SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年7月23日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「ジーコを考える」

image

 先日のサッカー・コンフェデレーションズ杯では、日本代表は惜しかったですね! 日本の代わりに決勝トーナメントへ進んだブラジルが優勝したんですから、日本の優勝の可能性もあったのに……
 サッカー日本代表チームはW杯への出場を決め、ブラジルが相手でも互角の戦いをして、本当に強いですよね。でも監督のジーコさんは、あれだけの結果を出していても、なぜか批判の的になることが多いんです。
 当店でもジーコ・ジャパンのお話で熱く語るお客さまを時々見かけます。今日はそんなお客さまのお話の中から、その道の専門家の方々の分析をここでご紹介させていただきます。果たして専門家の皆さんはジーコ監督をどう評価していらっしゃるのでしょうか?


image
セルジオ越後さん(サッカー解説者)の

『ジーコと日本の問題』の話

 ドーハの悲劇の時に「感動をありがとう」だったのは、サッカーに関して日本がアマチュアだったから。その本質は、ブラジルと引き分けて「よくやった」と言ってしまう今も変わっていない。コンフェデは予選敗退だったのに。
 これが営業だったら大変なこと。緊急営業会議を開いてる。もしコンフェデで予選を通過していれば、もう2試合できた。この2試合の経済波及効果はすごかったはず。プロとして、その2試合は命をかけても勝ち取らなきゃいけなかった。
 僕がジーコに厳しいのは「トルシエの次の仕事は何だったのか」という部分。守りを固めるのがジーコの仕事じゃない。ビハインドになって、引き分けでは危ないという時にやっとジーコのサッカーができるというのは本末転倒。
 宮本のチームになったおかげで、守れるようにはなった。でもそんなのは当たり前で、自分が宮本でも「引け」と言ってまず守れるようにする。中田英が出ると「前へ」と言うから、そこで綱引きになる。そこの意見が合わないのは当然。宮本に任せたら、明らかに失点は少なくなる。でも点は取れない。そこが難しいところ。
 トルシエは良い監督だった。人間的には最低だったけど、なんだかんだでジーコよりも試合に勝っていた。トルシエからジーコになって、選手もほとんど替わっていない。変わったのは「上と衝突しない」という監督の人間性ぐらいで、やっぱり専門の監督してやってきたトルシエと、選手としては偉大だったけど監督としては新人のジーコでは差がある。
 プロの世界は契約の社会。「この目標を達成するためにいくら払う」という契約を交わすので、その目標を達成できないようでは困る。そこで日本サッカー協会がジーコに何を求めたのかが問題になる。W杯出場を求めたのであれば、ジーコである必要はない。W杯で日本をベスト16に導いたトルシエに代えたのだから、それなりの意味があるはず。それはやっぱり攻撃力、そしてベスト16よりも上、ということだろう。でも今の日本代表を見ると、どう見ても変わっていない。
 サッカーのフィールドは縦が100mちょっとある。その100mの中で自陣ゴールに近づけば近づくほど決定力が減る。コーナーキックの時に中澤をはじめとしてみんながゴール前に上がるのは、点を取るため。でも試合中、それ以外の時はみんな下がってビクビクしながら守ってる。
 今、日本代表がやっているサッカーはトルシエのサッカーからほとんど変わっていない。ポイントになる選手もまったく変わっていないし。大黒はレギュラーじゃないし、高原が怪我をしなければ呼ばれなかった。福西だって稲本の怪我がなければ試合に出ていなかったはず。
 ジーコのやっていることが正しいとするなら、日本サッカーの層の厚さが最悪という他ない。ドイツの後は望めないということになってしまう。それも「若手を育成して層を厚くする」のか「とにかく予選を勝ち抜く」のかという契約の問題ではあるけど。
 もうすぐ東アジア選手権が行われる。それに際して会長が「若手を使うべきだ」と言ったら、どうも本当にそうなるらしい。この話を聞いて「どっちが監督だ」と思った。会長は性格的に逆らわない人が好きらしいので、賢いイエスマンのジーコとは良いコンビと言える。これがトルシエだったら大変なことになっている。
 会長がジーコの就任会見の時に「日本のことを一番よく知っている人」と言ったけど、「上司には逆らわない」みたいな日本的な文化にはたしかに詳しい。

