私が小説を書こうと思ったきっかけはイロイロあるけど、ひと言で言い表すなら「ムシャクシャしてやった」というところ。もしくは「ついカッとして」。
大学を卒業して、しばらくは職探しをしていた。もちろん小説家という仕事に対する憧れはあったんだけど、それは「アイドルと結婚したい」というレベルの夢の話だと思っていた。
ところが1年半、就職試験に落ちまくった。それでムシャクシャして、電撃小説大賞の募集が近づいた時に「じゃあやってみようか!」と思い立って書いた。ちなみに募集の締め切りが4月だったけど、書き始めたのは1月ぐらいだったと思う。
とりあえず長編小説を書き始めたんだけど、なかなかうまく行かない。そこで10年以上前からひな形だけは考えてあった「キノの旅」を短編にして書いてみた。それが案外うまく行ったので、長編になるまで書きためて応募した。
だから小説家になった理由は?と聞かれれば、「切羽詰まって」というのが本当のところ。実家暮らしだったけど、お金にも困っていたし。当時はそんな言葉はなかったけど、今で言う「ニート」に近い状態だった。
ただ、デビューした直後は仕事(収入)がない。それで実家を出たは良いけど、家賃3万5千円の安アパートで一人暮らしだった。そしてデビューした直後は小説家になれたことが嬉しくて、とにかく書きまくった。書いたそばから編集さんに送って、1巻が出た3ヶ月後には2巻の分量が溜まった。幸運にもそこまででそれなりに人気が出たので、続きを書いても良いということになって、その後2年は部屋にこもってひたすら書き続けた。
5巻が出る頃には増刷も掛かって、「こんなに順調で良いのかな?」と驚くほどだった。でもプレッシャーにならないように、売れているということはあまり考えないようにしている。それでも売れているということは、待ってくれる読者さんがいるので、次を書かなくちゃいけないとは思っている。
一応、自分はライトノベル作家と言われているし、そう名乗るのが一番通りが良いのでそう名乗っているけど、ライトノベルの定義は特にない。ブランドで言うなら電撃文庫はライトノベルのジャンルなんだけど、自分で意識したことはあまりない。
書く上で注意しているのは、読者が小学生から高校生ぐらいということで、あまり難しすぎる表現を使わない、とか。イラストが付くことが大前提になっているので、あまり表現を多くせずイラストの力を素直に借りることもある。特に主人公に関しては、表紙に主人公の顔が載っているので、百聞は一見にしかずで細かい描写は必要ない。
ファンレターをもらうのはどんな内容でも嬉しいものだけど、特に嬉しいのが「生まれて始めて小説というものを読みました」というファンレター。自分も「小説を読むのは面白い」と思ってこの仕事に憧れたので、初めて小説を読んだ人に「面白い」と思ってもらえて、もっといろんな小説を読んでくれるようになれば、こんなに光栄なことはない。