■ 西田尚道さん(植物研究家)の
- 『桜の品種』の話
一説によると、桜は400以上の品種があると言われている。だから日本全国を見渡せが、9月をのぞけば常にどこかで桜が咲いている。
1月には沖縄でリュウキュウヒカンザクラが咲き始める。2月になるとオオカンザクラ、2月の終わりから3月にかけてはカンヒザクラ、そして3月の終わり頃にはおなじみのソメイノヨシノにヤマザクラが咲く。
5月はタカネザクラも咲いているし、ナラヤエザクラなんかもまだ残っている。ちょっと高いところへ行くとミヤマザクラというのもある。6月は北海道根室の清隆寺が有名なチシマザクラ。7〜8月はタカメザクラで、10月からもジュウガツザクラ、コブクザクラ、シキザクラ、フユザクラなどが咲く。
全国的に花の名所と言われるところは、やはりソメイヨシノが植えられている場合が多い。ヤマザクラだと葉と花が同時に出てくるのに対して、ソメイヨシノは最初に花が一気に咲くので、いかにも「咲いた!」という気分を味わえる、というのが理由では。
ソメイヨシノという品種は、東京の染井村の植木屋さん達が作って売り出したのが最初、という説が現在では有力になっている。ちなみにそれは、エドヒガンとオオシマザクラを掛け合わせて作った。「ヨシノ」というのはある意味、商品名というかイメージみたいなもので、奈良の吉野とは関係ない。
実は里桜というモノは自然界では存在しないので、誰かが接ぎ木で増やしてやらないと滅びてしまう。種を蒔けば似たものはできる。でもまったく同じモノができることは、ほぼ考えられない。おしべの数が足りないとか、葉のギザギザが少し違うとか、必ず違いが出てくる。だからソメイヨシノも接ぎ木で増やしていかないと、何百年後かにはこの世から消えてしまう。これが桜の特徴。
これは「自家不和合性」といって、自分と同じ品種の花粉では実がならない性質が強いから。桜だけじゃなくてリンゴなども同じで、リンゴ農家が受粉作業をしているのはこのため。逆に言えばそういう品種を里桜と呼び、その姿形を残すための努力がなされている。
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■ おくだ健太郎さん(歌舞伎ソムリエ)の
- 『歌舞伎と桜』の話
歌舞伎と桜は切っても切れないもの。たとえば4月の歌舞伎座で上演される『白浪五人男』という演目にも「桜」が登場する。
主人公は2人組の美形盗賊。2人は振り袖姿のお嬢さんに化けて、呉服屋を強請ろうと企てる。ところがチラッとのぞいた刺青で2人の正体がバレてしまい、2人は居直ってしまう。「あ〜あ、こんな窮屈な思いはもうたくさんだ!」そう言って振り袖を脱ぎ、「知らざ〜言って聞かしやしょ〜(中略) 弁天小僧、菊之助たぁ〜オレのことだ〜!」と啖呵を切りながら見せるのが「桜」の刺青。
ちなみにこのお話、「五人男」というくらいだから5人の盗賊集団のお話で、最終的に5人は指名手配されて十手で追い回されてしまう。そこで5人は稲瀬川の川べりに揃いの着物を着て並ぶ。しかも堂々と「白波五人男」と指名手配の名前が入った傘を持ちながら。そして「問われて名乗るもおこがましいが〜」と、みずからの泥棒としてのプロフィールを朗々と語る……というクライマックス。このシーンでもやっぱり背景は「桜並木」。
桜が満開に咲く華やかさ、それと表裏一体の散る時の潔さ、その後の名残り。それは悪い奴であろうと忠義の武士であろうと、日本人の底に流れる部分を刺激することろがあるのでは。
『金閣寺』というお芝居には、雪姫という画家・雪舟の孫娘が登場する。夫がいまにも処刑されそうで、助けに行きたい。でも、自分も繋がれていて助けに行けない。ここで雪姫はお祖父さんのエピソードを思い出す。雪舟は小僧の頃に、お寺で罰として縛り付けられていたら、涙を絵の具に足を筆にして、ネズミの絵を描いたんだとか。するとその絵のネズミが動き出し、縄をかじって自由の身にしてくれた、という伝説がある。雪姫もその伝説にならって、自分が繋がれている桜の木から降る桜吹雪を寄せ集めてネズミを描く。すると……というお話。このお芝居が、花吹雪の降る量としては歌舞伎の演目の中でもNo.1。
