SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2005年5月7日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「恋愛映画」

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 ちょっと前、日本映画界は「ホラー映画ブーム」なんて言われていましたが、去年あたりからは完全に「恋愛映画ブーム」ですね。『世界の中心で、愛をさけぶ』の大ヒットを筆頭に『いま、会いにゆきます』『解夏』『東京タワー』などなど、数々の恋愛映画が話題になりました。
 当店でもお客さまがグラスを片手に恋愛映画論に興じる姿が見受けられます。本日はそんなお客さまのお話を、少しだけここでご紹介させていただきましょう。


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春名慶さん(博報堂エンターテイメント事業局)

『世界の中心で、愛をさけぶ』の話

 ラブストーリーに限らず「映画」は人と人とのドラマだから、登場人物の気持ちをちゃんと考えてストーリーを作る。でも特に『世界の中心で、愛をさけぶ』を作った時は「照れずにやろう」ということを意識した。
 今まで、映画もテレビドラマも、その照れてしまう部分をちょっとズラすところに格好良さとかスタイリッシュさを見出してきた。でも『世界の中心で……』ではストレートに“人が人を思いやる気持ちの美しさ”を描くことがテーマだったから、「このセリフちょっと照れくさいよね」ということでも真っ向勝負で演出する、そう決めた時からあの映画は生き生きとしてきた。そして「1986年の回想」というお話にして、携帯もない、メールもない、ダブルカセットのラジカセでラジオのエアチェックをしていた時代に設定したことで、臭味を消すことが出来た。
 原作が発刊されたのが、たしか2001年の4月頃。著者の片山恭一さんは最初『恋するソクラテス』というタイトルを考えたらしい。実は「ソクラテス」という言葉が出てくるくらい、著述系のエンターテイメントに登場する人物は賢く描かれている。そしてそれをそのまま映画で役者が演じると、若い世代の観客が違和感を感じてしまう。そこで原作から偏差値を落としたセリフを作る作業が必要だった。
 つまり現代劇を映画でやろうとすればするほと、“リアリティ”を追求することが求められる。もちろん『世界の中心で……』では「2人が過ごしたあの日々」に関しては、ちゃんとリアリティをもって描きたい、そう監督も僕も考えていた。だから原作にはない「1986年の回想」という設定を作った。
 佐野元春の『Someday』、あるいは渡辺美里演じるDJ、そういった細かい設定すべてが1986年のリアリティ。ちなみにオープニングに登場する宮藤官九郎さんのバーでは、渡辺美里さんが奥でコーヒーを飲んでいる。渡辺美里さんは10年以上が経った今でもDJをしていて、そこでハガキを選んでいる。そして朔太郎と美里さんがニアミスする……というのが僕と監督の間の裏設定。
 『世界の中心で、愛をさけぶ』と『いま、会いにゆきます』の共通点は、「主人公の女性が男性に愛されて愛されて愛され抜かれている」という点。『世界の中心で……』もアキという女性が短い命を全うする中で、最後に朔太郎は彼の全身全霊をかけて彼女に対する愛を示す。そういう部分が女性の観客にとっては憧れとなるのでは。
 僕が映画を作りたいと思うきっかけになるキーワードがあるとすれば、それは「記憶」だと思う。最近、なんとなくそう思う。

