SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2004年10月2日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「そろそろ本気でエコロジー」

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 当店のシェフが“スローフード宣言”をして、レストランの方は少し変わりました。どう変わったかは別の機会にご紹介するとして、「ゆっくり食べる」ことを基本にしたスローフードというのは面白い試みですね。
 スローフードの活動は、食を通じてバイオダイバーシティ(生物多様性)を守ることも唱えているそうです。それはエコロジーに通じる部分もあるようで、当店でもエコロジーな話題に花を咲かせているお客さまがいらっしゃいました。
 今日はそんなお客さまのお話を、ここで少しだけご紹介させていただきます。


image ■ 野口健さん(アルピニスト)の

『タンザニアのエコ・ツアー』の話

 よく「環境問題」という言葉が使われるけど、本当に地球の環境のことを考えるのなら、人間がいなくなればいい。でも人間が考える「環境の問題」というのは、「人間にとっての環境の問題」なのだから、自分自身が健康で、時には自然に入って本来の感覚を取り戻す、そういうことが重要なんだと思う。
 では具体的に、どうやって自然を体験するか。たとえばよくある団体ツアー。屋久島や白神までガイドに案内されて行って帰ってくるだけ。たぶん、それじゃ感覚は取り戻せない。
 そこで注目なのが「エコ・ツアー」。ガラパゴス、タンザニア、ニュージーランド、いろんな所で盛んだという噂を聞いて、自分もとりあえず体験すべく、タンザニアのエコ・ツアーに参加してみた。
 そのエコ・ツアーでは、ジープでサファリの奥に連れて行かれて「ここで降りろ」と。一応、鉄砲を持っているレンジャーも一緒なんだけど、僕らが降りたらジープはとっとと帰ってしまう。「ここから25km先にテントを張って待ってるから、歩いて来い」って言われて、かなり焦った。前日までの普通のサファリ・ツアーで、車から「ライオンがいる!」なんて喜んでいたのに、そのど真ん中に放り出されたから。
 歩き出すと、その辺をチーターなんかもウロウロしている。何となくチーターと目が合ったりして、ガイドに「大丈夫か?」と尋ねると「大丈夫、野生動物にもマナーみたいなものがあるから」と。そんな風に歩き始めて、一気にいろんな感覚が目覚めた。
 向こうに動物がいる。目が合う。「それ以上こっちにこないでね」「うん、行かない」みたいなアイコンタクト。それは何メートル以上とかって事じゃなくて、その瞬間のあうんの間合い。25kmを歩ききった頃には、その間合いが完全にわかるようになった。
 ジープで観光すれば動物も近くから見れるし、危険もない。でも歩くと、岩陰からこっそり見るしかないんだけど、動物たちと同じ目線で、目と目のアイコンタクトもある。地球の一部になっている実感が湧いてきて、究極のエコ・ツアーだと思った。
 とはいえ、怖かったことは怖かった。ハゲタカが飛んでいるのを見て、ガイドが「あの下では動物が死んでいる……ということはライオンもハイエナも集まっているから気をつけろ」だって。そういう情報を全身の感覚で感じて、命を守るために神経を研ぎ澄ます。25kmを10時間以上かけて歩く間に、その感覚がどんどん甦ってくるのが解った。
 ちなみに、歩いている間に、ジープの観光客もバンバン通り過ぎていった。前日まで同じ事をしていたくせに「なんだお前ら?!偉そうにしやがって!」と思っていた。それくらい動物と同じ視点になっていた。

