■ 山本和江さん(北沢『アンティーク山本商店』)の
- 『アンティーク家具』の話
タンスも良く出るけど、ウチが昭和20年頃に店を始めた頃から扱っているのが“ちゃぶ台”。そんなに高くもないので、これが一番良く出る。
実は最近も新しいちゃぶ台は生産されている。でも昭和の初期に作られた、いたみや傷のあるちゃぶ台の方が値段的には倍くらいする。88cmの一番大きいサイズで1万6500円くらい。
居酒屋にちゃぶ台が置かれるようになったりして「ちゃぶ台がブーム」とも言われるけど、ブームの前からちゃぶ台は常に売れ筋の商品だった。やっぱりちゃぶ台はイロイロ便利なんだと思う。たためば部屋の隅に片づけられるし、丸いから何人でも囲める雰囲気も良い。ちゃぶ台を買っていく人には一人暮らしの若い人が多い。
人気の一方で、数はどんどん少なくなっている。足を1本破損してしまうと、今は同じ木が手に入らないので、新しく作れない。1つのちゃぶ台が完成品としてそこにあるというのは、簡単なようで意外と貴重。
ちゃぶ台の次に人気があるのは“本棚”。ただし、正札には本棚と書いてあるけど、買った人は食器戸棚や衣類の収納、靴箱、いろんな用途に使っているらしい。サイズも小さいモノから大きなモノまでいろいろあって、用途に合わせて選ぶことができる。
お店の在庫にはちゃぶ台や本棚以外にも、椅子も20〜30本くらいあるし、タンスもたくさん置いている。それくらいたくさんのアンティーク和家具を見ていて、一番オススメなのが昭和の初期のもの。ちょうどその頃、英国製の家具が日本に輸入されて、そのデザインを取り入れながら日本の職人さんが本箱を作っていた。英国風のデザインが入っているから今の洋室にも合うし、しっかりした職人さんが作っているから木の材質、金具などがしっかりしている。昭和30年代の家具にくらべて少し高いけど、お客さんもそういう家具を好んで買っていく。
和モノの家具は比較的小ぶり。最近は家族も多くて4人くらいなので、その小ぶりな家具をマンションで使うとちょうど良いみたい。その使い方も上手だなと思う。
その時代の家具は金具の釘ではなく、木の釘を使っていることが多い。それに昔の木はしっかりとしていて丈夫だったし、大切に使えば子孫の代まで使える思う。使えば使うほどその良さが出てくる、それが昔の家具。
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■ 野村克也さん(社会人野球『シダックス』GM兼監督)の
- 『野球の道具』の話
プロ野球の世界に入って去年で50年が経ったけど、道具に関してはずいぶん進化したものだと思う。
我々が子供の頃は布のグローブしかなかった。真ん中に革が張ってあって、ボールが当たるところだけは守られていた。
そんな時代からしばらく経って、プロに入って痛感したのが「日本製のミットは使えない」ということだった。とにかく硬くて、しかもボールの入るところだけ穴が開いてたけど、形はまん丸。これではなかなか捕れない。そのおかげでキャッチングが上手くなった、とも言えるかもしれない。でもみんな突き指をしまくって、指がグチャグチャに曲がっていた。両手で押さえないと捕れないので、ファールチップはガンガン当たるし。
実は私の場合は、現役の時にファーストミットのような形のミットを作って、それを使っていた。4番を打っていたこともあって、どうしても怪我をするわけにはいかなかったので。それでも周りからは「片手で捕るなんて横着しやがって」と散々言われたけど。
当時、野球のミットは買ってきたものを全部分解して、自分で型を作るのが当たり前だった。給料がある程度稼げるようになって初めて、ローリングスのミットをアメリカから取り寄せるようになる。向こうのミットは革のなめしも良かったし、新しいミットを即座に使えた。ところが日本のキャッチャーミットではこうは行かない。とにかく最初は硬くて、ボールを受けて受けて受けまくって「ああ、ちょうど良くなってきたな……」というタイミングで破れる。
そんな事情で、一度使ってからはローリングスのミットをずっと使っていた。だいたい1シーズンで3個。1シーズンに2つは確実に使い潰していた。
