SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年11月26日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「いしだあゆみ goes to AVANTI」

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 土曜日の夕方5時頃、当店AVANTIの扉が開き、いつもの常連のお客さまがお帰りに……と思いきや、そこにいらっしゃったのは、20年ぶりというかつての常連のお客さま、いしだあゆみさんでした。
 いしださんは当店の変わったところ、それから変わらないところを1つ1つ確認しながら、バーテンダーのスタンと昔話に花を咲かせていたようです。
 さて、今週も当店のウエイティング・バーには様々なお客さまがいらっしゃって、楽しいお話をして下さいました。そのお話をここで少しだけご紹介させていただきましょう。


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野田義治さん(サンズ社長)の

『いしだあゆみさん』の話

 いしだあゆみさんは『ブルーライト・ヨコハマ』や『砂漠のような東京で』などが大ヒットした後、歌手から女優へ転向した。ちょうどその時期に僕が担当していた。
 転向したのは、本人の中で「今のままでは先が見えている」という葛藤があったから。たしかにものすごいヒット曲を持った歌手で、歌番組などでもAクラスの番組に出られる、まさに大スター。でも本人が「このままでは、いつかいなくなる」と考えて、女優になることになった。
 そのチャレンジの時に僕が付くことになったんだけど、これはキツかった。歌番組に出ている、NHKの紅白にも出ている、そういう時にドラマの仕事を取ってこなければならない。これは大変。
 実はいしださんはドラマ『七人の孫』からデビューしている。そして当時、彼女の専門はジャズだったのに、歌謡曲を歌うことになってしまい、本人は恥ずかしくて仕方がなかったらしい。ところがそれが大ヒットして、考え方が少しずつ変わっていった。
 グラビアの仕事もあった。撮っていただいたのは秋山庄太郎先生、それから篠山紀信先生、チラッとやっていただいたのが浅井愼平さん。そういう方々に撮ってもらっている現場は、僕にとってもすごく勉強になった。
 今でも良く覚えているのはドラマ『だいこんの花』。森繁久彌先生にずいぶん可愛がってもらって、竹脇無我さんとも仲良くしていた。それから映画なら『青春の門』。大竹しのぶや田中健のデビュー作だけど、そういう仕事は会社から「お前、なに考えてんだ!」とずいぶんドヤされたものだった。
 いしだあゆみさんと僕は、年もそんなに離れてなくて、彼女の方が3つ下。でも今でも時々お会いすると、僕は直立不動でご挨拶する。それくらい僕にとっては大事な人。いろんな事を教えてもらったし、いろんな方と知り合わせてもらった。その人脈が今に繋がっている。

