SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2004年12月18日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「ジビエ」

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 冬のヨーロッパの味覚といえば“ジビエ”ですね。狩猟で獲ってきた野禽類の料理で、獣類なら野ウサギや猪、鹿、鳥類なら山バト、山ウズラ、真鴨あたりが一般的です。
 この時期、フランス料理店へ行くとジビエが置いてあることがありますが、個人的にはちょっと苦手だったりします。野生の動物ですから、臭みが強く、味も濃いんですよね。
 なんて言ったら「それはちゃんとしたお店で食べてないから」とお客さまに叱られてしまいました。せっかくですから、本日はお客さまに教えていただいた本当の“ジビエ”の話を、ここで少しだけご紹介させていただくことに致しましょう。


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花岡健美さん(食材輸入専門商社「ノーザン・エクスプレス」)

『日本のジビエ事情』の話

 フランスも今やジビエの輸入国。ドイツ、スイス、スコットランド、イギリスあたりから輸入している。地元で食べる分はともかく、フランス全土のレストランにコンスタントに提供するには、国内だけではさすがに無理がある。
 だから日本に入ってくるジビエもイギリス、スコットランドがほとんど。ウチではリエーブル(野ウサギ)についてはフランスのアルザス地方から取っているけど、他の野鳥類はイギリスがほとんどになっている。
 最近、よく入るようになってきたのが山シギ。これは高い野鳥で、フランスでは保護鳥に指定されているために食べられない。日本に入ってくるのはイギリスのものなので大丈夫。フランスで食べられないジビエが日本では食べられるというのは面白い。
 山シギはフランス語で“ベカス”と言い、鳥類の中ではジビエの王様と言われている。捕獲するのは難しいし、絶対数も少ない。その貴重なベカスを日本に売ってくれ、というのはなかなか難しい。そこはビジネスの力関係で解決するしかないんだけど、そのベカスがけっこう日本に入ってくるようになってきた。
 ベカスはローストして食べる。特徴的なのが、内蔵をソースに使うこと。他にもそうやって食べるジビエはあるけど、このベカスに関しては内蔵なくしては語れない。そしてベカスはクチバシが長くて、頭が小さい。この頭も食べるのがベカスの食べ方。すごく貴重で、しかも美味しい。それがベカス。
 実はベカスは料理法も難しい部類に入る。大きさは300〜400gで、ハトよりも小さく、肉付きも小さい。1羽で1人前くらい。だからこそ、ベカスを使うのは料理人にとって楽しく、そして満足できる食材なのだろう。
 メニューにベカスを載せるのは自信がなければできないことだし、注文する人も「ベカスが好き」という人。なにせジビエの王様と言われるくらいだから、原価でも1羽3200円もする。それをレストランで出すなら、どう考えても1皿9千〜1万円にはなってしまう。そんなお皿を頼める人は、よっぽど興味があったり知っている人じゃないと無理。レストランの方もそんなお皿を出すには自信がないと。
 そういったお皿を出しているのは、銀座の『ロオジェ』、それから『ル・マンジュ・トゥー』『オストラル』『北島亭』あたり。三田の『コートドール』、『ラミ・デュ・ヴァン・エノ』などもそういうお店。

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小林邦光さん(江戸川区平井「レストラン・コバヤシ」オーナーシェフ)

