SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2004年8月14日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「冷たい料理」

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 夏バテで食欲のない時は冷たい料理に限ります。
 冷や奴に冷やし中華、冷麺、ざるそば、そうめん、ガスパチョ、ビシソワーズ……そういった冷たい食べ物が食べたくなる、というよりは、そういうモノでもないと食べる気が起きない、といった方が正確かも知れません。
 とはいえ、ちゃんと食べないと夏バテは酷くなるばかり。本日は当店のお客さまがバーのカウンターで話されていた、食欲をそそる「冷たい料理」のお話をここで少しだけご紹介させていただきますので、ぜひ参考にしてみて下さい。


image ■ 満園聖さん(辻調グループ校日本料理教授)の

『冷や奴』の話

 “冷や奴”はシンプルで美味しい料理。ただ、学校で日本料理を教えていて「昔って今ほど冷たい料理を食べていたのかな?」という疑問は持つ。今は冷蔵庫やクーラーがあるから、部屋も涼しくてビールもキンキンに冷えて……なんてことが可能だけど、昔はそういうわけにはいかなかった。だから昔は“涼しげな演出をする”のが基本だったのでは。
 昔は“冷や奴”という言葉よりも“やっこ豆腐”という言葉の方が一般的だった。もしくは“冷や湯豆腐”。井戸水を汲んで、豆腐を冷たくして、上から葛餡(くずあん)を掛けて食べる。そういう料理だった。ちなみに湯豆腐も今みたいに昆布だしじゃなくて、葛を溶いたお湯の中で豆腐を温める料理だった。
 だから、というワケじゃないけれど、冷や奴は冷たければ良いというものでは無いような気がする。もしお豆腐がキンキンに冷えていたら、お豆腐の香りがしないと思う。暑いから冷たいものを……という気持ちも分かるけど、美味しい冷や奴を食べたいならそこまで冷やさない方が良い。
 そういった意味で一番美味しいのは10℃前後。良い豆腐になればなるほど風味がある。これを冷やしすぎると、どんどんその風味が無くなっていく。
 冷や奴(豆腐)は、大豆と水だけで作るもの。だから良い大豆と美味しい水で作ったものは、絶対に風味が良くて美味しい。ただ、出来上がった豆腐を買って来たら、その部分はどうしようもない。そこでできる工夫は、豆腐を買ってきたらすぐに封を切って、美味しい水に浸けて冷蔵庫にしまっておくこと。これだけでだいぶ違うし、とっても簡単。
 ビールや日本酒に合わせるなら、冷や奴の上はシンプルな方が美味しい。ネギ、ショウガ、シソ……清涼感のあるものが合う。でも、ウイスキーに合わせるなら、ジャコを揚げたものをちょっと乗せてあげるとか、春巻きや餃子の皮を揚げてトッピングするとか、ちょっと油っ気が入るとコクが出て良い。

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image ■ 山田宏巳さん(『リストランテ・ヒロ』オーナーシェフ)

『冷製カッペリーニ』の話

 ウチでは『冷製カッペリーニ』という名物料理を出しているけど、実はイタリアでは、あの料理はソースだけが冷たくて麺はぬるい、という料理。当然、ウチも最初はそういう形で出していたんだけど、お客さんからハッキリ「不味い!」と言われてしまった。
 当時はやっと、茹であげパスタというか、注文を受けてからパスタを茹でる時代になりつつあった。だからせっかく茹でたパスタを氷水に入れることに抵抗があった。でも、海水浴場で冷やし中華を食べて「日本人はぬるい食べ物が嫌いなのではないか」と思った。それでパスタも冷やしてみたら、前は「不味い!」と言ったお客さんが「今日のはメチャクチャ美味いね!」と。味付けは変わってなくて、ただパスタを冷やしただけだったんだけど。
 その料理、本来のイタリア版は「カッペリーニ・アラ・ケッカ」と言う。麺が温かくてソースが冷たいのが“ケッカ”なんだけど、そんな事情で、今はウチでは両方冷たくても“ケッカ”と呼んでいる。ちなみに“カッペリーニ”は「髪の毛みたいに細いパスタ」という意味。厳密には“カペッリーニ”と発音する。それくらい細いパスタの方が、ケッカの軽いソースには合う。
 さらにウチでは、冷製カッペリーニを出す時にはフォークやナイフも冷凍庫で冷やして出している。最初に出る料理なので、お客さんに「ここまで細かい気配りをしているのか!」と驚いてもらうための工夫。
 冷たい料理と言えば、ウチでは液体窒素を使った料理も出している。液体窒素というのは−193℃という低温で、爆発した水道管を瞬間的に凍らせるのに使ったりするらしい。その超低温を利用して、瞬間的にアイスクリームを作ったりしている。
 ウォッカは−50℃まで凍らないんだけど、液体窒素を利用して凍らせるとか、アジサイの花やハーブを液体窒素に浸けて、天ぷらというかフリーズ・ドライにするとか。アイスクリームの場合は、まだ液体のアイスクリームの元をスプーンで液体窒素にパラッと垂らす。すると周りだけがアイスクリームっぽく固まって、中はまだトロトロ、なんて変わったアイスクリームが作れる。
 液体窒素を使った料理はまだ試作段階で、常連のお客さんに試してもらっている段階だけど、いろいろできて面白い。

