SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2006年3月4日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「デキる人の仕事部屋」

image

 デキる人の仕事部屋って、格好良いというイメージがありますよね。当店を訪れた仕事のデキるお客さまにそんな話題を持ちかけてみたら、「いやいや、書類の山ですよ」と。世の中にはイメージ通りにいかないこともあるようで……
 もちろん中には、格好良い仕事部屋をお持ちの方もいらっしゃいます。そんな「仕事部屋」に関する様々なお話をお客さまが教えて下さったので、今日はそのお話を少しだけここでご紹介させていただきましょう。


image
隈研吾さん(建築家)の

『仕事部屋の設計』の話

 自分の仕事場を設計する時に、最初に考えたのは「空を感じられる、風を感じられる場所で打ち合わせをできるようにしよう」ということだった。打ち合わせで人と話す時は、気分の良い場所で話すと気分の良い話ができる。作業だったらギュッと押し込めたような場所でも良いんだけど、人と人のコミュニケーションは空間にものすごく左右されるから。
 それで僕の事務所は、4階の木のデッキの空間からまず設計を考えた。そこからは後ろのお寺や青山墓地が見渡せる。その景色の良さを活かすことが設計の出発点。
 普通、ビルの一番上は空調機の室外機が並ぶ“屋上”になるもの。でもウチの事務所はその室外機を4階のさらに上に積み上げてしまって、木のテラスを広々と作った。その木のテラスの一部のような感じに作られているガラスの箱の中で打ち合わせができるようになっている。
 その下の2〜3階に関しては、自然光の入り方を考えた。自然光が入ってくると人間は詰め込まれていても気持ち良く仕事が出来る。パソコンの画面は見づらくなるかもしれないけど、“考える”という作業をする時は自然光があった方が人間の脳は活性化する。
 さらに仕事の都合で2〜3階を行ったり来たりするんだけど、そのための階段を外に付けた。エレベーターもあるけど、エレベーターホールも外。移動する時は必ず外の空気に触れるようにした。これも“考える”という作業をする上ではずいぶん違う。だから自分のデスクでアイデアに詰まった時は、わざわざ4階まで行く。すると外気を感じてまた違った考えが浮かぶ。晴れの日なら緑の匂い、雨の日だったら雨の匂い、そういう自然を体で感じるのが非常に重要。
 最近の日本のオフィスは完全に人工空間になりつつある。これでは発想が行き詰まると思う。たとえコンクリートで囲まれた都会でも、上を見上げれば空がある。それをうまく使えば、見違えるような空間にすることができる。空を見上げれば光が差してきて雲が流れている。ちょっと隙間があれば風が吹き抜けていく。それをどうやって活かすかが技術であって、「あそこは場所が良いから……」と括ってしまうのはやめてほしい。
 僕の設計した建物の写真を見て「良い場所ですよね」なんて言う人もいるけど、実は最初に行った時は「えっ?!この場所に建てなきゃいけないの?!」と思うような場所の方が多い。でもその場所の可能性をちゃんと考えば、どんな場所でも良い場所に生まれ変わることはできる。

