沖縄県民になってもう8年。沖縄本島の南の玉城(たまぐすく)村に住んでいる。その村は沖縄本島南部の中でも東側になる。西側は「ひめゆりの塔」などもある南部戦争の激しかった地域で、東側の知念・玉城は神々の里と呼ばれていた静かな場所。
僕が住んでいる場所は入江になっていて、目の前は沖縄独特の琉球石灰岩が2kmも続く遠浅の海になっている。そこにはカニをはじめとしていろんな生き物がいて、干潮の時には2kmの“畑”となって姿を現す。
特にそのあたりは沖縄の海苔「アーサー」の産地で、アーサーはみそ汁に入れても天ぷらにしてもすごく美味しい。このアーサーの時期になると、干潮の時間帯には入江全体がきれいな黄緑色の畑になる。そして満潮になると深い青い海に戻る。夜は夜で月の道がまっすぐこっちに向かってくる。本当に美しくて素晴らしい場所。
ここに住むようになったきっかけが、自分でもよくわからない。あまりにも惚れ込み、突然土地を購入し、家を建てた。事務所からも「どうするんだお前は!」と反対された。いわば人生最大の衝動買いみたいなもの。
今、僕の家が建っている場所に初めて立った時に、来たこともないのにすごく懐かしさを覚えた。「ここにいると自分が変わる!」と直感して、そこに住もうと思った。でもそれを人に言うのが恥ずかしくて何年か悩んで、それでも我慢しきれずに、そこに住むことにした。
実は僕は銀座の生まれで、自然のことなんか何も知らない人間だった。それがずっとコンプレックスで、サーフィンをやってる真木蔵人に「亜門さん、海から陸を見なきゃダメだよ」なんて言われて、そういう生活に憧れていた。でもまさか本当にそういうところに住むとは思ってもみなかった。
とにかく条件は「海の見える家」だった。家なんだけど半分外、みたいな家が理想。フランク・ロイド・ライトの「落水荘」みたいな、自然の中に溶け込んだ家にしたかった。
ただ、とりあえず今までは何度かの台風を乗り越えたけど、すごいのが来たら間違いなく水が入ってくる。その時のために1階の床は全部石にしてある。地元の人には「普通はこんなところに建てないね、やっぱり大和人(やまとんちゅ)だねぇ、これはタイタニック邸だよ」と散々な不評。
でも沖縄にいると台風は楽しいモノ。自分だけじゃなくて、みんな「大変だ」と言いながらも絶対ウキウキしてる。台風が来るという予報が出ると、電話が多くなって、みんなで集まって、停電になると大騒ぎして喜んでる。台風が来るとみんな童心に戻るみたい。もちろん僕もそんな1人。
今は1年の半分以上をそこで過ごしている。明日からまた帰って、とりあえず雑草取り。沖縄の雑草はとにかく育つのが早くて、土があればどこでも観葉植物がひしめき合うように咲く。台風がそれを全部なぎ倒してくれるのはありがたい。
そして台風で折れたブーゲンビリアの葉は、その後にものすごくきれいな新芽を出す。沖縄の葉っぱがあんなにツヤツヤしている理由はそれもあるような気がする。