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image ■ マニュエル・ベニート・カストロヴェルデさん(白金台『サバドサバデテ』シェフ)

『ガスパチョ』の話

 テレビを見たら、今年のスペインはメチャメチャ暑いらしい。コルドバでは気温が45℃にもなっているとか。
 スペインでも季節によって食べるものがある。たとえばスープなら、冬は“ソバ・デ・アホ(ニンニクのスープ)”で温まる。さすがにアレを夏に食べようとは思わない。そして夏なら“ガスパチョ”。
 ガスパチョは野菜だけで作るスープ。ビタミンもたくさん入っていて、体に良い。色が赤いのは、トマトじゃなくて赤ピーマンの色。赤ピーマン、青ピーマン、トマト、人によってはタマネギ、それらの材料をミキサーに掛ける。ニンニクをちょっと入れて、塩、こしょう、オリーブオイル、ビネガー(酢)を加えて、冷蔵庫で冷やす。ビネガーの酸っぱさが夏にはちょうど良い。
 日本では冷蔵庫にお茶を冷やしておくけど、スペインではガスパチョを冷やしておく。子供が外から帰ってきて、喉が渇いていたらガスパチョを飲ませる。これは健康にもすごく良い。わざわざお皿とスプーンなんて使わずに、コップで飲むくらい日常的に飲んでいる。
 セビージャ(セビリア)やアンダルシアあたりを歩いていると、バルの前に「ガスパチョあります」なんて書いてあったりする。そこで「ガスパチョを1杯!」なんて頼むと、コップでガスパチョが出てくる。それを日本のソバみたいに、ちょっと小腹の足しにして、また仕事に行ったりする。
 もちろんレストランでちゃんとしたスープとして出しているところもある。でもガスパチョは、こんな風にいろんなところで親しまれている料理。
 日本ではまだ知られていないけど“オルチャタ”という冷たい飲み物もおいしい。これはバレンシアの料理で、牛乳かジュースみたいに真っ白。ジャガイモみたいな形をした小さな豆“チュファ”をすり潰して作る。ガスパチョみたいなスープと飲み物の中間のような位置付けで、ちょっと甘みがあってすごく美味しい。