『ジビエの味』の話

 この季節にジビエを食べるのは狩猟が解禁になるから。
 ベカスは散弾銃で撃って獲るので、当たり所によって味が変わってくる。たとえば胸やお腹に当たると、内蔵の臭さが身に移ってしまったり。そういうベガスは胸に小さな穴が空いているの、よく見るとわかる。でも狩猟で獲ってくるものなので、そういう事もある程度は仕方がない。
 ジビエは天然のものなので、個体によって味がメチャクチャ変わる。オス、メスでも違うし、産地、時期なども影響する。ウチで使っている新潟の鴨はお米を食べているので、すごく甘い。それから銃じゃなくて網で獲っているので、味の方も安心。今のところこの鴨が一番美味しいと思う。その分、値段も高いのが難点だけど。
 野ウサギも穴から出てきたところを鉄砲で撃って獲る。野ウサギはちょっと飼育小屋の臭いがするくらい強烈なジビエだけど、それが好きな人にはたまらない。ポワブラードというクラシックなソースがあって、これはウサギの骨と赤ワインを煮込んで、フォアグラや豚の血を加えた、とてもこってりしたソース。野ウサギをこのソースで食べるのが一番強烈。
 野ウサギに限らず、猪、鹿などの獣類はポワブラードで食べるのが基本。鴨やベカスのような鳥系にはサルミソースというソースを使う。鳥の方が味が繊細なので、最初にマリネする時に香辛料を弱めにしたり、マリナードという調味料を使わずにサラッと仕上げたサルミソースを使う。
 僕はサルミソースを作る時は、ソースをサラサラにするために紙で漉している。ソースをサラサラにすると香りのフレーバーが増す。味が濃いとあまり量を食べられないけど、香りが濃いのはむしろ食が進む。
 ラパンと呼ばれる飼育された白いウサギは鶏肉のアッサリ版なのに、野ウサギのリエーブルは本当に強烈。そしてリエーブルと並ぶ強烈さを持つのがベカス。こちらは味よりも香りが強烈で、サンマを焼いている時の香ばしい匂いというか、アンチョビを開けた時の匂いのような感じ。好きな人は好きだけど、ダメな人はダメ、という肉。

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成澤由浩さん(青山「レ・クレアシヨン・ド・ナリサワ」オーナーシェフ)

『ジビエの調理法』の話

 僕が最初にジビエを食べたのは、故アラン・シャペルのお店だった。彼のお店は、ジビエの季節になると“ムニュ・ジビエ”といって前菜からメインまで全部ジビエ尽くしになる。これには驚かされた。ただし非常に熟成させたジビエだったので、周りで食べているフランス人でさえ食べづらそうだったけど。
 アラン・シャペルのようにジビエを熟成させるのは、今では極めて少数派。さらにフランス国内で使っているような新鮮なジビエなら熟成のさせようもあるけど、日本に入ってくるジビエはいつ仕留められてどんな状態で保管されていたのかまったくわからない。これでは熟成のさせようがない。
 ヨーロッパでジビエを獲る人は、基本的に趣味。もともと“ゲーム”なものだし。それを誰かが集めて、ある程度の量が貯まってから日本に輸出している。そういった事情で、日本に輸出されるジビエがどれくらい保管されていた物か、集めた最初と最後で全然変わってきてしまう。
 ジビエは別に食べにくいものではない。ただ、作り手が誤解した作り方をしていることがある。たとえばその素材が臭ければ、それが熟成しているとかしていないという問題じゃなくて、単純に臭いだけ。美味しい物からは調理をする前でも後でも良い香りがするもの。作っている最中に良い香りがしていないものは、最後に良い香りがするわけがない。だから元の素材を選ぶ力が非常に重要で、ジビエだって手に持った生の状態で「食べたい」と思うような物でなければ、最終的に良いものにならない。
 猪、鴨などは日本でも昔から美味しく食べる方法があった。それは土地に根付いたものなので、地方によってこの味噌この野菜といった具合に。その土地のものと合わせるという調理法はフランスでも同じ。
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甲斐明宏さん(恵比寿「フレーゴリ」シェフ)

