葉山の『またぎ』というお店は、逗子駅からタクシーで10分ほどの場所にある。ここはご主人が“またぎ”なので、またぎ料理を出すお店。もともとご主人は割烹をやっていたらしい。ところが自分で山に入って撃っている内にそっちがおもしろくなってしまい、そういう店を作ろうと思ったのだとか。
お店は木造の一軒家。中に入ると、囲炉裏と細長いテーブルがある。ハトとかキジとかシカとかカモとか、ご主人みずからが獲ってきて捌いたお肉を、塩だけで焼いて食べさせてくれる。周辺地域で獲ってきたモノもあるけど、時には「山に籠もるから」と言ってご主人が東北や長野の方へ行くこともあるし、猟師のネットワークで手に入れる場合もある。
「しし鍋」というイノシシの鍋は、味噌仕立てですごく味が丸い。イノシシは野生じゃなくて、長野で特別に育てていて、脂が分厚くて締まっている。鍋にしたらたまらない味。
我々が行く場合、塩や醤油、ワインなんかも持ち込んでしまう。この間などは料理人まで持ち込んでしまった。お店では基本的にお客さんが自分で肉を焼き、ご主人は「こう焼くと良いよ」とアドバイスをする、という仕組みになっている。
でも実は肉を焼くのはすごく技術がいる作業で、ただ焦げなければいいというワケじゃなくて、柔らかく焦げるように優しく火を入れなくてはならない。しかも炭火なので、火の当たりの強い弱いも見極めなくてはならない。それでついに我々は銀座の某有名焼き鳥店の方や、西麻布の某フレンチレストランの方を引き連れてそのお店に行った。そんな方々に焼いていただいて、切っていただいて、我々は「ふむふむ」などと言いながら飲んで食べてるだけ。でも皆さんも喜々として焼いて下さった。
そんなわけで、そのお店の凄さは素材の良さに尽きる。前もって予約しておけば、カモをその日の朝に絞めて準備してくれたりする。今の季節だと“キノコ採り名人”が送ってくれた天然のキノコをどっさり使ったキノコ鍋などもある。これは香りで酔いそうになるくらい素晴らしい香りの鍋。
このお店に行く時は、だいたい午後4時くらいに品川駅に集合。1人につき1〜2本、肉に合うワインを持参する。塩、醤油、ゆず胡椒なども持参。それから逗子に向かい、お店に到着するのが6時半くらい。夜の9〜10時くらいまで楽しんで、最終電車で帰ってくる。ある時はバスを仕立てて行ったこともある。
食べるのが好きな人同士で行くのが楽しいし、外国人のお客さまを連れて行っても非情に喜んでもらえる。焼いたハトを手づかみでバリバリと食べると、血湧き肉躍るというか、野生に戻っていく感覚を覚えるので、女性を連れて行くのも良いかもしれない。