SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年5月6日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「手紙」

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 パソコンや携帯のメールの普及のせいか「手紙」を目にする機会も少なくなりましたが、たまに手で書いた手紙を受け取ると、人柄や気持ちがうかがわれて温かい気持ちになれるものです。
 今度は自分の気持ちを伝えるために、親しい人やお世話になった方に手紙を書いてみませんか? どうやって書いたら良いかは、当店の常連のお客さまが教えて下さいました。本日はそんな「手紙」にまつわる様々なお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。


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永六輔さん(放送タレント)の

『手紙の楽しみ方』の話

 電子メールと手紙は別のモノ。電子メールは「メール」であって「レター」じゃない。どちらかといえば「メッセージ」に近く、「通信をする」ということ。基本的に違うモノなので、僕は「近頃の若い人は……」なんて言うつもりはないし、電子メールと手紙を比較することに意味はないと思う。
 僕でさえ、手紙を書くのは嫌なもの。嫌だから手紙がどんどん電報みたいになっていって、用件を2〜3行書くだけになっている。僕は主にハガキを使っているけど、住所の方が本文よりも長かったりする。
 それだけ文章が短くなってしまったのは、1日平均50通以上の手紙を書いているから。100通を超えることもしばしば。住所も全部手書きで書いている。ラジオの仕事をしているので、手紙を書いて住所を覚えて、投書をもらった時に「あ、あの町か」とイメージを膨らませるためにそうしている。
 個人情報保護法じゃないけど、手紙だと個人情報が……いやメールの方が……とか、そもそも「メール」と「レター」の違い、「メッセージ」と「コミュニケーション」の違いなど、「手紙論」が書けなくなっているのが今の状況。手紙のつもりでメールを書いている人もいて、その人にとってはメールが手紙なのだから、それに対して「そんなもの手紙じゃない!」と言う筋合いのモノじゃないし。
 僕自身の手紙は「前略」もなければ、季節の挨拶もない。それが相手にとって必要なら書くけど、それで評価が高くなるということもない。書くのは当人の趣味なんだから、そこで押しつけるのは良くない。
 昔、銀座の伊東屋が、包み紙にチャーチルの「申し訳ないが、今は短い手紙を書いている時間がない」という有名な一節を入れていた。伊東屋や丸善には文房具、すなわち手紙の道具が昔から揃っていたお店。それくらい「手紙の周辺」で楽しんでいる人がたくさんいる。
 万年筆などの筆記用具を選ぶ、紙を選ぶ、封筒を選ぶ、そして切手を選ぶという楽しみもある。「この人にはこの切手にしよう」なんて考えると、せっかく選んだ切手に消印を押されたくなくなって、わざわざ郵便局へ持っていき「ココへ押して下さい」と注文をつける人もいるくらい。
 実際、僕のところに来た手紙には、80円切手を使わずに、10円や20円の切手を組み合わせて、僕好みの切手を揃えてくれた手紙も届いたりしている。しかもそういう手紙は、消印が切手のデザインを邪魔しないところに指定してある。こういう楽しみ方は想像を絶する。
 昔、滝沢修さんや宇野重吉さんが元気だった頃の劇団民藝も「劇団のお知らせ」で切手に凝っていた。中の「次はこの芝居をやります」みたいなお知らせを読んで、はじめて「だからこの切手なのか!」と分かるという凝り方。こんな風に、手紙の周辺を楽しむことこそが、手紙の楽しみ方とも言える。

