SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年7月16日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「夏の読書」

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 私、森下は読書と言えば雑誌や漫画ばかりなのですが、「この小説がおもしろいんだ」なんてお話をうかがうと、たまにはミステリー小説なども読んでみたくなります。
 でもそういうお話って、聞いた翌日には本の題名を忘れてしまって、本屋さんに行っても見つけられないんですよね。電話で「なんていう本でしたっけ?」と聞くのも気が引けますし……
 そこで本日は、お客さまから教えていただいた「オススメの本」をバッチリ手帳にメモしてきました! せっかくですから、オススメの理由と合わせてココでご紹介させていただきます。


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高井一郎さん(フジテレビ・プロデューサー)の

『本とドラマ』の話

 最近はドラマや映画の原作を押さえるのがどんどん早くなっていて、下手をするとゲラの段階で映像化の話が出版社に来ている。だから本屋で本を買って「これ、面白いからドラマにしよう」なんて思っても、その頃には映画会社からテレビ会社から3つも4つも話が来ている……という状況だったりする。
 小説に限らず、漫画も同じ。『スピリッツ』や『モーニング』などの週刊誌を朝イチで買って、新連載の第一話を読んだ段階で映像化の話をしないと、もう手遅れ。
 『世界の中心で、愛をさけぶ』の場合は、出版されて2〜3年経ってからの映像化だった。つまり、こういう状況になったのは本当に最近。逆にその辺のヒットが次々に出て、こうなったと言える。
 今やドラマのほとんどが、漫画や小説を原作にしているか、映画のリメイク。この7月から13本のドラマが始まるけど、その内、オリジナルの脚本は5本だけ。
 という状況はさておき、そうでなくてもこの仕事は本を読んでおいた方がいいし、映画は見ていた方がいいし、音楽も聴いておいた方がいい。というのは、話のほとんどが「たとえ話」だから。河毛大監督も杉田大監督も、みんな何かの作品にたとえて話をする。そのたとえている作品を知らなければ、話がまったく通じないので、仕事にならない。新入社員にも「とにかくいっぱい見てくれ」と言っている。
 このクリエイティブな世界で一番必要な能力はコミュニケーション能力。自分の脳味噌にあるモノを人に伝えること、他人の脳味噌の中にしかないモノを理解すること。自分1人で出来る彫刻家のような仕事ならともかく、ドラマの製作では脚本家、演出家、役者、編集マン、ミキサー、さまざまな人が共同作業をすることになる。100〜150人の知恵や才能を結集して1つのモノを作る、その時にそれぞれが何を考えているかを理解し合わなければ、ちゃんとしたものは作れない。
 そういう時にもっとも力を持っているのが「たとえ話」。「たとえば○○みたいな……」と言うことで、考えていることがちゃんと伝わる。さらに何か共通の本に関して「こう感じた」と伝えるだけでも、お互いがどんな人なのかわかる。
 本を読むというのはすごく想像力を必要とする作業で、無意識に「活字を映像にする」という作業をしているはず。その中でカット割りをちゃんと出来る人が監督になっていくのかもしれない。でもみんなが思い浮かべている映像は、それぞれで全然違う。シャーロック・ホームズの『まだらの紐』を読んで思い浮かべる赤い紐は、人によって全然違うはず。