「桜丸という若者がやまれぬ事情で切腹する」というお話(菅原伝授手習鑑)でも、“若くして死んでしまう役”に“桜”という名前を付けられている。そこにはやっぱり作者の意図があって、お客さんもその名前にピンと来るはず。
「華やかに咲く」「散る」この両面を表現できるのは桜の最大の特色。
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■ 中江白志さん(日本堤「中江」店主)の
- 『桜鍋』の話
「桜鍋」という名前の由来にはいろんな説がある。たとえば坂本龍馬が作った唄に「咲いた桜になぜ駒繋ぐ 駒が勇めば花が散る」という一節がある。これが起源という説。それから千葉県の佐倉という町に昔の御料牧場があって、「佐倉」が「桜」になった、という説。あるいは陸軍で軍馬を使っていて、陸軍の紋章が桜。それが元になっているという説。本当にいろいろ。
ウチの桜鍋は割り下に味噌ダレも足して、その鍋で煮た肉を溶き卵に浸けて食べてもらっている。馬肉は高タンパク低カロリーで、低脂肪。コラーゲンと鉄分も豊富で、その脂肪も善玉コレステロールなので太らないし、血管に詰まることもない。
桜鍋が食べられるようになったのは明治の初め。文明開化で牛鍋が横浜で生まれて、その流れで東京でも桜鍋が生まれた。だから実は桜鍋は東京の郷土鍋でもある。熊本、長野、東北でも馬肉はよく食べられているけど、基本的には馬刺が中心で、あとは焼き肉とか。ちなみに熊本は加藤清正が朝鮮出兵の時に馬を食べたのが起源で、400年の歴史があるらしい。というわけで、東京の桜鍋とはちょっと系統が違う。
最近は「コラーゲンが豊富」という評判を聞いた女性のお客さまも多くて、「バラ」という脂身の多い部位をよく注文する。一見、脂ぎってて「ちょっとこれは……」と思われがちだけど、一度食べたらもうそっちしか注文しない。「コラーゲン鍋ちょうだい」なんて言う人もいるくらい。脂身そのものに甘みもあるし、口の中で溶けて油っぽい感じが口の中に残らないので、動物性の脂を食べているような気のしない脂身。
昔は桜鍋で精をつけて吉原に繰り出したもの。「天高く馬肥ゆる秋」の肥えた馬が、冬を越えて春先ぐらいまで一番おいしい。この季節にぜひ。
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■ 若林正人さん(フリーキャスター)の
- 『夜桜中継』の話
別に夜桜の中継をするために転職したわけじゃなかったんだけど、外回りをしろと言われて「夜桜中継」を担当することになった。
僕自身は桜と言われても困ってしまって、とにかく桜の品種から故事来歴まで様々なことを勉強した。そうしたら、桜というのはスゴイというか……種類も多いけれど、桜に関わる比較文化論みたいなことを徹底的にやった。たとえば、桜の花はすべて下を向いていて、これは人に見てもらうため、とか。
ご存じの通り『ニュースステーション』という番組には久米宏という人がいて、僕は最初から彼の流れをぶった切ろうと目論んでいた。スタジオから久米さんが「若林さん?」と呼んでも返事をしない。もう1度「若林さん?」と呼んでも、また返事をしない。溜めて溜めて……今にして思えば、その間合いが良かったんだと思う。
そして真っ暗な空からだんだんカメラを下げてきて、桜の梢あたりが移り、最後に私の顔が映ったあたりで喋り始める。「桜の“さ”の字は、早乙女、五月、五月雨、早苗の“さ”の字と、語源的には同じ所から由来しておりまして、日本の古い言葉、古語では“さ”の字は豊かな実りの神様、“くら”はその神様のいる場所を意味したそうです……」なんてナレーションを朗々と語った。