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石川亜沙美さん(モデル/女優)の

『父からの手紙』の話

 デビューしたのは12歳の時。中1の夏休みに『国民的美少女コンテスト』で合格して、モデル部門賞をもらったのが最初だった。
 私自身、そういう仕事には全然興味がなかったし、勝手に応募した父も冗談のつもりだったらしい。新聞に募集が出ていて、私の背が高かったから応募してみたのだとか。そうしたら私が知らない間にどんどん受かって、最後に東京へ行かなくてはいけなくなった段階で、その話を初めて聞かされた。
 そんな感じで東京で暮らすことになった私の元には、実家の静岡から手紙が届いている。毎月、実家の母から食料が段ボールで送られてくるんだけど、父が昔から詩や手紙を書くのが好きで、その段ボールにひそかに手紙が忍ばせてくる。
 この父の手紙が面白くて、母に見つかると段ボールから出されてしまうので、小さく畳んで隅の方に入れてある。内容は晩酌で良い気分になって書いたと思われる「人生とは」「男とは」「野球とは」なんて熱い語り。それを小さいメモのような紙に書いて送ってくる。たまにA4くらいの紙に、筆ペンを使った達筆な字で書いてあったりもする。
 そんな風にして送られててきた手紙は全部取ってある。たまに見返すんだけど、中には何のことが書いてあるかわからなかったりする手紙もある。たとえば「失敗とは、恐れずに挑戦しないこと」とか。一見それっぽい言葉だし、それが筆ペンの字で書いてあると「そうか、逃げちゃいけないんだ」なんて納得しちゃうんだけど、冷静になると「これは何を言いたいんだろう?」と考えてしまう。
 その父の手紙を、いくつか手帳に挟んで持ち歩いている。「雨は天から、涙は目から、生きる喜びは心から」なんていう言葉も考えされられた言葉。「今、太陽の真下に、君の名を書く」と書いてあった時も「誰の名前を書くの?お父さん寂しいの?」と考えてしまった。
 子供の頃から姉2人が父のことをあまり好きじゃなかったので、私が東京に出て以来、父は毎晩1人で野球を見ながら飲んでいる、という噂も聞いている。もしかしたら父の手紙は、私に対してのメッセージと言うよりも、自分に対するメッセージなのかもしれない。

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岩井正さん(銀座『伊東屋』)の

『便箋と封筒』の話

 パソコンや携帯のメールが普及して、文房具の手紙向け商品の売れ行きが鈍るか……と思いきや、意外なくらい売れ行きが良い。やはりここ一番では手紙を書く人が多いらしい。
 お店にサンプルを置くと売れ行きが違うので、サンプルを書く時は気合いが入る。母の日が近ければ「お母さん元気?もうすぐ母の日だから、お母さんが大好きなチューリップの柄のセーターを送ったよ」なんてチューリップの柄の便箋に書いたり。他にも「おかげさまで三女の娘が高校に入りました。お母さんから頂戴したバッグを持って元気に通っています」なんてサンプルを見て、娘さんが「あ、お母さんに手紙を書こう」と思ってもらえたら嬉しい。
 ウチで輸入している『クレイン』というメーカーの便箋はコットン100%。紙だと何十年もかけて木を育てて、パルプにして、漂白して……という風に、手間もかかるし環境に優しくない部分もある。これがコットンなら1年で採取できて、もともと白いから薬剤を使って漂白する必要もない。煮れば再利用も可能なので、非常に環境に優しい。
 このクレインの紙、ちょっとゴソゴソした感じで肌触りもすごく良い。実はアメリカではドル紙幣にも使われているくらい。アメリカではクレイン・カンパニーがドル紙幣の元となる紙の生産から印刷までを手掛けている。とても素晴らしい紙なのでオススメ。
 手紙を留める時のロウは「シーリング・ワックス」、日本語なら「封蝋(ふうろう)」と言う。創業102年の伊東屋が最初に出したカタログにもシーリング・ワックスは載っている。このシーリング・ワックス、エジプト時代までさかのぼると、キレイな粘土を固めて手紙を封印していたのだとか。それが後にヨーロッパで粘土から蜜蝋(みつろう)に変わる。さらに蜜蝋だけだと弱かったり、貴重で高価なモノなので、いろんな混ぜモノを工夫されて現在に至っている。今でも一番高級な封蝋には蜜蝋が使われていることが多い。
 シーリングの時に使うスタンプは、自分のイニシャルが入ったオリジナルが人気。5,250円で、2週間で作れる。フランスから輸入しているシーリング・ワックスは12色あって、それぞれ672円。温めて封筒にこすりつけるタイプなので、失敗も非常に少ない。ぜひ試してみて欲しい。

