SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年10月1日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「蔵書」

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 本って手放そうと思ってもなかなか手放せなくて、なんだかんだで溜まってしまいませんか? 私、小穴のような特に読書家でもない人間ですら、帰省の電車の中で読んだ文庫の小説や『ハリー・ポッター』『ダ・ヴィンチ・コード』のような話題だった本が、部屋を狭くしています。
 そんな話をしていたら、読書家のみなさんはその比ではないようで、ものすごい「蔵書」の話をバー・カウンターで披露して下さいました。そこで本日はそのお話を少しだけここでご紹介させていただきます。ただし“ためになる”タイプのお話ではありません。みなさん「困ってるんだけど……」というお話ですから。


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目黒考二さん(書評家)の

『書評家の蔵書』の話

 本をためるつもりはないんだけど、捨てられない。
 むかし読んだエッセイに「自分がある本を必要になった時に、ふっと振り返るとその本が自分の本棚にあるのが理想だ」ということが書いてあったけど、まさにその通りだと思う。だから人間は“将来読むかもしれない本”を買う必要がある。本当に読む本なんて、1日24時間という時間で物理的に決められているから、それだけならさほど増えない。読まない本を買うから、本はどんどん増えていく。
 僕はその対処として「3ヶ月かけて興奮を冷ます」ということをしている。本を買う時は、いま読む本でも将来のために買う本でも「いい本だな!」と興奮している。ところが3ヶ月くらい経つと、その興奮が冷めることがある。だから本を買ったら3ヶ月は仕事場に積んでおく。そして「そろそろ家に持って帰る本を決めよう」と考えると、不思議な事に1/3は「なんでこんな本を買っちゃったんだろう?」と思う。それでも2/3は残るんだけど。
 本を本棚にしまう時は、一応ミステリーが専門なので、ミステリーだけは国内・海外、ジャンル、作家をちゃんと分類してしる。でもそれ以外の本はジャンルだけ。仕事場として借りているアパートには「時代小説の部屋」「ノンフィクションの部屋」「児童文学の部屋」みたいな部屋があって、その部屋でわけている。
 ただ、ちょっと問題がある。当然、次々に新しい本が来る。まず本棚が2段積みになり、奥の本が見えなくなる。さらに本が増えてくると、段ボールに詰めて本を置き始める。そうなるともう、本がどこにあるのかまったくわからなくなる。
 そこで僕は何年かに一度、学生のバイトを雇って、夏休み1ヶ月を使って本棚を整理してもらう。そしてその時に「この本の後ろにはこの本があります」という地図を作ってもらう。そうすればどこにどの本があるのか一目瞭然。
 ところがその地図を無くしてしまうのが大問題。古い本は本棚に並んでいるからまだ良いけど、中途半端な年代の本は段ボールに入っているから、地図無くしてはどこに何があるかさっぱり。そのせいで、必要になるたびに同じ本を買う。だから僕は同じ本を何冊も持っている。それでも3時間もかけて本を探すくらいだったら、1000円で買ってしまった方が早い。
 自分の仕事場のデスクの一番近いところには、好きな作家の本をい置く。もしくは仕事で必ず使う本。一度読んで「たぶんこの先、この小説について語る機会はないだろう」という本は遠くにいってしまう。志水辰夫 という大好きな作家の本などは机の本当にすぐ近くにある。法廷ミステリーの第一人者と言われるグリシャムなどは、たくさん持っているけど、実はあまりおもしろいと思わないので、遠くに置いている。
 本を読む時は、書評を書く時のためにページの角を折っておく。特に書き込んだりなどはしない。そして書評を書く時には、内容を完全に忘れていたりするので、もう一度読み直す。すると不思議な事に、10年ぶりに読み直した本は、必ず違うところを折りたくなる。前に折ったところを見て「なんでこんなところを折ったんだろう?」と思う。10年も経てばそれだけ人は変わるので、折り目を付けておくとおもしろい。もちろん仕事の上では何の役にも立たない。
 ある時、売る本は売ってしまって、これ以上どうしようもないというところまで来て、山形に住む文芸評論家の友達を思い出した。彼は庭に蔵を持っていて「本を預けられるよ」と言ってくれていたので、そこに段ボール70箱の本を送った。1箱に50冊の本が入るとして3500冊。それだけ送っても本棚の本はまったく減らなかった。
 ふと考えると、僕は自宅の「ミステリー部屋」に3年くらい足を踏み入れてない。7畳の部屋が2部屋あるけど、段ボールを本棚の間に詰め込んだら、完全に入れなくなってしまった。奥の方の本に至っては10年くらい触っていない。ということは、実は必要のない本なのかもしれない。もし必要になったとしても、本屋に買いに行った方が早い。実際にそうしているわけだし。
 そんなことに最近気がついた。でもまだ決断が付かない。
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喜国雅彦さん(漫画家)の

