SUNTORY SATURDAY WAITING BAR
2003年10月11日の放送

この日の放送曲目リスト/過去の放送内容リスト

「月」

image

 最近は陽が落ちるのもすっかり早くなって、夕方6時頃になると、月がぽっかりと空に浮かんでいます。
 日本では昔から、月を見て「ウサギが餅をついている」なんて言っていました(どうやってもそうは見えない私は日本人失格?!)が、アメリカでは「カニ」や「ワニ」、その他の地域では「ライオン」「本を読む老婆」「女性の横顔」など、いろいろな言い伝え(風習?)があるそうですね。
 今日の当店では、そんな月の四方山話に華が咲いて、秋の夜長を楽しんでいるお客さまがいらっしゃいます。そのお話を、少しだけここでご紹介しましょう。


image ■ 柳瀬宏秀さん(環境意識コミュニケーション研究所)の

『太陰暦』の話

 太陰暦は月の周期に基づいているので、29.53日が周期。それで計算していくと、年ごとにズレが生じて、季節もズレてしまう。だから月の周期に従った完全な太陰暦に戻すことは難しい。
 でも、太陰暦には太陰暦の良さがある。本来、カレンダーは星や月の動きを見て作ったもの。それは生物のリズムに非常に合っている。逆に言えば、いま使ってる太陽暦は、生物のリズムに合っていない。
 たとえば、「July(ジュライ)」はジュリアス・シーザーの名前から取っているし、「August(オーガスト)」はアウグス・ティヌスの名前。2人の皇帝が勝手に名前を残しちゃったから、「September」は本来「7」を指す言葉なのに「9月」だし、「October」は「オクトパス」と同じで「8」なのに「10月」。こんな具合に、太陽暦は非常に人工的で不自然なもの。それをキリスト教徒が使うだけなら構わないけど、世界中に普及させてしまったことで、太陰暦の持っていた良い部分が失われてしまった。
 月の満ち欠けは、生き物にすごい影響力がある。その新月と満月が、太陰暦を使っていれば1日と15日で固定されるから、誰でもすぐに次の新月満月が計算できた。今でも神社で1日と15日に月次祭(つきなみさい)をやっているけど、太陽暦の1日と15日にやっているから、ぜんぜん意味がない。
 月の影響が一番わかりやすいのは海。潮の満ち引きはもちろん、サンゴの産卵は満月の夜に行われるし、カニが何十万匹と海岸に上がってきて産卵するのも、満月の夜。だいたい満月の夜には、アメリカ大陸(だけじゃないけど)が16cmも浮き上がる。海の水位なら数mも違ってくる。70〜80%が水分でできている人間が、月の影響を受けないはずがない。だから、月の周期に合わせたお祭りというのは、本来は重要な意味を持っていた。

【Hot Link !!】





image ■ 渡部潤一さん(国立天文台)の

『月の過去と未来』の話

 昨夜がちょうど満月だった。今夜の月は「十六夜(いざよい)」と言って、満月よりも50分遅く月が昇ってくる。
 日本では平安の昔から「月の出を待つ」という習慣があった。月の出は毎日約1時間ずつ遅れていくので、立ったまま待てる月を「立ち待ちの月」、座らないと待てないくらいの「居待ちの月」、待っている間に寝ころんでしまう「寝待ちの月」などという呼び方もあったほど。『竹取物語』だって、お姫様は月からやってきた人だった。
 調べてみると、大昔は地球の自転がもっと速くて、16〜18時間ぐらいの周期でグルグル回っていた。そしてその頃、月は今よりもっと近くにいた、と考えられている。
 そもそも月の誕生は、地球に大きな天体がぶつかった時の破片が元になっている、という説が有力。破片は輪となって地球を取り囲み、その破片が集まって月になった、と言われている。だから最初はすごく近くにあったけど、地球がグルグル自転するものだから、その影響を受けて飛ばされるように少しずつ遠ざかって、今の場所にまで遠ざかかった。そして今なお、1年に3cmずつ遠ざかっている。
 38万kmに対しての3cmは大したことがないようだけど、100億年という単位で考えれば、ものすごく遠ざかることになる。その頃には、月が1周するのに40〜50日くらいかかるようになるし、地球の自転エネルギーも吸い取られて、自転速度はかなり遅くなっているはず。
 ちなみに今、暦に「うるう秒」が入れているのは、地球の自転が遅くなるのに合わせるため。アレを入れないと、ちょうど正午に太陽が真上に来てくれない。遠大な話のようで、意外と生活に影響のあるお話。
 いずれは月も遙か彼方に遠ざかって、止まってしまう。場所は今、静止衛星が打ち上げられているインド洋上空。そうなると、月は地球上の限られた地域でしか見えなくなって、日本だったらパラボラ・アンテナが向いている方向にずっと見え続けるようになる……というのは100億年以上先の話で、実は50億年くらいで太陽が燃え尽きてしまうので、その時は月も地球もないんだけど。