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佐藤友紀さん(フリーライター)の

『クローサー』の話

 『クローサー』という映画はジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライブ・オーウェンの4人が中心のお話。実はジュリア・ロバーツは代役で、本当はケイト・ブランシェットだったはずなんだけど、妊娠のために降板せざるをえなくて泣いたという話もあるほど。
 この映画はもともとパトリック・マーバーという人の作った戯曲で、イギリスの舞台で上演されていた。2組の男女が入り乱れて、安っぽく言ってしまえば“不倫”の話なんだけど、そんな言葉では語りたくない。『クローサー』というタイトルも象徴的で、肉体的には緊密に(Closer)なっているのに心はどんどん離れていくという、ビター・スイートな大人のラブ・ストーリー。この映画は大人じゃないとわからない。
 ジュード・ロウとナタリー・ポートマンは一緒に暮らしている。ところがジュード・ロウがジュリア・ロバーツ演じる写真家の女性を好きになってしまう。でもジュリア・ロバーツは医者のクライブ・オーウェンと結婚している。そんなに複雑な構造ではないけど、揺れ動く人間の気持ちを見事に描く。そして最後には誰が一番の策士で、誰が一番自分の心に正直だったかをじっくり味わえる。
 今回の映画版は戯曲の作者、パトリック・マーバー自身が脚本を担当した。舞台版の方ではナタリー・ポートマン演じる女性が交通事故で死んでしまうけど、映画版ではストーリーが変わっている。この物語を映画で初めて見る人はもちろん、舞台を見た人でも楽しめると思う。
 この『クローサー』は5月公開。もうすぐ劇場で見られる。
 DVDやビデオなら『バタフライはフリー』という映画が好き。ゴールディ・ホーンが出ているんだけど、もともとはブロードウェイのお芝居だった。舞台版の初演の時はグウィネス・パルトローのお母さん、ブライス・ダナーが出演してトニー賞を獲っている。
 映画版の舞台はサンフランシスコ。若い頃のゴールディ・ホーンらしくパッパラパーな娘で、アパートに引っ越して下着だけになったら、向かいからジッとこっちを見ているキレイな目をした男性に気付く。「なに見てんのよ!エッチね!」と怒ったけど、実はその男性は盲目だった……という始まり。
 その盲目の男性は母親から大切に育てられてきた。でも自立しようと思って、アパートで一人暮らしを始めた。そこでお向かい同士になったゴールディ・ホーンと恋に落ちる、というラブ・ストーリー。最後はすごく気持ちの良い終わり方をするので、非常にオススメ。
 以前、PARCO劇場でお芝居を観た時に「“バタフライはフリー”をやって欲しい」という要望を書いた。そうしたらしばらくして本当に実現してしまったので、あの手のアンケートは意外と馬鹿に出来ないと思った。その後、コンスタントに日本で上演されている。

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吉岡秀隆さん(俳優)の

『四日間の奇蹟』の話

 映画『四日間の奇蹟』に出演しようと思ったのは、脚本が面白かったから。もちろん原作も面白かったけど、映画の台本はそれがすごく絞り込まれていて、絞り込まれているのに隙間が多かった。
 僕の役柄はピアニスト。ピアノを弾くシーンもあって、監督が「弾いてくれ」と言うので頑張って演じた。映画の中で『月光』の第1楽章を7分間まるまる聴かせるなんて初めてのことだろうと思う。映画の7分ってもの凄く長いのに、監督は「全部聴かせたい」って言っていた。
 原作では高原のシーンだった部分が、映画では海辺になっていたりする。監督曰く、撮影時期の都合で高原のシーンだと雪山になってしまい、僕が雪山にいると『北の国から』に見えてしまうから……という理由だったらしい。でも海辺にしたら、今度は『Dr. コトー』に見えてしまうと思うんだけど。
 この映画はラブ・ストーリーで、僕はどちらかと言えば「好かれる側」の役。これまではどちらかと言えば「好きになる側」が多かったので、こういう役は初めてかもしれない。
 実は僕は今年で34歳で、今回の映画で共演した石田ゆり子さんよりも1つ下。世の中的にずいぶん下に見られているみたいだけど、その時演じている役の年齢に見えればそれでいいのかな、とも思う。
 今回の映画で“敬輔”という役を演じるにあたって、彼が最終的に何に気付くのかを考えたら、それは石田ゆり子さん演じる“真理子”の母性愛なんだろうと思った。離婚歴のある真理子がいつまで初恋の敬輔のことを想い続けているのだろう……なんてことも石田ゆり子さんと相談したりもしたけど、日々の暮らしの中で決して汚れることのない想いだったのかもしれない。
 今回の“敬輔”という役は、そういう部分が勝手に育っていく役だった。だからシーンを台本から変えたり、セリフを変えたり削ったり、良い方にどんどん変わっていった。