『文庫の蔵書』の話

 消費税の導入で文庫のカバーが一斉に掛け替わった時に、売れない文庫本は一気に絶版になった。たとえば当時から僕が好きだった角川文庫の横溝正史の100冊シリーズは、いつでもどこでも本屋さんに並んでいるものだった。それを「今日はどれを買おうかな」なんて買って、家にたまっていくのが楽しみだった。
 それが消費税の表記のために一度全部引き上げられた。そしてお金を使ってカバーを掛け替えても売れる見込みのないモノは、そのまま絶版に。どこの出版社もそれをやったので、ある日を境に横溝正史のシリーズがどこにも無くなった。それで「いつまでもあると思ってちゃいかんのだ」と気付いて、慌てて買い逃した横溝正史の作品を古本屋で探すようになった。
 当時、森村誠一や高木彬光の小説がいっぱい映画になって、角川も個人全集を目指してみんな50冊とか100冊の文庫シリーズになっていた。それが5冊とか10冊を残して絶版になってしまった。
 そんな事情で集めた文庫本の蔵書がウチには並んでいる。江戸川乱歩と横溝正史だけは専用の本棚を作って、それ以外は並べて綺麗なように出版社別になっている。横溝正史の代表作と言われるような作品だといろんな出版社から出ているので、手に入る限り集める。友達は版が替わると買っているくらい。さすがに僕はそこまではしないけど。
 僕の友達には、本に負けた連中が山ほどいる。みんな布団の場所以外は全部本で埋まっていて、中にはベッドにまで本が積み上がっているせいで、どこにベッドがあるかわからない人もいる。だから寝る時は寝る場所を探して寝ている状態。
 「あの本見せてくれ」と行って訪ねていくと「ごめん、奥だから出せないや」と言われる。結局、そのうち本人も書評を書かなくちゃいけなくなって、その本を持っているのに買いに行くハメになる。だから同じ本を何種類も持っている。
 僕はそういうのが嫌で、必ず本の背が見えるように並べている。もし本棚に二重に並べるなら、後ろの本をちょっと上に上げて、必ず背は見えるようにする。その台にするのは本当に読まない本。
 でも売っている本棚は、本好きな人が作っていないから無駄が多い。大抵、5段の棚あったら3段目あたりが固定してあって、ものすごく使いづらい。そこで「売っている本棚はダメだ!」という結論に達して、自分で金槌を持って釘を叩いて本棚を作るようになった。
 自分で本棚を作ると、文庫がこれだけあるから文庫を8段にするとか、新書2段と文庫6段にするとか、持っている本に合わせて融通が利く。ただ本は重いので、30〜40cmくらいの幅にしておくのがコツ。これなら日曜大工の店で売ってる板と普通の釘で十分な本棚が作れる。
 日曜大工のお店に行って、大きな板を買う。それをお店の電動ノコギリで切る。普通、そのノコギリは「1ノコギリ30円」などと値段が決まっている。そうすると、うまく図面を取れば5回で切れるのに、変な取り方をしたために10回になって、150円余計にかかってしまうと悔しくなる。その図面を考えるのもパズルみたいで楽しい。
 そうやって作った本棚は、階段の下や窓の下のデッドスペースなど、家の隙間を有効に活用できる。
 僕は古本屋で古本を買ってくると、新しい本を倉庫にしまう。それはどんどん部屋をくすませたいから。僕の部屋は窓を閉め切っていると古本屋の匂いがする。そんな入れ替えを繰り返している内に、部屋の中は戦前の本ばかりになってしまったから。
 でも古本は僕の本であって、僕の本じゃない。古本の流通は誰かが死ぬから流通が成り立っている。ある日、神保町の専門店をのぞいてどっと古本が入荷しているのを見かけると「……誰か死んだんだ」と思う。そういったわけで、古本は僕の本であって僕の本じゃない。傷めないように大事にしなくてはいけない。
 中には有名な作家の蔵書だったモノも混じっている。そういう古本にはいろんな作家からサイン入りで贈られたモノもあって、知らない名前が実は有名な作家の本名だった、なんてこともある。それでまた値段が付けられる。

