世界中の学者が「犬はオオカミが飼い慣らされた動物」と言っているけど、私はその説には大反対。オオカミと犬はまったく違う生き物だと思う。
イヌ科という動物群がいるけど、その中から「犬」という特別な生き物がある時点から分かれたのでは。これは研究が進んでいる最中で、ミトコンドリアを調べると「分かれた時期」が解る。これがだいたい13〜14万年前ぐらい前と言われている。
そしてその時期は、ちょうど「ホモサピエンス」が生まれた時期に一致している。ホモサピエンスは、それ以前の人類を滅ぼして繁栄した種。前の人類は雑食だったけど、ホモサピエンスになって肉食になり、体型も大きく変わった。
この学説が出てくるまでには、いろいろな紆余曲折があった。最初はケニアのオルドバイ峡谷にある大断層から、200万年くらい前の人骨が発見されたところから始まる。その人類は、頭がソフトボールくらい、身長は1m程度。それでもちゃんと二足歩行をしていた。この人類の完全な化石がエチオピアで発見され、その化石は「ルーシー」と名付けられた。
この小さな人類(ホメオイド)は、その後、13〜14万年前に出てきたホモサピエンスに取って代わられてしまう。この説が出てきたのが5〜6年前だから、本当に最近の説。ちなみに僕は「犬の進化」のことが常に頭にある。そして犬の進化は人類の進化抜きにはわからないので、人類の進化論にも常に注目している。
13〜14万年前にアフリカから出てきたホモサピエンスは、肉食を始めたことによって骨格が大きくなり、上顎のカーブが深くなった。これによりノドの構造が変わり、それまでの「鳴き声」から、言語を発することを可能する「音声」になった。これがその後の繁栄の鍵となる。
そして、ちょうど時期を同じくして登場したのが「犬」だった、というのが私の説。犬はオオカミ、コヨーテ、ジャッカルなどの以前からいるイヌ科の動物に居場所を占領されて、犬だけでは生き残れなかった。だからサイにサイチョウがくっついたり、ウツボにエビがくっついたりするように、ホモサピエンスと共生する道を選んだのではないかと考えている。
たとえばオオカミは群れを作って、なわばりを作って、オオカミの社会の中で階級も作らなくてはいけない。ところが人間と共生している犬は、そういう部分は全部人間に任せておける。こういう共生の関係は他の動物にも見受けられる。
地球の歴史を調べてみると、犬が人類と共生を始めた時期は、ちょうど氷河期が終わに差し掛かって、地球の温度が上がり始めた頃。まず草が生えて、次に草食の生き物が増える。すると次に肉食のイヌ科の動物が増え始めた。そしてイヌ科の中心的存在だったオオカミやジャッカルに主な縄張りを取られた犬は、イヌ科の傍流として人類と共生する道を選ばざるをえなかった……というのが私の説。