SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年12月31日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「大晦日」

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 みなさん、大掃除や年賀状書きはお済みになったでしょうか? なにかのCMではありませんが、今年のことは今年の内に済ませてしまいましょう!
 って、2005年も残すところ数時間になってから言っても遅いですよね(笑)。当店ではすでに新年を迎える準備の済んだ方、そして諦めてしまった方が、それぞれに行く年を惜しみながら、グラスを傾けてお喋りを楽しんでおられます。
 今日はそんな年の瀬のお客さまのお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。


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三谷幸喜さん(脚本家)の

『THE有頂天ホテル』の話

 映画『THE有頂天ホテル』を撮るにあたって、登場するホテルの名前を決める必要があった。実は、台本の段階ではそのホテルの名前は特に決まっていなかった。
 ところが『キル・ビル』なども手掛けた美術の種田さん曰く「映画の美術をやっている人間で、ホテルの映画をやらないかと言われて断る人間はいない」というモノらしい。ホテルのグッズ、ロゴ、いろいろと用意しなければならないから、それだけやり甲斐がある、ということだった。それでホテルの名前を決める必要に迫られた。
 その時に頭に浮かんだのが、イタリアのホテルを舞台にしたビリー・ワイルダーの映画『お熱い夜をあなたに』。この映画の原題にもなっているホテルの名前が「AVANTI」だった。その名前をいただいて、『THE有頂天ホテル』に登場するホテルの名前も「AVANTI」にさせてもらった。
 僕はアップが嫌いなので、この映画ではあまりアップを使っていない。どことなく説明的な気がしてしまう。そしてほとんどのシーンが1シーン1カット。やはり僕はアップというモノのない舞台出身の人間なので、映画でもアップなしで済ませたいと思ってしまう。
 僕の映画と対極的なのが『キャシャーン』みたいな映画。あの映画を見て「これは僕にはできない」と思った。カット割りで面白く見せていく部分では勝負にならないから、自分の映画を撮る時にはなるべく1カットで行ってしまおうと考えた。助監督の人たちはそんな撮り方になかなか慣れなくて、最初の内はずいぶん苦労したみたいだったけど。
 本来、『THE有頂天ホテル』は大晦日の夜の10時から始まって、12時チョイ過ぎに終わるリアルタイムな映画だった。ところが実際に撮って繋いでみたところ、どうやっても2時間16分ある。でも一番最初のシーンは「10時の時計」から始まっている。それで困り果てて、CGを使って時計の針を10分戻すことにした。だからこの映画は9時50分頃から始まっているし、変なところにお金が掛かった映画になってしまった。
 本当は2時間のお話を2時間15分かけて描いたって、怒る人なんかいるはずもないんだけど。

