SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2003年11月29日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「冬支度」

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 週が明ければ12月。本格的に寒くなり、今年も冬がやってきます。
 もう冬支度はお済みでしょうか?コートやマフラーを出して、暖房器具を用意して……そういえば我が家はコタツを片付けたのが、文字通り「ついこの間」だったような気がするのは、気のせいということにしておきましょう。
 さて、そんな事を思い出したのは、先程からあちらの席のお客様が、冬支度のお話をされていたからです。今日はそのお客様のお話を始めとして、さまざまな「冬支度」にまつわるお話をご紹介させていただきます。


image ■ ジェルミ・エンジェルさん(翻訳家)の

『薪を使う暮らし』の話

 僕の住む八ヶ岳の富士見町は、中央高速や中央線で山梨県から長野県へ入ったあたり。標高は800mくらい。
 冬はかなり寒くなるので、冬支度と言えばまずは「薪割り」。冬の間にだいたい5トンくらいの薪を使うので、春から集め始めるほど。
 昔の人は自分の森を持っていて、それを毎年少しずつ切って薪にしていたらしいけど、最近はみんな石油ストーブになってしまった。薪ストーブなんてものを使うのは、外国から来た変人の僕くらいなので、森を所有している人が「木を切ったんだけどジェルミさん使う?」って電話してくれる。それをチェーンソーで切って持ち帰って、斧で割って薪にする。斧で木を切るのは大変そうだけど、新しい木なら意外とスパッと割れるもの。ストレス解消にも持ってこい。
 11月はイナゴの季節。イナゴは日本古来の保存食だけど、長野では特に盛ん。最近ではあまり見掛けなくなったけど、引っ越した頃にはビニール袋を持ってイナゴに飛び付くおばあちゃんをよく見掛けた。
 みんなイナゴを敬遠するけど、犬の散歩をしていると、散歩の間に犬が何十匹もイナゴを口で捕まえて食べてしまう。それくらいおいしいモノなんだと思う。
 正直、日本家屋に住んでいると、床下からも寒い風がピューピュー入ってきたりするけれど、それが冬らしいと思うので僕は好き。イギリスあたりに行くと、中央暖房でどの季節でも家の中の温度が一定に保たれるけど、それでは便利なだけ。朝起きて、薪ストーブの準備をして、火をつけるとだんだん温かくなっていくのが楽しい。
 19世紀のアメリカの哲学者にソロという人がいて、彼もやっぱり自然が好きな人だった。彼の有名な言葉によれば「薪は人を2回温める、それは割る時と燃す時」。その言葉の通り、真冬だって薪割りをしている間はぜんぜん寒くない。やっぱり薪は素晴らしい。