【Hot Link !!】





image
松木安太郎さん(サッカー解説者)の

『ジーコの長所』の話

 サッカーマンとして、ジーコは尊敬すべき人。現役時代からしっかりとした考え方を持っていて、もちろん経験も豊富。普段の生活からプロとしての考え方を持っていて、非常に負けず嫌い。ものすごくバランスの取れた人だと思う。
 僕が思うに、監督というものは10人いれば10通りのやり方がある。その監督なりのイロがなければ、プロとして面白くない。
 今の日本には良い選手がたくさんいる。その選手の力を引き出したのがジーコの力だと思う。良い選手だということはわかっている。でも本当にどのぐらいやれるかはわからなかった、という選手もいる。でもW杯の予選を通じてその良さをもう一度確認できた選手もいるし、新たにその力を発見された選手もいる。それは見えない部分だったりもするんだけど、それを全部ひっくるめて今のコーチングスタッフの力だと思う。
 ジーコ監督が就任した時、一番最初に驚いたのが「マスコミを非常に大切にする」ということだった。プロのチームはマスコミに対して何%かの比重をかけないとやっていけない。そういう部分をしっかり考えているというのが印象的だった。
 前任者のトルシエ監督は逆に「オレは関係ない」ということをすごく押し出す人だった。インタビューの時間が決まっていても、すっぽかすなんて日常茶飯事。でもどっちが良くてどっちが悪いということではなく、その違いこそが「監督のイロ」だと思う。
 昨年のアジア杯で、苦しい状況の中で勝ってきた選手たちの一体感、これは日本を飛躍させた大事なポイントだと思う。トレーニングだけではどうにも答えを出せない部分を、何度か自分で感じた経験があるのだろうと思わせる采配や発言を、ジーコはたびたびしている。
 実はジーコが監督になって一番期待できるのは、W杯の予選よりも本大会だろうと思っている。W杯の予選は日本の良いところを潰すようなサッカーをしてくる。そういうサッカーと相対したときよりも、自分の良いところを出そうとするサッカーと相対した方がジーコのサッカーは力が出せる。だから本大会よりも予選突破の方が厳しいだろうと思っていた。
 そこで僕は、ドイツの本大会では日本を優勝候補の1つに挙げている。大会が始まる前なら、どのチームも「優勝を目指します」と言えるわけだし。それくらいの気持ちでW杯は楽しんで欲しい。

【Hot Link !!】





image
ラモス瑠偉さん(ビーチサッカー日本代表監督)