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image ■ 森脇慶子さん(フードライター)の

『冷麺』の話

 冷麺の発祥は平壌と言われている。朝鮮半島の北の方は土壌的にも機構的にも小麦や米の栽培に向いていなくて、昔からソバなんかが中心に作られていた。それで冷麺に行き着いたのでは。
 冷麺はもともと寒い冬に食べるものだったらしい。というのはその昔、冷麺の汁は冬に発酵させる大根キムチ“トンチミ”の汁を使っていたから。米や麦がとれないところで雑穀を使った麺を食べていたくらいだから、今みたいに牛のスネを使ったスープなんてものは手に入らなかったはず。
 昔の人だって夏に食べられるなら食べたかっただろうと思う。だけど、トンチミは冬に浸けるものなので、冬しか食べられなかったのだろう。トンチミの汁を温めても美味しくなさそうだし。
 冷麺は、手打ちの麺ならそれなりにしなやかさがある。でも日本でよく手に入る、向こうの半生麺を戻したものは、硬くて噛み切れなかったりする。だから冷麺は手打ちに限る。日本で食べようと思ったら、赤坂の『母心郷(チョンギワ)』とか、浅草橋と赤坂『KORYO(コリョ)』。お店によって食感をいろいろアレンジしているらしい。
 冷麺と言えば、日本人は麺のことしか気にしないけど、本来はスープがポイント。私が今まで食べた中では、尼崎の『味楽園』というお店が美味しかった。もともと大きな骨付きカルビで有名なお店で、手打ちの冷麺にもこだわっているお店。スープがシャーベット状にする工夫をしていて、氷を入れる必要がないので、食べている間に氷が溶けて薄まったりしない。すごく上品なコンソメ味で、美味しかった。本来は焼き肉で有名なお店なんだけど、冷麺もオススメ。

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image ■ 岡田充功さん(ニチレイ)の

『冷凍食品』の話

 長距離列車の名物「冷凍ミカン」。実はアレはウチで作っていたもの。昭和27〜28年頃から全国で販売していた。ただ「冷凍食品」の定義からすると、冷凍ミカンは皮が付いたままなので、冷凍食品かと言われれるとちょっと微妙なところ。冷凍食品は「前処理」と言って、食べられない部分を極力無くす工夫を施してある。
 さすがに冷凍食品でも、冷凍しておけばいつまでも品質が変わらない、というわけにはいかない。たとえばマグロなら、−55〜60℃くらいで保存しないと、トロの部分が劣化したり、赤身の部分の色が悪くなる、なんて現象が起きる。特に生で食べるものに関しては、かなりの低温で保管する必要がある。でも、普通の冷凍食品なら−18℃以下なら1年は大丈夫。
 1年大丈夫なら50年でも大丈夫か……と問われると、なんとも言えない。そういう状況も考えにくいので。冷蔵庫を開けた瞬間に−18℃以下という条件が崩れてしまうので、その瞬間に少しずつ劣化が進む可能性は否定できない。
 ある番組の企画で「山荘の冷蔵庫に2年間眠っていた鹿の肉」を調べたことがある。この山荘は2年間、誰も出入りしなかったという話だった。この鹿の肉を顕微鏡で調べてみたら、細胞もキレイな状態で、ほとんど劣化していなかった。
 お寿司なんかでも、冷凍物は美味しくない、冷凍していないものは美味しい、というイメージがあるけれど、結局はモノによりけりだと思う。冷凍していなくても、水揚げした直後の処理が悪ければ、獲れたての状態ですぐに処理して冷凍したものの方が美味しい。
 もちろん産地、種類なんかにも依る。マグロの場合は死んだ後に体温が40℃以上に上がる。いわば、勝手にシーチキンになる、というようなもの。だから処理が悪いと、河岸で仲買さんも「使い物にならないよ」と。それだったら、ちゃんと冷凍してあげて、ちゃんと解凍してあげれば、ほとんど区別は付かない。
 本来、冷凍する時は「急速凍結」という方法が好ましい。モノが凍っていく段階を調べていくと、−5〜−10℃くらいのところに“最大氷結晶生成温度帯”という温度帯がある。ここをいかに早く通過させるかが勝負で、この温度帯でノロノロしていると、氷の結晶がどんどん育っていってしまう。その結果、肉や魚の細胞の中で大きな氷の結晶が育ち、細胞膜を破ってしまう。そして解凍した時に、そこから旨味成分や栄養成分が出て行ってしまう“ドリップ”と呼ばれる現象が起きる。よく、スーパーのトレイを傾けると赤い血のような液体が流れてくる、アレがそう。それをなるべく回避するには、急速凍結が鍵になる。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'27" Bolnha De Papel Joao Gilberto World Pacific CDP 7 938911 2
17'51" Tem Mais Samba Chico Buarpue Victor VICP-5279
27'08" Conversa Da Botepuim Doris Monteiro EMI 829 712 2
40'03" Discussao Sylvia Telles EMI 8275352
46'50" The Shadow Of Your Smile OS TRES BRASILEIROS Capitol TOCP-8266


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