「いい音って何ですか?」という質問をよくされるけど、「いい映画なんですか?」という質問と同じくらい難しい問題。
物理的に歪みが少ないとか、低音から高音まで幅広い周波数特性であるとか、特性曲線がうねっていない、という基本的な条件はある。たとえば特性曲線の真ん中だけが出っ張っていると、鼻をつまんだ声に聞こえる。そういう音を「ノーズ(鼻)」から派生した言葉「ナザル」と表現する。
「ハンティ」と言ったら中音だけ。たとえば電話の音がそう。電話の音は人の声だけが聞こえればいいので、高温も低温も聞こえない。そのため、楽器の音を流すと全然大した音がしない。だから着メロはシンセサイザーで音を作る必要があった。
そういった物理的な要素はいろいろあるけれど、1906年に真空管が誕生して、音を電気的に増幅する「オーディオ」になって1世紀が経つ。かつてエジソンの蓄音機などは、長いメガホンのようなものを使って音響的に音を増幅していた。それがオーディオになって100年、どれもある程度の品質はあるようになった。
とはいえ、やはりオーディオで圧倒的に音が変わるのはスピーカー。だから予算の多くはスピーカーに割り振って、他はまあまあのモノを揃えるのがいい。さらにそこに「味わい」みたいなものを加えるのがアンプだったりプレーヤーなので、とにかくスピーカーが悪ければお話にならない。
たとえばお酒にもいろいろある。その中で「俺はワインが好き」というレベルの話がスピーカー。そのワインの中で何年モノだとか、ウイスキーだったらモルトがどうの……という話がアンプやプレーヤーのレベル。とにかく最初はスピーカーありき。
そういえばこの間、ちょっとおもしろい話を聞いた。普通、iPodをスピーカーに繋ぐには、アンプで増幅させる必要がある。ところがドイツのあるスピーカーは非常に能率が高くて、普通のスピーカーに較べて10倍の音が出る。そこでメーカーの担当者がそのスピーカーにiPodを繋いでみたんだとか。
するとアンプもなしでガンガン音が出る。「これならアンプもいらないじゃないか」と思ったものの、音がイマイチだった。そこでものすごくこだわった材質のケーブルを作ってiPodを繋げてみたら、これがそこそこいい音になった。
でもそのスピーカーは900万円くらいする。ケーブルも15万円くらい。しかもこだわりにこだわったケーブルは硬くて、手を離してもiPodが床に落ちないくらいの強度があった。
このスピーカーとケーブルとiPod、オーディオショーに出品したら「けっこういいじゃないか」なんてみんな言ってたらしい。