鼓は「つつみ」と発音してしまいがちだけど「つづみ」が正解。両端の部分は子馬の皮で出来ていて、非常に薄い。それでもうまく使うと200年くらい保つ。
胴の裏側には湿らせた「調子紙」というものを貼る。直径5mmくらいの円形の紙で、ちょっと舐めて2〜3枚貼るんだけど、これを貼らないと全然いい音が出なくなってしまう。このデリケートさは非常に面白い。
「調べ」と呼ばれる側面の紐は、鼓を抱える手で握ったり離したりすることで皮の張りを調節することができる。だんだん握りを強くしながら叩くと、だんだん音が高くなっていくのがよく分かる。それを一瞬でやることで、あの「ポン!」という音が出せる。張りを変えずにただ叩くと「ポ!」という音しか出ない。端の方を打って「カン!」と高い音を出すこともできるし、いろんな表現が出来るのが面白い。
胴の中には「鉋目(かんなめ)」と言って、かんなで削った跡がある。この彫りで作者がわかったりもする。鼓は桜の木などをくり抜いて作るだけの単純な構造なので、もしかしたら世界で一番長持ちする楽器かもしれない。そして木が枯れるに従ってどんどん音が良くなっていく。周りに漆が塗ってあるのは乾燥しすぎないようにするため。
そんな感じで、ただの筒に見えるけど鼓は非常に精密な楽器。ただ、楽器屋に筒だけの状態で置かれていると、底の抜けた一輪挿しにしか見えない。
現存している鼓にも、安土桃山時代のものなどが残っている。それでまだ素晴らしい音が鳴るのだからすごい。ヴァイオリンだったらいい音が鳴る期間はせいぜい200年くらいなのに、鼓は400年以上。
長持ちするとはいえ、僕も海外に鼓を持っていって、折ってしまったこともある。というのも、鼓の一番くびれた部分は、厚さ1mm以下しかない。
海外でいろんな打楽器を見てきた。たとえばインドの「タブラー」は、ありとあらゆる音が出るような打楽器だった。それでも鼓ほど崇高でデリケートで、美術品としても素晴らしい打楽器は他にないと思う。