■ 小林桂さん(ミュージシャン)の
- 『スタンダード・ナンバー』の話
僕の場合、歌だったら英語の曲しか聴いてこなかった。スタンダードとかミュージカル・ナンバーを聴いて育ったので、英語で歌うことに関しては違和感はない。
映画、特にミュージカル映画が好きで、この年齢(24歳)の割には、「その曲がもともと使われた映画」を見ている方だと思う。その曲が、どういう形で使われたのか、どういうシーンでどういう風に導入されてきた曲なのか、それがわかると鳥肌が立つような感動を覚えることもある。
意外と日本のジャズ・ミュージシャンは、そんなことは気にしないし、知らないもの。たとえばガーシュインの『But Not For Me』なら、『Girl Crazy』というブロードウェイ・ミュージカル(のちに映画化)の中で使われた曲だった。残念ながらその映画はまだ見ていないけど、『Crazy For You』の方ならブロードウェイで見て、歌詞とストーリーの絡み方には唸ってしまった。
スタンダードの詞は、だいたいどれも単刀直入。すごくシンプルでストレートな表現だけど、そこにいろんな事を想像させてくれる。だから感動できる。詩的に韻を踏んでいるのも、お洒落で格好良い。ちなみに、ラップの世界でも韻を踏むことを「ライム」と呼んで重要視しているけど、絶対にジャズが元になっていると思う。そして、ちゃんと韻を踏んだ曲を歌うのは気持ちがいい。リズムが気持ちよく進んで、なおかつ歌詞の内容もとても計算されている。
スタンダードを作る作詞家と作曲家は、アイラ&ジョージとか、だいたい同じコンビだったりする。「僕の曲は彼の詞でなくちゃ」みたいなコンビネーションがうまくとれているから、素晴らしい曲が生まれてくるのだろう。だからなのか、大ヒット曲をたくさん生み出したコンビの一方が先に死んでしまって、残った方が別の人と組んでも、ぜんぜんヒットしなかった……なんてことも往々にしてあった、とか。
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■ 渡辺満里奈さん(タレント)と 神谷えりさん(ミュージシャン)の
- 『ライブハウス』の話
(渡辺さん)
もともとジャズはそれなりに好きだったんだけど、正直、日本のミュージシャンのことは何も知らなくて、向こうの古いジャズしか聴いていなかった。ところがある時、人に勧められて「TOKU」という日本人のアルバムを聴いてみた。そうしたら曲も声も好きな感じで、「あ、こういう人もいるんだ」と日本人のジャズも聴くようになっていった。
ライブハウスに行くのも、最初はけっこう緊張した。でも、実際に行ってみたら、なんということはなくて、普通の「ご飯が食べられるライブハウス」だった。音楽の聴き方も、好きなように聴いていればいいし。「静かにしてなきゃいけないのかな?」「どこで拍手をすればいいんだろう?」なんて最初は悩んでいたけど、良いと思ったら拍手をすればいいだけ、だった。
(神谷さん)
最近は客層もずいぶん変わってきた。10年くらい前なら、やっぱりジャズのライブハウスはオヤジの海で、かなりマニアックな場所だった。それがTOKUみたいな若い人が活躍するようになって、だんだん変わっていったんだと思う。
若い世代のミュージシャンも、もちろんジャズが好きで、昔とそれほど変わらないジャズをやっている。だけど、自由に洋楽が通り過ぎていく環境で育っているせいか、同じステージでもカジュアルな感じがする。
(渡辺さん)
だからライブハウスに行っても、女の子3人連れのお客さんを見掛けることもあるくらい。
昔は「好きなアーチストが来日した!」と気張って行くのが“ライブ”だったけど、今は「今日は誰がやってるの?あ、エリがライブやってるんだ」なんて、食事の後に気軽に寄る、くらいのイメージで楽しんでいる。
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■ 児山紀芳さん(ジャズ評論家)の
- 『Bebop』の話
「Bebop」というのは、今、一般に演奏されているジャズの、ルーツにあたる音楽のこと。時代的には、今から50年くらい前、1940年代の半ばぐらいに、ニューヨークを中心として、当時の若い意欲的なミュージシャンたちによって作り上げられた、新しいジャズのスタイル。
それ以前は、ベニー・グッドマンとかアーティ・ショウとか、ジャズは基本的に「踊るための音楽」だった。しかし、それに飽き足らない若い人が「ジャズも聴かせるための音楽にしよう」と考え、革命的なスタイルのジャズを創り出した。それは難解で、ハーモニーがコードになり、メロディが跳躍して、スウィング時代の「踊るためのジャズ」のスムースなリズムとは正反対の「踊れない」音楽だった。
だから当時は、ミュージシャンの中にも「こんなものはジャズじゃない」と言う人もいた。それでも結局は、チャーリー・パーカーとかディジー・ガレスピーといった「モダンジャズの生みの親」たちの天才的なひらめきによって、新しいスタイルのジャズが受け入れられるようになっていった。
ちなみに「Bebop」という呼び方は、フレーズの特徴を歌にして表現する時に、「Be-Bop, Be-Bop」みたいな言い方をするところから来ているらしい。特に意味のある言葉じゃなくて、音を口でバーバライズしたもの。
そういった事情で、Bebopというスタイルは演奏するのが非常に難しくて、「超絶技巧の音楽」と言われている。だから今でもBebopを演奏するということは、ミュージシャンたちにとって1つの規範になっているし、この先も永遠にジャズのルーツとして残っていくだろう。
そんなBebopの究極の演奏として1つ挙げたいのは、チャーリー・パーカーの『KO-KO』。チャーリー・パーカーは一言でいうなら「神様」で、アルト・サックスを演奏するんだけど、そのイマジネーションや考え方は今のミュージシャンにも多大な影響を与える、まさに「モダンジャズの生みの親」。
