1980年代、日本の企業の競争力が強く、アメリカの企業は日本に較べて弱かった。そこからアメリカ企業が回復したのには、大きく2つの理由がある。
1つはビル・ゲイツやスティーブン・ジョブスのように自宅のガレージでコツコツ物作りをしていた人たちが、今やマイクロソフトのような大きな会社になって、アメリカ経済を支えているということ。80年代にそういうミクロ・アクティビティを大事に大事に育てたのが大きい。
そしてもう1つが、競争力を失った大企業が競争力を回復するためにM&Aを利用したこと。よく「シナジー(相互補完)」という言葉が使われるけど、M&Aによってお互いに足りない部分を補完しあうコーポレート・リストラクチャリング(再構成)が進んだ。これによってアメリカの企業は競争力を回復できた。
M&Aには2種類ある。通常は、事業会社が事業目的で別の事業会社を買収する。それに対してもう1つは、ファイナンシャル・バイヤーがマネーゲーム的な目的で会社を買って、3年ぐらいで会社の価値を高めて売ってしまう。だからと言って後者が悪いかと言うと、意外とそうでもない。マネー的なM&Aだって、最終的には売るわけで、その売る先は事業目的の会社。つまりマネーゲーム的な買収も、リストラクチャリングの潤滑油的な役割は果たしている。
レバレッジド・バイアウト(LBO)という手法もあって、これは小さな資金で大きな会社を買収する方法。たとえば一個人が1000億円クラスの一部上場企業を買収しようと思ったとする。もちろん銀行へ行って「1000億円貸して下さい」って言ったって、相手にしてくれるわけがない。ところが「買った会社を担保に入れますから」と言えば、銀行も「え?あの会社が担保なら……貸しても良いかな?」と考える。ものすごく単純化して言えば、LBOとはそういう手法。
具体的には、ニッポン放送が「貸しても良いかな?」と思わせる会社だった。特にポイントだったのがポニーキャニオン。たとえば2000億円でニッポン放送を買収しても、ポニーキャニオンを分離して上場するだけで2000億円くらいの価値になった。堀江さんはそういった計算をして「ニッポン放送だけでも元が取れる」という目算があったのだろう。
孫さんや三木谷さんはアメリカで教育を受けているのでそういう感覚を身に付けているのは当然としても、堀江さんがその感覚を持っているのは驚きだった。
ああいう解決になって、フジテレビが勝利したのか、ライブドアが勝利したのか、いろいろ意見がわかれるところだと思う。一見「フジテレビがライブドアを退却させた」というイメージで見られているけど、フジテレビは当初TOB(株式公開買い付け)のために用意した額よりも770億円のコストがかかっている。
一方、ライブドアはフジテレビの支配には失敗したけど、440億円の資金と、さらにニッポン放送株の対価を合わせて、1500億円弱のキャッシュを得ている。リーマンには株券という形でお金を払っているから、返す必要はない。つまり表現を変えれば、ライブドアは1500億円の増資をして、フジテレビとの業務提携を得て、堀江さんが有名になった、ということになる。
ただしこの1500億円は、キャッシュのまま眠らせておくわけにはいかない。今度は逆にライブドアを買収すれば漏れなく1500億円が付いてくるワケだから、今のまま放っておけばライブドアが危ない。
だから堀江さんはそのキャッシュで次の夢を叶えるに違いない。