お芝居『竜馬の妻とその夫と愛人』の公演が全国を回っている。通常、お芝居は東京や大阪など大都市でしか見られないモノが大半だけど、全国には「芝居を生で見たい」という組織があって、そこから招かれてトラックにセットを積み、俳優も現地へ行って公演するケースがある。
『竜馬の妻とその夫と愛人』は三谷幸喜クンの作品で、三谷クンの作品は呼ばれる率が高い。だから地方からの招きにお応えしていると、半年くらいのツアーを組めてしまう。
僕はこのお芝居の演出を担当した。もともと5年くらい前に三谷クンが劇団・東京ヴォードヴィルショーのために書き下ろした作品で、その時も僕が演出した。その後、市川準さんが映画化したりして、今回は5年ぶりの再演となった。
お芝居の再演は、演出家としては案外難しい。やっぱり前と同じじゃお客さんもつまらないだろうし、かといって変えすぎてしまうと再演というよりも新作になってしまう。そもそも「再演をしよう」といった時に、前回と同じ顔ぶれのキャストが集まる保証もない。俳優さんのスケジュールもあるし、相性が悪くて楽屋で喧嘩ばかりしていたから変えよう、なんてこともある。
再演の場合、クリエイティブ・チームに求心力を作るのも難しい。その作品にとてもやりがいがあったり完成度が高かったりすれば、スタッフも俳優もモチベーションが上がってくるので、僕はそこに乗っかっていけばいい。ところが中には「微妙な温度で再演」というケースがある。前回それなりに商売になったのでまたやりましょう、でもクオリティとしては微妙……みたいなケース。
『竜馬の妻とその夫と愛人』の場合は、映画化もされたくらいだから、幸いにして評判が良かったのだろう。でも5年前の初演の時は三谷クンの台本が遅れて、台本が出来上がる前に稽古を始めていた。だから先の展開をわからずに芝居を作り「初日を開けなければいけないから開けてしまった」という部分があった。
だから後になって振り返ってみれば、人物造形や芝居の運びで、もうちょっと違うアイデアあったんじゃないかという想いがあった。たぶん、三谷クンにも似たような想いがあったのでは。だから今回の再演にあたって、三谷クンは台本をずいぶん刈り込んできた。「書き換えた」というよりは「余分なところを省いていった」という感じ。
そうやってシンプルになった台本を手にとってみたら、僕も俳優さんたちも、さすがに5年が経っているので、ストーリー以外のディテールを忘れてしまっていた。これが案外良い感じで、もう1度白紙に戻って作り上げることができ、結果的にクオリティは上がったと思う。
今回はそういう再演だったので、非常にやりやすかった。5年という時間で、俳優たちもいろんな経験を積んだし。ただし肉体的には衰えたらしく、佐藤B作さんも平田満さんもみんなこぼしていたけど。それでも「今の自分たちにしかできない芝居が出来る喜びを感じている」と言っていた。
インターバルが短すぎると、前回の演技を無意識になぞってしまって、クリエイティブじゃなくなったりするんだけど、5年という時間がちょうど良いみたいだった。