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■ 畑保美さん(『Blue Note TOKYO』ゼネラルマネージャー)の
- 『Blue Note TOKYO』の話
『Blue Note TOKYO』ができて今年で15年。実に約860組、4700人くらいのアーチストに出演してもらった。
アーチストを招聘する時は、ニューヨークの窓口を通して交渉する。スタッフはみんな音楽好きばかりが集まっているので、ブッキング担当のスタッフもいるけど、みんなで話しながら誰を呼ぶかを決めている。
「誰を呼ぶか」は、「誰が流行っているか」よりも「いま呼ぶべきは誰か?」という視点で選んでいる。「この人を紹介したい!」というアーチストがどんどん出てくるので、ちょっと先物買いになることも多い。
たとえば、ロンドンの「コートニー・パイン」などは、クラブでしか紹介できないアーチストだったので、ウチで呼んで来てもらった。その後、日本でも着実にファンが増えているのは嬉しい限り。
もちろん「大物」と呼ばれる人を招くこともある。これは、来てくれると素直に感動してしまう。月曜日の最初のステージは、我々スタッフも確認のために見るんだけど、アーチストがスポットを浴びて音を出した瞬間、「この人が東京のクラブに出演しているんだ!」という実感がわき上がってきて、嬉しくなってしまう。
印象に残っているのは、ディジー・ガレスピーとか、サラ・ボーンとか。もう亡くなってしまった方も多いけど、今から考えると「会えて良かった」と心から思う。そういったアーチストが出演してくれて、お客さんにも楽しんでいただいて、「東京のステージ」が想い出として残ったことが何よりの財産。
いろんなアーチストがいたけど、ワインやウイスキーが好きなアーチストも多かった。たとえばボビー・コールドウェルは、大のウイスキー好きで、バーボンなんかをよく飲んでいた。幸い、ウチはお酒も充実しているので、アーチストのどんなリクエストにも応えてきたけど。
ウチは5年前に改装して、300人くらいのキャパになった。それくらいの大きさが、ジャズ・クラブとしては適切な大きさだと思う。これ以上大きくなってしまうと、「シアター」みたいな雰囲気になってしまう。以前に「カウント・ベイシー・オーケストラ」に出演してもらったこともあるけど、ああいったビッグ・バンドがステージに上がると、大迫力で「クラブ」の良さが際だつ。
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■ 谷啓さん(タレント)の
- 『日本のジャズ黎明期』の話
戦後ちょっとしてから、「ジャズ・コン」のブームがあった。
日比谷公会堂あたりで最初にジャズ・コンサートをやったんだと思う。そうしたら、これがウケちゃって。当時、僕はまだ高校生で、横浜に住んでいた。とにかくジャズがやりたくて、トロンボーンを持って日の出町にあった進駐軍のキャバレーに行って「ジャズをやらせて下さい!」と売り込んで、なんとかそこに潜り込んだ。
トロンボーンは前からやっていたけど、ジャズの吹き方なんて誰も知らなかったから、独学するしかなかった。僕がツイていたのは、僕らが入っていたクラブへ、向こうでもけっこう上手いジャズのプレイヤーが、兵隊の客として来ていたこと。その黒人は、僕たちが演奏していると「ちょっと貸せ」と僕のトロンボーンを持って、ものすごい演奏を見せてくれた。
普通、マウスピースが違うと、人の楽器を借りたりはしないんだけど、その人は何も気にする様子もなく、いきなり僕のトロンボーンを口に当てて演奏していた。そういうところから、ジャズのメロディや歌い方を勉強していった。
僕らはもともとブラスバンドだったから、たとえば『センチメンタル・ジャーニー』をやるにも、譜面通りに演奏してしまう。ところがその人は、フェイクしながら演奏していた。そういう部分を、ずいぶん勉強させてもらった。
向こうの人は、どんな楽器でも、最初に出した音からしてジャズっぽいというか、トッポい感じで実に良かった。特にトロンボーンはスライドがあるので、微妙に音を上げたりできる。やりすぎるとドロ臭くなるところを、彼らは実にうまくやっていた。
僕がトロンボーンを始めたばかりの頃は、トミー・ドーシーという人がお手本だった。この人は綺麗な音で、マジメに吹いているという感じ。その後、ちょっとモダンがかったものが入ってくるようになった時に、J・J・ジョンソンという人が出てきた。もう亡くなってしまったけど、今でもこの人が好き。自由に、適当に吹いている感じなんだけど、それがまた憎い。
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放送曲目リスト
| Time |
Title |
Artist |
Label |
Number |
| 9'11" |
I Remember You |
Kei Kobayashi |
東芝EMI |
TOCJ-68055 |
| 19'21" |
Mr. Sandman, Bring Me A Dream |
TOKU |
Sony |
SICP 284 |
| 29'38" |
Ko-Ko |
Charlie Parker |
Verve |
UCCY-4007 |
| 39'33" |
Day In Day Out |
Bobby Caldwell |
SIN-DROME |
POCP-7355 |
| 46'27" |
From This Moment On |
Chris Connor |
Bethlehem |
TOCJ-62041 |
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