SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年5月21日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「M&A」

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 今週の当店ではパリッとしたスーツを着たお客さまが難しいお話をされていました。
 バーテンダーのスタンさんに「みなさん、何のお話をされているんですか?」と聞いてみたところ「Merger and Acquisition、つまり企業の合併と買収のお話ですね」とのこと……正直、ますますわかりません。
 でも、わからないからこそ勉強!と一生懸命お客さまのお話に耳を傾けていたところ、ニュースに出ていたホリエモンがどんな人なのか少しだけわかったような気がします。
 今週はそんな「M&A」にまつわるお客さまのお話を、ここでご紹介させていただきます。


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浜辺雅士さん(『ZAi』編集長)の

『会社と株主』の話

 今、株を買う人は「バリュー」しか見ない。
 企業の価値には「バリュー」と「グロース」という見方があって、「グロース」は成長の見込みのこと。現在の会社の事業規模じゃなくて、3年後とか5年後を見て「買おう」と考える。これがグロースで判断するということ。この考え方がもっとも顕著だったのが「ITバブル」の時だった。みんな浮かれて、現在の会社の価値を無視してどんどん株を買って、株価が釣り上がっていった。そういう風にグロースが主流だった時代もあった。
 でも、一方に偏りすぎると、それはいつしか破裂する。そして長者番付1位のサラリーマンを生んだタワー投資顧問などの方法論「バリュー」が主流になっていった。こちらは会社の現在の価値を見極めて、それに対して株価が高いか安いかを考えるやり方。
 バリューで考える場合は、企業の価値を正確に計算する必要がある。そしてそのバリューと株価と株券を掛けた時価総額を比較して、もし「全部の株を買ってしまう(その結果、その会社を手に入れる)方が得」なら、株を買った方が良い。これがバリューの考え方。ホリエモンがしきりに「企業価値を高める」と言っていたのもこの考え方が根底にある。
 そもそも、株の歴史というのはそんなに古いワケじゃなくて、1700年代中盤にイギリスで初めて株式の取引所が生まれたのが最初。その取引所は「ジョナサン」という喫茶店だったらしい。喫茶店にロンドンの有力な仲買人が集まって、お互いに株券を売ったり買ったりしていた。
 それからいろんな歴史を経て「株を買って会社を所有するとはどういうことか」について、いろんな説が生まれた。「会社は株主のモノだ」という説が大勢を占めていた時もあったし、「いやいや、経営者と従業員のモノだ」あるいは「顧客のモノだ」という説が強かった時もあった。その間を行ったり来たりしながら、時代によって考え方が変わってきた。
 20世紀初頭にはカーネギーやロックフェラーが、大資本を元に企業をどんどん大きくしていった。その時は「株主=経営者」で、株主はものすごい権力を誇っていた。しかしT型フォードが誕生して大量生産の時代になると、さらに資本を集める必要が生まれ、資産家個人の資産では足りないため大勢の資本家から資本を募る必要が生まれた。これによって資本家と経営者が分離するようになった。
 そして1932年に書かれた『経営者革命』という有名な論文があって、そこから「会社は経営者と従業員のモノであって、株主は少し影響力を持っているだけ」という時代に入っていく。
 さらに60年代にはアメリカでM&Aブームが起こった。数多くの乗っ取り屋が現れて、株主は「今までの経営者に付くか、乗っ取り屋に付くか」の選択を迫られた。そして「あれ?企業の価値を高めてくれるなら、乗っ取り屋の方が良い?」ということに気が付いて、今までの経営者をクビにする株主も現れた。それで「ということは、経営者というのは株主のために価値を最大化するのが仕事なのか!」ということがわかって、もう一度株主の手に支配権を取り戻す流れになった。
 こんな風に「会社は誰のモノか」という議論は右往左往を繰り返しながら現在も続いている。

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若林史江さん(トレード・アドバイザー)の

『M&Aと株』の話

 M&Aにも友好的な合併と敵対的買収があるけど、最近増えているのが「敵対的買収を防ぐために配当を上げる」という企業。株が安いまま放置されていれば株を買うだけで企業が買えてしまうので、配当を上げて、その結果株価を上げて、それが敵対的買収に対する防衛になる。
 だから儲かっているのに株価が安かったり、すごい資産を持っているのに株価が安かったりすると、狙い目になる。一般投資家が株を買う時も、そういう部分に注目するのも1つの手。PBRとかPERといった指数を四季報で調べてみると、割安なまま放資している企業はたくさんある。ただし「じゃあ敵対的買収を防ぐための対策を……」とその会社が考えるかどうかは、一か八かの賭けになってしまうけれど。
 個人的には「提灯買い」というやり方が大好き。商品が売れたり売れなかったりでもちゃんと株価は上下するけど、それとは別に情報操作で株価を動かしている人もいる。それは仕手株みたいな怪しい話とは別に、「流行りのモノ」というのはどんな事にでもあるから。だからそれを発信する人に早く付いて提灯買いするのが良いと思う。ただ、行きすぎた提灯はダメだけど。
 ちなみに私は、今回のニッポン放送株に関する一連の騒動でニッポン放送の株を買った。というのは株主総会に行きたかったから。高いコンサートチケットと思えば良いか、と思って買ったのに、和解しちゃったのが残念。