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中村規子さん(国立国会図書館)の

『国立国会図書館の蔵書』の話

 国立国会図書館では、外国の図書なども含めて、平成16年度は約22万冊の図書、約4千タイトルの定期刊行物が増加した。総蔵書数は図書で約837万冊、定期刊行物で約18万7千タイトルにもなる。
 国立国会図書館には本館と新館があって、本館の書庫は収蔵能力が約450万冊。書棚の総延長は172kmに及ぶ。さらに新館は地下1階から8階まであって、実に約750万冊を収蔵できる。書棚の総延長は240km。また永田町以外にも京都の「関西館」、上野の「国際子ども図書館」などもある。
 本館の図書の場合、17の層に分かれている。1層は昔の帝国図書館時代に受け入れた日本の図書、2層は同じく帝国図書館時代の洋書……一番新しいモノでは13層に2003年から整理された日本の図書、といった具合。
 さらにそれぞれ層の中では、請求記号順に整理されている。請求記号というのは、分類記号と配架記号を組み合わせたモノ。
 どういう分野をどう並べるかは、これからどのくらい増加していくかの予測が欠かせない。1つの層に約44万冊の図書が入るけど、1年に10万冊の本が入ってくると4年でいっぱいになってしまう。だから層の中で分野ごとに少しずつ空きを作っていかないと、到底保たない。
 しかもギチギチに本を詰めると本が傷んでしまうので「9割配架」と言って、少し間をあけながらしまっている。それが予想以上にギチギチになってしまったら、一部を移動させたり、引っ越しさせたり。そういう時は課の人間みんなで運ぶ。そういう総出の作業というのも案外楽しかったりする。
 本を運びながら背表紙を見て「こんな本があるんだ」と感心することもある。本の移動は肉体労働でもあるけど、そんな知的な出会いもある。もちろん中を見たりする暇はないけど。
 そんな感じで、身体を動かすのも国立国会図書館の職員の重要な仕事の1つ。

