僕はトリノの出身。トリノはイタリアの北西、フランスまでわずか60kmの距離しかない場所にある。
トリノはローマ時代から続く街で、2000年以上の歴史がある。本当の名前はラテン語で「アウグスタ・タウリノールム」と言う。もともとは軍のために作った街だったので、今でも街の中心を空から見ると、きっちり四角い形をしている。
トリノの街の特徴は道路がまっすぐなこと。ミラノ、ローマなどは道がカーブしているので遠くまでは見えないけど、トリノは1〜2kmは真っ直ぐ続いているので、遠くまで見渡せる。京都に似ているかもしれない。
そしてトリノと言えば「FIAT」。郊外に有名な自動車メーカーFIATの本社があるので知っているという人も多いはず。
トリノは16世紀から王家サヴォイア家の都として栄えた。その時に、王家によって才能ある建築家が集められ、王都に相応しい建築物が次々に造られた。そういった建物が今でも残っているので、行く機会があったらぜひ見てほしい。
トリノ生まれのトリノ育ちの人のことを「トリネーゼ」と言う。でも本当の意味でトリネーゼと言えるのは15%くらい。50〜60年代に南の方から仕事を探しに来た人たちがたくさんいて、先祖代々トリノという人は少なくなった。僕も両親は南から来ている。そういった意味では、今は「新しいトリネーゼ」が多い時代。
昔ながらのトリネーゼと新しいトリネーゼは顔つきからして違う。昔ながらのトリネーゼはブロンドの髪、青い瞳、そしてケルトの血にフランスの血が混ざった、親しみやすい顔をしている。でも実は、親しみやすいのは顔だけ……というのは冗談だけど、友達になるまでちょっと時間が掛かる。その辺も京都に似ているような気がする。
トリノは有名なサッカーチーム「ユヴェントス」があることでも知られている。でも「ACトリノ」というチームもあって、トリネーゼはその2チームのファンで分かれている。今はACトリノがセリエBに落ちているからちょっと元気がないけど、以前、セリエAで直接対決する時は大変な騒ぎだった。僕がスタジアムの近くに住んでいたら、日曜日の試合が終わった後に興奮したファンに囲まれて「お前はユベントスとACトリノどっちだ?!」と聞かれたりもした。これが一見してどっちのファンかわからないから困る。
トリノのバールに行く時は、入ったらまず壁を見てチェックした方が良い。ACトリノを応援しているバールか、ユベントスを応援しているバールか、そこだけは間違えないようにしないと。