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image ■ 野口健さん(アルピニスト)の

『ニュージーランドのエコ・ツアー』の話

 ニュージーランドの自然と日本の自然は似ている。たとえば島国というスケールも近い。
 そんなニュージーランドのエコ・ツアーに参加したら、ウエット・スーツを着て山に登らされた。「水に入るのかな?」くらいに考えていたら、川があって「はい、飛び込んで!」と。川に飛び込んで、ただ流れ落ちるツアーだった。
 川は普通の川で、部分的に滝などの危ない場所はロープを使ったりもするけど、ほとんど人工的なものは使わない。これがメチャクチャ面白かった。
 そのツアーはニュージーランドでも人気で、大勢の参加者がいた。滝の水を全身に浴びながらロープを伝って降りていくのも、初めての人にとっては大冒険。ロープなんて使い慣れている僕でも、心から楽しめた。
 その川は日本にもあるような普通の川。日本でもやれば良いのに……と思う。でも日本ではそういう自然を生かしきれてない。ニュージーランドではどこにでもある自然をうまい具合に使って、自然を体感できるツアーを組んでいる。
 たとえば洞窟があったとする。日本なら、旅行者が怪我をした時の責任を怖がって、階段を付け、ライトを付けてしまう。ニュージーランドの洞窟なら、200mくらいの長さのロープが垂らしてあって、そこにぶら下がって降りていったりする。僕ですら30分もロープにぶら下がっていたのは初めての体験だった。
 そんな風に、自然をそのままの姿で感じる工夫こそがエコ・ツアーの神髄。日本でだっていくらでもできる。
 最近よく通っているのが小笠原。石原都知事は「東洋のガラパゴス」なんて言っているけど、本当に東京都とは思えないくらい凄い。ところがその凄さに誰も気付いていない。島の人ですら気付いていない。
 せっかく良いものを持っているのに、ホテルを造って、道路を造って、これ以上やっちゃうとあの島がダメになってしまう。自然の生かし方がぜんぜん上手くない。あちこちのエコ・ツアーに参加したけど、肝心なのは素材を大事にすること。そのためには素材のことをよく知っている専門家、地元のレンジャーが必要。
 環境問題の話をすると、地元の人に「それじゃ食べていけない、自分たちの生活がまず大事だ」とよく言われる。でも自然が壊れていったら、最終的には地元の人たちだって困るわけだし、せっかくある自然を生かして、それで食べていけるような工夫をした方が利口だと思う。それこそがエコ・ツーリズム。
 逆に、環境問題について考えている人はマジメな人が多くて、とにかく自然を守るということしか頭にない事が多い。そこで生活している人のことまでなかなか頭が回らず、長続きしなかったり、地元の理解も得られなかったりする。自然を守りつつ、その自然で地元の人が生活できたら、それこそが自然と人間の共存なのに。
 小笠原がそんなエコ・ツーリズムのモデル・ケースになって、全国に広がっていけば……と思っている。

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image ■ 中村征夫さん(水中写真家)の

『東京湾』の話

 最初に東京湾に潜ったきっかけは「江戸前の魚介類は美味いらしい」と聞いたから。それでお台場の海に潜ってみたら、カニ、ハゼ、1mも潜ったら生き物がウジャウジャいた。
 ところが、潜っていると皮膚という皮膚、唇なんかがビリビリしてくる。工場から化学薬品が垂れ流されていて「このまま潜っていたら死ぬな」と思うくらいだった。それでもカニたちは、ハサミを広げてこっちに向かってくる。あとで写真を現像してみたら、みんな真っ黒な卵を抱いていた。
 死の海などと呼ばれつつ、そうやって生きている命もある。そんなところに惹かれて何度か通う内に、完全にハマってしまった。
 誰もが死の海と思っている東京湾。でも実は普通の海に負けないくらい、生き生きとした生き物たちが様々なドラマを展開している。食うか食われるかの、弱肉強食の世界。これを撮るのはカメラマン冥利に尽きる。
 そんなこんなで、あっという間に27年が経ってしまった。
 27年で水質はずいぶん綺麗になった。一部、魚類で水銀濃度が高いといわれるものもいるけど、たぶん毎日その魚を食べても死なないと思う。僕が東京湾に入るのは、結局のところ、死ぬまで天然の江戸前のものを食べたいから。コハダとかシャコとかを食べるために、ちゃんとした東京湾を残したい。
 地球温暖化で訪れる食糧危機。植物が枯れ、動物が倒れる。珊瑚が死滅し、そこに育まれる小魚が消え、小魚を食料とする大きな魚もいなくなる。そういう危機が訪れた時に「東京湾を残していて良かった」と思える時がきっと来る。
 これ以上汚しちゃいけないし、狭くしちゃいけない、埋めちゃいけない。心からそう思う。

