SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年5月14日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「レストラン評論家」

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 東京では毎日のように新しい飲食店がオープンしています。あっちにフレンチ、こっちにイタリアン、そっちには中華、向こうには和食といった具合に、雨後の竹の子のように新しいお店が次から次へとオープンしていきます。
 だからどのレストランが美味しいのかを教えてくれる『レストラン評論家』というのは非常に貴重な存在です。たまの外食は、せっかくだから美味しいお店で……と考えるのは当然でしょう。
 そこで本日は当店にいらっしゃった、レストラン評論家のみなさんの“とっておきのお店”のお話をここでご紹介させていただきます。もちろん、当店のことはさて置き……という前提のお話ですが。


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山本益博さん(料理評論家)の

『一度は行くべき3軒』の話

 僕はレストランの評論で、ここ20年来「美味しい」と書いたことがない。最近は「絶品」とか「究極」なんて言葉が安売りされているけど、この世に「絶品」なんてモノはない。でも料理人はその目標に向かって不屈の闘志で挑もうとしている。その姿を記したい、と思ってレストランの評論を書いている。
 レストランの評論はスポーツ・ノンフィクションと同じ。スポーツ・ノンフィクションが選手の心の内に迫るのと同じように、「食べる」という経験を通して料理人の心の内にどれだけ迫るのがレストランの評論だと思う。
 ところで「今、どこのレストランに行ったらいいでしょう?」と聞かれても、いつも同じ答えしか返せない。たとえばフランス料理なら銀座の『ロオジェ』。ここは「今しかない」と言える店。というのもシェフのジャック・ボリーさんが、あと数ヶ月でフランスに帰ってしまうから。フランス料理に興味があるなら、貯金を下ろしてでも食べておくべき。日本で一番フランスの香りがする料理を味わえる。
 それから「お前はこの店の広報か?」と言われそうだけど、いつも名前を挙げている『すきやばし次郎』。御歳80歳だから、いつ辞めるかわからないし、ここも今行くべき。
 あの店で次郎さんに握ってもらおうと思ったら、まず3週間前に予約すること。それも電話じゃなくて、ちゃんとお店に行って予約する。さらに1週間前くらいになったら「たまたま銀座まで来たので……」という顔をして「来週の何曜日に予約している○○ですが、次郎さんに握っていただきたくてお願いに上がりました」とお願いする。そうすればちゃんと次郎さんが握ってくれるから。そうしないと、次郎さんは常連さんの相手で忙しいから、握ってもらうチャンスがない。
 それ以外にも、たとえば1回目がダメだったら、忘れられない内にもう1度行くとか。もしくは5ヶ月間、5千円ずつ貯金して「5ヶ月前には次郎さんに握ってもらえなかったんですけど……」と予約の時にお願いしてみる。そういう事を言ってもあのお店は許してくれる。
 ちなみに僕は4回目で次郎さんに握ってもらえた。3回目に勇気を振り絞って「今度来た時は次郎さんの握りを食べたいと思います」と言ったら「あんた、そういうつもりで来てたんだ」と言われて背中に痛いくらいの視線を感じた。そして1週間後、お店の仕舞い際を狙って「すみません、今からお寿司いただけますでしょうか?」とお店に入ったら、次郎さんがスクッと立ち上がって前掛けを締め直して「さあ何から行きましょう」と言ってくれた。
 最後にもう1店を挙げるなら、天ぷらの『みかわ』。やっぱり天才はすごい。食べ込んで食べ込んで、その天ぷらの本当の姿に近づけたかな?と思った瞬間、その先にはこんなにも深い奥があるということを教えてくれる。
 あのお店は誰でも平等に扱うお店なので、お客さんの食べ方を見て思わず力を入れることもある。1万円の天ぷらを頼んでいるのに1万5千円の天ぷらが出てくる人もいれば、逆に5千円の天ぷらが出てくることもある。早乙女さんを見ていると、お客さんにカワイイ女の子がいると、力を入れているみたい。
 やっぱりレストランは男4人でなんかで食べに行く場所じゃない。そっちの方がレストラン評論なんかよりよっぽど大事。

