今年の皐月賞馬、ディープインパクトは牧場時代から評価が高かったわけではない。もちろん良血馬で、兄のブラックタイドも皐月賞で人気になったほどの馬だったから、低い評価ではなかった。でもディープインパクトは体が小さかった。お兄さんが非常に見栄えのする惚れ惚れするような体格だったので、それと較べてちょっと物足りないかな、と。
でもその後、内面的な成長もあり、サイズ的にも気持ち大きくなって、皐月賞を勝つという結果を出す。
その皐月賞の前、ノーザンファームの吉田勝己さんに「1年前にここまで来るとは判らなかったです」と話したら、吉田さんですらも「小さかったからね」と。日々、馬に携わっている人でさえ、小さいというのは引っかかる部分らしい。
見栄えだけだけなら、ディープインパクトと同期の馬にも、よく見える馬というのは他にもいた。特にサンデーサイレンス産駒でGI級の馬といえば、そのほとんどが骨格もあって筋肉隆々、という父親に似ていないタイプだったので、今年もそうじゃないかと。だからエアサバスとかボールドサイレンスといった馬の評価が高かった。一方で、ディープインパクトは「ある程度は走るけど、GIで勝つのは厳しいのでは」と言われていた。
でもボールドサイレンスなどは、皐月賞の時点でまだ未勝利。ディープインパクトは皐月賞を優勝。ディープインパクトは素質を見抜くのが難しい馬だった。
小さい馬は競りでも嫌われる。でもステイゴールドみたいに、小さくても活躍した馬がいないワケじゃない。一度「小さい馬は活躍しているのかいないのか」という統計はちゃんと調べた方が良い。
競馬の世界は、あれだけ大きいお金を動かしているわりには“勘と雰囲気”の世界。誰も統計的に分析しようとしなくて、言い伝えやなんとなく出来たコンセンサスで一千万単位、下手をすれば億という買い物をしてしまう。
今回、ディープインパクトという馬が出てきたことで、「馬の大きさ」について考え直す良い機会になるのかもしれない。
僕は2歳馬の本を毎年書いているので、馬の新人(?)についてはすごく詳しい。毎年、野球で言えばドラフト1位、みたいな期待の馬が登場してくる。ところがこれが、走らない走らない。平気で全然走らないコトが多い。
馬は人間のスポーツ選手のように目的意識を持って走るわけではないので、走る能力とは別の問題で勝てない馬が多い。特にこの10年はサンデーサイレンスの天下だったけど、サンデーサイレンス産駒には非常に気性の難しい馬が多かった。やればできるのに……という馬が、性格的な問題でダメだったケースはごまんとある。
今年も世間的に「すごい」と思われている馬はいっぱいいる。フサイチの関口オーナーが3億3千万で買ったセトフローリアンIIの子供(父サンデーサイレンス)、アグネスフライトやアグネスタキオンの弟、アドマイヤベガの下、ディープインパクトの下……はたしてこれらの馬が、どれだけ順調に行くか。その辺は本人(?)たちのやる気次第と言えるかもしれない。