【Hot Link !!】





image
石田衣良さん(作家)の

『作家の仕事部屋』の話

 3月の末ぐらいに引っ越しを計画している。それで仕事場が充実……すればいいんだけど、ちょっと広くしすぎてしまったので、冬は寒そうだし、夜はすごく寂しいかもしれない。
 今の仕事場が17〜18畳くらい。それが新しい仕事場は約3倍になる。テレビのコメント収録や新聞・雑誌の取材などを自宅でするので、あちこちのコーナーでいろんな写真を撮れるようなポイントを多くして欲しい、と注文したら、自宅の地下1階をそうなってしまった。
 音楽が好きなのでオーディオルームも兼ねているし、昼間の間はほぼそこで過ごすことになりそう。本棚も長さで言えば12〜13mくらい。L字型になっていて、四角いボックスシェルの真っ白な本棚が続いてる。
 部屋の奥がステージみたいにちょっと高くなっていて、そこにテーブルがある。床は真っ白なタイルで、壁も白。ものすごく広い手術室みたいな感じで、注文通りの設計ではあるけれど、無駄に広くてもったいなかったかな……と思っている。
 別に白が好きだから、というわけじゃなくて、そこまでやったら色が入れにくくなってしまった。一応、差し色はしてあって、トイレのドアが赤だったり、ミニキッチンのタイルが緑だったりはするけど。
 僕のテーブルは部屋の中心に向いていて、目を上げれば12mくらい先に奥の壁が見える、という感じ。
 特にこだわりがあってこういう造りにしたということはなくて、そこの器に応じて暮らせばいいと思っている。ただ今は仕事が立て込んでいるので、こうしてしまった。1日に取材が5〜6件、ということも珍しくないし。原稿はテーブルさえあれば書けるので、本当に取材のために面倒なことになってしまった。
 できれば身軽に引っ越しできるくらいの、ごく少量の好きな本を持って気軽に暮らしたい、というのが本音。設計の一番最初の時に「永遠に完成しない図書館の一室」と説明したけど、そこを本で埋める気はない。
 もう1つ設計で注文したのは「天井を高くしてほしい」ということ。だから天井の高さが約3m50cmもあるけど、通常のマンションで2m70cmもあれば相当高い方。それで電球を交換するのにプロ用の7尺の脚立がいると言われてしまった。気持ちは良いけど、さすがにやりすぎたかも。

【Hot Link !!】





image
野地秩嘉さん(作家)の

『いろんな仕事場』の話

 手を使う仕事の人と、頭を使う仕事の人では、如実に性格が表れるというか、仕事部屋に大きな違いがある。
 手を使う仕事というのは、画家、刀匠、寿司屋、靴磨き、床屋など。こういった仕事をしている人たちの仕事場はすごく整頓されている。一流と呼ばれる人なら道具がゴチャゴチャしていることなんてまず無い。包丁でも筆でも「この場所にこれがある」とわかっていないと仕事にならないのだろう。
 一方、頭を使う仕事というのは、経営者や作家。そういう仕事をしている人の仕事場はメチャクチャ。別に「ここにこれがある」と決まっている必要はないし、何かを探すのも考えながらだったりするので、それでも構わないのでは。
 僕の場合「考え終わってあとは書くだけ」という時はけっこうちゃんと整理している。でもやっぱり考えている間はいろんな本がその辺に積まれていたりしている。
 最近、千住博さんという画家と一緒に本を書いた縁もあって、彼のニューヨークのアトリエを見せてもらった。本当に整頓されていて、キレイで、その仕事部屋でご馳走になった料理もおいしかった。画家というのは大きな作品になると肉体労働だし、助手もいるので、ちゃんと食べないと気力が充実しないのかもしれない。
 その千住さんの仕事部屋はとにかく広かった。高校の体育館とは言わないけれど、バスケットボールはできそうな広さ。でも千住さんに限らず、今の一流画家のアトリエはやたらと広くて、ビルの1フロアをまるごと使っていたりする。いっぱい仕事をしなきゃいけないから、その広いアトリエにいっぱい作品が置いてある。
 ニューヨークでそれだけ広いフロアを借りるのは高いだろうけど、それだけの仕事があるということ。千住さんの場合はバック・オーダーが500枚あると言っていた。広いアトリエに、日本画の絵の具を調合する場所、絵を乾かす場所、いろんな場所があって、日本画用の岩絵の具の香りが漂っていた。
 他の仕事場といえば、札幌の寿司屋『すし善』のカウンターも印象深い。普通のお寿司屋さんのようなガラス・ケースが無く、カウンターの一部がくり抜かれていて、そこにネタが仕舞われているので、握っている手元が見える。この方式を考えたのが『島善』で、後に高級な寿司屋がこぞって真似をするようになった。
 横浜の洋服屋『フクゾー』のデザイン室と会議室を見せてもらった時は、窓を開けると海の匂いがするのに感心した。店の中にいるとわからないけど、上の階まで上がって窓を開けると、横浜港が見えて潮の香りがする。「こういうところでデザインしているから横浜らしいのか」と納得した。

【Hot Link !!】





image
早見憲さん(グラフィック・デザイナー)