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image ■ 丸橋珠樹さん(武蔵大学人文学部教授)の

『屋久島での不思議な体験』の話

 屋久島は世界自然遺産にも指定された、自然の豊かな島。ただ最近は開発も進みつつあり、だからこそ自然遺産として保護しようということになった。
 観光客ならガイドに案内されて見学するのだろうけど、猿の研究をしている身ではそういうわけにもいかない。誰も入ったことのない奥へ分け入ることもあるんだけど、ある時、そんな屋久島の奥で神様に出会った。私自身、学者として信じていない部分もあるけど、それは不思議な体験だった。
 その日の朝、私は調査基地にしていた永田という集落から、いつものように8kmほど離れた調査地へ向かっていた。すると向こうの方から「ウォッ、ウォッ」という声が山の上から下がってくる。人の声ではないし、猿や鹿の声でもない。何の声だろう?と思って上を見上げたら、声が止まった。
 馴染みの島の人に「今、こんなことが起こったんだけど……」と説明したら、島の人はあっさりと「ああ、そりゃ神様や、山の神様が海に塩を取りにいこうとしているのを邪魔してるんや」と。そして御神酒を置いて、その場を立ち去った。
 あまりに自然に言うので、その信じきっている姿は衝撃的だった。信じているというよりも、それが当然という雰囲気だった。
 でも私は学者としてそのまま認めるわけにもいかない。そこでさっきの場所に戻ってみた。すると確かに今度は下の海岸の方から「ウォッ、ウォッ」が聞こえてくる。もう、そうなったら信じるしかないかな……と。
 確かめる術がうんぬんというよりは、森の中には不思議があって、説明できないことがあっても良いじゃないか、と思っている。それが地域の人の文化に対する尊敬なのでは。現実に声も聞こえてくるわけだし。
 私たちの研究は、生物学として猿の生態を明らかにすることと、屋久島の人たちに屋久島の猿のことを解りやすく語ること。そうやって猿と共存する文化を作ることも大事な仕事の1つ。そういう時に、暮らしている人たちの文化に対する尊敬はとても大事になる。
 もしかしたら本当に神様はいるのかもしれないわけだし。

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image ■ 木本昌秀さん(東京大学気候システム研究センター教授)

『異常気象』の話

 今年の東京は猛暑だった。去年は冷夏。そう聞くと、いかにも異常な気象現象のようだけれども、去年と今年がまったく同じ、という方がむしろ不思議。特に天変地異がなかったとしても、ある年は暑く、ある年は寒かったりするもの。
 今年の夏は台風の上陸数が新記録だった。夏の早い時期から日本を直撃するような経路の台風が来たのも珍しい。この直接的な原因は、小笠原高気圧という日本の南にある高気圧が、例年よりもちょっと北東にずれていたこと。夏の間ずっとそんな感じだったので、その高気圧の西の端を通る台風が日本に直撃した。
 問題は、そんな気圧配置がなぜそんなに続いたのか。これについては仮説がいろいろある。日本は大陸と太平洋の間に挟まれて、南海のエルニーニョの影響を受けることもあれば、大陸のモンスーンの影響を受けることもある。また北のジェット気流の影響を受けることもあり、さまざまな影響が重なり合って日本の気象があるので、原因を特定するのは難しい。
 たとえば今年の猛暑。細かく分類すると、6月に暑かったのと、7月の半ばに暑かったのと、新潟・福井で豪雨があったのと、8月に暑かったのと、それぞれちょっとずつ原因が違う。
 ただ、そういう局所的な気象現象とは別に、人間の産業活動による地球規模の地球温暖化は確実に進行している。だから長いスパンで考えると、最高気温が更新される頻度は多くなるし、だんだん今までと違う気候に移行していく。
 これからその勢いがどんどん加速していくので、今年の夏くらいの暑さで驚かれては困る。気温が50度や60度になるというわけじゃないけど、今年のように夏日が熊本で100日を越えて新記録だったのも珍しくはなくなるだろう。
 気温が上がると空気の中の水蒸気も多くなって、雨も降りやすくなる。雨は「降る場所では降るけど、降らない場所では降らない」というのがやっかいで、地球が温暖化するとたしかに平均的には雨が増える。だけど、降る場所の期間が長くなったり頻度が多くなるだけで、乾いた場所はそのまま。だから洪水や干ばつも増えたりする。
 雨に関して日本で言えば、夏は雨の多い季節。だから集中豪雨が増えたり、その激しさも増す。それを防ぐためには、空気中の二酸化炭素を減らすしかない。でも、すでにある二酸化炭素を無かったことにするわけにもいかない。洪水や台風に備えた方が現実的かも。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
9'19" I Let A Song Go Out Of My Heart Nancy Wilson mcg Jazz MCGJ 1013
18'58" Relax Matt Dennis BMG BVCJ-7473
24'04" Moon Love Nat King Cole Capitol CDP 0777 7 89545 2 1
34'17" S'posin' Dean Martin Capitol 72435-36348-2-7
45'36" Back In Your Own Backyard Peggy Lee Capitol 7243 8 54543 2


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