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image ■ 樋口広芳さん(東京大学大学院教授)の

『渡り鳥』の話

 渡り鳥が季節によって移動するのは、食べ物の問題が大きい。ロシアのツンドラ、サハリンあたりだと、冬は雪と氷に閉ざされてしまうので、食べ物がまったく手に入らなくなる。だから渡り鳥は南に下ってくる。
 では、春に東京へやって来るツバメは、雪に閉ざされるわけでもない東京からなぜ去ってしまうのか。それはツバメが、空中を飛んでいる昆虫や葉っぱの上の昆虫を捕食する鳥だから。それで、冬になって東京に昆虫がいなくなってしまうと、南に行ってしまう。
 それならずっと南にいれば良さそうなものなのに、わざわざ北へ来るのか。これにもちゃんと理由がある。赤道に近づけば季節の変化が少なくなって、恒常的にそれなりの食べ物が手に入る。それに対して北の季節がハッキリしているところだと、冬は食べ物が手に入りづらい代わりに、春から初夏にかけては大量の昆虫が発生したりするなど、非常に食べ物を手に入れやすい。そしてその時期が渡り鳥たちにとってちょうど子育ての季節なので、たくさんの食料が手に入るのは大変ありがたい。そういう事情で、渡り鳥は何百キロ、何千キロという長い道程を、危険を冒してでも旅している。
 渡り鳥の移動する距離はとてつもない。渡り鳥の中には、夏は北極で過ごして、冬は南極で過ごす、というすごい鳥もいる。本当は、北半球と南半球では季節が逆転するので、南極も「夏」なんだけど。その鳥には、極地から極地へ渡る鳥というところから「キョクアジサシ」という名前がついている。その道のり、片道で実に1万5千キロ。
 極アジサシは極端な例だけど、通常の渡り鳥でも数百キロから数千キロの旅をする。ここ15年ほどは人工衛星を使って渡り鳥の調査をしていて、現在はハチクマという鷹の一種を追跡している。そのハチクマは、西日本から東南アジア方面へ向かい、現在はインドネシアからボルネオまで渡っているので、5000〜6000キロの旅といったところ。
 春から夏にかけて生まれた渡り鳥の子供も、秋になればやっぱり渡りの旅に出る。親と一緒の場合もあるけど、どちらかといえば独立して親とは別に渡ることの方が多い。日長の変化などを引き金に季節を感じ、方角は星や太陽の位置、地磁気などで計り、どの方角へ向かうのかは遺伝子に組み込まれた本能で知る。これはスゴイことだと思う。
 私などが調査のために渡り鳥が渡った先へ行ったりすると、もちろん方角なんか分からないし、飛行機だの車だのを使いながらなんとか辿り着く。それを渡り鳥は全部自分の力でやってのけてしまうのだから、本当に偉い。

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image ■ 村山透さんと太田勇さん(ミサワホーム)の

『最近の住宅事情』の話

 住宅の冬対策といえば断熱。二重窓もそうだけど、断熱材を壁や床、天井に敷き詰めることによって、熱ができるだけ逃げないようにする。
 もう1つは換気、ないしは漏気対策。漏気によって熱が漏れたり入ってきたりする割合は意外と多い。そこで気密化することで、建物の中を快適な温度に保ち、なおかつ省エネ化を図ることができる。
 気密化の方法はいろいろあるので一言では説明しにくいんだけど、一般的には「壁と床のぶつかるところをピッタリ合わせる、隙間があったら塞ぐ」なんて基本的なことだったりする。でも全般的には、設計段階から考えておかないと、ちゃんとした断熱、気密化はできない。というか、今まではできなかった。
 それが今、「リフォーム」によって可能になってきた。リフォームと言えば、見た目をキレイにするとか、お風呂をユニットバスにするとか、見た目と機能が従来の目的だったけど、最近では住宅の「性能」を良くする、という方向へ向かっている。見た目ではあまり変わらなくても、身体で感じる感覚が気持ちいい、というリフォームがこれからの中心になっていくのでは。
 窓を交換する、というレベルのリフォームなら、そんなに時間もかからないし。今までガラス1枚だった窓をペア・ガラスにするなら、ガラスの枠ごと交換してしまえば良いわけだし。
 気密性と断熱性をダブルで高めれば、暖房をつける時期が今までよりも1ヶ月以上は遅くなる。だから東京なら、暖房が必要なのはせいぜい2ヶ月ぐらい。しかも、無理せず2ヶ月。昔ながらの4ヶ月の家だと「まだ暖房を入れるのは早いかな……」と無理しながらの4ヶ月だから、その差は大きい。
 気密性を高めると湿気が入ってこないので、建物自体の維持管理が良くできる。昔の家だったら20年くらいで建て替えないと、柱が中で腐っているということも起こりえたけど、気密性を高めると建物にも優しい。だからちゃんとメンテナンスしてあげれば、50年とか100年とか使えるようになる。