『イノシシ』の話

 ジビエというと構えてしまいがちだけど、日本で言えば天然鮎のようなもの。天然鮎を内臓付きで焼いて食べるのが美味しいって日本人ならみんな知っているように、ヨーロッパでは山シギを内臓付きで焼いて食べるのが美味しいってことをみんな知っている。
 ウチでは実家のある大分で獲った猪を使っている。猪猟はチームでやるんだけど、一番最初に撃った人に、一番美味しいところを持っていく権利がある。ロースなんかはその人が持っていく。むしろ一番美味しいところを食べているのは猟犬かも。猪は死んだらすぐに捌かないと、体温が上がって内臓が傷んでしまう。だからすぐに腹を割いて、内臓を出して、沢に持っていって洗う。その時にまだ温かい内臓に粗塩をまぶして犬に与えると、ものすごく美味しそうに食べている。
 実はヨーロッパでは体温が上がる現象を利用して、熟成させて独特の香りを付ける“フェザンタージュ”という作業をしたりもする。でも日本の猟師さんはやらないし、向こうでも現代ではあまりやる人はいない。昔の人は内臓を腐る直前まで熟成させて、独特の香りを楽しんでいたとか。でもこの料理を食べるのはかなり手強い。そのクセがクサヤみたいに病みつきなるらしいけど、僕も苦手。
 機会があったら、ウチの猪をぜひ食べてみて欲しい。皮付きの猪が入ってくるので、皮と皮の下の厚い脂、ここを煮込んだ料理が最高なので。皮のゼラチン質と脂の甘み、そして赤身の野性味が一緒になって、すごく美味しい。

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山本益博さん(料理評論家)の

『ジビエとワイン』の話

 ジビエと言えば今から24〜25年くらい前、マルカッサン(子猪)の血を入れたソースを食べた時のことが忘れられない。その時飲んでいたのは67年のブルゴーニュだったんだけど、もう天にも昇る気持ち。「やっぱりワインがなかったらジビエなんてつまらない」という事を確認させてくれた出来事だった。
 ジビエは重いソースだからボルドーのしっかりしたワインが合いそうなものだけど、僕の記憶ではボルドーのワインがジビエに合うと思ったことがない。いつもブルゴーニュ。
 ピノ・ノワールという品種のブドウだけで作るブルゴーニュは“黄金の輝き”とたとえられ、いろんな品種のブドウが混ざっているボルドーは“宝石を散りばめた美しさ”と言われる。単一品種なのに豊かで複雑で奥が深いブルゴーニュは、最終的にここへ行く人が多いのもうなずける。
 世界最高のワイン、ロマネ・コンティが生まれるブルゴーニュのコートドールという丘陵地帯は、地層が何層にも分かれている。ブドウに水分を与えないと根を地中深くまで下ろしていくんだけど、その時にさまざまな地層を通ることで、ブドウ自体に複雑な味わいがある。そんなブドウで作られたワインこそがジビエには合う。
 ジビエには強烈なモノがある。でも慣れてくると、それがないと寂しい。あの香りがあってこそのジビエ。臭いんだけど、そこにブルゴーニュを合わせることで、臭い匂いが突然高貴な香りに変身する。お酒があってこその料理だと思う。
 やっぱり25年くらい前に、リヨンから南の方に下りていったタン・エルミタージュという街で食べたベキャス(山シギ)も忘れられない。パン!と半分に割ってローストしただけの料理だったけど、脳みそとエルミタージュのワインの取り合わせは生涯忘れられない。
 その土地で獲れたベキャスとその土地のワインだからこその味だったのだろう。そういうところの付け合わせも必ず果物で、赤スグリだとか栗のピューレだとか、山シギが食べているであろう森の中の果物。
 ちなみに僕らにはお肉に果物を合わせるという発想がないけど、パリのマキシムにも「鴨の洋桃添え」という有名な料理がある。ソースも洋桃で、僕らは甘ったるいと思ってしまうけど、実は果物の酸味と甘みが肉には合う。これはジビエに限らず、お肉を食べる上で僕らの発想にない部分。
 山シギ、果物、そしてワイン。その土地の森がそのままお皿の上に再現されている。ジビエを食べると言うことは、自然を食べるということ。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'08" I Love To Sing Alma Cogan EMI 7243 5 94070 2 9
20'55" Baby, It's Cold Outside Dean Martin Capitol CDP 7 9 3115 2
31'50" Boum Blossom Dearie Verve POCJ-2653
40'40" I've Got My Love To Keep Me Warm Ella Fitzgerald Verve POCJ-2146
47'54" Love Is Sweeping The Country Jackie & Roy Universal Victor MVCJ 19007


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