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目黒考二さん(書評家)の

『過去30年のベスト3』の話

 「古今東西のミステリーの中からベスト10を選ぶ」みたいな仕事の依頼fが時々来る。ところがこっちが「絶対にこの10冊だよな」と思っていても、「今の読者に伝える情報なので、手に入らない本はやめて下さい」と言われてしまうのが困りもの。名作なのに絶版になっている本はけっこうある。
 そして今年『本の雑誌』が30周年を迎えて「過去30年のあらゆる本の中からベスト30を選ぶ」という大胆な企画が行われた。この1位に選ばれた本が、長らく絶版となって手に入らなくなっていた本だった。今はウチがNo.1に選んだので、再販されたけど。
 その作品とはH.F.セイントの『透明人間の告白』。新潮文庫から上下2巻で出ている。後に映画化もされているので知っている人もいるかもしれない。
 物語は主人公が突然、透明人間になってしまうところから始まる。100年以上前にH.G.ウェルズが『透明人間』という古典名作を書いた時は、透明人間が「自分はいったい何者なのか」というレゾンデートルを追求した。ところが現代の透明人間は「どうやって会社に行こう?」と考える。
 透明人間では会社にも行けない。スーパーで買い物もできない。レストランで食事も出来ない。生活のあらゆる事を考えなくてはいけなくなる。
 しかも、透明になった途端、街はいきなり危険な場所になる。横断歩道が青になったから渡ろうとしたら、無謀なドライバーが「誰も通ってないから」と突っ込んでくる。急いで走っている人が追突してくる。透明人間は前後左右、全部に注意しながら歩かなければいけない。
 その透明人間のことを嗅ぎつけた情報機関が、なぜ透明人間になったのかを調べようと主人公を追い掛けてくる。もちろん主人公は実験材料にされたくないから逃げる。ニューヨークを舞台に、透明人間と情報機関のサバイバル・ゲームが始まる。
 そんなアイデアとプロットが抜群に良い上に、心情的な表現も優れている。透明人間になってしまった主人公は、誰とも話ができずに寂しい思いする。そこで友達の家で行われているパーティーにこっそり入り込み、隅の方で懐かしい友人たちの声に耳を傾けている。このシーンはとても切ない。
 なおかつ、後半には恋愛も関わってきて「透明人間はどうやって恋をするのか」という恋愛小説にもなる。上下2巻でけっこう長いけど、読み始めたら一気に読み終えてしまうはず。
 この本は『本の雑誌』編集長の椎名誠、発行人の浜本茂、顧問の目黒考二、3人が揃って1位に挙げた、ぶっちぎりのNo.1だった。2位はライアル・ワトソンのノンフィクション『風の博物誌』。これは編集長の熱烈な推薦でランキング入り。3位は隆慶一郎の『影武者徳川家康』。これは「日本の歴史小説を変えた」と言われる大作。
 隆慶一郎さんはもともと池田一朗という名前で脚本家として活躍していた人で、ずいぶん歳をとられてから時代小説家に転身して、たった5年の作家活動で亡くなられた。その隆慶一郎さんの最高傑作が『影武者徳川家康』。
 徳川家康に影武者がいた、というのは昔からあった説。それをどういうドラマにするかが勝負で、隆慶一郎さんは網野善彦さんの中世研究を背景に「全国を放浪する芸人のような、最下層と考えられている人たちは、実は自由に生きた民だった」というお話にした。だから時代小説でありながら、徳川家康が主人公でありながら「自由を追求する」というお話になっている。人々が自由に生きるためにはどうしたらいいのか、そのために国をどう作ったらいいのか、そんな話。
 骨太の歴史小説であると同時に、ものすごくドラマチックで肉感的。文章も上手いし、これも読み始めたら一気。

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いしだあゆみさん(女優)の

『湘南の暮らし』の話

 今、湘南の七里ヶ浜に住んでいる。サザンオールスターズが好きで、わざわざ向こうに引っ越してしまった。
 家の近くには学校があって、とても良い場所に立っている。あまりに良すぎて「勉強できるのかしら?」と思ってしまうくらい。私があの学校で窓際の席に座っていたら、勉強どころじゃないと思う。
 学校の目の前には鎌倉プリンスホテルへ向かう坂道があって、学生たちが一生懸命走っている。この坂の勾配がすごく変で、走っている学生も大変そう。そしてその坂がロケの名所にもなっている。夏になると撮影隊がひっきりなしに来るから、ゴミ出しも変な格好ではできないくらい。
 その辺に住むようになってもう14年。我ながら似合わないとは思っている。あちこちで「湘南に住んでいるんです」って言っても、みんな六本木や赤坂や住んでいると思っているみたい。「なんで?!」と聞かれて、その後の質問がない。
 湘南に住んでいると、お月さまや星がキレイに見える。「今日なんでこんなに明るいの?」と思うと、月明かりのせいだったりする。階段なんて月明かりの方がハッキリ見えるくらい。夜に該当のない道を散歩していても、全然怖くない。
 私は朝が早くて、いつも5時くらいには起きている。冬は少しだけ早起きして、4時半くらいに起きる。するとまだお月さまが出ているので、みっともなくてお月さまのボヤける6時くらいまで待っている。
 湘南に住んでいると、ドラマなどの撮影が行われる緑山のスタジオまでの道のりが90kmもあったりする。越後湯沢の方が近いくらい。だから最近は歳も歳なので、仕事の時は都内に泊まるようになった。
 正直、越して10年目くらいで飽きているんだけど、一軒家を建てちゃったから我慢している。たとえて言うなら、好きな男の人ができて、2度くらいデートして、欠点が見えてきているんだけど、頑張って好きなところしか見ないようにしている時期、みたいな感じ。

