SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2004年10月9日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「夫婦善哉」

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 最近は夫婦で働いている家庭というのも珍しくはなくなりましたが、実は案外、夫婦で“変わった仕事”をしているケースというのも、そう珍しいことではありません。
 たとえば映画監督と脚本家、ミュージシャン同士、作家とイラストレーター、そういったちょっと変わったご夫婦は、多くの場合は仕事を通じて知り合うみたいです。
 今日は当店を訪れた、そんなちょっと変わったご夫婦のお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。いったいどんな生活を送っていらっしゃるのでしょうか?


image ■ 那須博之さん(映画監督)と
  那須真知子さん(脚本家)の

『監督と脚本家の夫婦』の話

【博之さん】
 かつては市川崑さんと和田夏十さんというコンビもいたけれど、最近は監督と脚本家という夫婦はさすがに珍しい。
【真知子さん】
 脚本家としては、あまりセリフを変えて欲しくない。自分で声に出して、音楽のようにリズムを考えて書いているから。一度言った言葉をもう一度繰り返すのも、リズムのため。そこまで考えているので、変えて欲しくない。
【博之さん】
 そう言われても、現場に行ったら役者は楽な言い方で言おうとするもの。たとえば語尾を「……よ」から「……さ」に変えたりとか。だからそれを禁止して、台本の通りに喋ってもらう。そこで悩み苦しむところに良い味が出るんだから……なんて説得しながら。
【真知子さん】
 そういった意味では、この人が私にとっては一番良い監督。変更する時は必ず事前に相談してくれるし。「自分の撮りやすいように変える」という監督も多いけれど、撮りやすければ良いというものでもないと思う。やっぱり監督と脚本は格闘しながら良いものを作ろうとするのが本来の姿なのでは。
【博之さん】
 格闘と言っても、脚本家と格闘するのではなく、脚本そのものと格闘する。家に帰った時にそこに脚本家が居るからと言って、「ここを変えてくれ」なんてい言い出したら、脚本の計算が壊れてしまう。その計算を壊さないためにも、脚本そのものと監督が格闘して答えを出さなければいけない。これは他の脚本家と仕事をする時でも同じ事。
 妻の脚本を撮っていて「真知子らしいなぁ」と感じる瞬間もある。「またこのセリフ書いてるな」とか。感じるんだけど、そのことはめったに口にしない。それは妻の仕事に敬意を払っているから。
【真知子さん】
 脚本を書いていて、ストーリーに詰まると、ついそこにいる監督に相談したくなることもある。ところが監督は相談しても一言も答えてくれない。「この脚本のこの状況なんだけど……」といった途端に「行ってきます」と外に出て行ってしまう。
【博之さん】
 どうしたって監督の発言には強制力があるから、それを脚本家に感じさせてしまったら面白いものは作れない。だからそう言う時は誤魔化し誤魔化し外へ出る。

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image ■ 那須博之さん(映画監督)と
  那須真知子さん(脚本家)の

『デビルマン』の話

【真知子さん】
 撮影現場に行こうとすると「来るな!」と監督に怒られる。撮影から帰ってきて「今日どうだった?」と聞いても「オレの寝る時間が減る」と取り付く島もない。
【博之さん】
 撮影中は本当に寝る時間がない。話し出したらなんだかんだで夜の2時くらいまで話し込んでしまうだろうし、朝は4時には起きて絵コンテを描かなきゃいけない。それでは1〜2時間しか眠れなくなってしまうし、長年やっていることでもあるので、まあいいか、と。
 とはいえ、撮影が上手く行った日はお酒を飲みながら話をする日もある。手術が上手く行った後の医者のようなもの。興奮しているから、つい話し込んでしまう。
【真知子さん】
 そこら辺はやっぱり優しいと言うか、「聞きたい!」という顔で待っていると、話をしてくれる。やっぱり脚本家として現場がうまく行っているかどうか気になるものだし。
 本来、完成した脚本を渡したら脚本家の仕事はそこで終わり。だから那須が監督の場合は少しは話が聞けるので、とても楽しめる。他の監督だったら、試写会まで自分の脚本がどうなったのかまったくわからない。さらに現場の空気も知らないので、試写会でも浮いていたりする。
 それが那須だと「助監督の誰が頑張っている」とか「カメラマンの体が大丈夫か」なんて話をしてくれるので、自分のスタッフの一員になったような気がする。それが2人で一緒に仕事をする一番の喜び。
 ちなみに『デビルマン』の時はとにかく撮影が大変だったので、何よりも体が心配だった。帰ってきて「足の裏を揉んでくれ」と頼まれることもあったので、わざわざ整体の勉強もしたほど。