『ジーコと代表選手』の話

 僕はジーコを評価できる立場じゃないけど、ドイツに行くという目標があって、それを達成したんだから10点満点で良いと思う。
 フォーメーションが4-4-2だとか3-5-2だとかっていう話でマスコミは騒いでいるけど、僕に言わせればバカバカしい。戦術なんてクソくらえ。フォーメーションなんて試合の流れでコロッと崩れるもの。だからフォーメーションの話をしても意味がない。
 あえて言えば日本のサッカーには4バックの4-4-2が合っているとは思う。でもある試合に4バックで臨んだところ、うまく行かなくて、選手が監督のところに行って「3-5-2にして欲しい」と言いに行った。僕が思うにジーコは相当悔しかったはずだけど、それでも選手の意見を入れて3-5-2にした。
 もし僕がその時のジーコの立場だったら、言いに来た選手を辞めさせる。「ここは代表だ。なんで3-5-2でやりたいのか? 4-4-2で1対1に勝つ自信がないのか? だったら代表に来てる場合じゃないから出て行け」と言ったと思う。
 まず監督のやろうとしていることを理解する。そしてそのサッカーを1ヶ月くらいは続ける。それだけやってダメだったら、選手の方から監督に話をしに行けば、監督もバカじゃないから話を聞く。それでまたしばらく選手の言う通りにやってみて、うまく行けば良し、行かなければまた考える。1試合程度で「良い」「悪い」の判断なんてできない。
 今の日本代表は層が厚くて、良い選手がたくさんいる。だから1人や2人いなくなっても全然構わない。もちろんその裁量は監督が下すものなんだけど。
 今回のコンフェデレーションズ杯では、最初のメキシコ戦でつまらない試合をして負けて、ジーコはいきなり4バックにした。そして短い期間しかなかったのに欧州チャンピオンのギリシャを破り、ブラジルを苦しめた。それを見て、やっぱり日本には4バックが合っているなと思った。ジーコも同じ事を思っただろう。
 たしかにギリシャは去年ほどの調子ではなかった。ブラジルも何人か主力が抜けていたし、途中で流したところもあった。でもそんなことは関係ない。重要なのは、日本が良い試合をして勝てたかどうか。
 ギリシャに勝てて、ブラジルとも引き分けた4バックなのに、レベルの低いアジアで苦しんだのは、選手の中に面倒くさがるヤツがいたから。これは許し難い。でもコンフェデレーションズ杯の2試合は完全にギリシャやブラジルと互角だった。ジーコが監督になってからのベスト・ゲームだったと思う。
 同じブラジル、同じリオの出身だから、サッカー選手としての経歴は雲泥の差があるけど、ある程度ジーコの考えていることは理解できる。ブラジル流の、個人技や個性を活かすやり方。それは僕が目指すサッカーと同じ。
 僕はみんなに「辛口」と言われるけど、体を張ればできることを要求しているだけ。「自分は上手い」なんていい気になって生意気になっている選手が許せない。だったら楽に勝ってみせろ、と。それならそういう態度でも別に構わない。ギリギリで、相手のオウンゴールで勝ってるんだから、反省しなきゃ。
 今の日本代表選手たちの力はこんなもんじゃない。コンフェデレーションズ杯の試合がそれを証明している。できるんだから、常にそうやって欲しい。

【Hot Link !!】





image
中西哲生さん(スポーツジャーナリスト)の

『代表監督という仕事』の話

 現役時代にジーコと対戦したけど、本当に嫌な選手だった。とにかくファールじゃなきゃ止められない。だからジーコが日本代表の監督になって久しぶりに会った時に、まず最初に「スイマセン」と謝った。当時のビデオを見ると悪質なファールだったし。
 代表チームの監督は自分のやりたいサッカーができる。いろんなチームから必要な選手をピックアップして、自分の考えた通りのチームを作れる。そこで問われるのが「やりたいサッカーってなに?」ということ。
 そこで僕は、ジーコに「やりたいサッカー」は無いのではないか、と感じている。ブラジルのサッカーは、もともとロジカルな部分よりも感覚的な部分が大きい。だからジーコは自分の好きな選手を集めて「君たちの好きなようにやりなさい」と言っているのでは。
 そういう意味では、トルシエは日本受けする監督だった。日本人は組織論みたいに説明が付くことがすごく好き。逆になんとなくあやふやなモノに対して不安を感じてしまう。ちょっと前、ジーコが結果を出せなかった時期に「戦術がない」「選手に任せっぱなし」という批判が多かったけど、それはジーコ監督のスタイルなので、言っても仕方がない。
 選手は自分たちで戦術を決められるので「やりやすい」と感じているはず。試合に臨むまでの不安は、トルシエ監督よりもジーコ監督の方が少ないだろう。選手にとって「預けてくれる」というのは嬉しいこと。
 選手交代に関しては、僕は「遅い」と常々言ってきた。最初の北朝鮮戦では高原・中村の投入が遅れて冷や汗をかいたし、ずっと不満を感じてきた。ところがコンフェデに入って驚くほど変わった。コンフェデを見る限り、今は選手交代に関してまったく問題ないと言っていいと思う。
 選手の招集に関しては、これは何とも言えない。ジーコは「今まで代表に選ばれてきて積み重ねがある選手にはアドバンテージがある」と言っている。僕は新しい選手を注入することによって、危機感も生まれるし、調子の良い選手を生かせるようになれば、チームは1ランクも2ランクも上に行けると思うんだけど。
 ジーコの運が強いと言われるけど、これは選手が呼び込んでいると思う。運というよりも力。選手の意識がすごく高いことが、この結果を呼んでいる。中田英、中村、小野といった選手はゲームを読む力がずば抜けていて、「今、オレがこういうプレーをすればチームはこうなる」と考えてプレーしている。これは本当にすごいこと。
 中田英、中村、小野の3人がいる内に次世代の選手が出てこないと、日本代表の将来は危うい。でもジーコは新しい選手を入れるつもりはないらしい。もちろん2006年に結果を出すのが仕事なんだから、仕方のないことなんだけど。
 目先のモノにとらわれちゃいけないんだけど、目先のモノにとらわれて生きていかなくちゃいけない。代表監督というのは本当に難しい。