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安田育生さん(ピナクル代表取締役兼CEO)

『M&Aの効用』の話

 1980年代、日本の企業の競争力が強く、アメリカの企業は日本に較べて弱かった。そこからアメリカ企業が回復したのには、大きく2つの理由がある。
 1つはビル・ゲイツやスティーブン・ジョブスのように自宅のガレージでコツコツ物作りをしていた人たちが、今やマイクロソフトのような大きな会社になって、アメリカ経済を支えているということ。80年代にそういうミクロ・アクティビティを大事に大事に育てたのが大きい。
 そしてもう1つが、競争力を失った大企業が競争力を回復するためにM&Aを利用したこと。よく「シナジー(相互補完)」という言葉が使われるけど、M&Aによってお互いに足りない部分を補完しあうコーポレート・リストラクチャリング(再構成)が進んだ。これによってアメリカの企業は競争力を回復できた。
 M&Aには2種類ある。通常は、事業会社が事業目的で別の事業会社を買収する。それに対してもう1つは、ファイナンシャル・バイヤーがマネーゲーム的な目的で会社を買って、3年ぐらいで会社の価値を高めて売ってしまう。だからと言って後者が悪いかと言うと、意外とそうでもない。マネー的なM&Aだって、最終的には売るわけで、その売る先は事業目的の会社。つまりマネーゲーム的な買収も、リストラクチャリングの潤滑油的な役割は果たしている。
 レバレッジド・バイアウト(LBO)という手法もあって、これは小さな資金で大きな会社を買収する方法。たとえば一個人が1000億円クラスの一部上場企業を買収しようと思ったとする。もちろん銀行へ行って「1000億円貸して下さい」って言ったって、相手にしてくれるわけがない。ところが「買った会社を担保に入れますから」と言えば、銀行も「え?あの会社が担保なら……貸しても良いかな?」と考える。ものすごく単純化して言えば、LBOとはそういう手法。
 具体的には、ニッポン放送が「貸しても良いかな?」と思わせる会社だった。特にポイントだったのがポニーキャニオン。たとえば2000億円でニッポン放送を買収しても、ポニーキャニオンを分離して上場するだけで2000億円くらいの価値になった。堀江さんはそういった計算をして「ニッポン放送だけでも元が取れる」という目算があったのだろう。
 孫さんや三木谷さんはアメリカで教育を受けているのでそういう感覚を身に付けているのは当然としても、堀江さんがその感覚を持っているのは驚きだった。
 ああいう解決になって、フジテレビが勝利したのか、ライブドアが勝利したのか、いろいろ意見がわかれるところだと思う。一見「フジテレビがライブドアを退却させた」というイメージで見られているけど、フジテレビは当初TOB(株式公開買い付け)のために用意した額よりも770億円のコストがかかっている。
 一方、ライブドアはフジテレビの支配には失敗したけど、440億円の資金と、さらにニッポン放送株の対価を合わせて、1500億円弱のキャッシュを得ている。リーマンには株券という形でお金を払っているから、返す必要はない。つまり表現を変えれば、ライブドアは1500億円の増資をして、フジテレビとの業務提携を得て、堀江さんが有名になった、ということになる。
 ただしこの1500億円は、キャッシュのまま眠らせておくわけにはいかない。今度は逆にライブドアを買収すれば漏れなく1500億円が付いてくるワケだから、今のまま放っておけばライブドアが危ない。
 だから堀江さんはそのキャッシュで次の夢を叶えるに違いない。

