毎日、どんな時も、常に何かしらアイデアを考えている。でもそれはパソコンで言えばスタンバイモードみたいなもの。仕事の依頼が来て初めてちゃんと考え出す。
放送作家の仕事は完全に受注生産。そこが芸術家と違うところで「こういうことを考えて下さい」という注文があって初めて成り立つ。だからレギュラー番組があれば常に「番組に合うモノはないかな」なんて考えている。
ゼロからイチを考え出すのが大変な時に、イチをどれだけ膨らますか、という考え方はよく使う手。その場合、最初の企画から何歩下がれるかを考える。
たとえば先日「結婚式で花嫁と花嫁の母が花束を渡して泣き出すようなドキュメンタリーを」という注文が来た。この手垢にまみれた企画を考えるのあたっては、結婚式場から何歩下がれるかをみんなで考えた。それで辿り着いたのが午前中の美容室。そこでカメラを構えて待っていると、パーマをかけたオバチャンが出てきた。「今日、何か良いことあるんですか?」と聞くと「実は娘の結婚式なんです」……という出だし。そこからオバチャンが家に帰って、着物に着替えて、結婚式場に向かう、というドラマのある結婚式のドキュメンタリーになる。
昔、テリー伊藤さんが「一軒のお店をレポートするなら、横断歩道を越えたところからロケを始めろ」と言ったのだとか。そうすると道路を越える時に車に轢かれそうになったり、横に信号待ちのお婆ちゃんがいたり、何かが生まれるかもしれない。これを店の目の前から始めてしまうと、何も起こらない。その違いが大事、というのはすごく納得が行く。
アイデアを思い付く時は、外を歩いていたり、車を運転してたり、いろいろ。ただ、会議をはしごする仕事なので、移動中にアイデアを考えざるをえなくて、その時に思い付くというケースが多いかも。
たぶん、この僕たちの仕事は普通の人の10倍は笑う仕事だと思う。普通の企業の会議でふざけると怒られると思うけど、僕らの会議はふざけないと怒られる。だから放送作家が集まると、まるで男子中学生の集まりみたい。現実には30〜40歳だったりするのに。
僕はネタ帳を持っている。書いてあるのはほとんどキーワードとか、ダジャレとか。ここに「小錦とピロシキ」なんて書いてあるし。「大胸(おおむね)OK」というのは「巨乳大好き」という意味だと思う。中国には「腐乳」という食べ物もあるし、じゃあ「豆乳」は?……という連鎖がアイデアの元。ただ、このノートを持っている時に事故だけは遭えない。
煮詰まってアイデアに困った時はなるべく会議に出るのが荒療治。そうやって会議にいっぱい出て、家に帰る頃には「なんで悩んでたんだろう?」と思うくらいスッキリする。思いっきり寝るのも1つのやり方。本人が悩んでいるほど悩みは深くないもの。
テレビの仕事は毎週必ず締め切りが来るので、そんなに悩んでいる余裕がないとも言える。自転車操業でいっぱいいっぱいになって頑張るしかない。