ここ3年ほど毎年麻布十番祭りに来ているけど、もう見たことのないほどの人出。浴衣を着たキレイな人も多いし、イタリア人としては最高に楽しい。
イタリアのお祭りも日本のお祭りに似ている部分はある。でも日本のお祭りみたいに、屋台がいっぱいあって、イカのポッポ焼き、たこ焼き、焼きそば……みたいな賑やかさが足りない。イタリアではレストランがちょっとした屋台を出して、パニーニを出したりしている。オシャレではあるけど。それからみんなオシャレな格好で来るので、レストランで座ってゆっくり食事をすることも多い。
日本のお祭りはどこへ行ってもイカのポッポ焼き、焼きそば、フランクフルト、綿菓子、飴、金魚が必ずある。でもイタリアは10キロも離れた町なら、お祭りが全然変わってくる。ブドウ畑の多い町ならブドウを使った料理ばかりだったり。
昔、私が働いていた店は、フィレンツェから70kmほど離れたルッカという町にあった。町からちょっと山に登ったところの「メチェナーテ」というお店で、そこはまさに自然の中の店だった。ハーブが無くなったらお店のすぐ近くで野生のハーブが獲れるし、キノコもフルーツも山ほど手に入った。
ある時、そこのシェフが「山の上でお祭りがあるよ」と教えてくれた。山の上にはお城があって、ルッカの町から見ると城壁しか見えない。でも城壁の中には町がある。その町でお祭りがあるので、連れて行ってくれるのだと言う。
お城へ向かう車の中で「どういうお祭りなんですか?」と聞くと、「心の準備をしておいた方が良いよ」と。「ここからは600年前に戻るから」と言われて行ったその町は、本当に600年前の世界だった。
みんなが着ている服は600年前のもの。道の真ん中には300mくらいに渡ってテーブルが並べてあって、料理がおかれている。その料理も豆のスープなど600年前の料理。それをフォークもナイフも使わずに、手とスプーンだけで食べる。木の皮を剥がしてお皿の代わりにフルーツが盛りつけられたりもしていた。
大きな長いまな板も渡してあって、その向こう側が我々の出番。コックたちが豚の丸焼きやヤギの丸焼きを作って、大きな斧でガンガン切りさばいている。それを食べる人たちはみんな手で食べる。大きな樽も置かれていて、その中にはワインが入っていた。その樽は5m間隔ぐらいで置かれていた。
さらに突然、トランペットが鳴り響いたかと思ったら、王様と女王様が本当に登場。ラテン語で挨拶をした。
このお祭りはその町の人だけしか入れないんだけど、私は師匠がそのお祭りに料理人として参加するので、幸運にも体験できた。まさに映画のような光景だった。