ジビエと言えば今から24〜25年くらい前、マルカッサン(子猪)の血を入れたソースを食べた時のことが忘れられない。その時飲んでいたのは67年のブルゴーニュだったんだけど、もう天にも昇る気持ち。「やっぱりワインがなかったらジビエなんてつまらない」という事を確認させてくれた出来事だった。
ジビエは重いソースだからボルドーのしっかりしたワインが合いそうなものだけど、僕の記憶ではボルドーのワインがジビエに合うと思ったことがない。いつもブルゴーニュ。
ピノ・ノワールという品種のブドウだけで作るブルゴーニュは“黄金の輝き”とたとえられ、いろんな品種のブドウが混ざっているボルドーは“宝石を散りばめた美しさ”と言われる。単一品種なのに豊かで複雑で奥が深いブルゴーニュは、最終的にここへ行く人が多いのもうなずける。
世界最高のワイン、ロマネ・コンティが生まれるブルゴーニュのコートドールという丘陵地帯は、地層が何層にも分かれている。ブドウに水分を与えないと根を地中深くまで下ろしていくんだけど、その時にさまざまな地層を通ることで、ブドウ自体に複雑な味わいがある。そんなブドウで作られたワインこそがジビエには合う。
ジビエには強烈なモノがある。でも慣れてくると、それがないと寂しい。あの香りがあってこそのジビエ。臭いんだけど、そこにブルゴーニュを合わせることで、臭い匂いが突然高貴な香りに変身する。お酒があってこその料理だと思う。
やっぱり25年くらい前に、リヨンから南の方に下りていったタン・エルミタージュという街で食べたベキャス(山シギ)も忘れられない。パン!と半分に割ってローストしただけの料理だったけど、脳みそとエルミタージュのワインの取り合わせは生涯忘れられない。
その土地で獲れたベキャスとその土地のワインだからこその味だったのだろう。そういうところの付け合わせも必ず果物で、赤スグリだとか栗のピューレだとか、山シギが食べているであろう森の中の果物。
ちなみに僕らにはお肉に果物を合わせるという発想がないけど、パリのマキシムにも「鴨の洋桃添え」という有名な料理がある。ソースも洋桃で、僕らは甘ったるいと思ってしまうけど、実は果物の酸味と甘みが肉には合う。これはジビエに限らず、お肉を食べる上で僕らの発想にない部分。
山シギ、果物、そしてワイン。その土地の森がそのままお皿の上に再現されている。ジビエを食べると言うことは、自然を食べるということ。