『白河の仕事部屋』の話

 福島県の白河にオフィスを構えてもう11年になる。
 11年前といえば、パソコンでデザインをするのがまだ走りだった頃で、まだインターネットなんかなかった頃。今はISDNが来てだいぶ便利になったけど、昔はFAXなんかでやりとりをしていた。
 向こうには3人のデザイナーが常駐していて、そっち用の仕事を僕が週末に持っていく。そこは『生活デザイン研究所』と名付けて、生活しながらデザインをする、というコンセプトになっている。ようするに「巨大な別荘」みたいなものなので、敷地は600坪くらい。そこに140〜150坪の一軒家が建っていて、そこで仕事をしている。
 でも最近は本当に世の中が便利になったもので、コンピューターもそうだけど、特に感心するのが宅配。山の奥なのに時間指定でピッタリ届けられる。だから生活用品イロイロはほとんど通販で済む。これは本当に便利。
 白河に行くと、僕と社員の歳は親子ほども離れている。でも3食全部、僕が作っているし、スーパーへの買い出しも僕がやっている。もちろん僕が好きでやってることではあるけれど、世の中の状況を見て企画に盛り込んでいくという仕事上の都合もある。『生活デザイン研究所』という名前もそんな側面があって名付けた。そしてクライアントがそこに来てくれれば、建物そのものがウチの作品としてプレゼンテーションできる、という趣旨。
 昔ながらのデザイン事務所といえば、デザインなんて格好良いこと言いながら、書類の山で埋まっていた。パッケージを作るための糊や塗料で、とにかく汚れているのが普通だった。でも今、やっとペーパーレスの時代になって、デザイン会社の現場がやっとデザインの会社らしくなってきた。
 でも僕自身はいまだにパソコンがダメで、朝は鉛筆をナイフで削るところから始まる。そのナイフは相田さんという人の手作りナイフで、こだわりの逸品ではあるのだけど。





image
綿谷寛さん(イラストレーター)の

『イラストレーターの仕事部屋』の話

 アメリカのイラストレーターのデスクは斜めに傾いているけど、あれが格好良い。向こうの人は「大きい絵を描く」という事情もあって、その絵を遠くから見て確認するためにもデスクが斜めになっている。ただ、斜めのデスクには筆とか物が置けない。そこでサイドボードを用意して、そこに筆立てや資料を置く。
 向こうの人はそのデスクをドーンと部屋の真ん中に置く。日本人はつい壁際に置いてしまうけど、真ん中というのがやけに偉そうで良い感じ。ただ、僕も真似をしてみたけど、道具が収拾つかなくなってやめた。
 ノーマン・ロックウェルなんかも、斜めの机かイーゼルで描いていた。斜めの机だと背筋が伸びて良い姿勢になるからか、向こうのイラストレーターは長生きで、お爺ちゃんになってもバリバリ描いている人も多い。
 照明に関しては、イラストを描く上で一番良いのはやっぱり自然光だと思う。だからそれに近い蛍光灯を使っている。ただ、蛍光灯で部屋全体をまんべんなく明るくするのも野暮ったいので、部屋全体を照らすのは暖色系の白熱球、手元だけ自然光に近い蛍光灯、と使い分けている。
 椅子は革張りで肘掛けがついた、3本足のキャスター付き回転椅子。これはノーマン・ロックウェルが使っていた椅子が良さそうに見えたので、似たような椅子をアンティーク・ショップで探してきた。でも向こうは土足用の板張りの床だけど、こっちはそうじゃない。あまりキャスターで床を傷を付けるわけにもいかないので、なかなか難しい。
 僕は自宅が仕事場で、絵描きの家らしく北側に窓を作った。普通、北側には窓は作らないんだけど、実は北というのは光が一定している。だからノーマン・ロックウェルのアトリエもそうだったけど、北側に大きな窓を作って、そこにイーゼルを向けるというのが絵描きの常。ウチの場合は敷地が良くなくて、たまたまそうなっちゃっただけなんだけど。

【Hot Link !!】






■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'12" I'm Goona Sit Right Down And Write Myself A Letter Ella Mae Morse Capitol TOCJ-5990
20'18" There'll Be Some Changes Made Ann Margret BMG BVCJ-7371
26'20" I Could Write A Book Peggy Lee Capitol TOCJ-5342
36'21" Give Me The Simple Life June Christy Capitol CDP 7243 4 95448 2 6
46'31" My Favorite Things Joni James DIW DIW-394


 Back