バットも、ルイスビルのアメリカ製を使っていた。練習では日本製を使って、試合ではアメリカ製。牛の骨を見つけてきては、試合用のバットを擦って目を詰める。それで1mでも飛距離を伸ばそうと必死にバットを手入れしていた。けっこう疲れる作業だったし、腕のトレーニングにもなっていたかも。それはさておき、やっぱりバットにはそれくらい気持ちを込めながら、大事に扱っていた。
アメリカにバットを注文する時は、ダース単位で注文した。1ダースのバットを重さ、弾き、木の目、もろもろチェックして残るのが3本程度だった。そして中には“ホームランのよく出る当たりのバット”がある。ところがそういうバットに限って木の目が剥げてくるので、小さな釘で必死になって繕ったものだった。
ところがそれをやると、本当はルール違反。だから打った後は絶対にキャッチャーの側にバットを置かずに、ベンチの方へ放り投げていた。一度だけ見つかっちゃって、審判に叱られたことがある。そしてもちろん、自分がそういうことをしているから、キャッチャーとして守っている時はバッターのバットをつぶさに観察していた。
ちなみに阪急にスペンサーという選手がいて、この選手はよく釘を使っていた。もう彼の場合は、彼がバッターボックスに入る前からジロジロ見ていた。よくよく見るとマジックで釘を隠しているから、審判に「ちょっとバットをチェックしてくれ」と。
釘を打ったからと言って、別に飛距離が伸びるワケじゃない。でも、それくらい気に入ったバットというのは手放しがたいもの。だからスペンサーの気持ちはよく分かる。
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■ 中澤宗幸さん(ヴァイオリンドクタ−)の
- 『ヴァイオリン』の話
自分が作ったヴァイオリンは自分の子供のようなもの。そして、その子供を育ててくれるのは弾き手。ヴァイオリンは生き物と同じで、弾き手の気持ちがそのまま移る。
荒い人のヴァイオリンは荒い音を出すようになるし、キレイな音を出す人に使ってもらっているヴァイオリンは、ヴァイオリン自体がキレイな音を出すようになる。だから楽器を見れば、弾き手がどんな人なのかだいたいわかる。
ヴァイオリンは古いものほど良い。年輪の味とでも言うか、若い女の子には味がないのと同じ。弾きこまれて、いろんな人の手に渡って、使い込まれたヴァイオリンは、表現力が豊かになって他では変えられない味がある。
弾き手にも個性があるように、作り手にも個性がある。製作者が違えば、ヴァイオリンの音色はまったく違う。親(=製作者)の性格を受け継いでいる、と言えるのかもしれない。
ヴァイオリンの音は人間の声に一番近い、とも言われている。だから上手な人のヴァイオリンの音色は人の心を捉えるのだろう。ちなみに下手な人が弾くと、ヒステリックな女性の声になる。だから男性にとって、下手な演奏がこれほど聞きにくい楽器も他にない。
アインシュタイン曰く「死とはモーツアルトが聴けなくなることだ」。だからこそ、民族、宗教、人種、国境、言語を越えて、音楽は常に人類と共にあり続けた。
ちなみに今まで扱ったヴァイオリンの中で最も高価だったのは、値段を付けるなら5億円とも言われるヴァイオリンだった。でも実際の話、そんなヴァイオリンは“プライスレス”。それはもはや一個人の所有物じゃなくて、次の世代に渡さなきゃいけないモノであり、我々はそれを一時的に預かっているだけ。
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■ 佐久間正司さん(赤坂『すっぽん さくま』)の
- 『まる鍋の土鍋』の話
すっぽん用の土鍋は注文して作ってもらう。土鍋じゃなきゃいけないのは、鍋に味を染み込ませるため。土鍋の味と作った人の味が合わさって、はじめてすっぽんの鍋“まる鍋”になる。
ウチの場合は、一度作ってから冷蔵庫で一晩寝かした鍋を出している。すっぽんをバラして、銅の鍋で焚いて、味を付けて冷蔵庫にしまう。その鍋を一晩おくと、スープが半煮こごり状になっている。それを信楽焼の土鍋に入れて、コークスでサッと温める。