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白川浩介さん(オリオン書房)の

『本屋大賞』の話

 『本屋大賞』は全国の本屋が選ぶ賞。とにかく書店に勤めている人であれば、社長からアルバイトまで誰でも投票権を持つ。既存の賞がどうしても密室的で、それは文学の権威や格を守るためには仕方のないことなんだけど、それとは逆のオープンなポイント・ランキングがあっても良いだろうと考えてこの賞を作った。
 とはいえ、特に「文学界の改革」みたいな事は考えていなくて、本の売り上げが落ちる4月くらいに店頭でお祭りみたいに盛り上げてみようか……ぐらいの考えだった。それがこれだけ大きな流れになったのは、やってる方としても意外だった。
 第2回の今年は恩田陸さんの『夜のピクニック』が大賞を獲得。以下、2位は荻原浩さんの『明日の記憶』、3位は梨木香歩さんの『家守綺譚』、4位は絲山秋子さんの『袋小路の男』、5位は伊坂幸太郎さんの『チルドレン』……と続く。
 個人的に好きなのは4位の『袋小路の男』。3作品の短編集で、最初の1、2作は恋愛小説になっている。「十何年も男の人と手を繋いだことがない女性」が主人公で、その女性にはずっと思い焦がれている男性がいる。ところが男性はけっこうワガママで、それに振り回される……というお話。そして2作目は、まったく同じお話を男性の側から描いている。
 そして僕がもっとも好きなのが3作目。これは前の2作とは関係のない登場人物のお話で、工場に勤めている叔父と姪が文通するお話。特にコレというストーリーはないんだけど、人と人との距離感の取り方というか、受験を前にした多感な時期に人と人との関係に悩む姪と、過去に人間関係で悩んだことのある叔父、無骨な2人のくっつきそうで離れそうな関係にとても共感した。
 最近は「キモメン文学」という言葉もあるくらい、高嶺の花の女性とオタクの男性が付き合う本が何冊も出ている。その代表例が『電車男』。その他にも「mixi」というコミュニティで紹介されている『59番目のプロポーズ』という本も売れている。これはアルティシアというハンドルネームの人が書いた本で、登場する女性は広告業界にいるような華やかでキャリアも積んでいる女性。この女性がガンダムの話しかしないようなオタクと付き合う。しかも『電車男』と違うのは、女性の方からアプローチするところ。
 夏に読むなら森絵都さんの『DIVE!!(ダイブ)』という小説がオススメ。ダイビングに打ち込む少年たちの姿を描いた小説で、爽やかで読み応えがある。大人が読んでも甘酸っぱい青春を思い起こさせてくれる。
 あさのあつこさんの『バッテリー』という小説も、有名だけどオススメ。天才で傲慢なピッチャーと、それを受けるキャッチャーの中学生コンビがおりなす、ストレートでちょっとダサイけどホロッとさせてくれるお話。いい一夏の想い出になるのでは。

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石平聡さん(新潮社)の

『新潮文庫の100冊』の話

 夏恒例の「新潮文庫の100冊」シリーズは来年で30周年。中学生や高校生に、夏休みで時間がある時に名作を読んでもらおう、という趣旨でずっと続いてきた。
 この「100冊」は毎年違う。もちろん夏目漱石の「こころ」や太宰治の「人間失格」など、30年間変わらない作品もある。この間、調べてみたらずっと変わらず入り続けている作品が12冊あった。
 30年の間に変わってきたのは、主に今の作家さんの作品。最近でいえば江國香織さん、宮部みゆきさん、重松清さん、こういた今の人気作家の作品がその年その年で少しずつ入れ替わっている。
 外国の作品は比較的“変わらない名作”の比率が高いかもしれない。でも最近なら『朗読者』という本が「王様のブランチ」で紹介されて、そんなにベストセラーになるような本じゃないのに30〜40万部も売れた。こういう外国の作品も新しい定番として入ってくることがある。
 『罪と罰』『ハムレット』なんて作品もずっと入り続けてるけど、これらは売れているから落ちない。特にシェイクスピアの作品は毎年ちゃんと売れる。
 僕のオススメは『夜のピクニック』で本屋大賞を取った恩田陸さんの新刊「図書室の海」。10点の短編が集められた短編集で、中には『夜のピクニック』の前の日を描いたお話もある。『夜のピクニック』を読んで好きになった人にはオススメ。

