SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2004年2月28日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「ブロードウェイ」

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 ブロードウェイは、マンハッタン島を縦断する大通りのこと。数々の劇場が建ち並ぶタイムズ・スクエア周辺の地区を通ることから、ショー・ビジネスの聖地として世界中に知られています。
 『コーラスライン』『ライオン・キング』『シカゴ』などなど、数え上げたらキリがないほどの名作、話題作がブロードウェイから生まれました。今日はそのブロードウェイの虜になっていまったみなさんのお話を、少しだけここでご紹介させていただきます。


image ■ 小堺一機さん(タレント)の

『ブロードウェイ通い』の話

 86年に仕事で初めてブロードウェイに行って以来、ほぼ毎年ブロードウェイに通っている。「さすがにもう来年は新しいモノはないかな?」なんて思っていても、スッと新しい話題作が始まっていたりして、さすがの底力という感じ。
 見る舞台を選ぶ時は、たとえば「全員が巨匠」みたいなヤツは避ける。作曲家はこの人!主演もこの人!なんて舞台は、えてしてショートしてしまったり、お互いに気を遣ってしまって間が抜けてしまったりする。
 だから意外な小さい舞台が面白かったりする。去年もアントニオ・バンデラスの『Nine』を見て「すごいな〜」と唸ってしまった。まず自分たちが作った頂点があって、その頂点でちょっと力を抜いてスーッと飛んでる感じを見せてくれるのが、まさに「粋(いき)」だった。
 お客さんのリアクションも良い。悪役が登場すると「No!」なんて歓声が上がったりする。でもカーテンコールでは立って拍手。悪役の役者も心得たもので「悪いヤツなのに拍手?」なんて表情をしたり。
 向こうに住んでる人に言わせると「観光客ばかりで、生粋のニューヨーカーはいない」らしいけど、ボクがマチネ(お昼の公演)を見に行くと、短パンにTシャツ、野球帽なんてカジュアルな格好のすごく地元っぽい人もいる。当日券やハーフ・プライス・チケットに行列もできているし、感覚としては映画館に行くのに近いのでは。
 正直、僕ははじめてブロードウェイに行った時に「新宿みたいだ」と思ったし。お客さんのノリは大阪。全体を含めると、僕が昔いた浅草と似ているかもしれない。「街全体が芸事が好き」みたいな。ブロードウェイの本質はそういう大衆芸能だと思う。
 あんなにアメリカはタバコに厳しい割に、インターミッションではみんな外に出てタバコを吸っているし。しかもチケットを見せもしないで席に戻ってきたりして。その辺も昔の浅草っぽい。
 今まで見てきた中で一番良かったのを挙げるのは難しいけど……たとえばグレン・クロースが老女優を演じた『Sunset Boulevard』は鳥肌モノだった。それから『Lion King』なんてオープニングだけで「これだけで入場料分の価値がある!」とビックリさせられた。『Aida』も良かった。幕の閉まり方まで演出してあるような気がした。

