SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年9月17日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「睡眠」

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 私、小穴は寝る前に飲む、いわゆる「寝酒」が大好きで、いつもベッドに腰掛けてのんびりグラスを傾けています。ビールやワインだと眠くなってきた時にトイレに行きたくなることもあるので、ウイスキーをロックかストレートで飲むのが私なりのこだわり(?)でしょうか。
 ここ数日はようやく残暑も和らぎ、窓を開けて寝るのが気持ち良くなってきました。カーテンを揺らして入ってくる風と虫の声がに季節を感じながら、ゆっくり寝酒を楽しむ時間は最高です。ぜひ一度お試し下さい。
 さて、本日は当店のお客さまの会話の中から「睡眠」にまつわるお話をご紹介させていただきます。みなさまが素敵な秋の夜を過ごす一助になれば幸いです。


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井上昌次郎さん(東京医科歯科大学名誉教授)

『レム睡眠とノンレム睡眠』の話

 眠りというのは、脳を造る活動状態。脳が目覚める前に眠る必要がある。だから、胎児の脳は寝ているとも起きているとも言い難い、いわば無の状態から、まず眠りが出てきて、その後に覚醒という状態が徐々に現れてくる。
 実は眠りにも2種類あって、胎児や生まれたての頃に多かった眠りはだんだん減っていき、ある程度脳ができてきた時から「脳を修復する」ような眠りが多くなる。
 胎児の頃の睡眠は「レム睡眠」、専門用語で「動睡眠」と言う。これは脳が活動しているので、大人が「夢を見る」のはこの眠りの時。もう一方の「ノンレム睡眠」は脳を休止状態にする。
 胎児が生まれる頃はレム睡眠とノンレム睡眠が半々くらい。これが大人になる頃には3/4以上はノンレム睡眠になる。もっとも、子供の時のレム睡眠は「脳を造る」状態だけど、大人になると記憶の整理やノンレム睡眠状態から覚醒して意識を上げるのに使われる。
 睡眠というのはノンレム睡眠から始まって、レム睡眠に移行し、起きるという1つのセットで成り立っている。この1セットがだいたい90分くらい。大人が何時間も寝ているのはこのセットをいくつか繋いでいるだけで、別にバラしても構わない。ただまとめた方が効率がいいからまとめているだけ。
 ところが小さな子供はうまくまとめられずに、1日に何度も寝たり起きたりする。これは体内時計が未発達だから。体内時計は1日の半分だけ身体の活動レベルを上げて、残りの半分は下げる働きをする。この体内時計ができてくるのは生まれてから。
 しかも子供の脳はレム睡眠とノンレム睡眠のセットが30〜40分と短かったり、場合によってはノンレム睡眠がなかったりと、かなりバラツキがある。思春期が過ぎた頃になってやっと90分のレム睡眠とノンレム睡眠のセットが安定する。

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山元大輔さん(東北大学大学院教授)の

『体内時計』の話

 人間の体内時計は24時間キッカリでは動いていない。おそらく、遊びをつくることで前にズラしたり後ろにズラしたり、調節が効くようになっているのだろう。
 人によってそれが長めの人と短めの人がいる。長めの人はだんだん夜更かしになっていくし、短めの人はどんどん早起きになる。しかもそれは歳を取ってくると顕著になる。それが「年寄りは早起き」と言われる原因。体内時計の傾向が顕著になるのは、レム睡眠が短くなってくるため。
 もちろん世の中には体内時計が長いタイプの人もいる。だからそういう人たちは歳をとれば取るほど朝寝坊になる。そして調べてみると、親戚縁者の多くが同じタイプなので、この傾向は遺伝的に決まっている可能性が高い。
 体内時計が24時間ではないので、毎日修正が必要になる。その修正は太陽の光を浴びることで行われる。特にその調整する力が強いのが朝。朝に太陽の光を浴びると、体内時計を強力に修正できる。
 ところが概して朝寝坊タイプの人は朝日を浴びるチャンスがない。それで悪循環が起こって、どんどん生活リズムが崩れていく。だから中には外界の周期とは関係なく自分自身のリズムだけで通してしまう人もいる。それを「自由継続リズム」と呼んでいる。
 光以外にも体内時計をリセットする方法はあって、たとえば食事がそう。真っ暗なところで生活していても、決まった時間に食事をしていれば体内時計は調整される。食事をすれば、内臓は消化酵素を分泌して、消化して、吸収する。それぞれ臓器にもリズムがあるので、彼らにとっては光よりも食べ物の方が問題。だから体内時計が修正されるのだろう。
 そういうわけで、時差ボケ対策には朝日と定時の食事。この2つが一番効く。