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image ■ 細川徹さん(放送作家)と
  五月女ケイ子さん(イラストレーター)の

『夫婦でやる仕事』の話

【細川さん】
 雑誌の連載など共同作業の時は、僕がネタを作って、妻に絵にしてもらう。僕には絵のセンスが無いので、絵を見せてもらって「へぇ〜、こんな絵になるんだ、意外だな〜」って。いつも「意外」と思ってる。
【五月女さん】
 本当に絵心の無い人なので、逆に「こんなの絵に出来ないよ!」って苦情を言うことはある。時間がない時に「もうちょっと簡単なヤツにして」とか。
【細川さん】
 お互いそれぞれでやっている仕事に関しては、見せ合って感想を言うことも多い。その感想は割と辛口。コントの台本を見せて、あまりお笑いに詳しくない妻に「もうちょっと解りやすくした方がいいんじゃない?」なんて言われるとけっこうショック。「そんな当たり前の事はやりたくない!わかる人にわかればいいんだ!」なんて強がりを言うけど、実は内心ウケなかったことがけっこう寂しかったりする。
【五月女さん】
 私のイラストも、自分が面白いんだか何だかわからなくなった時に「これ、大丈夫かな?」と見せたりしている。「車の形がちょっと車に見えないから、車に見せた方が良いよ」とか言われて「いいんだよ、車なんかどうでも!」と逆ギレしたり。
【細川さん】
 『男子はだまってなさいよ!』は個人でやっているコントユニットで、毎回人を呼んで公演している。妻に出演してもらうことがあるので、台本を書いている途中に「こんなコントやろうと思っているんだけど、どう?やりやすい?」なんて聞いたりしている。
 ところが稽古している間にセリフはどんどん変えちゃうし、演出の指示も聞いちゃいない。「こっちの方が絶対面白い」って言われて勝手に変えられてしまう。またその方が面白くなっちゃったりするのは我ながら問題だと思う。
 いつかは妻に舞台美術を全部任せてみたいとは思う。でもお金とか時間のことを全然考えないから、当分は無理。「明日から本番なんだけど……」というタイミングで「ラストシーン面白くないから、こうした方がいいよ」なんて言い出すし。まあ、そのラストシーンは結局変えたんだけど……。

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image ■ 上田正樹さん(シンガー)と
  朝本千可さん(サックスプレーヤー)の