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犬養裕美子さん(レストランジャーナリスト)の

『流行りの中華3軒』の話

 ワタシ的には今年は中華の年。こんなに中国とモメているけど、今年は中華だと思う。
 というのも、昨年くらいから中華料理のお店がすごく増えだしたから。大規模なお店も増えているけど、特にオーナーシェフのお店が増えた。フレンチやイタリアンと同じようなお店が非常に増えている。
 たとえば西麻布の『メゾン・ド・ウメモト上海』。ここは上海料理なんだけど、世の中に多い「家庭的な上海料理」とは一味違う。上海料理は基本的に甘辛の醤油味で、お野菜の料理というイメージ。非常にシンプルで、たまたま秋になると上海蟹がある、というのが特徴的なぐらい。
 でも『メゾン・ド・ウメモト上海』は上海の租界地で生まれた“フランスやイギリスの料理と融合した上海料理”を出しているのがとてもユニーク。単なるチンゲン菜を同じ幅、同じ厚さに揃えてサッと炒めたモノがすごく美味しかったり、アプリコットジャムで作った酢豚なんかも面白い。
 シェフは24歳だけど、3年間、上海の上流家庭で勉強してきたらしい。もともとは和食をやっていた人で、上海で学んできた料理だけじゃなくて、さらに新しい工夫を研究している。
 次は4/6に代々木上原でオープンしたばかりの『老四川 瓢香(ピャオシャン)』というお店。ここのシェフは上海で1年、成都で1年半の修行をしてきた人。実は中華料理の世界では、本場まで修行に行く日本人はあまりいないから、この人の経験はとても貴重。しかも上海と四川両方というのは珍しい。
 そしてとっておきの情報。白金の『ロン・フウ・フォン』が2店目を出店する。『ロー・ホー・トイ』という名前で、白金三光商店街の中で『ロン・フウ・フォン』よりもやや恵比寿寄りのところにできる。
 こういう風に“個人のオーナーが作る中華料理店”が増えているのが良い。シェフがきちんとわかるから「あの人の料理を食べに行こう」という楽しみが増える。

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来栖けいさん(珠食家)の

『オススメの店3軒』の話

 まずは奥沢のお寿司屋さん『入船』。ここには「マグロ」という看板がある。常に築地で一番良いマグロを仕入れているので、たまたま近海モノがほとんど上がらない時でも、ここへ行けば必ず最高のマグロを食べられる。夏などは本マグロも脂が抜ける時期なんだけど、「なんでこの時期にこのマグロがあるの?!」と聞きたくなるようなお店。
 次は中目黒のイタリアン『フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ』。ここはお任せコース1つだけで、毎週コースの内容が変わる。1皿1皿は少ない量で、10皿くらいの料理で構成されていて、すごいのが「この料理にはこのパンとワイン」という事がお皿によって全部違うこと。
 個々のお皿が美味しいのはもちろんだけど、前菜からプリモ、セコンドと食べていって、ドルチェ、チーズ、エスプレッソとコースが進んでいくと、すべてのお皿が繋がっていて、最後の方になると「あの時こうだったのは、今こうだからなのか!」と驚かされる。
 今までコース料理は散々食べてきたけど、ここで初めて“本物のコース料理”を食べた気がする。しかも10回食べに行って、1度も裏切られたことがないのも凄い。
 3軒目には本(『美食の王様 ―究極の167店 珠玉の180皿』)を出した後にオープンしたお店の中から、銀座の『ドン・ナチュール』を挙げたい。
 このお店は『あら皮(あらがわ)』というステーキ屋にいた人が独立したお店で、やっぱりメインはステーキ。『あら皮』と同じ特注の炉窯を使っていて、しかも『あら皮』には1つしかないその炉窯が肉用と魚用の2つある。肉を炉窯で焼くと、表面のカリカリ感が全然違う。
 『あら皮』の場合、肉は“但馬三田牛”と決まっているけど、『ドン・ナチュール』では実際に肉を見て、一番良いと思ったモノを仕入れ、熟成させて出している。だからその時によって置いている肉は違う。でも値段は『あら皮』の半分。コースで1人2万1千円くらい。
 肉以外にも、魚を丸ごと焼いてみたり、良い意味での“遊び”が感じられる。この間はホワイト・アスパラやシイタケ、トマトなどを何の味付けも無しに炉窯で焼いた料理が出てきた。これが驚くぐらい美味しい。炉窯で焼いた平貝も、あんなに繊維を強く感じる平貝は初めてだった。