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遠藤龍之介さん(フジテレビ広報室長)の

『父の蔵書』の話

 父(遠藤周作)の元には出版社や作家自身から大量の本が送られてきた。単行本だけでも1日に平均5〜6冊は来るイメージ。だから子供心に「うわ、また来た」と思ったもの。
 当然、収容しきれなくて、庭に本専用の簡易住宅を造った。とにかくそこにめぼしい本をしまっていったら、2階建てのその家は歩くところ以外、全部本で埋まった。一応、8畳くらいの閲覧室もあったけど、40畳の本棚だけの部屋は本でいっぱいだった。
 私は子どもの頃から本が嫌いで、漫画ばかり読んでいた。すると小学校4年生になった時に、父が駅前の大きな本屋に私を連れて行き、本屋に「この子が来たら、私のツケでどんな本でも買わせてやってください」と言う。つまりその瞬間から、私はどんな漫画も読み放題になった。
 嬉しくて片っ端から漫画を買い、4〜5ヶ月間は漫画ばかり読んでいた。僕の部屋は漫画だらけになり、楽しくて仕方がなかった。ところがその内、読む漫画がなくなってくる。本屋に行って漫画の棚を前にしても、「これも読んだし、これも読んだ……」という状態になってしまった。
 そんな時に文庫本を見て「あ、こんな本があるんだ」なんて買うようになっていった。ちなみに最初に買ったのは北杜夫さんの「船乗りクプクプの冒険」だったと思う。
 そんなこんなで漫画以外の本も読むようになり、高校生の頃には父の作った本専用の離れにも出入りするようになった。そこはほとんど人が入らない離れなので、ちょうど性に目覚めた頃だったこともあり、キンゼイ・レポートやカーマ・スートラなどを読んで「なるほど!!」なんて感心したり。夕日の差し込む閲覧室で「こういう事だったのか!」と思った光景は今でも良く覚えている。
 そんな想い出の離れも、今はもうない。父が死んだ後に日本近代文学館や長崎の遠藤周作記念館に蔵書は寄贈してしまった。

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中川翔子さん(タレント)の

『漫画の蔵書』の話

 「まんだらけ」で漫画を40冊まとめ買い、なんてよくあること。実家にはぐちゃぐちゃになって置いてあるので、どこに行ったかわからなくなって、同じ漫画をまた買うなんてこともしょっちゅう。
 漫画の大人買い「全巻買い」もしょっちゅうやる。漫画好きの友達と本屋へ行くと、とりあえず持てる限界までいつも買ってしまう。最近なら『犬夜叉』を大人買いした。1〜40巻まで、出ているものを全部。
 そうやって買った漫画は、おもしろければ保存している。だから実家の自分の部屋は漫画で足の踏み場もないくらい漫画だらけ。
 漫画が好きになったきっかけはホラー漫画にはまったことだった。楳図かずおとか水木しげるとか。その次はジャンプ系の少年漫画とか『うる星やつら』『らんま1/2』あたり。今は『三丁目の夕日』『島耕作』も全部持っていて、ジャンルはめちゃくちゃ。
 一番最初は父が「これを読まないと大人になれないぞ!」と5歳くらいの私に与えてくれた。それで水木しげるの漫画を読んで、子供心に「こりゃすげぇ」と夢中になった。
 漫画でぐちゃぐちゃな実家の私の部屋だけど、大切な漫画だけはちゃんと棚にしまっている。たとえば楳図かずおの『神の左手、悪魔の右手』。すごくグロい漫画で、目からハサミが出てきたり、骸骨を口から吐いたりするすごい漫画。楳図かずおさんにお会いした時に初版本を持っていったらサインをしてもらえた。それはもう家宝。
 『うる星やつら』『ドラゴンボール』『幽遊白書』なんかも子どもの頃から大好きだった漫画。何度も読み直しているけど、飽きない。好きになるとそればかり読んでしまうのは、漫画も本も同じ。
 本ならノンフィクションが好き。『遺言―桶川ストーカー殺人事件の深層』はFOCUSの記者が書いたノンフィクションで、5回くらい読んだけど何度も泣いた。涙と、やるせなさと、怒りに震えた一生モノの本。
 『福田和子逃亡記』もすごい。漫画やアニメよりもすごい人生を歩んでいる。それから矢追純一さんみたいなUFO・オカルトものも大好きだし、小説なら小池真理子さん。
 母が小さな頃から漫画だけは惜しみなく与えてくれた。そのおかげで漢字を覚えるのは早かったし、国語も絵を描くのも得意だった。私に子供ができたら漫画だけはいっぱい買ってあげようと思う。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'13" I Could Write A Book Anita O'Day Verve POCJ-1014
20'43" The Best Thing For You June Christy Capitol CDP 7243 4 95448 2 6
32'58" I May Be Wrong The Four Freshmen Capitol 7243 4 95002 2 8
42'05" Moments Like This Peggy Lee Capitol 7243 4 98883 2 6
47'52" Yes I Can Sammy Davis Jr. Reprise WPCR-884


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