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image ■ 渡辺聡史さん(ズーラシア)の

『動物の冬眠』の話

 動物と言ってもいろいろだけど、哺乳類に限っていえば、冬眠するとわかっているのは約180種類。霊長類なら、マダガスカルに住むキツネザルの仲間3種類くらいが冬眠する。齧歯類だったら、日本のヤマネ、エゾシマリスだとか。
 肉食獣では、熊やアナグマが代表的。熊なら何でも冬眠するワケじゃなくて、ヒグマ、ツキノワグマ、ホッキョクグマ、アメリカクロクマの4種類だけ。それ以外の熊は熱帯に住んでいたりするので、冬眠はしない。
 ホッキョクグマも、全部が冬眠するということではない。妊娠してお腹に赤ちゃんがいるホッキョクグマだけが冬眠する。妊娠していないメスやオスは冬眠しない。熊の冬眠はおもしろくて、冬眠しながら子供を産むところから「冬眠じゃなくて冬籠もり」と考えられていた。最近では冬籠もりも冬眠の一種と考えられるようになったけど。
 おそらく、熊の冬眠は眠りが浅いのだと思う。レム睡眠とノンレム睡眠と区別するなら、レム睡眠なのだろう。そして赤ちゃんが生まれてしまえば、冬眠のための穴がそのまま優秀な保育器になる。
 動物園の動物に関しては、動物園によって事情が違う。たとえば北国の動物園だと、雪のために冬の間は閉園してしまう動物園がいくつかある。冬眠は日長やエサなどがきっかけになって起こるので、やっぱり動物園の熊なんかも秋になるとトロ〜ンとしてくる。ウチなんかは1年中営業しているので、冬眠されては困るから、そのあたりはエサでコントロールするけど、閉園する動物園なら、藁をいっぱい敷いてあげて、エサもたっぷり与えて、そのまま冬眠させている。
 冬眠しそうな熊は一目で分かる。本当にトロ〜ンとして、「掃除するからどいて」と言ってもぜんぜん動いてくれないし。

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image ■ 真島英郎さん(ファーストリテイリング)の

『カシミヤ』の話

 カシミヤは「繊維の女王」とも呼ばれる。カシミール地方ヤギの毛で、しかも産毛。
 産毛と言ってもちょっとわかりにくいんだけど、そもそもヤギには差し毛という固い毛が生えていて、それが毎年生え替わる。その差し毛が抜け落ちる前に、差し毛の下にそろそろと生えてくるのが産毛。
 その産毛を櫛ですいて、差し毛と一緒に収穫する。そして手作業で差し毛やゴミ、脂などを取り除いて、やっとカシミヤの素材が手に入る。それだけ手間が掛かっているので、どうしても高価なものになってしまう。
 ウールと同じで、カシミヤも細ければ細いほど上質と言われる。ちなみにカシミヤの産毛は約15ミクロン。人間の女性の柔らかい髪の毛と較べても、実に1/5の細さ。そんな目に見えないような細さの繊維で良い服を作ろうなんて考えた昔の人は偉いと思う。
 ユニクロの製品は、内モンゴルのヤギの産毛を使っている。中央アジアのあの辺は、ヤギがとても多いので。夏は30〜40度、冬はマイナス30〜40度と、非常に寒暖差の激しい地域なので、そういう気候にも耐えられるような毛が生えてくる。
 産毛なので、収穫できる量も非常に少ない。セーター1着で、ヤギ3〜4頭分の産毛が必要になる。しかも収穫できるのは、5月くらいに年に1度だけ。そして綿のような形で収穫されて産毛は、選り分けて、洗って、よって……と10以上の工程を経て製品化される。
 カシミヤは手触りが良いのもモチロン、軽くて暖かい。独特の風合いがあって、えも言われぬ感覚がある。そして着ていると、なんとなく豊かな気持ちになるというか、穏やかな気分になる。カシミヤのセーターを着てプンプン怒っている人というのもちょっと想像できないし。

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放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
8'00" Baby, It's Cold Outside Dean Martin Capitol CDP 7 93115 2
19'10" Let's Fly Away Doris Day Columbia 47759 3 2
31'14" Winter Night Eydie Gorme Universal MVCJ-19207
40'56" Warm December Julie London Capitol 7243 8 59959 2 7
47'20" Button Up Your Overcoat The Hi-Lo's MCA MCCM-276


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