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小笠原敬承斎さん(小笠原流礼法宗家)の

『手紙の作法』の話

 「前略」というのは、その字の通り「前を略する」という意味なので、目上の人や丁寧に手紙を書く時は「拝啓」を使う方が良い。それから女性なら「前略ご免下さいませ」と一言添えることで、女性らしさを出すこともできる。そんな感じで「この場合は絶対にコレ」というよりは、いくつかバリエーションを持って状況に応じて使い分けるのが良い。
 「前略」と書いた場合には、「さっそくではございますが」とすぐに用件に入り、「拝啓」で始めた場合は時候の挨拶などを書く。たとえば今の時期なら「新緑の候」とか「緑の美しい季節になりましたが」など。続いて「ますますご清栄のこと」と書いた場合は「お仕事がますます盛んで」という意味で、「ますますご清祥のこと」と書いた場合は相手の健康を気遣って「お元気だと思いますが」という意味になる。この使い分けは相手との関係で考えれば良い。
 最近はあまりやる人がいないけど、手紙に自分のことを書く時は、あまり高い位置から書かずに、自分の慎んだ気持ちを表すために中間よりも下から書き始める、という表現もある。逆に相手のことを書く時には文末にならないように、下が空いてしまっても上から書き始める。目上の人に対してそういう気配りをして、下の人に対しては気にせず1行ずつ書く、という使い分けをしても良い。
 室町時代から伝わる『書札之次第』という手紙の作法についての伝書には、「礼を尽くすという意味で、もう1枚、白紙の紙を付ける」という習慣が昔から行われていたことが書かれている。これは「1枚で終わってしまったけれど、もっと書きたいという気持ちがあった」という表現で、しかも昔は紙が高価だったため、それだけでも礼を尽くすということになっていた。最近は必要ないと思われがちなこの習慣だけど、やはり手紙が1枚で終わってしまった時には、もう1枚、白紙の紙を付けた方が良い。
 手紙の中で「○○様」と書く時、実は「様」には3種類ある。「様」という字の右下の「水」の部分が「永」になっている「えいさま(樣)」、その部分が「次」になっている「つぎさま」、普通の「様」を「すいさま」とそれぞれ呼ぶ。目上の人に使う時は「えいさま」が良いし、同僚の人に「つぎさま」を使えば普段よりちょっと礼を重んじた形になる。

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吉田安之さん(行政書士)の

『内容証明郵便』の話

 内容証明郵便とは「ある内容の文章を、いつ、誰が、誰に出した」ということが全部証明される文書。
 だから同じ文書を3部作る必要がある。1つは相手に届き、1つは自分の手元に戻る、そして1つが郵便局に保管される。3部の文書を郵便局に持っていくと、郵便局員さんが全部同じかどうかチェックして、郵便局長印を押して送られる。
 内容証明はあまり良いことでは使われない。「解約しろ」とか「お金を返してくれ」とか、なんらかの法的な意味合いを後ろに持たせるようなことが多い。私も悪徳商法の解約を良く仕事で引き受けるんだけど、クーリングオフの条件は「購入後8日以内に文書を出す」ということになっている。ところが普通に文書を投函しても、悪徳業者に「届いてません」と言われてしまったら誰にも証明できない。そこで内容証明を使って、言い逃れをできなくする。
 それ以外にも、「○○日に督促しました」ということをちゃんと証明できれば、返ってこなかった時に、後日利息を請求できる。「時効」というケースもあって、なにもしないと向こうがお金を返さなくて良くなってしまうことがある。その時効を止めるためには内容証明が一番有効。
 内容証明郵便を作ろうと思ったら、フォーマットが決まってるのでそれに沿って書く必要がある。1枚の文字数も決まっていて、20文字×26行。3部作るのはコピーで良い。文書の中に差出人と受取人の住所と名前も書かなくちゃいけないし、その住所と名前は封筒とも一致しなければならない。その他にも細かい規則がいくつかあるけど、それを満たしていれば何を書いても内容証明郵便は出せる。ラブレターやプロポーズを内容証明で出しても構わない。
 1通の値段は1470円。ただ、普通の人は内容証明なんて書いたこともないだろうし、見たことも貰ったこともないと思うので、行政書士に依頼した方が楽だと思う。手数料はだいたい3〜5万円程度。
 内容証明郵便は、慣れてない人が受け取るとちょっと嫌な気分になる。その結果、態度が改まって、大事になるのを未然に防ぐという心理的な効果も大きい。
 もしラブレターを内容証明で出すなら、封筒も便箋もどんなモノを使っても構わないので、メルヘンチックなラブレターらしいラブレターも出せる。ただ、内容を郵便局員さんがチェックするので、そこがけっこう恥ずかしいと思う。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'16" I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter Frank Sinatra Capitol CP32-5561
19'09" Tell All The World About You Peggy Lee Capitol 7243 4 96729 2 5
30'14" Soon Joe Derise Bethlehem 20-40012
41'47" There Will Never Be Another You The Four Freshmen Capitol 72438-19175-2-7
48'02" Three Little Words Carmen McRae Decca GRD-610


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