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目黒考二さん(書評家)の

『上半期のベスト3』の話

 『本の雑誌』では毎年夏に「上半期のベスト10」を発表している。今年の1位は島本理生さんの『ナラタージュ』。これは良かった。
 私は年輩なので、若い人が恋をしてうんぬんかんぬん、という小説には興味がない。でもこの『ナラタージュ』は恋愛小説。大学生の女の子が主人公で、その子は高校時代に演劇部の先生が好きだった。でも片思いのまま卒業して、大学生になってから「文化祭で人数が足りないから来てくれ」と頼まれて母校に帰る。そこで再び恋心に火がつく……というお話。
 こんな話、いつもなら「バカヤロウ!」と放り出したくなる。ところがこの本にはどんどん引き込まれてしまった。
 男と向かい合う主人公。その時、男の表情を見て何かを思う。ところがその「何か」が書かれない。そしてずいぶん経ってからその時の感情をフッと出す。この手法がすごく新鮮だった。ラストシーンもすごく良くて、胸が苦しくなった。
 この作品は山本周五郎賞の候補になって、残念ながら落ちてしまったけど、この作家はその後にもマガジンハウスから『一千一秒の日々』という素晴らしい小説も出しているので将来は有望。ちなみに現役女子大生。
 「上半期のベスト10」の2位は森絵都さんの『いつかパラソルの下で』。森絵都さんはもともと児童文学の人で、児童文学界のあらゆる賞を総なめにした人。その人が書いた大人向けの小説の2作目が『いつかパラソルの下で』だった。
 『いつかパラソルの下で』は家族小説。ヒロインは3人兄弟の真ん中で、上にはお兄ちゃん、下には妹がいる。ヒロインとお兄ちゃんはフラフラしていて、大学を出ても就職もせず、しょっちゅう恋人も変えるような人間。一番下の妹はしっかりしている。
 そして父親の一周忌の時に、叔父さんから衝撃の事実が明かされる。亡くなった父親は、女に手の早いとんでもない人間だった、と。お兄ちゃんやヒロインが世間の常識から逸脱していたのは、厳格だった父親への反抗だった。あまりにギャップに、3人の兄弟は父親のルーツを知るべく、父親の故郷である佐渡を訪れる。
 そして佐渡に行くと……何も起きない。結局、父親がどういう人間だったのかわからないけど、3人はいろんな人と出会って帰ってくる。これが素晴らしい。
 続いて「上半期のベスト10」の3位は三雲岳斗という人が書いた『カーマロカ』。これは波瀾万丈の伝奇小説で、「平将門が生きていた」というところから話が始まる。
 将門は甲府を通って北上しているらしい、という話を聞いて、続々と刺客が送り込まれる。将門の娘はお供を連れて父に会いに行こうとする。地元の不穏な連中もどちらに付くのかもわからない。みんなが一斉に甲府に集まって、波瀾万丈の伝奇小説が繰り広げられる。そして物語の最大の謎は「将門はなぜ甲府にいるのか?」という問題。最後にはその謎が明かされ、将門という人物の大きさと物語のスケールの大きさに胸を打たれる。
 伝奇小説は物語のモチーフの芯がしっかりしていないと、小手先で終わってしまうもの。この『カーマロカ』は「すごいよ将門!」という芯がしっかりしていて素晴らしい。

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石倉笑さん(宝島社)の

『このミステリーがすごい!』の話

 「このミステリーがすごい!」大賞は、最新のもの国内のアンケート者68人、海外のアンケート者74人の投票によって選ばれている。
 12月に出版するため、前年の11月1日からその年の10月末日までに出版された作品の中から選ばれる。めぼしいモノを編集部でリストアップして、アンケート者に渡しているけど、日夜傑作ミステリーを探している読書のプロばかりなので、あまりリストは関係なく選ばれるケースが多い。
 その結果、中には「なにがミステリーなんだ?!」という作品がベスト10に顔を出して指摘されることも多い。それでも面白ければ「それもまたミステリー・エンターテイメント」ということで、時代小説、SF、ホラー、恋愛小説などが幅広く入っている。
 たった1つの条件があるとしたら、それは「謎」があること。その謎を解いていくサスペンスなり、理論的展開の妙が必要。そこはもうセンスなので、アンケート者がミステリーだと言うのならミステリーだと編集部では思っている。
 「人の知らない作品を入れよう」という意識も働いてる雰囲気がある。たとえば去年国内3位の『天城一の密室犯罪学教程』。この作品も天城一という作家も、ほとんど誰も知らないと思う。
 天城一さんは実は数学者。だからこの作品は『数学セミナー』という数学の専門誌に連載されていて、日本評論社というミステリーとは無縁そうな出版社から出版されている。こんな作品を探し出すくらい、アンケート者のみなさんは面白いミステリーを探そうと常に目を光らせている。
 「このミステリーがすごい!」は年末なので、夏向けには「この文庫本がすごい!」がある。やはり同じようなアンケートによるランキング方式で、「文庫」という括りでミステリー・エンターテイメントだけではなく、今注目の恋愛小説、根強いファンの多い時代小説、この3つを取り上げている。
 文庫なので新旧入り交じっているところがミソ。ミステリーなら江戸川乱歩と舞城王太郎が並んでいたりして、見る人が見ればヘンなことになっているのがとても面白い。でもアンケート者が「おもしろい」と答えた結果なので、どれを読んでも間違いはないはず。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'47" I Could Write A Book Hi-Lo's HINDSIGHT HCD 603
20'51" Don't Be That Way Janet Seidel fab. MZCF 1066
30'53" The Flame Carola SAHKO JAZZPUU-8CD
42'02" We've Got A World That Swings Tony De Save TELARC CD-83620
47'55" What's New The Four Freshmen EMI-Capitol CCM-095-2


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