バレーボールでタイムアウトを取って、監督の指示を聞くシーンがよくあるけど、監督の言うことを聞いているかどうかは微妙。完全に頭に血が上っている時は、何を言われても頭に入ってこなかったりする。
最近の傾向としては、回りのコーチもワーッと叫ぶチームを見かける。そんなにいろんなことを言われても、選手は聞けないのに。選手が理解できるのはせいぜい1個。それを監督が的確に「これ」と指示した方が良い。
バレーボールはベンチにいろんな人がいる。監督はもちろん、コーチも何人もいて、マネージャーもいる。だからラグビーを見に行くと、監督が観客席にいるのがすごく新鮮に感じる。
特に女子バレーは監督に怒られて育ってきている。だから試合中もミスをすると監督の顔ばかりチラチラと見て、「これが終わったらぶっ飛ばされる……」なんてことばかり考えている。監督の目がすごく気になるスポーツ。一度でいいから「監督のいないバレー」をやってみたい。それはそれで成立しないとは思うけど。
今の日本代表の柳本監督は「厳しい」という評判だけど、私にはどこが厳しいのか今ひとつわからない。もちろん私は選手として教わったわけじゃなくて、取材だけの立場なので詳しいことはわからないけど、少なくとも殴ったりなどはしなさそう。言葉の暴力みたいなことはあるかもしれないけど。
私が本当に「怖い」と感じるのは、その場の感情に任せて怒るタイプ。柳本監督の場合はちゃんとシナリオがある。この選手を怒って、あとでこの選手をフォローして、という計算が見える。
怒っているシーンだけをテレビで見たら、怖く見えるかもしれないけど、それは柳本監督の一部でしかない。根性論の「オレについてこい!」タイプではまったくない。パソコンでデータを解析して、ミーティングで「このコースにサーブを打てば、このセッターはこっちにはトスを上げない」などの緻密な作戦を立てるタイプ。
女の子というのは難しいもので、誰が贔屓されているだの、私が嫌われているだの、チームの中にはいろんな感情が渦巻く。柳本監督はそれを詳細に観察して、さらに先を読んでいる。たとえば新しい選手を試すために今までレギュラーだった選手を外すと、「○○は××とつるむぞ」なんて私たちに教えてくれる。するとそのレギュラーだった選手は、それまでプライベートでも主力選手と一緒にいたのに、そこから離れて、見事に柳本監督が言った補欠の選手とくっついたりする。
女の子のチームは怒らないとダメ。さすがに殴るのはマズイけど、ある程度怒ることは必要。でも怒るだけじゃなくて、長所を伸ばしてあげないと。レシーブの下手な人にレシーブを要求しても意味がない。スパイクが良ければそっちで活躍しろと言った方が良い。
日本の女子バレーが弱くなった時期は、監督が怒れない風潮だった。それで選手もワガママになっていった。高校を卒業して実業団のチーム選ぶ時に「休みが多くて、練習が楽で、給料の良いところが良い」なんて、ぬるま湯もいいとこ。だから監督も選手に嫌われないよう気を遣っていた。でも監督なんて選手に嫌われてナンボ。だから怒る監督じゃなきゃダメ。