銀座には寿司屋が多い。京都の割烹でお寿司を出すのが流行っても、銀座では寿司屋が多すぎて、ちょっと無理では。
寿司屋のお客さんには「最初はつまみで」と言う方と「最初から握ってほしい」と言う方がいる。これはどっちでも構わないというか、お店としては両方のお客さんがいてほしいもの。みんながみんな「最初から握りって」と言われると、手が回らなくなってしまう。
銀座の特徴は「もう1軒」が近所で済むこと。わざわざタクシーに乗って赤坂や六本木まで行かなくても、「オレの知ってる店がそこにあるから」で済む。そういった意味では、銀座は1つの郭(くるわ)と言える。寿司屋があって、割烹料理屋もあって、ラーメン屋もバーもスナックも高級クラブもある。僕らはその郭の構成員の1つ。そして「もう1軒行こう」と言った時に、いろんな選択肢があるのが銀座の醍醐味。
15年前なら高級クラブのお姉さんを連れた、いわゆる「アフター」のお客さんが多かた。そのためのお店も多かったし、繁盛していた。今は少なくなってしまったけど。そういうお店には、お客さんが2〜3人のお姉さんを連れてお店にやってくる。そしてそのお客さんにとって、値段はもう問題じゃない。だからお店の方も心得たもので、メイチでヨイショ!それでお客さんは気持ちよく帰っていく……という寸法。これがアフターのお店の基本。
銀座のバーや寿司屋のカウンターは大人の場所。だから最低限のマナーとして「隣のお客さんに迷惑を掛けない」というのがルール。たとえば酔っぱらって大声を出したりしない、なんていうのは当然としても、タバコに関してもお店から「禁煙」などとはわざわざ言わない。その場の様子を察して、迷惑を掛けないようにタバコを吸うのが大人というもの。
そして出来れば“粋”にやってほしい。たとえば食事が終わってタバコを1本吸いたくなった時に、隣の人に「ゴメン、1本吸わせてね」と言って、さっと1本だけ吸って「ゴメンね」って挨拶するのが粋。隣の人も、本当は吸って欲しくなくても「一声掛けてくれたから1本くらいしょうがないか」と割り切る。実は最初の一言が「タバコ吸っても良いですか?」だと、Noと断られる可能性がある。これではタバコを吸いたい人と吸って欲しくない人の間に断絶が出来てしまう。だから「ゴメン、1本吸わせて!」と言って、申し訳なさそうにサッサと1本だけ吸うのが粋というもの。
けっこう困るのは香水。実は銀座の女性は、お客さんが家に帰った時のことを考えて、香水はほとんど付けない。でも最近、外国帰りの女性で香水のキツイお客さんが時々いる。こういうお客さんが1人寿司屋に入ってきただけで、店中がその匂いになってしまう。タバコだったら「吸うな」、うるさかったら「静かにしろ」で済むけど、香水だけはいかんともしがたいのが困りもの。まさか「顔洗ってこい」とは言えないし。
この間も香水のキツイお客さん1人来て、そのお客さんが帰った後に自分が他のお客さんに謝った。そうしたら他のお客さん達も「参ったな、今日は〜」ってみんな1つになれた。