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松岡圭祐さん(作家)の

『催眠術』の話

 世間では、催眠術は「対象者を眠らせて、意のままに操る」なんてイメージがあるけど、本当の催眠術は眠らせるわけでも、意識を飛ばすわけでもない。理性を静め、本能に身をゆだねるようなリラックスした状態にして、心の健全さを取り戻すための暗示を受け入れやすくする、心理療法の技術の1つ。
 具体的には、たとえばカウンセリングの場では、こんな風に言う。「リラックスして座って下さい。目を閉じて下さい。肩の力を抜いて下さい。今から自分が思い浮かべた通りの行動を取って下さい。」こんな感じで「〜して下さい」と言って、自発的に行動してもらう。
 だから「鳥になった気分で空を飛んで下さい」と言われた場合も、その通りにする。無意識にそうなるとかじゃなくて、そうするのがカウンセリングの一環だから。そうやって自由なイメージに乗って遊び、実際に体を動かすことによって、理性は静まる。音楽にのって踊るのにも同じ効果があって、体感的なところに意識が向いていくので、理性の意識水準が低下する。
 人間の理性を低下させる方法には2つある。それは自律神経系の交感神経に訴える方法か、副交感神経に訴える方法。交感神経に訴えるのは緊張や運動で、踊りまくったり何かのスポーツに入れ込みまくれば理性は低下する。副交感神経の方は逆にリラクゼーション。森林浴やモーツァルトを聴いたりとか。まったく逆のようだけど、どちらもトランス状態にするという意味で、理性を低下させることができる。
 人間の意識をたとえれば、卵のように理性(白身)が本能(黄身)を覆っている。もともと子供の頃には黄身しかなかったのに、大人になるに釣れてだんだん白身の部分が厚みを増す。だから「〜しなさい」などと言われた時に、本能へ届く前に理性の方が反発する。「なんでそんなことしなきゃいけないんだろう?」なんて事をつい考えてしまう。そこでトランス状態にして理性を静め、むき出しになった黄身に直接働きかけることで、心理療法を行う。この人為的にトランス状態を作るのが「催眠誘導(催眠術)」。
 映画にも同じような技法が用いられている。緊張するシーンと弛緩するシーンを交互に繰り返す。しかも最初は現実に近い方向から入って、だんだん空想的な方向に向かう。これに人が付いてくる速度は、その人のトランス状態が深まっていく速度。催眠誘導も最初は「夏だと思って下さい」なんて一般的なところから入る。そしてトランス状態がかなり深くなってから「宇宙空間に漂っていると思って宇宙遊泳して下さい」と言えば、割と抵抗なく動けてしまう。
 人によっては「あなたは赤ん坊です、お母さんがどこかに行ってしまいました、とても悲しい気持ちです」と言えば、本当に泣き出す。これはつまらない映画のラストのお涙頂戴な場面でもつい泣いたりしてしまうのとまったく同じ。そこまでの誘導さえ上手くいっていれば、理性が剥がれて泣いてしまうもの。
 催眠誘導も2時間だし、映画も2時間。それくらいの時間が人をトランス状態にするのにちょうど良いのだろう。というか、映画は催眠誘導そのもの。観客は2時間座っているだけなのに、突然泣いたり笑ったりする。しかも監督なんて普段どんな生活を送っているかもわからないのに、素晴らしい人だと思いこんで信奉者になったりする。まさに催眠誘導であり、集団催眠。

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ペレ・スィルィエダールさん(テンピュール・ジャパン社長)の