コークスは2300度という、鉄も溶け出す高温になる。だから分厚い土鍋じゃないとダメ。しかも鍋に味を染み込ませるには、信楽焼くらい柔らかい鍋の方が向いている。
新しい土鍋を顕微鏡で見ると、小さな穴がいっぱい開いている。水を張って一晩置いておくと、5〜6時間で全部漏れてしまうほど。だから新しい鍋が届いたら“慣らす”ところから始める。鍋を少し温めて、すっぽんの脂を鉄板焼きのように塗って、中に染み込ませる。この作業を何回も繰り返す。さらに、すっぽんのガラを鍋に入れて、お酒とお醤油で煮込む。これはお店が終わった後の残り火を使って、1〜2ヶ月は繰り返す。その1〜2ヶ月の間に、鍋の底は1度赤くなって、だんだんその赤みが消え、また赤くなって……という変化が起こるので、だいたいそれが3周したところでお客さんに出せる鍋になる。
お客さんに出せるとは言っても、最初は火の弱いお雑炊から。お雑炊に使っている内に、また少しずつすっぽんの脂が鍋に染みていって、「もう大丈夫」と思えるようになって初めて「すっぽんの身を沸かす鍋」に昇格する。漫画で「まる鍋用の鍋でお湯を沸かすとダシが染みている」という表現があったらしいけど、実際にそういう事は起こると思う。ただし、身を沸かす鍋を雑炊に使うのはもったいなくて、ウチではやっていないけど。
ウチの店には100ほどの鍋があって、一番古いモノで60年。そういうお鍋は自分では作れないので、お金に換えることはできない。
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■ 皆川文博さん(ソメスサドル)の
- 『革製品』の話
革製品は天然素材なので、使い続けると変化していく。革の場合は特に“なめし”が特徴的。“なめし”を英語で“Tanning”と言って、現在進行形。製品になっていても、なめしは進行していく。
だからこそメンテナンスは重要。手入れ次第ではどんどん良くなっていく。重要なのは安定した水分を与えること。その水分は水と油が合わさった状態でなくてはならない。植物のタンニンを使って革のタンパク質の中に水分を浸透させると、革の中で作用して、生きている時と同じような状態になる。それがタンニング。
「なめす」は感じで「鞣す」と書く。生の「皮」が革命的に変化したものが「革」。しなやかであって腐らない、そういう加工したモノが「革」。しかも現在進行形で変化していく。メンテナンスによってその変化を良い方向に向かわせると、どんどん革は良いモノになっていく。
もともと動物の皮なので、じっとさせて置くより動かした方が良い。良い刺激で、良い形で使ってあげる。これが革にとっては良い。そしてタンニングによって水と油を補給する。そうすれば革はみずからを守る力を持つ。
革製品はまず最初が大事。最初は特に丁寧に扱って欲しい。そしてある時期になると、急にグンと良くなってくる。最初に傷めてしまうと、ずっとそのダメージはついて回る。最初に丁寧に扱った革製品は、保ちが全然違う。
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放送曲目リスト
| Time |
Title |
Artist |
Label |
Number |
| 8'39" |
Any Old Time |
Beverly Kenny |
MCA |
MVCJ-288 |
| 19'41" |
Straighten Up And Fly Right |
John Pizzarelli |
Novus |
63182-2 |
| 31'34" |
Nice Work If You Can Get It |
The Hi-Lo's |
DRG |
5184 |
| 42'49" |
Too Marvelous For Words |
Rosemary Clooney |
RCA |
R25J-1038 |
| 48'01" |
I've Got You Under My Skin |
Frank Sinatra |
Reprise |
WPCR-121516 |
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