌いを確かめやすい。
 そして最後に、ライトノベルは読みやすいので、最初の1〜2ページを立ち読みしてもそんなに時間もかからない。それで気に入れば、レジに持っていけば良い。

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神北恵太さん(元ニフティサーブ「SFファンタジーフォーラム」フォーラムマネージャー)

『“ライトノベル”の誕生』の話

 僕は86年に社会人になったけど、そのちょっと後ぐらいから角川のスニーカー文庫を皮切りに、ソノラマ文庫、集英社のコバルト文庫などが登場しだした。これらは従来ジュニア小説とかジュブナイル小説と呼ばれていたモノよりも、少しだけ大人向けになっていた。
 具体的にどこが「大人向け」なのかと言うと、ちょっとだけHなことを書いても良い、という部分。学習雑誌よりはその辺をもうちょっと自由に、というコンセプトだった。
 そういった小説を総称する名前が当時は特になかった。ところが、そうこうしている内にその手の小説が、細かいカテゴリーに分類できるくらい増えていった。科学理論の裏付けがしっかりしている「ハードSF」、宇宙船と光線銃の飛び交うような「スペースオペラ」、魔法使いが活躍するファンタジー、いろんな作品が登場して、それらを分類する必要が生じた。
 ところが、ジュブナイルよりも上、だけど大人未満、というそれらの小説の総称はまだ確定していなくて、仕方なく「ソノラマ・コバルト系」とか「スニーカー・富士見ファンタジア系」なんて、文庫の名前そのままで呼んでいたりした。
 そんな状況がしばらく続いていた90〜91年頃に、たまたま僕はニフティサーブの「SFファンタジーフォーラム」で世話役(シスオペ)をやっていた。世話役は僕1人じゃなくて、僕と一緒にやってくれる人も何人かいて、みんなで「なにか総称を考えよう」という話になった。
 その時、いろんな候補を出したんだけど、その中には「ニート(Neat=さっぱりとした)ノベル」なんてアイデアもあった。スペルこそ違え、もしその言葉を選んでいたら、僕は今頃「戦犯」として追いかけられたかもしれない。
 そんなこんながありつつも、結局「ライトノベル」という言葉が良さそうだ、ということで落ち着いた。「別に俺は“軽い小説”を読んでるつもりはない」という読者の抗議や、「俺は“軽く”書いているわけじゃない」という作家の抗議もあった。ただ、それよりも支持してくれる読者や作家の方が多かったので、いつの間にか「ライトノベル」という言葉が定着していた。
 という経緯なので、ウチのフォーラムで「ライトノベル・ミーハークラブ」という会議室が作られたのが「ライトノベル」という言葉の発祥になると思う。
 あれから10年以上が経ち、ライトノベルという言葉もすっかり定着した。しかも、いつの間にか「ラノベ」なんて略語まで生まれている。「お父さんはそんな子は知りませんよ?!」という気分。

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今野緒雪さん(作家)の

『マリア様がみてる』の話

 私は本当は漫画家になりたかった。子供の頃から少女漫画が大好きで、お絵かきも好きだったので、ずっと漫画家になりたいと思っていた。
 でも漫画を描くほどの技術が無くて、いつしか大学を卒業し、就職して、「これはもう漫画家になれないな」というところまで来てしまった。でもそれまでに「いつか漫画にしたい」と思っていた話がいっぱい貯まっていた。
 そのままそれらを忘れてしまうのはもったいないので、とりあえずプロットだけを文章で書いてみた。そうした書けること書けること。そこで初めて「私って絵よりも文章の方が得意だったんだ」と分かった。それならいっそということで、そのまま小説にしてしまったのが私の小説家としての出発点。そして会社員として働きながら1年くらいかけて最初の作品を書き上げて、出版社に投稿したところ、そのままデビューしてしまった。
 私は銀行員だったんだけど、銀行員を7年もやっていると、「そろそろ……」なんて肩を叩かれそうなもの。転勤もあるだろうし、苦労するな、という気持ちが「ここは一発書いてみようか!」という決心につながった。
 私の『マリア様がみてる』シリーズは、ライトノベルの中では「大人の男性ファンも多い」という珍しい存在。噂では聞いていたけど、実際サイン会などを開くと、男性ばかりで女性は1〜2割しかいなかったりする。男性読者がいるというのは本当に嬉しいけど、女性読者が「えぇ?!本当にココですか?」と戸惑っているのは少し可哀想だったりもする。
 逆に、ファンレターを送ってくれるのはほとんど女性読者。男性読者からのファンレターは10通の内1〜2通あるかないか。それがサイン会になると逆転するのがおもしろい。アニメ化もしたので、それがきっかけで男性ファンも増えたみたい。
 でも基本的に『マリア様がみてる』は10代の女の子に向けて書いている作品。「お嬢様」の話なので、法律違反はさせたくないと思っている。「ファンタジー」と呼ぶ人もいるけど、自分としてはファンタジーのつもりはない。というか、私は女子校出身なので、私の学校は本当にこんな感じだった。もちろん私の時代はずいぶん前なんだけど、まるっきり架空の世界を描いている、というワケじゃない。