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佐山展生さん(GCA代表取締役)の

『日本のM&A事情』の話

 今まで日本ではあまり行われていなかったM&Aだけど、これからは出てくる気配がある。
 実際には、M&Aと言っても敵対的な買収はほとんど行われていない。でもよく考えていると「敵対的」というのはようするに「今の経営陣が嫌」と言っているだけ。たとえば取引先を泣かせるような酷い経営陣がいたとする。「その経営陣はおかしい!我々が買って変える!」という買収提案があって、従業員もそれを支持していたとしても、言葉の上では敵対的買収になってしまう。こういう善なる敵対的買収がこれからは日本でも起こるのでは。
 この前のニッポン放送の買収がちょっと違うのは、従業員が嫌だと言っていたこと。私の考えでは、買収する時はそこの従業員もハッピーにしなければいけないと思う。
 「100億円くらいでどこか買収できる会社ない?」とか「良い会社だったら買います」なんて言う社長さんもいるけど、そういう考え方じゃうまく行かない。どういう業種で、なぜ買収したのか、ということをしっかり考えて初めて買収は成功する。会社には人がいて働いているわけだし、今やっているビジネスの繋がりもあるので、お金があるだけじゃダメ。
 「儲かればいい」という完全な投資会社はちょっと話が違ってくるけど、普通の事業会社の場合は「買収してどうする」という戦略がないとうまく行かない。それに「良い会社あれば買いますよ」と言ってる社長さんも、本当に買収の話を持っていくとなんだかんだ言ってやろうとしなかったりする。本当にM&Aをやろうと考えている人は「どういう業種で、いくらぐらいで、いつまでに」と具体的な話をする。
 今、我々はM&Aの専門会社をやっているけど、9割以上が「売りたい」「買いたい」がすでに決まっていて「具体的にどうするか」という部分でお手伝するという仕事。そういう仕事をしていて痛感するのが、M&Aは勝負だということ。野球やサッカーと同じで流れがあって、その気になって「やっていこう!」という流れに乗ってパッパッと決めていかないと、ちょっとタイミングが遅れただけでご破算になってしまう。
 特にオーナー企業さんの場合「そうしよう!」と言った時にすぐに詳細を詰めないと、一晩寝ただけでも考えが変わってしまう。話がまとまりそうな時にすぐ動けるかどうか、このフットワークがプロかどうかの境目。
 今、M&Aの成熟度は、アメリカを100としたら日本は30程度。バブル崩壊後に「売却せざるえない」という状況でここまで来たけど、これからは「売却した方が良い」というM&Aが増えてくる。今のマーケットの3倍くらいにはなるのでは。

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藤田晋さん(サイバーエージェント代表取締役社長)

『買収の危機』の話

 会社を上場したのが2000年3月。それから1年後ぐらいに「会社を手放すしかないかも……」と思った時期があった。
 ネットバブルが崩壊し、「インターネットはダメだ」という雰囲気になった時に、ウチの株価も大暴落した。1株1500万円で上場したのに、株価が1/10になって、時価総額も80億円に。ところが会社の現金は160億円あったから、買収して会社を解散すれば80億円の儲け。僕も「株価を下げた経営者」と言われて信用を失い、買収したいという会社がいっぱいやってきた。
 実際、ある会社に買収されそうになって「もうダメだ!」と思ったこともあった。そこで考えたのが「どうせだったら、昔からお世話になってるUSENの宇野社長に」ということ。社員にとっても、同じように経営してきてカルチャーも似ているUSENの方が良いのでは……そう考えて宇野社長のところに売りにいった。
 ところが宇野社長は「お前の会社なんかいらねぇよ!とっとと帰れ!」みたいな口調で僕を追い返す。その時は頭が真っ白になって何も考えられなかったけど、今になってみればあれは「弱音を吐いているんじゃない!」という叱咤激励だった。
 それから何とか持ちこたえて頑張って、今度は「三木谷さんが興味を持っている」という話を聞いた。そしてある人の紹介で会いに行ったら、ネットバブル崩壊後で三木谷さんの所も大変な時期だったんだけど、買収しようとしている会社から10億円で株を買ってくれて、ウチを助けてくれた。しかも一切口出しをしない。その10億円は今や100億円以上になっているけど、三木谷さんにとって当時の10億円は大変なお金だったはず。
 そういった事情で『渋谷ではたらく社長の告白』という本では宇野さんと三木谷さんのことをかなり格好良く書きすぎた。
 ニッポン放送の亀淵社長のニュースなんかを見ていると、似たような経験をした者として同情を禁じ得ない。「株価を上げろ」とか株主に言われても、どうしようもない時期というのはあるものだし。僕もあの時期にいろいろあったおかげで、鍛えられて経営者として成長したと思っている。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
11'41" If Dreams Come True Nancy Wilson Capitol 7243 5 97073 2 7
17'06" The Curse Of An Aching Heart Frank Sinatra Reprise WPCP 4681
25'00" The Money Tree Margaret Whiting Capitol CDP 7 93194 2
34'30" Love Me Or Leave Me Sammy Davis Jr. Music Club MCCD 140
45'14" The Lady Is A Tramp Peggy Lee 東芝EMI TOCJ-5890


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