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岡田惠和さん(脚本家)の

『いま、会いにゆきます』の話

 TBSの土井監督に「『いま、会いにゆきます』を映画化したいんだけど」と相談を受けた時には、もう原作はすでに読んでいた。本屋の平積みや手書きのポップには弱いタイプなので。
 それで「是非やらせて下さい」と立候補したはいいけど、あんなに大変だとは思わなかった。というのは、活字で感動できることと映像で感動できることは別だから。正直、『いま、会いに……』の原作を読んだ時も「これは絶対に映画になるけど、脚本家は苦労するんだよなぁ、でも結局、原作のファンに怒られたりするんだよなぁ」と思っていた。それがまさか自分になるとは。
 活字は目線や時空を自由に越えられるけど、映画で構成を複雑にしすぎるとお客さんが付いて来れなくなる。その活字を映像ににしていくのが大変だった。ちなみに映画とドラマでも違う部分があって、映画ならストーリー全体を客観的に見て修正できる。僕はドラマの仕事ばかりやってきたので、映画の仕事をやるとその部分をとても新鮮に感じる。
 個人的には「主人公たちの恋を邪魔するために生きて死んでいく役」みたいな役割だけの存在が好きじゃない。ヒロイン側から見ればハッピーエンドかもしれないけど、逆から見れば酷い話なんじゃないか、なんてつい考えてしまう。
 だいたい『冬のソナタ』の2人だって、周りから見ればあんなに迷惑な2人はいない。周りを不幸にしまくって、それでも恋愛ドラマは2人さえ良ければそれで良い。だから『冬のソナタ』の優れているところは、サンヒョクという二番手の男性に人気が出たところだと思う。ヒーローやヒロインでない人に人気が出るということは、それだけ人の気持ちがちゃんと描けているということ。そこに作り手の力量が出ると思うし、作り手の愛情も現れると思う。
 日本のドラマの作り手は、韓国ドラマの流行をどう解釈して良いかわからないでいると思う。技術的にもセンス的にも、まだ日本の方が上なはず。でも「ベタだね」「クサイね」なんて言う視聴者が出てきて、そうじゃない方向でドラマを作ってきたら「ベタだからいい」「クサイのがいい」と韓国ドラマが受けている。
 もし『冬のソナタ』が作られるちょっと前に僕がまったく同じドラマの企画書を作ってフジテレビに持っていったら「バカじゃないの?!」と一蹴されていたはず。僕たちは冬ソナに登場するような交通事故、記憶喪失、実は兄弟だったという設定、そういったベタなクサいエピソードはとっくの昔に封印した。ところが韓国ではそれが大手を振って出来る。でも僕らも今さら戻れない。その辺りが難しい。

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金容範さん(アミューズ)の

『韓国の恋愛映画』の話

 『イルマーレ』という映画は『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンさんが主演の映画。韓国では「時を越えた愛」というタイトルで、海辺の家を舞台にしたタイムスリップ系の恋愛が描かれている。
 この『イルマーレ』がハリウッドでリメイクされることになった。サンドラ・ブロックとか有名な人が出演して、たしか年内に作られるぐらいの話だったかと。
 この映画は韓国映画としては非常に新鮮で、音楽もすごく良かった。こういう映画が作られるようになったのは『シュリ』以降だと思う。
 基本的に韓国の恋愛ドラマは、家族中心の硬い意識の中で生まれる葛藤がベースになっている。『猟奇的な彼女』でも親戚に紹介したりお父さんが反対したりというシーンがあった。そんな風に、作る側も見る側も、儒教的な家族という考え方を強く意識している。
 それから韓国にはクリスチャンがすごく多い。人口の半分くらいはカトリックだったりプロテスタントだったりのクリスチャン。だから「ウチは仏教の家族だからクリスチャンのお前とはつきあえない」みたいな宗教的な葛藤もある。それをメインの題材にした映画は見たことがないけど、話の端々に登場することはよくある。
 軍隊もよくある恋愛の葛藤の1つ。韓国の男性は必ず2年間の兵役があるから、そこで別れてしまうカップルも多い。『猟奇的な彼女』の監督が作った次の作品も「軍隊に行ってしまった男性と別れて、その後、何年間も連絡が無くて……」という設定がベースにある。この辺は日本人の観客には理解しがたいところだと思うけど、韓国人なら誰でもわかる感覚。
 儒教、宗教、軍隊、韓国の若者は恋愛に関して数多くの難題を抱えている。だからこそ恋愛のドラマが作りやすい。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'11" I've Got The World On A String Peggy Lee Capitol 7243 4 96729 2 5
20'22" A Hard Days Night Goldie Hawn Pony Canyon POCY-01179
32'58" My Heart Is A Hobo Lena Horne BMGファンハウス BVCJ-37390
35'59" Wild Is Love Nat King Cole Capitol CDP 7243 8 28511 2 7
47'51" There Will Never Be Another You Beverly Kenny 東芝EMI TOCJ-9464


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