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image ■ 青井陽治さん(演出家)の

『コーラスライン』の話

 僕は31歳になるまで外国へ行ったことがなかった。だから海外の舞台の翻訳も、向こうの舞台を見ないままやっていた。
 ある時期、浅利(慶太)さんに反抗して劇団四季を離れていたんだけど、四季が『コーラスライン』をやることになった時に「ダンサー経験があって、英語で打ち合わせができる人に翻訳を任せたい」というリクエストが向こうから出たらしい。それで劇団を離れて3年になる僕のところに、浅利さんから電話がかかってきた。
 「お前を連れてニューヨークに行きたいんだけど、パスポートは持っているか?」海外へは行ったことがないから、もちろん「持ってません」。「実はこうこう、こういう理由で……」大急ぎでパスポートを作って、ニューヨークへ飛び立った。
 そんな事情で、ニューヨークで最初に会った演劇人が『コーラスライン』をすべて作ったマイケル・ベネットだった。向こうに着いて、とりあえず舞台を見せてもらって、「打ち合わせをするので車を回します」と言われて、劇場を出てきたらロングタイプのリムジンがお出迎え。「うわ〜、テレビも付いてるし、バーも付いてる、映画みたいだ〜」と思っていたら、角を2つ越えてちょっと曲がった近所で「こちらです」と下ろされた。
 それで入ったレストランが「ウォーリーズ」。『オール・ザット・ジャズ』でフォッシー役のロイ・シャイダーが彼女に誘われていく、あのレストラン。こっちにはハロルド・プリンスがいて、向こうにはボブ・フォッシーがいて、そっちにはライザ・ミネリがいる。マイケル・ベネットと話をしていても、完全に目が泳いでいた。どうもばれていたらしく「後で紹介してあげるから……」と笑われてしまったけど。
 席に座って最初のひと言が「By the way...」で、マイケル・ベネットが何を言い出すのかと思ったら「I am bisexal」というところから話が始まった。ようするに『コーラスライン』というミュージカルは、あらゆる少数民族に対する強いシンパシーが込められている、そこを理解して欲しい、と。
 そんな勉強をさせてもらっている間に、浅利さんは数日で「とことん勉強してこい」と言い残して帰っていった。残された僕は、マイケル・ベネットと何日かに一度会って、5〜6時間のセッションを、6〜7回はやってもらったと思う。その中で「ダンサーのインタビュー」のテープも聴かせてもらった。『コーラスライン』に登場するダンサーたちは、場合によっては7〜8人の実在するダンサーの体験談をつなぎ合わせて作られている。そのオリジナルのインタビューではどんなことを言っていたのか、そんなことまで勉強させてもらった。
 そこまで勉強するのは「だからこのセリフは、こういう言い方じゃないとおかしいんだ!」という部分に繋がるから。「今日、君が舞台で見たあの人は、こういう風にセリフを言っていたけど、僕は満足していない。僕はこういう風に言って欲しいんだ」と言って、目の前でマイケル・ベネットが演じてくれる。僕はそれを見ているだけで、何度も泣きそうになった。
 もはやそれは、『コーラスライン』についてのレクチャーというよりは、ミュージカルそのものの作り方を、現場で最高の経験者から個人ゼミで教えてもらっているようなものだった。

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■ 安倍寧さん(音楽評論家)の

『劇評』の話

 だいたい年に2〜3度はブロードウェイに行ってしまう。もう病膏肓(やまいこうこう)みたいなもの。
 インターネットでニューヨーク・タイムスのアート欄なんかを毎日チェックしていると、1/3にあるミュージカルの幕が開いたとすれば、翌日にはその劇評が読めてしまう。向こうでは、オープニング・ナイトの前日にプレス・ナイトと言って、記者が見る日が設けられていて、オープニング・ナイトの翌日の朝刊には必ず劇評が載る仕組みになっている。
 映画にもなった『Bells Are Ringing』というミュージカルのリバイバル公演が数年前に行われて、そのプレス・ナイトを見たんだけど、アドルフ・グリーン(脚本家)とニューヨーク・タイムスの記者がすれ違っても、挨拶もしなかった。その真剣な姿勢には見ているこっちが怖くなったくらい。
 バラエティを見ると、どこの新聞が褒めたか、けなしたか、ミックス(中間)か、全部一覧表になっている。そういった意味では批評家の側も厳しい。すべてがディスクロージャー(情報公開)されるという感じ。
 ところが、評論家に評判の悪かった作品が当たる、ということもある。たとえば劇団四季もやっている『オペラ座の怪人』。これはニューヨークの批評家に散々叩かれた。1988年に「ロイド・ウェーバーはプッチーニの真似だ」なんて言われた舞台が、まだ続いているのだからおもしろい。
 日本では人気がないけど、スティーブン・ソンドハイムという人がいて、この人がアメリカ・ミュージカル界の至宝。去年も『ゴールド』という作品を出した。これはゴールドラッシュの時代にカルフォルニアに登場した詐欺師のお話で、『オペラ座の怪人』をやったハロルド・プリンスが演出を担当した。僕は「ブロードウェイまで来たら絶対に見に行こう」と思っていたんだけど、シカゴ、ワシントンと公演して、ブロードウェイへ辿り着く前に終わってしまった。こんなに豪華な組み合わせでもダメなものはダメというのだから、本当に厳しい。
 一昨年の8月からブロードウェイで始まっている『Hairspray』は、60年代のバルチモアの女子高校生の話。当時、ロックンロールが流行りだしだけど、「黒人の音楽だ」と白人社会では拒否されていて、しかも主人公はデブの親子……と二重に差別される。ロックンロールが鳴り響く楽しいミュージカルなんだけど、差別という問題をユーモアとウィットに包んでお客さんに見せている手腕が素晴らしい。最後には差別されていた親子が「勝った!」と気持ちよく終わっているもカタルシスがある。