『テンピュール』の話

 テンピュールはもともとスウェーデンの製品。最初は梱包材として開発された。ところが素材ができてから「どう製品化しようか?」と悩んで、病院に持っていった。病院では寝たきりの人が床ずれの鬱血で悩んでいる。それに効果があるではないか……と。
 最初は病院の先生も興味を持っていなかったけど、無理にお願いして1週間だけ試してもらうことになった。すると電話が掛かってきて「すごく効果があるよ!」と言ってくれた。そこから寝具としての応用が考えられた。
 テンピュール素材はポリウレタンのスポンジ。普通の椅子に入っているスポンジと98%くらいは同じもの。でも残りの2%が違う。それによって、温度に対して非常に敏感な素材になった。室温ではやや硬め。でも体温によって温められると柔らかくなる。だから身体と触れる必要な場所だけ柔らかくなる。そして身体にぴったりフィットすることで、寝たり座ったりしても疲れない。さらにテンピュールは耐久性も高い。98%は普通と同じなのに、こんなにも違う。
 テンピュール素材を使った寝具の利点は、とにかく圧力が分散されることにある。身体にうまく沿って支えるので、筋肉はリラックスする。1カ所に圧力が掛かって血行が悪くなることもないので、寝返りもうたなくていい。背骨も真っ直ぐになって、ぐっすり眠ることができる。テンピュール社ではそう考えている。
 日本では「枕が変わると眠れない」と表現するけど、スウェーデンでは「マットレスが変わると眠れない」となる。それから私が初めて日本に来てビックリしたのは、みんな「肩こり」の話をすること。これはスウェーデンでは「腰が疲れた」という話をする。さすがに枕と違って、マットレスを旅行先に持っていくわけにはいかないけど。

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山根はるみさん(臨床心理士)の

『夢』の話

 1900年にフロイトが「夢判断」という本を出して、「夢」が科学的に扱われるようになった。その本を読んだユングが感動してフロイトに学び、夢を「精神的な病を治すもの」として応用しようという流れを作った。
 夢は「心のレントゲン」と言われる。夢に出てくる登場人物は自分の分身で、お母さんや子供が出てきても、それは自分の中の母としての部分だったり子供の部分だったりする。
 私たちは限られた意識の中で暮らしている。でも身体は全方位に開いている。だから「予知夢」と言われるモノも、限られた意識では拾えなかったモノを夢の中で表現している、ということ。たとえば地面が微妙に動いているのに気付かなかったとしても、夢の中で地震が起こって、後で「あれは予知夢だった」と思うことは起こりうる。
 夢の世界は時間も空間も越えるので、ものすごく不思議。たとえばユングがある夢の話を聞いたら、それが古代の文章とほとんど同じだった、なんて事もあったとか。もちろんその夢を見た人は、そんな文章は知らないし、そもそも古代の文字だからその人も意味もわかっていない。でもほとんど同じだったらしい。
 学生にアンケートを取ると、「子供の時に熱が出ると“圧倒される”タイプの夢を見る」という人はけっこういる。病気をするというのは身体に異変が起こるということだから、その辺が夢に表現されているのでは。
 「追い掛けられる夢」は無意識が接触したがっている、とされる。追い掛けられるのは大抵後ろから。そして「後ろ」というは過去であったり、見てこなかったモノ、葬り去ったモノなど、無意識の領域。そういうモノが「もう一度見直して」と言ってきている。一度立ち止まって振り返れば、その夢を見なくなるというケースもけっこうある。
 悪夢を見た時にはそれを書きとめておくと良い。それで本を1冊書いた人もいるくらい。「フランケンシュタイン」なんてそうやって書かれた。ヴァイオリンの協奏曲を書いた人もいる。芸術的な源泉はきっと心の奥底にあるので、夢を元にクリエイティブなモノを創り出すのは1つの手だと思う。
 枕元にノートとペンを置いてみては。

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■ 放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'04" Sleepy Time Gal Dean Martin Capitol 7243 8 54546 2 2
18'28" Lullaby Of Broadway Doris Day Columbia 475750 2
33'45" A Sleeping Bees Carmen McRae Decca GRD-610
41'49" Lullaby In Rhythm Patti Page Emarcy PHCE-10014
48'22" Dream A Little Dream Of Me Ella Mae Morse Capitol TOCJ-5990


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