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北方謙三さん(作家)の

『バーとお酒と女性』の話

 僕は「お酒を飲ませて女性を口説こう」とは思わない。お酒はお酒で楽しみたい。たまたまそこに女の子がいれば口説くかもしれないけど。そういう風にお酒を楽しみたいのなら銀座のクラブ活動。あそこへ行けば女の子はいっぱいいる。ただし口説かれ慣れている女の子ばかりだから「はいはい」とあしらわれるし、本当に惚れられても面倒だけど。
 お酒を楽しみたいのならショットバー。カウンターに座って1人で飲む。ショットバーは1人で飲めるのが最大の魅力で、酒の味をじっくり味わうことが出来る。だから酒の揃っている店が良い。それから静かに飲めるのも良い。ワイワイガヤガヤと騒ぐ客もおらず、たまにジャズが掛かっている程度。そこで静かにお酒を飲んでいる時間というのはなかなかに良いもの。
 時にはショットバーに女性のお客さんが1人で来ることもある。でもそこでちょっかいを出したりはしない。ただ「どんなお酒を飲むのだろう?」とか「どんな飲み方をするのだろう?」なんて興味を持って観察してしまう。
 中には「うわ、カッコイイ!」と感心してしまう女性もいる。その女性はストレートのウイスキーを注文して、2口でキュッと飲んでいた。最初に1口、そしてチェイサー。しばらく時間をおいてまた1口。ちょっと唇を開け、手首をキュッと返すだけで、顔は動かさない。まさに「口の中へ放り込む」感じ。「男の飲み方だ、ありゃあ!」と感心した。
 その女性は、1杯と1杯の間はけっこう時間を空けるので、そんなに酔った雰囲気はなかった。そしてジーッと考え事をしては、パッとタバコに火をつける。そのタバコの銘柄を知りたくて、トイレに行く振りをして後ろを通ったら、そのタバコは「ジタン」だった。こんな女性に「1杯いかがですか?」なんて、とても言えない。
 バーでは「どうやったら格好良く飲めるか」なんて考えたらもうダメ。バーは自分を解放する場所。テレッとした気分ならテレッとしたまま飲めばいい。ある時、僕は結婚式の帰りで、タキシードのままバーへ行った。そこでテレッとしたままウイスキーを飲んで、ちょっと息苦しく感じてボウタイを解いた。それを見たバーテンダーが「それだよ!」と。ボウタイを解いて、ちょっと髪の毛が乱れたりして、疲れた感じでキュッとウイスキーを飲む。「ウイスキーはそれだよ」とはそのバーテンダーの言。でも別に格好つけたわけでもなんでもなく、ただ自然体だっただけなんだけど。
 バーが良いのはもう1つ、葉巻が気兼ねなく吸えること。ジッと葉巻を見て、自分に合った吸い口にパチッと切り、スパッと火をつけて、フワーとふかし、ウイスキーを一口。「ああ、男に生まれてきて本当に良かった」と思う瞬間。
 女の子に「葉巻と私、どっちが大事なの?」と聞かれたこともある。葉巻は湿度75%、温度14度くらいで保管すると、どんどん熟成してくる。この熟成した葉巻がまたウマイので、葉巻は常に大事に扱っている。それを見た女の子の「どっちが大事なの?」という問い掛けなんだけど、「もちろん葉巻」と答えた。「この葉巻は火をつけたら煙になって消えてしまう、お前が煙になって消えてしまうのなら、お前の方を大事にしてやる」と。

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石原隆さん(テレビ番組制作会社)の

『イタリア旅行の悲劇』の話

 この間、イタリアに行って来た。2泊4日で。
 もともとは1週間くらいの予定だった。飛行機のチケットも取って、ホテルも予約したのに、仕事が入ってだんだん短くなっていく。最初はかなり頑張って、仕事が入りそうになっても「ごめん、そこは休暇中なんだ」と断っていたけど、どうやっても断り切れない仕事が入ってしまった。
 しかも悲しいことに、世の中「7日が6日に減る」という風にはできていない。その1週間のど真ん中にいきなりどうしても外せない仕事が来る。でもその仕事をなんとか1日ずらして、3泊5日の休みを確保した。
 さすがに3泊5日になった時に、一度は「疲れるだけだし、やめようかな、近くの温泉にでも行ってのんびりしようかな」と考えた。でもそこでハタと気がついた。みんな、それでやめているに違いない。これはオレとアイツ(誰かわからないけど)との勝負だ!そう思って、意地でもイタリアに行くことにした。
 パリ経由だったので、使った航空会社はエールフランス。ちなみにエールフランスにはパリ行きの飛行機が1日に2便あって、昼と夜がある。夜の便に乗ると、パリに着くのは朝の4時だったりするけど。
 そして3泊5日になったイタリア旅行の出発の前日か前々日。また仕事で問題が起こってしまい、乗ろうと思っていた飛行機には乗れなくなってしまった。さすがにこれは温泉旅行か……と思ったけど、同じ日の夜の便なら乗ることができることに気がついた。
 そこで当日、エールフランスに電話をして、夜の便に変更してもらえないか相談してみた。するとマイレッジのチケットだったのに、夜の便に振り替えてくれると言う。それでなんとか2泊4日というか、2.5泊くらいのイタリア旅行に行ってきた。
 そんな日程だからもちろん一人旅。イタリアでは「バンコジーロ」というバルでお酒を飲んできた。以前に番組の収録で行った時にすごく気に入ったお店だったのでまた行ったんだけど、さすがに「オ〜、タカシジャナイカ!」と太ったイタリア人のシェフが迎えてくれるという“男の夢・第2位”は叶わなかった。
 ちなみに“男の夢・第1位”は、飛行機で「どなたかお医者さまはいらっしゃいませんか?」と聞かれて「私ですが」と答えること。フライト・アテンダントが「すみません、どなたかドラマのプロデューサーはいらっしゃいませんか?緊急に台本を直さなきゃいけないんです!中盤、ちょっとキャラクターが弱いんです!」なんて聞いてくれることはないし。お医者さんは羨ましい。