【Hot Link !!】





image ■ 小笠原敬承斎さん(小笠原流礼法宗家)の

『お月見』の話

 日本の年中行事は、農耕民族だけに収穫に関する行事が非常に多い。だから「お月見」も1つの収穫祭と言える。お団子の横にお芋を飾ったりするのも、その名残。飾るのは収穫したものだから、地方によっていろいろある。「中秋の名月」と呼ばれる十五夜は、別名「芋名月」とも呼ばれていて、一番よく飾られるのが里芋。
 お月見というと中秋の名月ばかりにスポットライトが当てられるけど、本当はもう1つある。中秋の名月は旧暦の8月15日で、もう1つは9月13日の「十三夜」という。今の暦なら10月の半ばくらいで、そちらには「豆名月」とか「栗名月」という別名がある。昔は、十五夜と十三夜を両方して初めて「お月見」、片方だけなら「片月見」と呼んで、片月見はあまり縁起の良いものではないとされていた。
 お月見では、十五夜なら15個、十三夜なら13個のお団子を飾る。それから、秋の七草というか、今ならススキなどを飾って、月と一緒に季節を愛でる。これが本当のお月見。
 お月見に限らず、1年を通していろんなお祝い事がたくさんあるのは、農作業が1人ではできない仕事だから。グループを作って、そのグループみんなで収穫を祝い、また1年を一緒に楽しく過ごそう、といういろんな気持ちが込められている。
 もっとも文献では、もう平安時代には貴族の間でお月見が行われていた様子が伝えられていて、その頃には若干意味合いが変化していた。旧暦の1〜9月の奇数月に行われる「五節句」は、体調を崩しやすい季節の変わり目に厄を払いたい、という意味があったので、五穀豊穣と合わせてお月見をしていたらしい。  ちなみに9月なら、旧暦の9月9日が「重陽の節句」。今の暦ならちょうどいま時分。お月見にお酒が出るのも、神様への感謝もあるけれど、自分の身を清めたいという意味も持っている。重陽の節句は菊の季節でもあるので、菊の花びらを浮かべたお酒を飲むと、延命を得られる、なんて言われ方もする。

【Hot Link !!】





image ■ 寺薗淳也さん(宇宙航空研究開発機構)の

『月探査』の話

 最近の月の探査は、無人の探査機を送り込むのが主流。アメリカに限らず、ヨーロッパや日本も、無人探査機の計画を立てている。
 実は日本は、月に衛星を持っていこうという計画が2つもある。それも遠い未来の話じゃなくて、来年とか再来年の話。1つ目が「ルナA」という探査機で、これは来年打ち上げの予定になっている。
 「ルナ-A」がちょっと変わっているのは、月に地震計を置いてくること。「月に地震がある」ということはアポロの頃から分かっていて、今回は改めて地震計を使って調べることで、月の内部構造を調べよう、という計画になっている。ちょうどスイカを叩いて中を調べるのに似ている。
 月の内部が分かれば、月がどうやってできたのかが分かるだろうと考えられている。月がどうやってできたのかには諸説があって、まだ正確なところは分かっていない。それを言ったら地球がどうやってできたのかもよく分かっていないんだけど、月と地球は兄弟みたいなものなので、片方が分からなければもう片方も分からない、みたいな部分がある。だから月を調べている。
 アポロ計画で人類は月に行ったけど、あれは「月に行く」こと自体が目的だったので、月の裏側とかはあまりちゃんと調べなかった。そこで登場するのが、日本の2つ目の探査機「セレーネ」。こちらは2005年の打ち上げ予定で、これはアポロ以来の大月探査計画になる。アポロが調べきれなかったところをくまなく調べ尽くす。
 セレーネは衛星として月の周りを回る。以前には着陸させる計画もあったけど、まずは確実に調べるところから始めよう、ということになった。着陸した方が詳しく調べられるのではないか、と思われがちだけど、そうでもなくて、着陸してしまうとその周辺のことしか分からない。衛星として回っていれば、多少は粗くても全体を調べることができる。
 だからまず回って全体を調べて、ここがおもしろそうだと思ったらそこに降りて、場合によっては石を持って帰ってくる、みたいな、段階を追った調査をしようとしている。

【Hot Link !!】





image ■ 石川賢治さん(写真家)の

『月光写真』の話

 月の光は「青い」。青く見える。大自然の中でライトを消して、月明かりで歩くと、それがよくわかる。
 実は月の光というのはかなり明るくて、車のライトを消して走ったこともあるほど。都会はコンビニがあったりして24時間明るいので、都会の方に向けて撮影すると、空が真っ白になってしまうくらい。闇がないと月光は存在しないので、おのずと大自然の中に行って撮影するようになった。
 月が出てなくちゃダメだから、曇りの日は撮影できないし、さらに満月の前後でないとダメ。だから撮影のチャンスは月に1回、年に12〜13回が最大。20年間「月光写真」を撮り続けてきたけど、満月が出ていた時間を全部計算してみたら、わずか3ヶ月しかなかった。
 「この花を撮りたい」と思っても、その花が咲いている時期に満月が出て、しかも晴れなければならない。さらに花が咲く時期だってズレるし、1度チャンスを逃すと、次は何年後になるかわからない。月の光で写真を撮るには、そんな苦労がついてまわる。そこは自然とうまく付き合っていくしかない。
 技術的には、三脚を使っての長時間露光。1台のカメラを使って、1晩で撮れるのは数カットだけ。その数では、気に入った写真も撮れるか撮れないか……という程度。昔は手動で30分につきフィルム10本なんてこともやったけど、月光の撮影になってからは、レンズの蓋を外すだけ。車が来たら慌ててレンズを塞いで、通り過ぎたらまた外して……まるで150年前のダゲレオ・タイプの撮影。振動でもブレてしまうし、風で花が揺れてもブレてしまう。
 大自然の中なので、命も危険もある。なるべく平静にしようと思っているけど、やっぱり良い意味での緊張感は常にある。その緊張感のおかげで、感覚が鋭くなって、音や匂いに敏感になるので、物作りの上では役に立っていると思う。

【Hot Link !!】







放送曲目リスト

Time Title Artist Label Number
10'00" Ridin' On The Moon Jerri Winters Bethlehem COCY-9935
20'21" It's Only A Paper Moon Nat King Cole Capitol CDP 7 483282
32'06" Old Devil Moon Bobby Caldwell Jin-Drome POCP-7355
40'00" Magic Is The Moonlight Julie London Verve 31459900-2
47'22" Don't Let The Moon Get Away Mel Torme Verve 314-511385


 Back