【Hot Link !!】





image
宇都宮徹壱さん(ノンフィクションライター)

『ジーコ・ファミリー』の話

 ジーコ・ジャパンの試合はずっと見続けてきているけど、「よくもまあこれだけハラハラドキドキ、イライラさせてくれるなぁ」というのが正直な感想。
 たまに采配がズバッと決まることもあるけど、「なんで熱を出した選手を出すの?」とか「なんで調子の良い選手を出さないの?」とか「なんでもっとフレッシュな選手を入れないの?」とか、毎試合「なんで?」と思うことが1つは必ずある。
 たしかにどの監督であっても、すべての試合で会心のサッカーができるわけじゃない。でも、たとえば山本昌邦さんが五輪代表の監督をやっていた時は、すごくわかりやすい采配だった。ちょっとわからないことがあっても、記者会見で聞けば「あ、なるほど」と納得がいった。
 ところがジーコ監督は理屈じゃない部分が大きい。記者会見で質問しても、返ってくる答えが全然違う方向の答えだったりする。それからジンクスみたいなものもかなり考えている雰囲気がある。ピッチに右足からはいるか左足から入るかとか、そういうことをいつも考えているみたい。
 もともとジーコは監督になろうと思ってなった人じゃない。川淵キャプテンから要請されて監督になった人なので、監督としての適正を度外視して生まれた政権とも言える。ここへ来てやっと監督らしくなってきた気がするけど。
 ジーコが監督になった時、業界的には「なんで?」という声が多かった。僕も「なんで?」と思ったし、トルシエが作り上げたオートマティズムのサッカーをさらにレベルアップさせる監督を選ぶのではないかと思っていた。2006年のドイツW杯の頃には中田英、小野、中村などがいる黄金世代がサッカー選手として一番良い時期を迎える。これをどう生かしていくかを見たかった。
 ジーコの指導者としての良さは、選手に責任を担わせて、自覚をうながし、どんどん成長させていくこと。その成果が出たのがアジア杯だった。あそこから僕もちょっと見方が変わった。
 とはいえ、相変わらず戦術はなさそう。練習もゲーム形式が多いし、シュート練習もけっこう不思議。ペナルティエリアに切り込んでからセンタリングとかさせている。普通はそこでシュートだと思うんだけど。バーレーン戦で柳沢がシュートを打たなかったのも、あの練習のせいなのでは。
 宮本という学級委員長と中田英というボスがいるクラスに、ジーコという先生がいる。でもその先生の授業は自習ばかり。たまに学級委員長が職員室に行って「すみません先生……」と言いに行くんだけど、先生は「まあ頑張れ」としか言わない。
 ジーコ・ファミリーという家族ドラマは、ネタ満載で退屈しない。

【Hot Link !!】







放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'54" Mas Que Nada Elza Soares Hemisphere 7243 5 39852 2 6
20'19" S.N.S.(So No Sapatinho) So No Sapatinho Wea WPCR-11256
27'48" Lobo Bobo Joao Gilberto Tropical Music LC 9078
36'19" Rio-Bahia Joyce with Dori Caymmi Victor VICP-63037
46'08" Meio De Campo Elis Regina Mr. Bongo Disorient MRBCD24


 Back