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横川潤さん(エッセイスト)の

『オススメの店3軒』の話

 とりあえずイタリアンの本を出しているのでイタリアンから2軒を挙げたい。
 最近は「安くて美味い店を」と聞かれるので、まずは銀座一丁目の『イル・パラート』。オーナーソムリエとシェフ2人だけのお店で、こぢんまりした隠れ家的なお店。
 ここが面白いのは、オーナーソムリエの玉置さんがグラスでいろんなワインを出してくれること。料理の合わせて安いグラスワインをいろいろ楽しめるので、お酒が好きな人にはたまらない。
 値段もそれなりに安いし、料理も大皿をつつき合う感じで、みんなでワイワイ楽しめる。凝った料理というよりも、良い素材を持ってくる。たとえば内臓をサッと焼いただけ、なんて料理も美味しい。オヤジ好みの内臓料理もある。予算は料理だけなら1人6千円くらい。
 もう1軒のイタリアンはあんまり紹介したくないんだけど、いま行かないと……ということで荻窪の『ピエモンテ』。ここは旦那さんが料理を作って奥さんがサービスを担当している小さいお店。7人ぐらいでいっぱいになる。
 このお店は良いところは、料理を作る人やサービスをする人の顔や個性がちゃんと見えること。いつ行っても同じ料理、同じサービスで、いつも楽しい気持ちで帰れるというのが素晴らしい。顔が見えるということは、何回か通う内にわかる良さもあるし、逆にこっちの好みをわかってくれてオーダーメイドになっていく楽しみもある。そこは職業評論家としてあまり深入りしちゃいけない部分だとは思うけど、「顔が見える」というのはレストランで食べる喜びですごく大きい部分だと思う。
 この『ピエモンテ』のご主人は74歳で、『レストラン麻布』で長く総料理長を務めていた人。『オー・ミラドー』の勝又さんがお弟子さん、というくらいこの業界の草分け的存在なので、その方が現役でやっている以上、これは今の内に見ておかないともったいない。イタリア人が食べ手も納得するであろうパンチの効いた味で、さらにしみじみとした良さもある料理が食べられる。
 もう1軒、イタリアン以外から挙げると銀座の日本料理店『室井』。ここは知る人ぞ知るお店というか、ホリエモンなんかもずいぶん来ているらしい。
 基本的に和食のお店で、和食であれば何でもやるというスタンス。秋ならキノコを富士山へ行ってたくさん採ってきて、いろんな方法で食べたり。慣れてくると最初から「なんだ、これ?!」みたいなモノがいっぱい出てくる。
 ここもカウンターとお座敷がちょっと、というご主人の顔が見える店。普通に食べて1万5千円くらい。銀座としてはそんなに高い方じゃない。

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小山薫堂さん(放送作家)の

『お気に入りの店3軒』の話

 最近、個人的に気に入っているのが「男2人で食べる」こと。「そんなスノッブな俺に酔う」みたいな。周りのカップルの男が下心丸出しな中で、「あの人、本当に好きで来てるんだ」みたいな視線が気持ちいい。
 だから断然好きなのが『カーザ・ビニタリア』。あそこに男2人で行く。安いし、野菜がすごく美味しい。バーニャ・カウダ、前菜、パスタ、肉料理か魚料理、キャセロールで作った野菜が出て、もう1回パスタが出て、デザートとコーヒー、これで5500円。
 僕はいつもこの店で食べ終わったら、女の子に電話する。「席をキープしといてあげるから」と言って、女の子が来たら席を替わってあげる。これは効果絶大。その日は男2人できっぱり帰って、「次は一緒に行こうね」なんて。
 それから銀座の『からむら』。ここは銀座で、カウンター7席だけのステーキ屋。ステーキ屋でありながら好きなモノを作ってくれるお店なので、ここでハンバーグを作ってもらうのが好き。
 「刺身で食べても美味しい」と言われる肉をミンチにして、キムラヤのパンを薄く切ってパン粉にして、タマネギをみじん切りにして、材料を練って、炭で焼いて、オーブンで……というのを全部目の前でやってくれる。
 そしてこのハンバーグを塩で食べる。塩で食べるハンバーグなんてなかなか無い。ハンバーグ・サンドにしても美味しい。これはもうハンバーガーを食べたい、というワケじゃない。『からむら』を食べたい、ということ。
 さらにこの『からむら』が嬉しいのはワインの持ち込みがタダなこと。普通、ワインを持ち込むと手を抜きそうなものだけど、『からむら』は違うワインを2本持ち込むと、2本目の時にグラスを替えてくれる。「いや、そんな……」と恐縮すると「せっかく美味しいワインをお持ちなんで、ウチは洗うだけですから」なんて。もう人柄を食べに行くという感じ。1人2万円くらい。
 最後に挙げるのは中目黒の『元旦』。居酒屋っぽい安いお店で、あまりメディアに出たがらない。ここには「豚鍋」があって、鶏ガラのスープに豚バラやキャベツなどが入っている。最後にはスープでラーメンを作って食べるんだけど、これがまた美味しい。豚鍋が2千円だから、最近食べた中では最も手軽で最も美味しいお店。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
10'33" Hi-Ho Joyce Walt Disney Records 61313-7
20'52" O Pato Rosa Passos Sony Classical SK 92068
32'35" Canoeiro Astrud Gilberto Verve 314 519 801-2
41'15" A Saudade Fez Um Samba Gracinha Universal UICY-3525
48'19" Trevo De 4 Folhas Joao Gilberto World Pacific 93891


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