SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年3月18日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「もっといい音を!」

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 先週話題になっていた「モーツァルト」を聞いてみたのですが、今ひとつその良さがわかりません。どうもその原因は、我が家の安いCDラジカセにあるようです。
 そこでここはひとつ奮発して、ちょっと良いオーディオを揃えてみようと思ったのですが、そっちはそっちでまた奥の深い世界のようで、常連のお客さまから非常に興味深いお話を教えていただきました。
 せっかくなので、今日はお客さまに教えていただいた「オーディオ」にまつわるお話をここでご紹介させていただきます。きっと皆さんの参考にもなると思います。


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傅信幸さん(オーディオ評論家)の

『いい音』の話

 「いい音って何ですか?」という質問をよくされるけど、「いい映画なんですか?」という質問と同じくらい難しい問題。
 物理的に歪みが少ないとか、低音から高音まで幅広い周波数特性であるとか、特性曲線がうねっていない、という基本的な条件はある。たとえば特性曲線の真ん中だけが出っ張っていると、鼻をつまんだ声に聞こえる。そういう音を「ノーズ(鼻)」から派生した言葉「ナザル」と表現する。
 「ハンティ」と言ったら中音だけ。たとえば電話の音がそう。電話の音は人の声だけが聞こえればいいので、高温も低温も聞こえない。そのため、楽器の音を流すと全然大した音がしない。だから着メロはシンセサイザーで音を作る必要があった。
 そういった物理的な要素はいろいろあるけれど、1906年に真空管が誕生して、音を電気的に増幅する「オーディオ」になって1世紀が経つ。かつてエジソンの蓄音機などは、長いメガホンのようなものを使って音響的に音を増幅していた。それがオーディオになって100年、どれもある程度の品質はあるようになった。
 とはいえ、やはりオーディオで圧倒的に音が変わるのはスピーカー。だから予算の多くはスピーカーに割り振って、他はまあまあのモノを揃えるのがいい。さらにそこに「味わい」みたいなものを加えるのがアンプだったりプレーヤーなので、とにかくスピーカーが悪ければお話にならない。
 たとえばお酒にもいろいろある。その中で「俺はワインが好き」というレベルの話がスピーカー。そのワインの中で何年モノだとか、ウイスキーだったらモルトがどうの……という話がアンプやプレーヤーのレベル。とにかく最初はスピーカーありき。
 そういえばこの間、ちょっとおもしろい話を聞いた。普通、iPodをスピーカーに繋ぐには、アンプで増幅させる必要がある。ところがドイツのあるスピーカーは非常に能率が高くて、普通のスピーカーに較べて10倍の音が出る。そこでメーカーの担当者がそのスピーカーにiPodを繋いでみたんだとか。
 するとアンプもなしでガンガン音が出る。「これならアンプもいらないじゃないか」と思ったものの、音がイマイチだった。そこでものすごくこだわった材質のケーブルを作ってiPodを繋げてみたら、これがそこそこいい音になった。
 でもそのスピーカーは900万円くらいする。ケーブルも15万円くらい。しかもこだわりにこだわったケーブルは硬くて、手を離してもiPodが床に落ちないくらいの強度があった。
 このスピーカーとケーブルとiPod、オーディオショーに出品したら「けっこういいじゃないか」なんてみんな言ってたらしい。

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國崎晋さん(『サウンド&レコーディング・マガジン』編集長)