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山田和也さん(演出家)の

『芝居の再演』の話

 お芝居『竜馬の妻とその夫と愛人』の公演が全国を回っている。通常、お芝居は東京や大阪など大都市でしか見られないモノが大半だけど、全国には「芝居を生で見たい」という組織があって、そこから招かれてトラックにセットを積み、俳優も現地へ行って公演するケースがある。
 『竜馬の妻とその夫と愛人』は三谷幸喜クンの作品で、三谷クンの作品は呼ばれる率が高い。だから地方からの招きにお応えしていると、半年くらいのツアーを組めてしまう。
 僕はこのお芝居の演出を担当した。もともと5年くらい前に三谷クンが劇団・東京ヴォードヴィルショーのために書き下ろした作品で、その時も僕が演出した。その後、市川準さんが映画化したりして、今回は5年ぶりの再演となった。
 お芝居の再演は、演出家としては案外難しい。やっぱり前と同じじゃお客さんもつまらないだろうし、かといって変えすぎてしまうと再演というよりも新作になってしまう。そもそも「再演をしよう」といった時に、前回と同じ顔ぶれのキャストが集まる保証もない。俳優さんのスケジュールもあるし、相性が悪くて楽屋で喧嘩ばかりしていたから変えよう、なんてこともある。
 再演の場合、クリエイティブ・チームに求心力を作るのも難しい。その作品にとてもやりがいがあったり完成度が高かったりすれば、スタッフも俳優もモチベーションが上がってくるので、僕はそこに乗っかっていけばいい。ところが中には「微妙な温度で再演」というケースがある。前回それなりに商売になったのでまたやりましょう、でもクオリティとしては微妙……みたいなケース。
 『竜馬の妻とその夫と愛人』の場合は、映画化もされたくらいだから、幸いにして評判が良かったのだろう。でも5年前の初演の時は三谷クンの台本が遅れて、台本が出来上がる前に稽古を始めていた。だから先の展開をわからずに芝居を作り「初日を開けなければいけないから開けてしまった」という部分があった。
 だから後になって振り返ってみれば、人物造形や芝居の運びで、もうちょっと違うアイデアあったんじゃないかという想いがあった。たぶん、三谷クンにも似たような想いがあったのでは。だから今回の再演にあたって、三谷クンは台本をずいぶん刈り込んできた。「書き換えた」というよりは「余分なところを省いていった」という感じ。
 そうやってシンプルになった台本を手にとってみたら、僕も俳優さんたちも、さすがに5年が経っているので、ストーリー以外のディテールを忘れてしまっていた。これが案外良い感じで、もう1度白紙に戻って作り上げることができ、結果的にクオリティは上がったと思う。
 今回はそういう再演だったので、非常にやりやすかった。5年という時間で、俳優たちもいろんな経験を積んだし。ただし肉体的には衰えたらしく、佐藤B作さんも平田満さんもみんなこぼしていたけど。それでも「今の自分たちにしかできない芝居が出来る喜びを感じている」と言っていた。
 インターバルが短すぎると、前回の演技を無意識になぞってしまって、クリエイティブじゃなくなったりするんだけど、5年という時間がちょうど良いみたいだった。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'37" 黄昏どき いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー Columbia CA-4478
19'43" ひとりにしてね いしだあゆみ Columbia COCA-14812
31'58" バイ・バイ・ジェット いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー Columbia CA-4478
43'20" 絵本の中で いしだあゆみ Columbia COCA-14813
50'54" 夢でいいから いしだあゆみ Columbia COCA-14812


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