これは荒唐無稽だったけれども、だからこそ今までにない新鮮味があったのでは。そのおかげでニュースステーションを降板させられてから11年が経つけど、今でも毎年、桜の名所「京都国際会館」に桜の話をするために呼ばれている。そういう意味では、僕は桜に足を向けては眠れない。
1年間にだいたい35カ所、全部で200カ所ほどから中継をしたから、自分でもよくやったと思う。まず1月後半には沖縄で咲き始めて、5月末の根室のチシマザクラが最後。桜前線とともに南から北へと移動していった。
よく覚えているのは新宿御苑。あそこの桜はすごかった。それから日本のお城には桜が付き物で、姫路城、松本城なんかも良かった。あと、富士山にも桜は良く合う。でもさすがに富士山に照明を当てるわけには行かなかったけど。それでも富士霊園の桜も凄く良かった。
実は今でも桜の季節になると血が騒ぐ。
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■ 升本清さん(全国さくらんぼ普及会)の
- 『さくらんぼ』の話
さくらんぼの実を作るのは難しい。果樹の中で一番難しいとさえ言える。もの凄く人気があって、全国で作りたいんだけど、大方の人が失敗してしまう。難しい理由は、収穫の時期が梅雨の頃のため。成った実が熟して、そこに雨が降ると、パンパン割れてしまう。
さくらんぼにも種類があって、酸っぱいモノもあれば甘いモノもある。甘いモノは生でそのまま食べるけど、酸っぱいモノは缶詰やチェリー酒にするための加工用。日本では加工用の酸っぱいモノはほとんど作っていない。
そして甘いさくらんぼにも、ヨーロッパから来たモノと中国から来たモノがある。中国から来たモノは日本全国どこでも成るんだけど、小さくて商品としては流通していない。どちらかといえば主に観賞用。そしてヨーロッパから来たモノは、基本的に南の方では成らない。
中国実桜と西洋実桜では、花の咲く時期が1ヶ月くらい違う。今、中国実桜が満開で、西洋実桜は八重桜なんかと同じ、一般的な桜よりもちょっと遅い時期に咲く。実桜の花はピンク掛かってなくて真っ白で、それ以外は普通の桜と同じ。
日本では、さくらんぼの実は山形県が主産地で、山梨の塩山あたりがほぼ南限。
桜の花が散る頃になると新芽も出てきて、新芽と実で養分の競合が起きてしまう。だから樹があまりに威勢良いと、受粉しても実が付かない。動物だって、たとえば繁殖用の豚を出荷用の豚のようにまるまる太らせると、妊娠しづらい。栄養過多になると子孫を残せという遺伝子の働きが弱くなる。だからさくらんぼの実を作るには、樹を大きくする期間と、実を収穫する期間を明確に分ける必要がある。
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放送曲目リスト
| Time |
Title |
Artist |
Label |
Number |
| 9'20" |
C'est Tres Joli |
Dorothy Collins |
Universal |
MVCJ-19207 |
| 20'44" |
Love Is A Necessary Evil |
Blossom Dearie |
Daffodil |
BMD-114 |
| 30'35" |
You Make Me Feel So Young |
Rosemary Clooney |
Jasmine |
335 |
| 41'09" |
It Might As Well Be Spring |
Peggy Lee |
Capitol |
7243 4 93065 2 3 |
| 47'28" |
I've Never Been In Love Before |
Lorez Alexandria |
MCA |
MCAD-33116 |
|