『ヘッドホン』の話

 ヘッドホンにもいろいろあって、たとえばプロ用のヘッドホンにはスタジオでエンジニアやミュージシャンが使うために開発された「スタジオ・モデル」もある。このプロ用のヘッドホンは「気持ち良く聞かせる」よりは「どんな音が入っているか全部わかるように」というコンセプトで作られている。これを「解像度が高い」と表現するんだけど、そういう部分に特化したヘッドホン。
 一方、「ノイズ・キャンセラー」というヘッドホンは、周囲の雑音を打ち消してくれる機能がある。電車や飛行機でヘッドホンを使っても、周囲の雑音がうるさくて音に集中できなかったりする。このヘッドホンはそれを解消してくれる。
 このノイズ・キャンセラーにはマイクがついていて、周りの音を拾って逆相にしてヘッドフォンから流すので、周囲の雑音が打ち消される、という仕組み。周りの音が気にならないので、音量を大きくしなくてもちゃんと聞こえるというメリットもある。最近流行りの耳栓(カナル)型のヘッドホンも同じような効果があって、音量を小さくできるので耳が痛みにくい。
 耳の形や耳の穴の形は人それぞれなので、ヘッドホンが合う合わないという問題は必ずある。そこで最近はカナル型の先がいろいろ用意されていて、その人に合わせて選べるような仕組みもある。プロに至っては「耳型」を取って、自分専用のヘッドホンを作る人もいる。
 自分専用のヘッドホンを作る時は、シェーバーのクリームみたいなものを耳に入れ、3分ほど待って「耳の型」を取る。その型を元に自分の耳に合ったヘッドホンを作る。本来はステージでイヤホンをしなきゃいけない時に「目立つと格好悪いから」という事情で作られたヘッドホン。実際にしている人も多いので、今度ライブを見る時に耳に注目してみてほしい。
 この自分専用ヘッドホン、以前はアメリカまで行かないと耳型を取れなかったんだけど、最近は日本でもそういうサービスをするところが出てきた。値段は数万円程度。

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石田衣良さん(作家)の

『オーディオ・マニア』の話

 中学校に入ったばかりの頃「ラジカセブーム」があって、欧米のポップスを聞いては「なんて面白い音楽があるんだろう」と夢中になった。もちろんメインはエアチェック。膨大な量の生テープを買った。
 そして高校の終わりから大学にかけて、第1期の「オーディオブーム」があった。59800円のスピーカー、69800円のアンプやプレーヤー、一通り揃えて30万円くらいで始めるというのがスタンダードだった。僕も大学に入ってすぐにそれを揃えて、ずっと聞き続けた。僕が買ったのはパイオニアのスピーカー、DENONのプレーヤー、ONKYOのアンプ、東芝Aurexのテープレコーダー、そしてDENONのDL103というMCカートリッジ。これらは今でも忘れられない。
 しばらくしてCDになった頃は、欧米のポップスがつまらなくなってしまった時代でもあったので、あまり熱心ではなくなった。でも20代後半になってクラシックを聞くようになりオーディオ熱が再発。生の音は精度を追求していけば果てしないので、それが面白くてCDプレーヤー、スピーカー、アンプを延々と買い換えるようになってしまった。
 そうなると今度は海外のメーカーに目が行くようになる。僕はデザインも好きなので「このツラをずっと見せられるのか」と思うとどんなに音が良くても嫌になってしまう。そうやって行き着いた今のセットは、CDもコンバーターとトランスポートに分かれているマークレビンソンというメーカーで、アンプはジェフローランド、スピーカーはウィルソンオーディオを使っている。
 最近のオーディオはどちらの道から登っても良いモノは良いので、ちゃんとした音を楽しめるようになっている。そして5万円のセットから50万円のセットに変えると「音がまったく変わった」と誰でも感じられる。音だけじゃなくて、録音した時の空気の感じ、この部屋は暖かいとか寒いとか、天井が高いとか、こいつはちょっと機嫌が悪い、みたいな部分まで生々しく感じられるようになる。
 でもさらに50万円から500万円にグレードアップしても、10倍良くなるかと言われるとそんなことはない。値段が上がるごとに満足の曲線は下がっていく。そんな果てしない無駄遣いだからこそ面白い。
 オーディオは道具なので、使い手によってその価値は大きく変わる。スピーカーが2つあったとして、その置き方をちゃんとするだけで「えっ?!」と思うくらい音が変わる。スピーカーにはカメラと同じで「ピントが合う距離と角度」があるので、それを出すと本当に違う。低音は体を揺するようになるし、スピーカーの左右のさらに外側からパーカッションの音が聞こえてくる。それでいて、真ん中で歌っている人はビチッと動かない。それこそちゃんとした人間のサイズになる。