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image ■ 金森美彌子さん(ホリプロ)の

『ロンドンの舞台』の話

 『カルーセル(回転木馬)』という作品は、もともとイギリスの国立劇場でやっていた。そういうものが成功すると、ブロードウェイに行ったりする。
 『The Producers』という作品でも描かれているけど、ブロードウェイのミュージカルには必ずユダヤ人のプロデューサーが付いている。そのプロデューサーのグループに属していないと仕事ができない。でもロンドンのプロデューサーはけっこういろいろ。アンドリュー・ロイド・ウェーバーとキャメロン・マッキントッシュの2大カンパニーがあって、それ以外のいろんな人がゆるやかにやっている。
 アメリカは契約社会で、ビジネスの中で厳しく突っ込んでくるし、逆にそれに答えればいいだけ、とも考えられる。その点、イギリスの方がもう少し情緒的で「いいものを作ろうよ」とか、それを日本で伝えてくれるなったら「一緒にやろうよ」みたいな。同じ島国だから、どこか日本に似ているのかも。
 たぶん日本の芝居の作り方は、イギリスのやり方を真似している。だから日本の芝居をイギリスに持っていったり、向こうからこっちに持ってくるのはけっこう楽。これがブロードウェイになると大変。圧倒的にビジネスで、タフ。その仕事をやると、こっちもタフになれる。
 ロンドンでは、制作予算が少なくて地味に作っても成立する。でもブロードウェイでは、やはりそれなりにお金をかけて、ゴージャスさや誰が見てもわかるように作らなくてはならないみたい。たとえばロンドンではストレート・プレイがすごく多いけど、ブロードウェイでは圧倒的にミュージカル。
 むしろロンドンのミュージカルはブロードウェイからの逆輸入、ということかも。移民で向こうに行った人たちが、自分たちのオリジナルな文化を創ろうとして、オペラでもジャズでもない、新しいものを創ろうとしたのがミュージカルだったから。

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image ■ 石川直さん(ドラムパフォーマー)の

『blast!』の話

 ブロードウェイの劇場は造りが古い。それからニューヨークの街中にあるので、そんなに大きいわけじゃない。大きい方のブロードウェイ・シアターでも2000人くらいしか入らない。
 『Blast!』はちょっと変わっていて、ショーが終わった後に「Meet & Greet」といって、お客さんたちを見送るイベントがある。アンコールで舞台の袖に引っ込まずに、客席の通路を通ってロビーに出る。そこへお客さんが出てきたところで曲を終わらせて、みなさんと握手をする。客席から出るとすぐにブロードウェイの通りなので、そんなに寒くない時期には通りまで出てしまう。
 ハドソン川を渡ってすぐのところにマンションがあって、『blast!』の出演者全員でそこに住んでいた。ちょうどシルク・ド・ソレイユのニューヨーク公演のメンバーも同じマンションに住んでいて、共有の部屋に行くといきなり逆立ちしているヤツがいたりして。残念ながら忙しくて、向こうを見に行く暇はなかったけど。
 公演は平均で週に8回。水曜が休みで、マチネ(お昼の公演)が土曜日ともう1日、というペース。1日2回の公演は、きつい時はきつい。ツアーに行くと金曜日の夜、土曜日に昼と夜、日曜日に昼と夜、という風に公演が行われるので大変だった。
 基本的に必ずアンダースタディ(代役)が用意されていて、何かがあるとその代役が舞台に立つ。僕の場合は、この前は運良く代役のお世話になることはなかった。その代わり、ほとんどのメンバーは週に1回はお休みがもらえるんだけど、僕だけ3ヶ月ぶっ通しだったりして、そこは運が悪かったかも。
 舞台に立っている間は、寝る時間がすごく遅くなる。ショーが10時半くらいに終わって、帰り道にちょっとバーに寄って飲んで、何か食べて帰る。けっこう毎日が楽しい。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'07" I'm Just Wild About Harry Peggy Lee Capitol CDP 7243 8 29384 2 2
19'03" On The Street Where You Live Mel Torme Verve POCJ-9149
30'46" Always True To You In My Fashon Eydie Gorme Universal UCCC-3018
41'46" My Favorite Things Joni James DIW DIW-394
47'53" I Love You Anita O'day Verve 847-202-2


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