WBCの優勝以降、何度「おめでとうございます」と言われて乾杯したかわからない。今でもその余韻は続いている。
みんな応援はしていても、まさか世界一になるとは思っていなかったみたい。正直、父(王監督)も家では「とりあえずアメリカ(2次リーグ)には行かないとなぁ……」と言ってたほど。
「サダハル・オウ」の名前は向こうでもずいぶん知られていて、監督として出場したことにもずいぶん驚かれたらしい。私もそういう場面に出くわしたことがなかったのであまり知らなかったけど、向こうではお爺ちゃんが野球少年に戻ったような雰囲気で父のサインを求める姿を見かけた。父は、向こうでは日本とはまた違った捉え方をされているらしく、さらに今回、監督として世界一になったことで、また株が上がっているみたい。
イチロー選手も、おそらく日本にいた頃は、今ほどには父に対する想いみたいなものはなかったのでは。でもメジャーに行って、向こうで父の凄さを実感して、それが「王監督に恥をかかせるわけにはいかない」という発言に繋がったのだと思う。父もあの言葉を聞いてすごく嬉しかったらしい。
イチロー選手といえば、WBCで世界一になって、シャンパン・ファイトなども全部終わり、ホテルに戻ったその夜。私が父と一緒に決勝戦のビデオを見ていたら、イチロー選手が回り込んでホームベースにタッチするシーンを見て、父が「イチローはすごくセンスがあるんだよなぁ……」と呟いていた。
それから福留選手が韓国戦で打ったホームランに関しては「打った福留がスゴイ」と言っていた。ちなみに代打で出したことよりも、先発だった福留選手をレギュラーから外す方が勇気がいったのだとか。さらに言えば「準決勝のホームランよりも、決勝戦でヒットを打ったことの方が嬉しかった」とも言っていた。
実は父は、かなり喜怒哀楽をハッキリ出す人で、巨人の監督時代はそれをずいぶん抑えている風だった。でも博多に行ってからは喜ぶ時は喜ぶし、怒る時は怒るようになった。より人間らしくなったというか、今の父だから日本代表チームの監督も務まったし、世界一にもなれたんだと思う。
選手ともずいぶん仲が良いみたいだった。決勝戦の前夜、監督主催の食事会があったんだけど、けっこう和やかな雰囲気で、父がお酌をしたりもしていた。食事会の前は「決戦前夜だし、私が行ってもいいのかな?」と思ったんだけど、行ってみたら「じゃ、明日は頑張りましょう!かんぱーい!」で楽しく飲み食いしているだけ。しかもアメリカだからビールもピッチャーでドーン!お肉もドーン!ロブスターもドーン!みたいな席で、選手の家族も一緒にみんなで和気あいあいと食事をしていた。私も大塚選手の家族と一緒のテーブルで楽しい時間が過ごせた。
ただ、最後に世界一になれてすごく良かったんだけど、日本代表チームはずいぶん待遇は悪かったみたい。アテネ五輪の長嶋ジャパンの時は、有名な日本料理屋のスタッフがチームに帯同して、食事はすべて豪華な和食が出ていた。ところが今回は選手に1万円ぐらいのプリペイドカードが渡されただけ。それを使ってホテルのレストランで勝手に食べてくる、というシステムだった。それをオーバーしたらもちろん自腹。選手が「あといくら残ってる」なんて計算してる姿はどうかと思った。
そんな環境や誤審といった逆境があったので、結果的に選手たちは結束したという側面はあったらしいけど。