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ゴンザレス三上さんとチチ松村さん(GONTITI)の

『理想のスピーカー』の話

 僕たちが某FM局で収録していたら、スタジオに撤収されかけている古いスピーカーがあった。それがビックリするくらいいい音がして、自分たちのCDをかけて「こんないい音楽だったっけ?」と思ってしまったくらい。
 そのスピーカーはDiatoneの製品で、本当に音がふくよかというか豊かというか、涙が出そうになったほど。やっぱり機材というのは大切だと思った。いろんな地方を回ると同じスピーカーが残っていることもあるけど、どれもいい音がする。いわゆる「名器」なのだろう。
 でもそのスピーカーは本当に古いので、どこでもスタジオの隅に追いやられて転がっている、みたいな状況。よっぽどもらって帰ろうかといつも思うんだけど、なにせ大きいので担いで帰るというわけにもいかないのが残念。
 結局、オーディオ専門店へ行って「あ、この音いいな」と感じた瞬間にダメなんだろうと思う。それは音楽の中の一部分が突出してきらびやかに聞こえているだけ。でもそのスピーカーは音楽全体を味わうことができる。音は決して硬くなく、柔らかくて、それでいて籠もっているわけではない。すべてを兼ね備えたスピーカーだった。
 現実問題、家ではとある雑誌のリスニング取材で、スタジオに入って聞いたスピーカーのシステムがすごく良かったので、そのままのセットを買って使っている。ところがなかなかスタジオで聞いた感じにならないのが悩みの種。スピーカーは長い間鳴らさないと本来の性能を発揮できないという部分もあって、いろいろ苦労している。
 実は2人とも「スピーカーの正面に座って聞く」みたいなのよりも、間接音で聞いている方が好き。スタジオでそのスピーカーを試した時は、正面に座っていても間接音のような優しい音が鳴るのが気に入った。それでなおかつ綺麗に聞こえる、というのが理想。

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川又利明さん(「ダイナミックオーディオ5555」店長)

『ハイエンド・オーディオ』の話

 ウチで扱っている製品は、たとえばフランスの「モスキート」というメーカーから出ている「ネオ」というスピーカーだったり、TEACの高級ブランド「エソテリック」のCDプレーヤー、それからオーストラリアの「ハルクロ」というメーカーのアンプ、などなど。
 ハルクロはもともと地雷探知機のメーカーで、社長がエンジニアとしての知識と経験を元にアンプを作ってしまったという、非常にユニークなメーカー。電気的な技術と開発力を趣味に活かして、非常に面白い製品を作っている。
 オーディオの音を左右するのは回路だけじゃない。シャーシやケースの重厚さ、電源の充実、振動対策、最近では外部からの電磁波の影響をいかに内部を守るか、そういったノウハウも含めた総合的な技術によって音質が作られる。
 スピーカーも昔と違って、ずいぶん変わった形になってきた。これは車が30年前は箱形の四角い車ばかりだったのに、今は流線型でなめらかなデザインになったのと同じようなもの。音波が空気中に広がっていく時には丸く球状に広がっていくので、四角いスピーカーだと角のところで乱反射を起こしてしまう。そこでスピーカーの形も流線的なカーブを帯びた形に変わってきた。
 古くは、スピーカーは部屋のインテリアとして溶け込むため、家具調でなければならなかった。インテリアとして、木工技術を駆使して家具と同じようなデザインや美しさが求められた。しかし木で作るということに工作の限界があった。それで今は材質が大きく変わり、金属と強化プラスチック(FRP)が使われるようになり、自由なデザインが可能になった。
 木のスピーカーは木のパネルを組み合わせれば良かったけど、今のスピーカーは型を作って生産する。さらに塗装も何段階にも渡る工程があって、中には輸入高級車とまったく同じ塗装をしているモノもある。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'47" The Sweetest Sounds Eydie Gorme CBS/SONY 32 DP 696
19'21" Fascinating Rhythm Mel Torme Bethlehem COCY-9937
31'14" Let's Face The Music And Dance Doris Day Columbia 487189 2
39'43" Too Close For Comfort Frank Sinatra Capitol TOCP-8131
47'45" I Hear Music Peggy Lee Capitol 7243-8-54543 2 5


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