『ミュージシャン夫婦』の話

【朝本さん】
 上田さんは音楽以外のことにまったく執着のない人。衣食住なんかには興味が無くて、歌を歌ってさえいれば良いというタイプ。私も似たようなタイプなんだけど、さすがにそれでは生活が破綻してしまうので、私がやりくりを担当している。
 でも私がミュージシャンじゃなかったら、結婚相手としては最低の男性かも。運転免許もないし。
【上田さん】
 いま住んでいる家も彼女が決めたし、バリ島の家も彼女が「ここが良い」というので「はい」と。後を付いていくタイプというか、ちょっとした買い物ですら彼女の運転する車の隣に乗っていく。
 本当はイーブンにしなきゃいけないとは思いつつ、彼女が負担している割合の方が多い。
【朝本さん】
 ミュージシャンだから○○ができない、たとえばシンガーだから睡眠を良く取ってノドを大事に、みたいな事の理解は、同じ音楽をやっている身としてよく解る。そういった事はお互いにケアしあえるので、ミュージシャン同士というのはありがたいなと思う。
 2人の出会いも音楽がきっかけだった。全国を回るのフィル・ハーモニーのツアーで、上田さんと私がゲストとして呼ばれたのが最初だった。
【上田さん】
 僕もサックスを吹くんだけど、そのツアーの舞台上で、かまやつひろしさんが間違えて彼女のサックスを僕に渡してしまった。楽器というのは人によってまったく違うモノだし、セッティングの問題もある。パッと持った瞬間に「あ、これはオレのじゃない!」と思ったんだけど、もう間に合わないので思い切って吹いたら僕のよりはるかにいい音がした。
【朝本さん】
 その時、舞台が終わった後に謝りに来たんだけど、内心では「人のサックス吹いてどうしてくれるのよ?!」とは思っていた。それが2人の出会い。
【上田さん】
 そんな事があって知り合って、1ヶ月以内に結婚した。
【朝本さん】
 実は私はずっとアメリカに行っていたので、上田さんのことはまったく知らなかった。『悲しい色やね』の時もアメリカだったし。2人で飲みに行った時に音楽観などを話してみて「この人だったら結婚できるかな?」と。
【上田さん】
 知り合ってすぐの頃、彼女が仕事でヨーロッパへ行った。ちょうどパリ滞在中に、僕が五反田の自宅から電話をかけて「結婚しよう」と。
【朝本さん】
 ちょっとパリの雰囲気に誤魔化されたのかも(笑)。
【上田さん】
 彼女は「私の夢はマイルス・デイビスと一小節でいいから、横で一緒に演りたい」と語った。そんな事を言う女性はそれまで1人も居なかった。いつも音楽をワールド・ワイドに捉えられている人なんだ、と思って。もうこの人しかいない、と。
【朝本さん】
 出会ってから上田さんの歌をマジマジと聴くようになって「日本にもこんな人がいたんだ」と思った。究極に突き詰めたシンガーの表現には、私もすごくリスペクトしているし、勉強になる。

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image ■ 岡野玲子さん(漫画家)の

『クリエイター夫婦』の話

 漫画家は深夜から明け方まで仕事をするもの。夜はもったいなくて寝られない。そして手塚(夫の手塚眞さん)も同じような生活をしている。ただ、手塚の方が朝は早い。お昼前には家を出て、帰ってくるのは夜遅く。12時前に帰ってきたら「今日はどうしたの?!」という感じ。
 そんな2人だけど、夫婦の会話なんかは普通にしているつもり。朝は手塚のペット(というか友達)のコウモリにエサをやったりとか。とはいえ、あまり仕事の話はしない。「今日はスタッフがこんなドジをしてね〜」なんて他愛もない話で笑うくらい。
 私の仕事場は家。だから基本的に家から一歩も出ないタイプで、今日だって久しぶりに外出したから、電車の切符を買うのも戸惑うほどだった。
 夫婦が共通で好きなのは“くだらないこと”。お笑い映画なんかが好き。それから音楽。だからコンサートや映画には一緒に行ったりしている。別にクリエイター同士だからといって、いつも喧嘩ばかりしているようなイメージとは程遠い。
 手塚との出会いは、ひょんな事がきっかけだった。以前『ファンシィダンス』という漫画を描いていたんだけど、主人公はお坊さんの息子で、しかもロック・バンドをやっているという設定だった。そしてちょうどその頃、とある坊主頭のロック・バンドが人気になっていた。そのバンドの名前は『爆風スランプ』。何かの本を見ると「プロモーション・ビデオがあまりにくだらない」と書いてある。興味を引かれて、ついそのビデオを買ってみた。
 実際、そのビデオはあまりにくだらなくて、「環境ビデオとして家でかけておこう!」と大いに気に入った。家に来た編集者もそれを見て「これはくだらない!」と大爆笑。「いったい誰が監督なんだ?」という話になり、調べてみたらそれが手塚眞だった。そして、その編集者が「手塚さんならウチの本で連載しているから、今度、対談しませんか?」と。それが2人の出会いだった。
 会ってみたら、楚々としてあのくだらないビデオを作った人とは到底思えない。でもやっぱりくだらないものが好きな人で、そこで意気投合した。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'16" Together Steve Lawrence & Eydie Gorme Music Club MCCD 168
17'34" You Was Dean Martin & Peggy Lee Capitol CDP 0777 7 98409 2 2
31'23" You Inspire Me Jacky & Roy KOCH KOC-CD-7927
40'54" They Can't Take That Away From Me Frank Sinatra & Natalie Cole 東芝EMI TOCP 8066
47'57" Why Do I Love You Louis Prima & Keely Smith Jasmine JASCD 326


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