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北方謙三さん(作家)の

『シングルモルト』の話

 ウイスキー好きが高じて、スコットランドの蒸留所を回ったことがある。
 蒸留所で作ったウイスキーを、ブレンドせずにそのまま寝かせて出すのがシングルモルト。いろいろ見て回ったけど、その中でもアイラという島のシングルモルトが一番好きだった。ちょっとヨードチンキのような匂いのする、クセのあるシングルモルト。
 ちなみにそのアイラをものすごく上品にして、同じようなテイストを残しているのが「山崎」の25年。これは美味い。
 シングルモルトにはハイランドモルト、スペイサイド、アイラなど、いろいろな地域がある。その中でアイラは、磯臭くて、ピートの効いたヨード臭いウイスキー。でもそれを飲んだ時に「美味い」と思った。その「好き」な気持ちに理屈はない。
 アイラというのは1つの島で、周囲を北の海に囲まれている。その海はナギの日でも厳しい雰囲気を漂わせている海。
 シングルモルトの魅力は「個性」に尽きる。その中でも特に個性が強いのがアイラ。ハイランドはバランスが取れているけど、それでもやはり個性がある。それらをブレンドして普通のウイスキーが作られる。だからシングルモルトには「○○の原酒」などと書かれていることもある。それでもシングルモルトで飲むと、そのシングルモルトの自己主張が強く感じられる。
 シングルモルトには「カスク・ストレングス」という種類がある。これは日本語で言えば「樽出しストレート」という意味。樽から出して、そのまま瓶詰めした製品を指す。だから同じ蒸留所でも樽ごとにアルコール度数も違ってくる。だいたい58〜63度くらい。それで「○○の63度あるかい?」なんて聞くんだけど、嫌な客だと思われてそう。
 63度のウイスキーは、ちょっとグラスを振ってマッチをかざすと火がつく。グラスから実にキレイなブルーの炎が上がる。格好つけて、コースターをパッと乗せて火を消して、すぐに飲もう……とすると「アチッ!」となるので要注意。そして63度のウイスキーを飲むと、ノドはスッと通るんだけど、胃袋の形がだいたいわかる。
 普通、ウイスキーを味わう時は常温で、水と1対1で割るのが一番美味しいと言われる。だからバーで「カスク・ストレングスを1対1の水で割ってくれ」と言えば、バーテンダーも警戒するはず。ただし自分の場合はすぐに馬脚が出るけど。
 若い人はシングルモルトで酒の修行をすると良い。焼酎が体に良いだの、そもそも酒を飲まないヤツが増えただの、いろいろあるけど、シングルモルトで酒の味がわかるようになれば、なかなかのモノだと思う。
 シングルモルトに限らず、バーボンでも良い。バーボンだったら、まずケンタッキー州がバーボンで、テネシー州だとテネシー・ウイスキーであることから知る。そしてバーボンやテネシー・ウイスキーはライムストーンの岩盤を通った地下水で作られている。だから同じライムストーン・ウォーターでジャック・ダニエルを割って飲む。これが男の飲み方。
 こんなのはただのウンチクなんだけど、ウンチクはあれば面白いモノ。バーで喋っていても話題に困らないし。そしてバーテンダーは向こうで「こないだオレが教えてやった事を、さも自分の知識のように喋りやがって」と苦笑している。そんな雰囲気が楽しい。

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丸々もとおさん(夜景評論家)の

『お正月の夜景』の話

 横浜に伊勢山皇大神宮という神社がある。ここは野毛山に近い場所で、高台に建っているので、ランドマークタワーやみなとみらいが一望できる。2年参りをして、ふと振り返ると夜景がある、という場所。
 千葉の方なら稲毛浅間神社。ここも高台にあって、幕張あたりの住宅地など、ほのぼのとした夜景が広がっている。大晦日から元旦まではどこも朝まで光が絶えないので、日が明ける前の時間帯でも美しい夜景が楽しめる。新年早々に美しいモノを見るというのは気分が良い。
 正月の夜景は、見る人たちがいつもよりポジティブだったりする。夜景は見に来た人たちの雰囲気やムードに影響される部分も多いので、「今年はいい年にしよう!」と前向きな人たちの中にいるだけでも、御利益があるような気がする。
 そういう夜景を楽しむには、「前が開けている」タイプの夜景が良いと思う。たとえば海なんかもそんな夜景の1つ。冬の海の夜景は対岸の光まで水蒸気で揺らめいて見えるので、幻想的な夜景が楽しめる。
 東京で冬の展望台に上ると、富士山までしっかり見えたりする。この時期はそんな景観を楽しめる時期。年末の納品で忙しいトラックの大渋滞が正月になって消えると、空気も綺麗になって、クリアな景色が楽しめるという部分もある。お正月はぜひ夜景を楽しんで欲しい。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'27" Just In Time Dean Martin Capitol CDP 7243 8 29389 2 7
20'51" Four Or Five Times Peggy Lee Capitol 7243 8 54543 2 5
31'31" Little Boat Lorez Alexandria MCA MCAD-33116
41'28" My Favorite Things Joni James DIW DIW-394
46'38" What Are You Doing New Years Margaret Whiting Capitol CDP 7 77459 2


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