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野崎岳彦さん(角川スニーカー文庫編集長)

『ライトノベルの編集者』の話

 「涼宮ハルヒ」シリーズは4月からアニメ化されて、爆発的に広がった。でも実はそれ以前からスニーカー文庫の中ではヒット作として注目を集めていたし、売れていた。
 その「涼宮ハルヒ」シリーズの売り上げは現在180万部を越えたところ。ところがライトノベルの中にはもっと売れている作品がある。ライトノベルという言葉が知られる前の方がヒット作は多かったくらい。たとえば『ロードス島戦記』『スレイヤーズ』『魔術士オーフェン』などの作品がそう。『ロードス島戦記』は1巻だけで100万部以上売れている。
 今、ライトノベルという言葉が広まって、やっと10代以外の層もその存在に気がつくようになっただけ。ライトノベルという言葉を知る前に、みんな似たような作品を一度は読んでいるんだけど、卒業したり止めちゃったりして、その後忘れてしまっているだけでは。
 作っている側からすると、やっていることは昔からそんなに変わらないし、セールスだってもっと良かった時代があったので、「ライトノベルがブーム」と言われるのは少し不思議な感じ。ただ、去年から今年にかけて、多くの出版社がライトノベルを手掛けるようにはなった。
 ライトノベル・ブームと言われるのは、アキバブームやメイドカフェの増加などと関連があるかもしれない。もともと漫画やアニメ、ゲームが好きな人たちが作ってきたのがライトノベルなので、秋葉原系の文化とライトノベルは相性が良い。
 だからライトノベルにおいては、イラストは非常に重要。イラストがなかったら「ライトノベル」とは呼びたくないくらい。単なる小説だけを作っているつもりはない。編集者もしくは出版社は、イラストも含めて1つの作品だと思っている。

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時雨沢恵一さん(作家)の

『キノの旅』の話

 私が小説を書こうと思ったきっかけはイロイロあるけど、ひと言で言い表すなら「ムシャクシャしてやった」というところ。もしくは「ついカッとして」。
 大学を卒業して、しばらくは職探しをしていた。もちろん小説家という仕事に対する憧れはあったんだけど、それは「アイドルと結婚したい」というレベルの夢の話だと思っていた。
 ところが1年半、就職試験に落ちまくった。それでムシャクシャして、電撃小説大賞の募集が近づいた時に「じゃあやってみようか!」と思い立って書いた。ちなみに募集の締め切りが4月だったけど、書き始めたのは1月ぐらいだったと思う。
 とりあえず長編小説を書き始めたんだけど、なかなかうまく行かない。そこで10年以上前からひな形だけは考えてあった「キノの旅」を短編にして書いてみた。それが案外うまく行ったので、長編になるまで書きためて応募した。
 だから小説家になった理由は?と聞かれれば、「切羽詰まって」というのが本当のところ。実家暮らしだったけど、お金にも困っていたし。当時はそんな言葉はなかったけど、今で言う「ニート」に近い状態だった。
 ただ、デビューした直後は仕事(収入)がない。それで実家を出たは良いけど、家賃3万5千円の安アパートで一人暮らしだった。そしてデビューした直後は小説家になれたことが嬉しくて、とにかく書きまくった。書いたそばから編集さんに送って、1巻が出た3ヶ月後には2巻の分量が溜まった。幸運にもそこまででそれなりに人気が出たので、続きを書いても良いということになって、その後2年は部屋にこもってひたすら書き続けた。
 5巻が出る頃には増刷も掛かって、「こんなに順調で良いのかな?」と驚くほどだった。でもプレッシャーにならないように、売れているということはあまり考えないようにしている。それでも売れているということは、待ってくれる読者さんがいるので、次を書かなくちゃいけないとは思っている。
 一応、自分はライトノベル作家と言われているし、そう名乗るのが一番通りが良いのでそう名乗っているけど、ライトノベルの定義は特にない。ブランドで言うなら電撃文庫はライトノベルのジャンルなんだけど、自分で意識したことはあまりない。
 書く上で注意しているのは、読者が小学生から高校生ぐらいということで、あまり難しすぎる表現を使わない、とか。イラストが付くことが大前提になっているので、あまり表現を多くせずイラストの力を素直に借りることもある。特に主人公に関しては、表紙に主人公の顔が載っているので、百聞は一見にしかずで細かい描写は必要ない。
 ファンレターをもらうのはどんな内容でも嬉しいものだけど、特に嬉しいのが「生まれて始めて小説というものを読みました」というファンレター。自分も「小説を読むのは面白い」と思ってこの仕事に憧れたので、初めて小説を読んだ人に「面白い」と思ってもらえて、もっといろんな小説を読んでくれるようになれば、こんなに光栄なことはない。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'14" I Could Write A Book Rosemary Clooney With The Hi-Lo's Collective COL-CD-6460
18'04" When You're Smiling - The Sheik Of Araby Keely Smith Concord COD-488-2
29'54" The Message Eydie Gilberto Verve 314 557 449-2
39'25" It's Love Lena Horne BMG 09026-63604-2
47'32" A Certain Smile Astrud Gilbert Verve 314 557 449-2


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